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NDSコラム

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介護事故を減らしていくには「防ぐべき事故の防止」が重要

2021/08/19

介護現場では常に介護事故のリスクが絶えません。利用者の転倒や転落などの介護事故は利用者にケガを負わせてしまうだけでなく骨折や死亡にも繋がりかねないものですので、何とか予防したいと考えている介護事業所は多いことでしょう。介護事故は発生しないことが何よりなのですが、過度な事故防止はかえって利用者へのケアの質を落としてしまう、職員の負担を強めることにもなりかねません。介護事故は「防ぐべき事故」と「防げない事故」の見極めをしっかりとつけて、防ぐべき事故を防止していくことが減少に繋がります。そこで、現場を預かる管理者はどのように事故防止についてのマネジメントをしていくとよいかを見てみましょう。

介護現場で事故を完全に無くすことは困難

介護事業所を利用する方々は何かしらの疾病や障がいを抱えている方や高齢により心身機能が低下した方々が多くおられます。利用者はその影響で自分のイメージした通りに身体が動かないことや、認知症により危険が認識できず転倒、ベッドからの転落などの事故を起こしやすくなります。また介護の仕事は人と人が接する仕事であり、様々な身体介護を要する場面が数多く見られます。限られた人数で多くの利用者を見る介護職員は、同時に発生した事故リスクにすべて対応することは困難です。

また、人間は常に同じ行動を正確に行えるわけではなく、体調や環境の変化を強く受けます。私たちが「さっきまで覚えていたこと」をつい忘れてしまうことがあるように、介護職員が常日頃から気を付けていることでも、ふとした時に対応が遅れてしまうことも十分にあり得ることです。このようなヒューマン・エラーが起こることで事故は発生してしまいます。しかしヒューマン・エラーを完全に無くしてしまうことはできません。つまり介護現場では事故のリスクを完全にゼロにすることはできないといってもよいでしょう。

介護事故予防策は過度になると利用者を抑制してしまう

事故を完全に防ぐことができないからといって、何も対策をしないわけにはいきません。介護事業所では事故を予防するために様々な対策を取っています。

介護事故が起こった際には事故の内容を分析し、再発予防に努めるための「介護事故報告書」などの記録を書きます。これによりなぜ事故に至ったのかの原因を明らかにし、再発予防策を講じることができます。

ほかに事故には至らなかったが事故に繋がるリスクには「ヒヤリハット報告書」などの記録を書きます。ヒヤリハットは起こった際の状況を把握することで、そこに潜む不安全状態・不安全行動を把握することに役立てることができ、これにより事故に繋がる潜在的リスクを顕在的リスクとして認識し、事故に繋がる前に対策を練ることが可能になります。

このように介護事業所では介護事故を防ぐための手立てを取っているところがほとんどではあります。しかし過度に「事故を防ぐ」という意識が働きすぎると、転倒リスクの高い利用者を常に職員のそばに座らせる、利用者が一人で歩行させないようにする、目の届かない夜間はベッドから降りられないようにするなど、しばしば利用者の行動を制限してしまいがちです。職員においても「事故を起こさない」という意識が過度に働くと職員の管理下に利用者を置くような状態になる場合もあります。介護職の仕事は利用者の安全を守ることも当然ながら、最も大切なことは利用者の尊厳を守り、自立支援を図ることです。

行動が制限され、管理下に置かれた利用者ばかりになっては、利用者にとってはそこは居心地の悪い場所になり、かえって活気のない施設になってしまうことでしょう。

介護事故は防ぐべきではありますが、すべてを防ぐことは困難で、過度に防ごうとすると利用者を抑制してしまうことに注意が必要です。

「防ぐべき介護事故の防止」が重要

では利用者の尊厳を守りながら介護事故を防止していくにはどのような手立てが必要でしょうか。まず介護事故をただ介護事故として見るのではなく、「防ぐべき事故」と「防げない事故」に分類することが重要です。

「防げない事故」については利用者の心身の状態の急な変化により起こり得る転倒事故などが挙げられます。私たちが普段通り慣れた道でもつまずくことがあるように、利用者も歩行が自立しているにも関わらず何らかの要因で転倒しそうになることや転倒してしまうことは考えられます。こうした事故は防ごうとしてしまうと必ず利用者の転倒前の生活状態を抑制することになってしまいます。

対して「防ぐべき事故」とは、そこに明らかなリスクを含んでいる状態であることがほとんどです。例えば転倒リスクのある利用者のトイレ誘導を行い、トイレに座っている最中に職員がその場を離れて他の方の食事介助をした場合、トイレに座っている方は自分で立ち上がり転倒するかもしれませんし、食事介助をしている方の嚥下状態をしっかり観察できず誤嚥してしまうかもしれません。これらの事故はサービスを提供する中での利用者の安全確保を怠ったといえます。このような場合の介護事故は最大限再発防止に努め、ゼロにすることが重要です。そのほかにも物品の位置や居室環境などが事故のリスクに繋がることもあり、これらが事故に繋がった場合、事故に繋がりそうだった場合は「防ぐべき事故」として対策にあたる必要があります。

防ぐべき事故の防止のために必要な管理者のマネジメントとは

介護事業所の責任者である管理者は、介護事故を予防していくために必要なマネジメントを図っていくことが求められます。介護事業所の介護事故を防いでいくためには管理者はどのようにマネジメントしていくとよいでしょうか。

まずは起こった事故やヒヤリハットについて、しっかりと「防ぐべき事故」と「防げない事故」と区分けすることが重要です。この区分けは管理者が必ず行うべきものではなく現場の介護職員が行えばよいのですが、管理者は区分けすることをしっかりルールとして明示したうえで介護職員が正しく事故内容を見極めることができるよう介護記録を適宜残しておくことが必要です。また相談、情報共有できる環境をつくることも重要です。介護職員はしっかりと介護記録が残っていれば皆で情報共有を図ることで事故分析を正しく行えるようになり、正しい原因究明にも繋がります。正しい原因が分かればそれが「防ぐべき事故」なのか「防げない事故」なのかを見極めて区分けすることができます。

そして区分けされた事故内容に応じた対策を皆で考え実践していくことで防ぐべき事故を防げる環境がつくられていきます。

また事故防止策には「未然防止策」「直前防止策」「損害軽減策」の3点があるといわれており、事故原因の区分けによってそれぞれ対策を講じていくことが必要です。

・未然防止策

未然防止策は事故を未然に防ぐための策で「防ぐべき事故」全般がこれにあたります。自己分析の結果、職員が確認を怠った結果発生した事故や利用者にとって骨折や死亡リスクなど、著しくリスクの高い事故は分析した原因の除去に努める必要があります。場合によっては環境の整備や業務の流れの見直し、利用者へのケアのあり方や服薬の見直し、介護職員の研修などを適宜行う必要もあります。「防ぐべき事故」を防いでいくためには最も重要な対策です。

・直前防止策

直前防止策は事故が起こるリスクにその場で対応しようというもので、先述した「転倒リスクの高い利用者を職員の目の届くところに座ってもらう」などがこれにあたります。基本的に直前防止策は事故を無くしていくには有効とはいえません。利用者を見守らなくてはならない環境を維持し続けることは困難です。直前防止策として対策を取っておくべきことは、あらゆる不測の事態に備えてすぐに対応できるよう観察力や技術を高めておくことといえます。事故のリスクが不透明な方の急なトラブルにすぐに気付ける、すぐに対応できるといった瞬発力を養うために勉強会や研修、OJTを重ねておくことなどが対策となります。

また一日の中で変動が大きい介護現場で不測の事態に備えておくために、管理者は常日頃からの職員の情報共有がしっかり図ることができるよう必要な働きかけが求められます。

・損害軽減策

損害軽減策とは、事故が起こってしまった際にそのダメージを最大限軽くできるようにする取り組みのことです。例として、ベッドから転落した際の衝撃を和らげるために柔らかい素材の床材を敷くなどで事故が起こったとしてもケガをしないようにする、もしくは軽減させることができます。事故を予防するための取り組みとしては未然防止策が最も効果がありますが、事故原因がはっきりと分析できなかった場合などには事故のリスクは依然として残ってしまいます。損害軽減策はいわばそのような「防げない事故」「起こり得る事故」に備えておくものです。ベッドからの転落や立ち上がり時の転倒に備えて衝撃吸収マットやカーペットを敷くなど介護事業所全体の設備などの工夫で行うものと、認知症の方が離設してしまっても気付くことのできるセンサーチップを衣類につける、転倒すると骨折するリスクのある利用者にヒッププロテクターを装着してもらうなど、利用者の身体状態や考えられる事故リスクによって個別に工夫するものとがあります。


これら3つの策をバランス良く組み合わせていくことで防ぐべき事故を最大限予防し、突発的に起こる事故に対応できる技術と防げない事故の損害軽減を図ることができます。


ほかにも利用者が安全に生活できるよう歩きやすい靴や動きやすい服などを用意することも有効です。そのために管理者は家族に事故のリスクをしっかりと説明したうえで協力を仰ぐことが必要になります。利用者の事故リスクを客観的に家族に説明することで歩行器や4点杖、履きやすい靴などの福祉用具を活用することを提案してみるのもよいでしょう。

防ぐべき介護事故の防止にICTを活用しよう

事故を防いでいくためには防ぐべき事故、防げない事故をしっかり区分けし、未然防止策、直前防止策、損害軽減策をバランスよく組み合わせることが必要ですが、最も必要になることは利用者の観察結果を正しく記録に残す環境づくりと職員間の情報共有の効率化です。ほかにも、利用者の行動を制限しないように利用者の安全を確保するためにはベッドセンサーの活用など、ICTを活用した業務の効率化が大変有効です。

NDソフトウェアの「Care Palette(ケアパレット)」は音声入力を標準装備した介護記録ソフトで、タブレットを活用して『簡単にその場』で記録業務を行うことができます。また、写真や動画を記録として残すこともでき、事故発生時の原因分析にも役立てることができます。

また「ほのぼのTALK++」はスマートフォンを用いたデジタルインカムで、離れた場所にいる職員でも文字と音声で簡単にやり取りを行うことができます。利用者の状態の報告や情報共有などを効率的に行うことにより、事故のリスクを軽減することができます。通話には首にかけるタイプのネックスピーカーもご用意しておりますので、両手を塞ぐことなく会話することができます。

介護事故の防止には、ICT機器を併用して取り組むことが有効です。ぜひご相談ください。

まとめ

介護現場で発生する介護事故は発生をゼロにすることは非常に困難です。事故を防ぐためには「防ぐべき事故」と「防げない事故」を明確に区分けする必要があります。防ぐべき事故を明確にするためには介護職員が正しく記録を取り、皆で情報共有を図りながら分析していくことが重要です。また、防げない事故についても損害軽減策としてケガをしないようにする、もしくは事故のダメージを最大限軽減することが有効です。事業所全体の取り組みと、ICTを有効に活用した事故予防策の取り組みを併用して事故のリスクを最大限減らしていきましょう。

当コラムは、掲載当時の情報です。

参考URL: トラブルに学ぶリスク対策  

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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