NDSコラム

仕事 2021/05/31
新人介護職が離職しないために事業所が取り組みたい教育プログラムや職場環境づくりとは

介護業界は慢性的な人材不足が積年の課題です。全産業と比較しても高い水準である有効求人倍率は、介護業界に新規参入する人材の少なさを物語っています。さらに介護業界は早期退職による離職率が高いことも大きな課題となっており、人材の確保のみならず人材がいかにして勤続してくれるかを意識した取り組みが重要であり、そのためにはなぜ離職に繋がってしまうのかという課題を明確に捉えることが必要です。
人材の定着を図るため、離職に繋がらない職場環境づくりを事業所はどのように取り組めばよいか、新人介護職の早期退職に繋がらないためにはどのような教育プログラムが必要であるかを解説します。

介護業界は離職率が高い

介護業界は人材不足であることが常々問題とされています。その背景には介護業界全体の採用の困難さ、離職率の高さが挙げられます。厚生労働省が出している令和2年11月分の「一般職業紹介状況について」によると、介護サービス職の有効求人倍率は3.88倍となっています。全産業の有効求人倍率が1.06倍で、それと比較すると介護業界への求人がいかに少ないかが如実に分かります。介護業界への新規参入者を増やすための施策が必要でしょう。

離職率については、令和元年の介護労働実態調査では介護業界全体の1年間の離職率は15.3%で、それに対し採用率は18%とわずかながら上回っています。しかし介護業界は依然として人材不足が解消されません。
その理由として、1年以上勤続している職員においても離職する割合が高いことが挙げられます。

離職した介護職員の勤続年数を見ると1年未満の割合が37.8%ともっとも高いのですが、次に高いのが3年以上の介護職員で36.5%に上ります。
つまり、介護業界の人材不足は求人がないことも含まれますがそれ以上に「人材が定着しないこと」が背景にあるといえます。

離職に繋がってしまう要因とは

介護業界で働く介護職員が離職に繋がってしまう理由には例年以下が多く挙げられます。

職場の人間関係に問題がある

介護職員が多く挙げる離職理由のひとつが人間関係の問題です。介護業界は多くの事業所でシフト制の勤務を必要とし、職員間の風通しが悪くなりがちな傾向があります。新人介護職が入職してからの教育もシフト制の問題があるため満足にできないことが多く、そのため新人は業務をしっかりと覚えられないまま勤務することを余儀なくされることもあります。忙しい業務の中で「どこまで教えた」「何ができない」といった教育の進捗が不確かなままですので、経験年数の長い職員からすると「使えない」とされてしまうことがあるのです。こうした事柄が積み重なっていくことで職場の人間関係は険悪になり新人介護職は退職を選ぶことが多くなってしまいます。

事業所の運営方針に不満がある

経験年数の差に関係なく挙げられやすい理由が事業所への不満です。先述した職場の人間関係悪化にも事業所の運営方針が深く関わっていることがしばしばあります。
先ほどの教育について挙げると、事業所側がどのように新人育成をするかの教育プログラムを策定していないと教える介護職員、教育を受ける新人介護職はどちらも「何を、どこまで教えればいいのか、覚えればいいのか分からない」状態に陥ります。その結果、数日間その日勤務している先輩職員について回るだけで教育が終了するという事業所もあります。まともに教えてくれないから仕事についていけず辞めてしまう新人介護職が続いてしまうと、教える側の介護職員も「こんな教育システムだから人が続かないんだ」と考えるようになり、事業所で働くモチベーションそのものが下がってしまい事業所を見限って離職してしまうケースもあります。

ほかには介護職員の人が少なく勤務が過酷であることも事業所への不満になりやすいといえます。人材が定着しないことが既存の職員の離職にも繋がってしまうため事業所は新人教育の方針を明確に打ち出していくことが必要です。

業務に関する心身の不調(腰痛を含む)

離職理由として心身の不調も理由に多く挙げられます。
介護の仕事は利用者の尊厳の保持、自立支援ですが、利用者の介護依存度によっては負担の大きい身体介護を必要とする場合もあります。リスクの高い利用者は経験の長い職員が担当することもしばしばあり、その負担が少しずつ身体に蓄積されていきます。
また、介護業界はその責任の重さからストレスの多い職場であるといえます。多大なストレスは心の健康を崩すだけでなく腰痛を引き起こすことが知られています。利用者対応のストレスに加え利用者のケアに必要な情報の記録や管理、報告書などの文書作成など経験年数の長い職員ほど利用者への直接ケア以外の業務負担が大きくなり、恒常的に残業が発生してしまこともあり結果、心身の不調を招いてしまうのです。一度心身に不調をきたしてしまうと前向きに仕事に取り組むことは非常に難しくなります。3年以上の経験年数がある介護職員が離職してしまう背景は大きすぎる業務負担にあるといえます。

早期退職に繋がらないための教育とは

介護業界の人材不足の根底には教育プログラムが整っていないことが挙げられます。新人介護職が安心して働けるような育成プログラムを設定することで教育を担当する介護職員も何を教えるべきなのかを明確に意識して教育にあたることができます。
介護事業所全体が教育を行っていく際にまず必要となる意識は「長期的な目線で育てること」です。介護の仕事は高齢者特有の疾病や障がいに応じた対応、認知症を有する方への対応方法、介護記録の書き方、アセスメントの方法、介護計画に沿ったケアの進め方とそれを実践するための介護技術など覚えることがたくさんあります。ある程度は経験に応じて習得させていくものですが、利用者のケアに関わる知識や技術は業務を行っていくうえで外すことができません。

しかし、それらを1~2週間ですべて覚えることは到底困難であると言わざるを得ません。介護事業所側は新人教育に際し、介護計画書に沿ったケアと同様に「長期目標を達成するために短期目標を設定し、達成を目指すこと」を教育の基本方針とすることが重要です。
事業所の想定する教育が完了した状態像を長期目標の達成基準とし、そのために必要な教育を、段階を踏んで習得させていくシステムを構築することが早期退職を防ぐためにも必要です。

また同じ職員が担当し続けられるともっとも良いのですが、実情は難しいと思われますので教育項目などを設定したリストを作成し職員間で共有すればどこまで教えたのか、何が分からないのかが明確になり効率的な教育に役立てることができるでしょう。
現場での業務を覚えるためには数か月をかけてじっくりと教育していくように取り組むことが何よりも重要であると考えるようにしましょう。

教育しやすい職場環境づくりが重要

新人介護職の教育には教育しやすい環境づくりも非常に大切です。
新人介護職は徐々にできることが増えるに伴って一人で業務にあたることも増えていくでしょう。しかしまだ不慣れな状態では咄嗟の判断ができずに混乱してしまうこともあります。その際に素早く相談できる環境を整えておくことは、新人介護職にとって安心して働ける環境であるといえます。効率的な情報共有、報告・連絡・相談体制の整備は新人介護職の教育だけでなく介護職員同士の情報連携になりケアの質の向上に繋がります。結果職員間の風通しが良くなることも期待できます。介護職員全体が一丸となって利用者のケアや新人介護職の教育にあたるという共通目標は連帯感を生み良好な人間関係を築きます。
職員間の情報共有の効率化は介護事業所全体の質の向上に大いに役立つといえます。

ページ: 1 2

PAGE TOP