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NDソフトアスリートクラブ

異種アスリート対談

陸上×車いすバスケットボール

PROFILE

王子田 萌
1993年生まれ。NDソフトウェア関西ブロック所属。全日本インカレ2017優勝、東日本実業団陸上競技選手権大会2019優勝。日本陸上選手権2019、5位。
照井 明人
1994年生まれ。NDソフトウェア所属。東京国際大では箱根駅伝に3年時3区13位、関東学生連合で出場した4年時は10区1位相当。仙台国際ハーフマラソン6位入賞。ハーフマラソンの自己記録は1時間1分45秒。
湯浅 剛
1987年生まれ。NO EXCUSEチームキャプテン。2017年より2年連続で天皇杯準優勝を果たし、2018年には森谷選手とともに個人賞オールスター5を受賞。2019年日本車いすバスケットボール連盟男子強化指定選手。日本代表として第14回北九州チャンピオンズカップ国際車椅子バスケットボール大会、アジアドリームカップ2019 国際車いすバスケットボール大会に出場し、優勝。
森谷 幸生
1992年生まれ。NO EXCUSE所属。2017年より2年連続で天皇杯準優勝を果たし、2018年には湯浅選手とともに個人賞オールスター5を受賞。2019年日本車いすバスケットボール連盟男子強化指定選手。日本代表としてアジアドリームカップ2019 国際車いすバスケットボール大会に出場し、優勝。

エース照井選手と、チーム唯一の短距離走者の王子田選手が、他ジャンルのトップアスリートと対談! 今回は、車いすバスケットボールチーム「NO EXCUSE」に所属し、今年の日本車いすバスケットボール連盟男子強化指定選手として注目を浴びている湯浅剛選手と森谷幸生選手をゲストに迎えました。

アスリートとしてのやりがい、高いモチベーションの根底にあるもの、そしてオリンピック&パラリンピックへの想いなどについて語り合いました。

やりがいは「勝利」、そして「顔」?

アスリートとして、どんな時にやりがいを感じますか?

森谷
やっぱり試合に勝った時の喜びはすごく大きいです。車いすバスケはチームスポーツなので、全員が協力しないと勝てません。日頃の練習からずっと同じメンバーでやってきて、その努力が実った時は、本当にうれしいですね。
湯浅
僕もそうです。NO EXCUSEの目標に「日本一のチームワーク」というものを掲げているんです。自分だけが活躍しても、試合に負けたら全然うれしくないし、逆に自分が全然活躍しなくてもチームが勝ったらうれしいです。
王子田
そうなんですね。私はこれまでできなかったことができるようになり、その結果として良いタイムが出るとすごくうれしいです。試合で勝つことも、これまでやってきたことが結果につながったな、という喜びはありますね。
照井
僕は2種類あって、ひとつは勝ったとき。駅伝のチームでの勝利とか、個人競技で有名な選手に勝った時はやっぱりうれしいです。もうひとつは喜んでくれる「顔」です。家族や友人や、いろんな方々が応援してくれていて、自分が出した結果で喜んでくれる。その「顔」を見るのが、自分のやりがいになります。
森谷
「顔」、わかります。バスケはコートと客席がすごく近いんです。試合時は、40分間もその場でずっと応援してくれているんですね。最後挨拶をするのが通例なんですが、応援してくれた方々の顔を見ると僕ら以上に喜んでくれているんですよ。
湯浅
確かに。まあ、負けると地獄なんですけど。
一同
(笑)。

モチベーションの根底にあるもの

自分のモチベーションが下がることってありますか?

照井
ほぼほぼ、毎日上がらないですよ。毎日20キロとか走ってるなんて、正直バカみたいじゃないですか(笑)。でも、長距離の場合、駅伝を含めると一年間通して試合があるので、例えば1ヶ月休んでいる間に、ライバルが自分よりも良い記録を出したりする。陸上って、0.1秒で結果が出てしまう競技だから、やっぱり負けていられないと思うんですよね。もうひとつ、自分は親と仲良くて、毎日のように電話するんですが、「ケガをしてしまって走れない」とか言うと、すごく心配してくれるんです。家族 LINE ですぐに情報が回り、お父さん、お母さん、じいちゃん、ばあちゃんと、いろんなところからメールやLINEで連絡が来る(笑)。そうなると、やっぱり頑張りたいなって思うんですよね。実際に足で走っているのは自分だけだけど、自分含めみんなで走っているんです。つらいのは自分だけじゃない、という思いで、1日1日を過ごしています。
森谷
メンタルトレーニングの一環で、「自分の大義を知る」というのがあるんですよ。以前、大会期間中に足をケガしてしまい、しばらく歩けない状態になったことがありました。正直、引退もちらつきましたが、自分はなぜ車いすバスケを始めて、なぜこれまで続けてきて、何を目指しているのか、を振り返り、「(引退するのは)今じゃないな」って思ったんです。
王子田
森谷さんの大義ってなんですか?
森谷
僕、14歳の時に骨肉腫という病気になったんです。周りには同じ病気で亡くなってしまう子もいました。僕も、二回肺に転移して「やべ、死ぬ」と思ったんですが、その時にもっと自分のことを知ろうと思って『REAL』という漫画を読み始めたんです。骨肉腫の主人公が、車いすバスケを始める漫画なんですが、調べたら、主人公のモデルになった人がいるということがわかって。その人のブログを読んだときに、僕もまだやれるんだって思ったんです。それが、NO EXCUSEの創設者で、今は男子日本代表のヘッドコーチをしている及川晋平さんです。ただ当時、及川さんはすでに現役選手ではなかったので、おこがましい話ですけど、「今度は僕が、誰かにとってそういう存在になれたらいいな」って思ったんです。それが僕の大義です。
湯浅
僕も、大義としているものがあって、それは「恩返しをしたい」という気持ちです。家族だったり、いろんな人に迷惑かけてきたと思うんですけど、感謝の気持ちをプレイでお返ししたい。やっぱり、「なんで、車いすバスケやってるんだっけ?」と思ってしまうくらい、モチベーションが下がることもあります。でも結局、大義に戻ってくるんですよね。事故で下半身麻痺になった時に、家族とか周りの人がすごく支えてくれたんです。その時、「もし自分が日本代表の選手になったら、家族は僕を自慢できるだろう。日本代表になろう。その部分で恩返ししよう」と思ったんです。そこがモチベーションの根底にありますね。
照井
僕もモットーが恩返しなんです。
湯浅
そうなんですか。一緒ですね。あとは、もうひとつ。大会でいい結果を出す、という気持ちもモチベーションにつながっています。大会が終わると、練習したくないな、ちょっと休んで遊びに行こうかなという気持ちも尊重します。メリハリをつけるというか、自分をコントロールすることで、試合前にモチベーションを保っている、というのはありますね。
王子田
皆さんがいいこと言いすぎて恥ずかしいんですけど…。モチベーションはしょっちゅう下がります。私は長距離の選手と拠点が違うため、普段は出身大学で後輩と一緒に練習してるんですけど、モチベーションが下がった時は、とりあえず競技場に行く。
一同
わかる(笑)。
湯浅
それ、メンタルトレーニングでもありました。「行っちゃえば気持ちが変わる」みたいな 。
王子田
そうなんですよ。行けばみんな練習しているので、一人だけ座ってるわけにもいかないから(笑)。例え、最後までモチベーションが上がらず、その日あまり上手く走れなかったとしても、一緒に練習している子のタイムがすごく良かったりすると、あれ、自分何やってるんだろう、って思うんです。次は負けてられないな、って。その日がダメでも、行けば、次のモチベーションに変えていけるんですよね。だから、とりあえずその場に行く。雰囲気を味わって、頑張らなきゃって思うようにしています。

プレッシャーをどう処理する?

プレッシャーを感じるときってどんな時ですか?

森谷
大会前にプレッシャーを感じることはほぼないですね。やってきたことをやるだけです。
王子田
かっこいい…。
森谷
いや、プレッシャーを感じると、そのぶん緊張でうまくいかなくなるからです(笑)。「やることやってきたし。これでうまくいかないのなら、それが結果だし」と思うようにしています。
湯浅
僕も緊張するんですけど、「緊張と向き合う自分」をちょっとずつ作ってきていますね。なんで緊張するかって、たくさん練習してきたから良い結果を出したいし、それをいろんな人が望んでくれていて、その期待に応えたい自分がいるからですよね。もちろん、理由は人それぞれだと思いますが。これはセルフトークと言うのですが、「たくさんやってきたんだから、そりゃ緊張するよね、俺」って、自分と対話するんです。緊張をなくすことは不可能なので、緊張している自分をコントロールする。プレッシャーも一緒で、それをなくすのではなく、コントロールしていくんです。緊張している、プレッシャー感じている状態で、「その上で、今必要なのは何?」と自分に聞き、自分にアクションを起こしていく、という感じです。
王子田
すごく参考になります。私、多分、めっちゃメンタル弱いんですよ。今、湯浅さんがおっしゃっていたように、練習したから結果が欲しいという欲もあるし、自分自身に期待したいじゃないですか。調子が悪い時はあんまり緊張しないけど、調子がいい時ほど、失敗したくないっていう思いが出てきます。もちろん、いつも通りにやれば大体できるんですけど(笑)。ピアノの発表会のような、「うまくできますように」という、自分への期待も込めたプレッシャーです。
湯浅
なるほど。緊張って、消せないですよね。
照井
僕は緊張しないんですよね。大会とかでも楽しくなっちゃうんです。
森谷
そうなんですか(笑)。しんどい練習を乗り越えて大会を迎えるので、「大会、来てくれてありがとう」という気持ちはありますが、そういうことではなく、ですか?
照井
期待がプレッシャーにならないんです。例えば、ニューイヤー駅伝の予選だったら、「(周囲の期待に対して)もっと期待してくれ! ニューイヤー連れてってやるから!」って思うんです。どんどん期待してほしい。その注目の中で1位を獲ったら、めっちゃかっこいいじゃん、俺! と思うので、結果として「じゃあ、頑張ろうかな」につながるんです。多分バカだからっていうのもあると思います。
一同
(笑)。
照井
期待をプレッシャーに感じず、楽しむっていうスタイルですね。例え、それまで調子が悪くても、負けることなどは考えず、良いことだけを考えます。でも、それって陸上だからですかね。やっぱりチームスポーツはそうもいかない気がします。「パスしたい人にいいパスできなかったらどうしよう」とか「ここでシュート決めておけば勝てたのに」とか考えちゃう。他人が絡むと緊張しますね。
湯浅
なるほど。競技特性はあるのかもしれないですね。おもしろいです。

「あの熱気を中心で感じたい」…オリンピック&パラリンピックへの熱い想い

最後に、オリンピック&パラリンピックへの想いをお聞かせください。

森谷
2020年に東京パラリンピックが決まり、ものすごく応援されているという実感が日に日に増しています。その応援に応えたいという気持ちももちろんありますし、世界最高峰の舞台に立つことができるって、どれだけ素晴らしいんだろう、とイメージするだけでも楽しいんです。もちろん、それと同じくらい出場できなかったら…という大きな不安はあるんですけど、その不安を差し引いても憧れる舞台なんです。僕、リオデジャネイロパラリンピックを観に行ったんですが、ものすごい会場の熱気を肌で感じました。あれが東京で起きて、その中に僕がいたら…って思うと…。そのモチベーションでいま頑張れている部分はありますね。あの時に感じた熱気を、今度は僕が中心で感じられたら最高です。
湯浅
僕も森谷と一緒にリオへ観に行ったんです。初めてのパラリンピックだったんですが、すごい人がいて、すごい声が出ていて、すごい熱気で。やっぱりあのコートの中に自分がいたらって、考えるだけでもワクワクします。あそこで自分がプレイしてる姿に向かって練習していますね。でも、何より1番は、本当に本当に、誰も感じたことがないくらいの楽しい時間なんだろうなって思うんです。
一同
(大いに頷く)
湯浅
車いすバスケの強化指定選手は24人いて、幸いにも僕と森谷はそこに入っています。来年度の選考もあるはずですが、おそらくこの中から日本代表として12人が選ばれる可能性が高く、NOチャンスの人がほとんどの中で、チャンスをもらえている。不安もありますが、「楽しいんだろうな」っていう気持ちの方がはるかに大きいです。
王子田
本当に。スポーツをやっていたら、誰もが注目して、憧れる場所ですよね。陸上の場合は、出場するために必要なタイムがあるのですが、いま400Mハードルの標準記録は日本記録を更新するぐらいの勢いがないと切れないタイムになっています。来年、そこを目指していく。オリンピックに立てたら、陸上をやってきて一番うれしい瞬間になるんじゃないかな。行きたい、と思っています。
照井
オリンピックで戦える可能性があるとすればマラソンしかないと思っています。苦しくなってから我慢をして、後半もペースを落とさずに走れるのが自分の強みなので、マラソンの30km以降で勝負できると考えているからです。大学時代、箱根駅伝の区間を選べる時に、あえて長い距離を走る10区を選びました。当時から、「箱根での経験を活かし、東京オリンピックのマラソンで戦う」というプランを描いていたんです。東京オリンピックの選考にはMGC出場権が絶対条件なので、残念ながらマラソンでの出場はなくなりましたが、その先のパリオリンピックには何としても出場したいです。マラソンは苦しい時間が続きますが、2時間ちょっと走るわけじゃないですか。仮に100 M だったら9秒とか10秒とかの話です。それを、世界のオリンピックで2時間も走れるなんて…。
一同
(笑)。
照井
だって、バスケも40分とかですよね?
湯浅
(笑)。まあ、でもその基準で言うと、バスケは6~8試合ぐらいありますから、合計タイム的にはなかなかあります(笑)。
照井
そうか! たしかに、合計タイムは…、楽しいですね(笑)。
湯浅
楽しいですね(笑)。

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