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2021年4月適用:「同一労働同一賃金」対応の課題とポイント

2021/06/24

日本は今後現役で働く世代、生産年齢人口が減少するとみられています。専業主婦などといったこれまでの働き方ではなかなか就労できなかった方々が働きやすくなるように多様な働き方を実現できる社会を目指すことを目的に様々な法律を整備する、いわゆる「働き方改革」が2019年度より推進されています。

働き方を多様化し、継続して生産年齢人口を確保していくために正規雇用、非正規雇用といった雇用形態の違いによる差別的取り扱いを禁止する、労働環境を適切なものにしていくことが必要とされています。大企業や介護業界を含む中小企業を対象に順次様々な施策が行われており、年次有給休暇の取得義務化などが実施されていますが、この度2021年4月からは「同一労働同一賃金」が中小企業にも適用され、多くの介護事業所は2021年度より施行されています。多様な働き方を推進するための働き方改革において、同一労働同一賃金とはどのような対応を求められる内容なのでしょうか。

介護事業所が同一労働同一賃金に取り組むための課題とポイントとあわせて解説します。

「働き方改革」が2019年度より順次施行されている

「働き方改革」とは「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」のことをいい、働き方改革関連法などの通称で呼ばれます。今後の日本は生産者人口が減少するとみられており、現在の労働条件では専業主婦など働きたくてもなかなか条件に合わない方々が積極的に働ける環境を整えることで生産者人口を増やしていけるように2019年度より取り組まれています。パートタイマーなど非正規雇用で働く方々の雇用形態によらない多様な働き方を実現させるために年次有給休暇を取りやすくする、時間外労働の上限を設ける、など様々な施策が行われています。

すでに大企業では適用されていますが、2021年4月からは中小企業も対象に「同一労働同一賃金」が適用されて、さらなる働き方の多様化が図られます。一連の働き方改革は今後もますます様々な方が働きやすい環境整備に繋がるでしょう。

2021年4月から多くの介護事業所が対象となる「同一労働同一賃金」とは

2021年4月から多くの介護事業所が対象となった「同一労働同一賃金」とは、正職員と非正規職員との間の賃金、賞与、待遇などの「不合理な格差」を禁止するというものです。非正規職員は有期雇用労働者(契約社員)、パートタイマー、派遣職員のことをいいます。
不合理な格差には給与や手当、賞与といった賃金だけでなく教育訓練、慶弔休暇、病気休職などの福利厚生も含まれ、これらに対し正当な理由なく正職員との不合理な格差を禁止し、事業所側は格差が生じる場合は正当な理由を説明する必要があります。正職員と非正規職員が同様の業務を行っているのであれば同様の待遇をしなければならないというものです。

介護業界で働く方は女性比率が高く、家庭との両立などの理由から非正規雇用の方も多く、この度の同一労働同一賃金の是正は介護事業所と職員双方にとってメリットとなりえる要素でもあります。介護業界は人手不足が目下の課題ですので、格差を是正し多様な働き方を容認することで多様な人材を呼び込む引き金となるかもしれません。
そのためには介護事業所は同一労働同一賃金の適用に向けての課題を解決していく必要があるでしょう。

「同一労働同一賃金」介護事業所の課題とポイント

介護事業所は非正規雇用者の割合が多く、女性比率の高い傾向が挙げられます。業務内容は高齢者のケアから記録業務などチームであたる必要のある業務が多いため雇用形態によって大きく業務内容に差がないことも特徴です。
特別養護老人ホームや老人保健施設などの施設系サービスやグループホーム、小規模多機能型居宅介護といった地域密着型サービスの一部には夜勤があるため正職員と非正規雇用者が同様に夜勤をこなす事業所も多いと思われます。

同一労働同一賃金の適用が始まると同じ業務をこなしている場合は正職員と同様の待遇を図ることが必要となり、介護保険収益が主な収益となっている介護事業所の収益モデルでは経営に不安が出てくることが課題となると考えられます。
介護事業所の経営を安定させつつ同一労働同一賃金に対応していくためには抜本的な人員体制の見直しが必要ともいえるでしょう。

また、同一労働同一賃金が施行された4月には同時に令和3年度介護報酬改定も行われ、この度の改定では一定の条件を満たした場合に人員基準の緩和を図る措置などが取られています。それと合わせて介護事業所内の体制を見直す必要があります。

介護業界は人材不足が積年の課題となっており、限られた人員で多忙な業務をこなす必要があるほか、高齢者の安全を守るという責任感を強く求められる仕事でもあります。そのため介護職員は強いストレスを感じやすく、それが離職に繋がってしまうこともあります。こうした現状を改善していくことができれば介護業界全体のイメージ改善に繋がることが期待されます。

同一労働同一賃金を含む働き方改革を推進していくポイントは

・介護事業所内の賃金格差に不合理が発生していないかをチェックする
・正職員、非正規雇用職員問わずキャリアアップの道筋を整備する
・慶弔休暇等の福利厚生に不合理な格差が生まれていないかをチェックするなど
非正規雇用職員に無理のある業務を任せすぎていないか、等しい業務量であるのに賃金格差が生じていないかを明らかにし、適切な業務分担に応じた賃金体系を整備していくことが必要となるでしょう。

業務改善の機会と捉えた対応が必要

2021年4月より適用された同一労働同一賃金に対応していくには介護事業所は経営の面や人材不足の中での業務分担などの不安が大きいのが現状だとは思いますが、働く側の職員や地域住民にとっては「時代のニーズに柔軟に対応している事業所である」というイメージを持っていただくために非常に有効であると思われます。

先述の通り、介護業界は非正規雇用の職員が多く女性が働く比率の多い業界でもあります。働いている職員は皆が皆非正規雇用を望んでいるわけではなく、家庭の事情などから非正規雇用を選ばざるを得ない方がいるのも事実でしょう。

そのような職員が同様の業務をこなしているのに非正規雇用という理由で明らかな格差が生じていると感じてしまってはやりがいやモチベーションの低下に繋がりかねません。そうなると最悪の場合は離職に繋がるなどで、介護事業所はさらなる人員不足に陥ってしまうことでしょう。

令和3年度介護報酬改定ではICT機器を活用した見守りなどで業務負担を減らす場合などの人員基準の緩和が図られました。これらも介護事業所が人件費を切り詰めるためのものではなく職員の負担を減らし働きやすい環境を提供し、介護の質の向上を図ることが最たる目的となっています。

雇用形態によらず業務の負担量や能力に応じ適切な待遇を図っていく同一労働同一賃金と、ICT機器を活用して職員の業務負担を効率化する令和3年度介護報酬改定への対応は、働きやすい職場づくりと介護事業所の信頼獲得の絶好の機会としてポジティブに臨むことが必要でしょう。「国の施策で決まったことだから仕方なく」「対応が必要なところだけ対応すればいい」という姿勢で臨んでしまうと、業務負担は減るばかりかますます複雑なものとなり職員のやるべきことが増えてしまうことも予想され、悪循環となるおそれもありますので、これを機会に現在のニーズに沿った未来志向の介護事業所のために抜本的な働き方改革に取り組む良い機会ともいえます。

自身の介護事業所がどのように同一労働同一賃金に取り組んでゆくべきかの詳細は厚生労働省が公開している「同一労働同一賃金ガイドライン」を参考にしてみましょう。

 

▼厚生労働省 同一労働同一賃金ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html

まとめ

雇用形態によらない自由な働き方を推進するための改革である「働き方改革」が実施されました。介護業界においても非正規雇用職員と正職員との不合理な格差が生じないようにしなければなりません。

令和3年度介護報酬改定でも人員体制に見直しが図られ、ICT機器を活用した場合などが要件になっています。事業所の組織体制や業務の流れを今一度洗い出し、ICT機器を活用しながら抜本的な業務改善を行っていくことで職員や利用者からも選ばれる介護事業所をつくっていくことが今後の経営には求められるでしょう。

ほのぼのNEXT

国は介護事業所にICT機器などのITテクノロジーの活用を推進していくために補助金を積極的に活用するよう呼びかけています。これらを有効活用しながら時代に合った事業所づくりをしていきましょう。

当コラムは、掲載当時の情報です。

参考URL

▼「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322_00001.html

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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