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子育てと介護を同時に行う「ダブルケア」が「老々介護」になるケースも。乗り越えるためのポイントとは

2021/12/27

近年、女性の社会進出や晩婚化に伴い子育てと介護が同時に必要となるダブルケアが増加傾向にあります。さらには少子高齢化による家族介護の担い手不足等の影響から老々介護になるケースも決して珍しくありません。日本全体で増加するダブルケアについての問題や悩みは、どのように解決するべきでしょうか。行政や自治体の取り組みなども交えながら解説します。

ダブルケアとは

ダブルケアとは子育て中の世帯がそれに加え親、義理の親等の介護も担うことをいいます。内閣府が平成28年3月に行った調査では日本全体で男性85,400人、女性167,500人の計253,000人ほどの方がダブルケアを行っていると推定されています。

年齢別にみると40~44歳が最多で27.1%、次いで35~39歳の25.8%、30~34歳の16.4%、45~49歳の12.5%と、30 歳~40 歳代で全年齢層の約8割を占め、平均年齢は39.7歳となっています。

ダブルケア増加の背景

近年ダブルケアが増加している背景には「少子高齢化」「女性の社会進出に伴う晩婚化」が考えられます。

現在の日本の世帯は夫婦とその子どものみの世帯である核家族が最も多く、さらに世帯あたりの子どもの数は2人以下が多くなっています。それに加え平均寿命は年々延伸を続けており、少子高齢化が顕著になっています。

さらに女性の社会進出が推進されたことにより晩婚化が進み、2018年の調査では初産の平均年齢が30.7歳となっています。

平均寿命が延びることは喜ばしいことではありますが、同時に介護リスクが高まることにも繋がります。少子化が進み家族介護の担い手が不足しがちな現状において、さらに晩婚化の影響で子育ての時期と重なってしまうことが、近年ダブルケアが増加している背景といえるでしょう。

ダブルケアがそのまま老々介護に突入するケースも

近年の晩婚化により子育て開始年齢が高くなると、ダブルケアだけではなくいわゆる「老々介護」に突入するケースが考えられます。

初産の年齢を平均的な約30歳とした場合子育ての終了にはおおよそ20年前後を要しますので子育てが終了した時点で約50歳前後となります。子育て開始年齢が遅くなるにつれひと段落する年齢も同時に遅くなりますので場合によっては60歳前後となる場合もあるでしょう。親の年齢次第では介護が必要な状態になる可能性が高くなる時期といえます。

子育てにはある程度ひと段落する予測は立てやすいともいえますが、介護に関してははっきりとした予測を立てることは非常に困難です。子育て中に介護が必要になるダブルケアの状態にならなかったとしても、子育てが落ち着いて間髪入れずに介護が必要になることは十分に考えられます。年齢と共に心身の状態が衰えることは避けようがありません。近年の晩婚化に伴うダブルケアのリスクも同様に避けられないものであるといえます。

ダブルケアや老々介護の問題点

今後も高まると見られるダブルケアや老々介護の問題点は、担い手の心身負担の大きさが最大の問題といえます。昨今の少子化の影響により介護が必要になった親を介護する子の数も減少傾向にあります。一人っ子の場合は親に介護が必要になった場合担い手は1人しかいません。配偶者と共に介護にあたることもできますが、配偶者の親も同様に介護が必要になる、いわゆる「多重介護」に陥ることも考えられます。担い手が少ない中で子育てをするだけでなく介護を継続していくことは、心身の負担が大変に大きいものといえるでしょう。

さらにダブルケアの問題として就労への不安が挙げられます。子育てと介護を同時に担うとなると、仕事を続けながらでは時間の確保が非常に困難になります。結果、離職を余儀なくされる場合も考えられます。また転職をするとしても働ける時間が限られてくるため正規雇用で働くことは困難な場合も出てくるでしょう。

また子育てと介護に追われてしまうことにより自分の時間が持てない、近所付き合いができないなどで社会から孤立してしまうこともあります。周囲に相談できない環境に自信を追いやってしまうことは、自身の心身の負担も大幅に増してしまいます。結果ノイローゼやうつといった精神疾患を患ってしまうことも考えられます。

子育てがひと段落しても老々介護に突入してしまう場合は、やはり心身の負担が大きいことが問題点として挙げられます。少子化により介護の担い手が少ない現状では、家族の介護負担は非常に大きいものです。心身のバランスを崩しやすくなる50~60代ともなると、その影響は計り知れません。度重なる介護負担により心のバランスを崩してしまう、深刻な腰痛を抱えるなどのトラブルが起こりやすくなります。

ダブルケアや老々介護の問題はどこに相談すればよいか

ダブルケアの悩みを相談するにはどこへ相談するべきでしょうか。横浜市や堺市など一部の自治体ではダブルケア相談窓口を設けていますが、まだ全国的に広がっていくのはこれからというのが実情です。専用窓口がない場合、子育てと介護を分けて自治体の相談窓口に相談してみるのがよいでしょう。まず大切なのは行政とのかかわりを持つことです。相談窓口がないからといって誰にも相談できない状態を作ってしまうと、ますます孤立してしまい周囲からの支援の目も行き届かなくなるおそれがあります。就労に関してもハローワークでダブルケアである現状も踏まえ相談してみることが大切です。

また就労中にダブルケア状態になり離職を考える際は、離職の前にまずは勤務先に相談してみるのがよいでしょう。会社によってはフレックス制度や介護休暇、今の時代ですとテレワークなどの働き方といった現状に合った方法を提案してくれるかもしれません。 ダブルケアを理由に離職してしまった多くの方が再就職について悩みを持っておられます。近年は夫婦共働きの収入で家計を賄っている場合もあり、仕事を続ける必要がある方もいらっしゃると思われます。仕事を続けたいという希望を第一に勤務先と話し合えばよい方法が見つかるかもしれません。

ダブルケアの両立や老々介護支援のためのポイント

ダブルケアや老々介護は、なにより頑張りすぎないことが重要です。特に今の時代は家族で少子化により兄弟間等で役割分担が有効にできず家族ひとりにかかる介護負担が大きくなっているためです。そこに自身の子どものこととなってしまうと自分自身の心の余裕を無くしてしまうことでしょう。常に心身に余裕を持った状態を保つことが重要です。

そのためには周囲に相談できる環境を整えておくことが大切です。近隣の方や配偶者、親族といったインフォーマルだけでなく行政の窓口や居宅介護支援事業所などのフォーマルサービスといった機関に必要に応じて相談できるよう自身の周囲にどのようなサービスがあるかを調べておくとよいでしょう。

そして頑張りすぎないためには家族の力だけですべてやろうと考えず負担を軽減できる介護サービスを積極的に活用していくことも必要です。デイサービスや訪問介護といった在宅介護サービスやグループホームやサ高住などの入所系サービスも含め自身のダブルケア、老々介護の状況に適した方法を幅広く検討することが大切であり、それらの相談のためにもやはり行政やケアマネとの関係を持っておくことは重要です。

子育てに関しては行政の子育て支援の窓口、介護に関する相談は最寄りの地域包括支援センターや居宅介護支援事業所ですとケアマネージャーが在籍しているため有効な相談が可能です。また社会福祉協議会では地域により介護、子育てに関する相談を受け付けているところもありますのでお困りの際は問い合わせてみるとよいでしょう。

まとめ

ダブルケアが増加している背景に晩婚・晩産化が挙げられておりますが、それらは問題視されるべきものではなく、現代の情勢に応じた形になっているものといえます。しかし子育てと介護を同時に担うリスクは確実に存在しています。その両方を抱え込みすぎて自身のライフスタイルを守れなくなっては本末転倒です。

適切な介護サービスの利用や行政の支援、周囲の援助等を柔軟に組み合わせて自分自身が頑張りすぎない環境を作り、ダブルケアを前向きに捉えていくことが必要です。

介護事業所においても情勢に合わせ今後も増加するダブルケアに幅広く対応することが求められ、多様な働き方ができる環境を整えることが人材の確保の鍵になると思われます。多様な働き方に対応できない事業所は介護職員が不足し結果として淘汰されてしまうでしょう。テレワークの推進やICTを活用した業務の効率化を図るなど、多様な人材が集まる事業所づくりをしていきましょう。

当コラムは、掲載当時の情報です。

参考URL

平成 27 年度 育児と介護のダブルケアの 実態に関する調査

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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