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介護食にはどんな種類がある?介護食に関する資格についても解説

2021/09/16

食事は体に必要な栄養素を摂取し健康を維持するのはもちろんのこと、おいしく食べることで生活の中に楽しみを見出すとても重要な行為です。それと同時に身体機能が低下した高齢者や障害を持つ方は食事を摂取する際にムセや誤嚥、窒息を起こすおそれがあるなど注意が必要な行為でもあります。そのような方が安全にかつおいしく食事を摂取できるように介護食という要介護者に適した食事があります。現在介護食は食べやすさと味のおいしさを同時に追求したものが多く出ており、「ユニバーサルフードデザイン」や「スマイルケア食」といった市販されている介護食の区分を分かりやすく表記する工夫もされています。また、食事に不安のある方に合った食事を提案、提供し健康や食の楽しみを支えるための介護食に関する資格も色々なものがあります。
今回は高齢者や障害を持つ方の食の楽しみと栄養摂取を支える介護食と、介護の食に関する資格について解説します。

高齢や障害により噛む力、飲み込む力が衰えやすくなる

私たちは食事の際、食物を口の中で噛み砕く「咀嚼」(そしゃく)、噛み砕いたものを飲み込む「嚥下」(えんげ)という動きをしています。これらは噛むための筋肉や飲み込むための全身運動が必要な行為です。

高齢や障害による筋力低下や関節の拘縮、マヒや感覚鈍麻といった身体機能の低下は、咀嚼や嚥下機能が衰えやすくなり、食事がスムーズに行えない状態に陥りやすくなります。食事摂取が困難になってしまうと栄養が良好に摂取できず、さらに機能低下を起こし要介護度の重度化、寝たきり状態などを招いてしまうおそれがあります。

介護食とは?

介護食とは、高齢による身体機能の低下や障害による機能低下などで安全に食事を摂取することが困難な方のための食事です。

食事は体に必要な栄養素を摂取することで身体機能や健康の維持、向上を図ることができるほか、1日3食おいしく食事を摂ることで生活に楽しみを持つことができます。

 

食べる動作には以下の5つの段階があります。

 

① 食べ物と認識し、食べようかどうかを判断する「先行期」
② 口に入れた食べ物を噛み、味を感じるとともに唾液と混ぜながら飲み込める形にする「準備期」
③ 噛むことでできあがった食塊(しょっかい)を飲み込むために喉の奥へ送り込む「口腔期」
④ 飲み込む動作で気道への道を塞ぎ、食道への道を開け、食べ物を飲み込んでいく「咽頭期」
⑤ 食道の蠕動運動により食塊を胃へ送り込んでいく「食道期」

 

これらが正常に機能することで安全に食事を摂取することができるのですが、高齢による機能低下や疾病による障害などでこれらの動作に支障が出ると、安全に食事を摂取するのが困難になってしまうのです。

 

食べ物を噛み、食塊を形成する段階である準備期では、唾液の分泌量が低下しやすい高齢者は飲み込みやすい食塊の形成が困難になる場合があります。また、噛み砕く筋力が低下することや歯がなくなってしまったことなどで食塊の形成自体が困難になるおそれもあります。さらに飲み込む力が低下することにより食べ物が気道に流れ込んでしまう「誤嚥」や食道で詰まってしまう「窒息」を起こすおそれもあります。

これらは誤嚥性肺炎や呼吸困難を起こし最悪の場合死に至ることもある非常に危険な状態です。

 

このように食事を摂る行為自体に注意が必要な方々が安全に食事を摂れるよう状態に合わせて噛みやすい、飲み込みやすい形状に配慮した食事が「介護食」なのです。

介護食は食事に不安のある方々が食事を楽しめるよう様々な工夫を凝らしています。

介護食の種類

では、食べやすさに配慮された介護食とはどのような種類があるのかを見てみましょう。

・きざみ食

食べ物をあまり噛まなくてもいいように細かく刻まれた形状になっています。ひとつひとつが小さくなっていますのであまり大きく口を開けられない人でも食べやすいです。

しかし、唾液の分泌量が低下している方は食材によって食塊の形成が困難になるおそれもあります。そのような方には「トロミ」を調整して提供されることもあります。

・ソフト食

軟菜食と呼ばれることもあります。食材をよく煮込む、茹でる等で柔らかく調理されたもので、目安としては舌で潰せる程度です。歯がない状態でも歯茎で噛めるため噛む力が低下している方に適しているのはもちろん、飲み込むための食塊も形成しやすくなっており飲み込むことに不安がある方でも安心です。

・ミキサー食

食事をミキサーで撹拌し、ポタージュ状にしたものです。噛む必要がほぼなく、食塊に近い状態がすでに形成されていますので口腔機能が低下している方でも安全に食事摂取が可能となります。

欠点としては、撹拌してしまうのでドロッとした見た目になってしまい、食事への意欲が湧きにくい場合があることです。また、食材によっては撹拌することで水気が多くサラサラとしてしまうため誤嚥を起こしやすくなる場合もあります。その際は「トロミ」を調整して提供されることもあります。

・ゼリー食/ムース食

ムース食、プリン食などとも呼ばれます。ミキサー食同様に撹拌するのですが、ポタージュ状ではなくゼリーのようなペースト状で提供されます。販売されているゼリー食の介護食では、ペースト状の食材を、見た目は通常の食事と変わらないよう形成しているものもあり、噛む力、飲み込む力が低下している人でも目で食事を楽しめます。

 

これらの介護食を利用者に合わせて調理していくのですが、利用者それぞれに合わせて個別に調理していくことは手間もかかってしまうため規模や人数によっては容易ではない場合があります。そこで介護食を製造、販売している企業の商品を食事として提供する介護事業所も多く、手間が省けて栄養バランスも考えられていて用いやすいため食事摂取困難な方へ提供される食事として高いニーズがあります。

しかし、介護食を製造、販売する各社は独自の基準、規格がほとんどですので利用側はその方に合った商品であるのかの判別が困難だという問題もありました。

 

そこで今共通規格として表記を統一し、分かりやすくしようとするものが「ユニバーサルデザインフード」と「スマイルケア食」です。

ユニバーサルデザインフードとは?

ユニバーサルフードデザインとは高齢者や障害のある方だけでなく、歯の治療中の方や普段の食事など、できるだけ多くの人が利用できるように考案された統一規格です。日本介護食品協議会に加盟した製造会社がこの規格に基づき製造を行うため、表記のバラつきがありません。

 

表記は4区分に分かれており

 

・容易に噛める
・歯ぐきでつぶせる
・舌でつぶせる
・かまなくてもよい

 

以上4区分のほか、とろみを調整し飲み込みやすくした「とろみ調整食品」があります。

食事摂取の能力に合わせてユニバーサルフードデザイン表記がされた商品を選ぶことで安心して介護食を楽しむことができますね。

スマイルケア食とは?

スマイルケア食とは、介護食の市場拡大や健康寿命の増進を目的にこれまでの介護食品の範囲を整理し、新たな枠組みを作ろうと農林水産省が提案したものです。

スマイルケア食は

・青マーク

噛むこと・飲み込むことに問題はないものの、健康維持上栄養補給を必要とする方向けの食品

・黄マーク(5~2)

噛むことに問題がある方向けの食品
5)容易にかめる食品
4)歯ぐきでつぶせる食品
3)舌でつぶせる食品
2)かまなくてよい食品

・赤マーク(2~0)

飲み込むことに問題がある方向けの食品
2)少しそしゃく(噛んで)して飲み込める性状のもの
1)口の中で少しつぶして飲み込める性状のもの
0)そのまま飲み込める性状のもの

 

以上3つのスマイルケア食識別マークに分けられており、さらに黄マークと赤マークにそれぞれ区分を設け状態に合った介護食を選びやすくしています。

 

まだ取り組みが始まったばかりですのでスマイルケア食に適合した商品は多くはありませんが、これから増えてくるかもしれませんね。

 

介護食に関する資格とは

食事摂取に不安のある方々が安心して食事ができ、なおかつ栄養バランスなどに配慮したおいしい食事を提供できる者として、介護の食には国家資格から民間資格まで様々な資格が存在します。取得の難度に差がありますので自身の目的に合った資格の取得を目指すとよいでしょう。

管理栄養士

管理栄養士は厚生労働大臣の免許を受けた国家資格で、高齢や疾病、障害などにより食事が摂取しにくい方など、個別に合わせて専門的な知識と技術を持って栄養指導や給食管理、栄養管理を行う、食のスペシャリストといえます。

取得には管理栄養士の養成校を卒業し国家試験に合格するルートと、栄養士を取得し現場経験を経てから管理栄養士の国家試験に合格するルートがあります。

誰にも必要な「食」を専門に扱いますので介護の現場以外にも病院、学校、自治体、研究機関など活躍の場が非常に広いのが強みです。

介護食士

介護食士は内閣総理大臣が許可した公益社団法人全国調理職業訓練協会によって認定される民間資格で、介護食が必要な方々に合わせた調理技術や食事介助の技術を専門に学ぶことができます。1級から3級までの資格があり、それぞれの目的に合わせた取得が可能です。

取得するには調理訓練校や調理師学校など調理関係の学校で講義と実習の講習を受けることで取得できます。

1級となると栄養状態の判定や、低栄養を考慮した献立作成、食品と薬の関係などの講義の他、身体機能の低下や疾病等の障害を持つ方を想定した献立を作成して調理する技術を習得できるため介護食が必要な方々の「食べること」を支える専門職といえるでしょう。

介護食アドバイザー

介護食アドバイザーは一般財団法人日本能力開発推進協会が実施する認定講座を受講し、試験に合格することで取得できる資格で、高齢者の心理、高齢期の病気や食生活といった高齢者の特徴から介護食、栄養学の基礎を持つ者として介護食が必要な高齢者に助言等を行うことで食を通じて生活の楽しみを見出すことを支援するスペシャリストといえます。

介護現場以外でも食品会社や飲食店などで働く方のプラスアルファとして役立てることも期待できますね。

受講から試験はすべてオンラインで行えるのは大きな強みです。

介護食コーディネーター

介護食コーディネーターはユーキャンの通信講座で学び、一般社団法人日本味育協会が認定する民間資格です。高齢者のための食べやすくおいしい介護食の作り方を学ぶことができます。通信講座を受けることで取得できますので介護食士や介護食アドバイザーに比べ取得が容易であることが特徴です。

介護食の作り方を学びたい、介護食に関するレパートリーを増やしたい方にはうってつけの資格といえますね。

介護食コンサルタント

介護食コンサルタントはオンライン講座を受けることで取得でき、介護食アドバイザーと同じく一般財団法人日本能力開発推進協会が認定を行う資格です。介護食の基本から正しい食事の摂り方といった幅広い知識を学ぶことにより介護食を実践する力を得ることができます。介護食コーディネーターと同じく取得が比較的容易ですので、基礎を学んでみたいという方におすすめですね。

まとめ

食事は人間が生きていくうえで必要不可欠なものであり、また人と人とを繋ぐコミュニケーションツールとしても活用されるほか生活の中に楽しみを見出すこともできる大変重要な行為です。一方で心身機能が低下しやすい高齢者や疾病などによる障害を持つ方にとって食事は誤嚥、窒息など命に関わりかねない行為でもあり、食事を提供する際は食べやすい、飲み込みやすい形状に配慮した「介護食」が必要となります。

介護食は市販されているものは表記を分かりやすく統一するなど、利用者に適した介護食を選びやすくするなどの工夫がされ、介護食に関わる資格も様々なものがあります。食事という大切な行為を通じて安全と健康、人生への楽しみを支えていくことへのニーズの高さが伺えます。

介護食が必要な方へ最適な介護食を提供し、口から食べて味わう楽しみをいつまでも支えていけることが重要ですね。

当コラムは、掲載当時の情報です。

参考URL

テーマパーク8020 お口の仕組みと働き 健康長寿ネット 摂食・嚥下障害とは 日本介護食品協議会 わかるユニバーサルフードデザイン

農林水産省 スマイルケア食(新しい介護食品) 公益社団法人 日本栄養士会 公益社団法人 全国調理職業訓練協会 介護食士とは 一般財団法人 日本能力開発推進協会 介護食アドバイザー 介護食コーディネーター講座 介護食コンサルタント資格取得講座

 

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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