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令和6年から義務化される訪問看護のオンライン請求について

2023/02/24

2021年3月に開始され、2023年4月から原則義務化となる医療機関で導入されている『オンライン資格確認』は、医療DXに大きな期待が寄せられています。一方で介護保険サービスと医療サービス両方の側面を持つ訪問看護でも令和6年度からレセプトの『オンライン請求』が開始され、合わせてオンライン資格確認も利用可能となる予定です。訪問看護事業所のオンライン請求が始まると現場のレセプト業務がどう変わるのか、オンライン請求に対応するための準備には何が必要なのか。オンライン資格確認と合わせて解説します。

医療機関で運用が開始されている『オンライン資格確認』とは

現在導入が開始されている医療機関の『オンライン資格確認』とは、患者が加入している医療保険の資格を確認する作業を、オンラインで行えるようにしたものです。オンライン資格確認に用いるのは『マイナンバーカード』です。政府のデジタル化推進の施策として健康保険証を廃止し、マイナンバーカードを健康保険証と紐づけ一本化すると決定したことは記憶に新しいでしょう。

オンライン資格確認は、健康保険証と紐づけされたマイナンバーカードを専用の端子で読み取ることで、手作業で行っていた資格確認を簡単に行えるようになる取り組みであり、2023年4月からオンライン資格確認の設置は原則義務化となる予定です。今現在も4月の義務化に向けて導入が進められています。

オンライン資格確認を義務化することには、以下のメリットがあるとしています。

窓口業務の削減

資格確認は以前まで患者が持参した健康保険証や高額療養費制度の適用区分を表す証である限度額適用認定証等の必要な情報を人の目で確認し手作業で入力、記録を行っていました。しかし保険証や認定証を忘れたことにより保険診療が可能かの確認が取れない、手作業のため情報の入力を間違えてしまい返戻になる等の手間が発生していました。
オンライン資格確認を導入すると、マイナンバーカードさえあれば保険証や認定証等を複数持ち歩くこともないので患者側の手間も減らすことができます。また資格についてオンラインで即座に確認、記録ができるため事務負担の軽減や情報の過誤による返戻も軽減できると期待されています。

医療の質の向上が期待できる

従来のシステムでは患者がどのような治療を受けているかなどの診療情報は医療機関ごとに管理し、他の医療機関や薬局とは情報共有が不十分でした。複数の医療機関を受診する患者の場合、薬剤の重複や診療情報、特定検診の情報が確認できず効果的な医療サービスに繋げにくい側面もありました。
オンライン資格確認では医療機関や薬局の利用情報はすべてマイナンバーカードに記録されており、患者の同意があれば医療機関はその情報を閲覧できます。
同意には患者自身が専用端末で顔認証し、暗証番号を入力。情報を開示することへの同意を選択するという作業が必要になりますが、医療サービス側としては複数の医療機関の受診結果や診療情報、複数の薬局で処方されている薬剤の確認が行えるようになり、効果的な医療の提供に大きく資することが期待できます。

このように、オンライン資格確認は従来の医療機関の業務をデジタル化することで患者、事業者側双方にメリットを生むことができ質の向上や利便性の向上を図ることができるのです。

令和6年より原則義務化される訪問看護の『オンライン請求』とは

2023年4月より原則義務化される医療機関のオンライン資格確認ですが、訪問看護サービスにおいては現在対象外となっています。

訪問看護サービスはやや特殊なサービスで、医師に訪問看護の必要があると指示を受けた場合は医療保険、日常的な療養に必要なケアの場合は介護保険と、ふたつの保険からサービスを提供することができます。つまり訪問看護事業所はひとつでも、提供したサービスの報酬請求をするレセプトは医療保険と介護保険両方を明確に分けて請求する必要があるのです。そのため訪問看護の請求作業は非常に煩雑になりやすいといえます。

その訪問看護では、令和6年5月から『オンライン請求』の原則義務化が予定されています。

医療保険分の訪問看護の報酬請求であるレセプトは年々訪問看護の利用件数は増加し続けていたにも関わらず基本的に紙ベースでした。レセプトの作成そのものは作成ソフトの利用やパソコンのエクセル等で行っても、それらを印刷し紙で提出、管理することが必要だったのです。介護保険の報酬請求はほぼオンラインでできるのに対し非常にアナログなシステムだといえますが、この請求に関わる業務を原則としてオンラインで行う予定がされています。またそれに合わせ令和6年4月には訪問看護でも医療機関と同様にオンライン資格確認を行うことが可能となる計画で調整が進んでいます。

従来のレセプトとの違い

訪問看護がオンライン請求になると、従来のレセプトとは何が変わるのでしょうか。まずは先述の通り紙ベースであった請求業務がすべてオンラインで行えることが最も大きな違いです。これによりレセプト業務の大幅な時間短縮を図ることが可能となる期待が大きく持てます。

またオンライン資格確認も同時に行えるようになることで、訪問看護でも必要であった資格情報の確認が簡単になり、資格過誤からの返戻が減少することが期待できます。さらにオンラインが原則となると発送して郵送、支払基金・国保連合会への到着の時間がかからなくなりますので、その分レセプト請求の受付時間が長くなることが予定されています。
ほかには紙ベースで印刷する手順がなくなることで印刷コストや書類を紙で保管する場所が不要になることも従来のレセプトとの大きな違いといえます。
さらにこれまでは都道府県ごとに様式が異なっていましたが、統一されることも大きな違いとなります。ただし、難病の方や生活困窮者等を対象とした公費医療負担制度の自己負担割合については引き続き都道府県ごととなりますので注意が必要です。

オンライン請求の準備に必要なこと

令和6年5月から原則義務化が予定されている訪問看護のオンライン請求およびオンライン資格確認に対応するためには、訪問看護事業所が準備しておかなくてはいけないことが複数あります。

現在の訪問看護事業所の環境により準備に必要な部分は異なりますので、厚生労働省が想定する開始までのスケジュールを元に確認してみましょう。

2023年4月頃まで

訪問看護のオンライン請求に向けて、システムベンダーとの調整や相談を行っておきましょう。今現在レセプトをすべて自分たちで行っている事業所は、オンライン請求に対応するシステムを提供できるベンダーをどこにするかを検討する必要があります。気になるところに積極的に相談してみましょう。今現在すでにベンダーのシステムを用いてレセプト作成をしている事業所については、そのベンダーがオンライン請求に対応する予定があるのか、どのような流れで対応予定なのか等の調整をする段階です。もしも対応予定がない場合は、システムベンダーを変更することが必要となります。

2023年8月頃まで

レセプト作成用端末、オンライン請求用端末の用意に向けて準備を進めます。現在レセプト作成をパソコンのエクセル等で行っている事業所は新たにレセプト用端末を用意する必要はありませんが、オンライン請求用の端末を新たに用意する必要があります。またパソコンはあるが医療保険用のレセプトは手書きで作成している場合はレセプトを作成することができるシステムの用意が必要です。どちらの場合でもオンライン請求に対応するための用意としてオンライン請求用の端末を用意することが大切です。
というのも、オンライン請求に必要なインターネット環境はセキュリティの高い「IP-VPN方式」か「IPsec+IKE方式」が必要であり、必要に応じて介護保険の請求に使用しているパソコン等の端末とは別の端末を用意する必要がある、ネットワーク回線を新規契約する必要がある等環境によって対応が大きく異なります。導入している、または導入を予定しているベンダーとの相談が非常に重要です。回線を新規契約する際は敷設工事も必要になるかと思いますので、この段階で準備を進めておくことが望ましいでしょう。

2024年2月頃まで

訪問看護事業者では、請求に向けて必要な届出等の事務作業、オンライン請求運用に向けたマニュアルの作成、業務フローの見直しを行っていきます。
オンライン請求を開始するには、セキュリティ対策として「オンライン請求システムに係る安全対策の規程」や「オンライン資格確認等システム及びレセプトのオンライン請求システムに係る安全対策の規程」の策定が必要です。厚生労働省が規程例を示していますので、参考にするか、やはりベンダーに相談するのがよいでしょう。
また必要な届出として「オンライン請求システム利用規約」への同意、「電子情報処理組織の使用による費用の請求に関する届出」、電子証明書の発行のために「電子証明書発行依頼書」の提出が必要です。 ITに不慣れな方や行政への提出書類には不慣れな方も多くいらっしゃるでしょうから、オンライン請求に必要な手続きでしたらネットワーク業者やベンダーに相談するのが適切だと思います。
業務フローの見直しについては、オンライン請求が開始されると、従来行っていた業務の流れが大きく変わってくることが予想されます。事業所側で流れをシミュレートし、業務の見直しを行いましょう。

2024年5月まで

現在のスケジュールでは4月からオンライン資格確認は訪問看護でも運用が開始されている予定ですので、実務を通じて操作に慣れておくことも必要です。
恐らくこの段階ではオンライン請求のテストも行えると思いますので、実際に接続・運用の試運転をし、業務の流れを掴みます。策定した業務フローの流れとの相違点にも気付くでしょうから、都度修正して完成度を高めていくのが望ましいです。

スムーズに制度改正に対応できるよう計画的に準備を

オンライン請求およびオンライン資格確認に対応するためには非常に多くの準備が必要になることが分かりました。それと同時に、専用端末や請求用の端末、ネットワーク回線の用意等、一定の費用がかかることも分かりました。ベンダーとの契約も含めると決して安い金額ではありません。そこで現在、オンライン請求とオンライン資格確認を同時に開始できるよう準備した場合のネットワーク回線敷設費用や、オンライン資格確認用の端末を導入する場合の導入費は補助金の対象となるよう調整が進められています。必要な投資ですので効果的に補助を受けることができるよう今後の情報に注目しましょう。

まとめ

医療機関で2023年4月から原則義務化されるオンライン資格確認に続き、訪問看護の医療保険分についても2024年4月からオンライン資格確認、5月からレセプトのオンライン請求が開始する予定で、今までのアナログを積極的にデジタルに移行させようという流れは今後も強く推進されていくでしょう。スムーズに対応できるように計画的に準備に取り組み、事業所運営の安定化、質の向上に努めていきましょう。

当コラムは、掲載当時の情報です。

参考URL

医療保険請求分の訪問看護レセプト のオンライン請求が始まります

オンライン資格確認の導入で事務コストの削減とより良い医療の提供を

令和6年5月から医療保険請求分の訪問看護レセプトのオンライン請求が始まります

ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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