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NDSコラム

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生産性向上推進体制加算とは?加算を取るための準備のポイントをわかりやすく解説

2024/05/17

2024年度の介護報酬改定で生産性向上推進体制加算が新設されました。
利用者ごとに一月あたり10単位、または100単位が加算されるため、介護施設の運営において重要な加算のひとつです。
しかし新たな制度のため、加算の取得に不安を持っている事業者もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、生産性向上推進体制加算の概要や加算を取るための準備のポイントをわかりやすく解説します。

生産性向上推進体制加算とは

生産性向上推進体制加算とは、2024年度の介護報酬改定において新設された制度です。以下の4項目の実現を目的としています。

  • 利用者の安全の確保
  • 介護サービスの質の確保
  • 職員の負担軽減
  • ICT化の促進

また生産性向上推進体制加算には、加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)の区分があります。加算(Ⅰ)は月100単位、加算(Ⅱ)は月10単位を算定できます。なお加算(Ⅰ)は加算(Ⅱ)の上位制度で、同時に取得できません。

新設された背景

生産性向上推進体制加算が新設された背景には、介護業界の人材不足が挙げられます。

厚生労働省の「介護人材確保に向けた取組」によると、2023年度における介護職員の必要数は233万人でした。それが2025年には243万人となり、1年間に約5.3万人の介護職員の増加が必要となる計算です。さらに2040年には、280万人の介護職員が必要と試算されています。

しかし、日本は少子高齢化や人口減少が進み、働き手である生産性年齢の人口割合が下がっています。2020年の15歳~65歳の人口は7,509万人でしたが、2040年には6,213万人に減少する見込みです。

このような状況のなか、介護業界でも人材不足が深刻化しており、国と地域が介護職員の資質の向上や労働環境・処遇の改善に取り組んでいます。その取り組みの一環として、生産性向上推進体制加算が新設されました。

対象となる介護施設

生産性向上推進体制加算の対象となる介護サービスは以下のとおりです。

  • 施設系サービス
  • 短期入所系サービス
  • 居住系サービス
  • 多機能系サービス

具体的には16の施設種別が対象となります。

対象の介護施設一覧
短期入所生活介護 地域密着型介護老人福祉施設 介護予防短期入所生活介護
短期入所療養介護 看護小規模多機能型居宅介護 介護予防短期入所療養介護
特定施設入居者生活介護 介護老人福祉施設 介護予防特定施設入居者生活介護
小規模多機能型居宅介護 介護老人保健施設 介護予防小規模多機能型居宅介護
認知症対応型共同生活介護 介護医療院 介護予防認知症対応型共同生活介護
地域密着型特定施設入居者生活介護

通所施設や訪問介護施設は対象外なので注意が必要です。

生産性向上推進体制加算の仕組み

生産性向上推進体制加算は2つの区分があり、それぞれ算定できる単位や要件が異なります。また生産性向上推進体制加算は加算(Ⅱ)を取得したのちに、加算(Ⅰ)の取得を目指す流れが一般的です。そのため、加算(Ⅱ)・加算(Ⅰ)の順番に概要を紹介します。

生産性向上推進体制加算(Ⅱ)の概要

生産性向上推進体制加算(Ⅱ)の概要は以下のとおりです。

単位数

一月あたり10単位

要件

加算を取得するには以下のすべての要件を満たす必要があります。

  • 利用者の安全や介護サービスの質の確保、職員の負担軽減に向けた委員会の開催や安全対策を実施する
  • 1つ以上のテクノロジー機器を導入する
    ※テクノロジー機器は、見守り機器・インカム・介護記録ソフトウェアや介護記録の作成を効率的に行うことができるICT機器などが該当します。
  • 生産性向上ガイドラインにもとづいた業務改善をする
  • 事業年度ごとに実績データを厚生労働省に提出する

事業年度ごとに提出が必要なデータの種類

種類 対象 データ内容
利用者の満足度評価 利用者(5名程度) ・WHO-5調査の実施 ・生活・認知機能尺度の確認
総業務時間や超過勤務時間の調査 介護機器の導入を行ったフロア等に勤務する介護職員 10月もしくは算定月における、介護職員の一月あたりの総業務時間と超過勤務時間
年次有給休暇の取得状況の調査 介護機器の導入を行ったフロア等に勤務する介護職員 10月を起点とした1年間の年次有給休暇の取得日数

※WHO-5調査とは、対象者が5つの質問項目を6段階の回答から選ぶことで、精神的健康状態を確認できる調査のことです。

加算(Ⅱ)は必要なテクノロジー機器の導入数は1つ以上で、費用負担が少なくて済むのが特徴です。その代わりに単位数は一月あたり10単位で、加算(Ⅰ)と比較すると低く設定されています。

生産性向上推進体制加算(Ⅰ)の概要

生産性向上推進体制加算(Ⅰ)の概要は以下のとおりです。

単位数

一月あたり100単位

要件

加算を取得するには以下のすべての要件を満たす必要があります。

  • 加算(Ⅱ)の要件を満たしている
  • テクノロジー機器を複数導入している
    ※見守り機器・インカム・介護記録ソフトウェアや介護記録の作成を効率的に行うことができるICT機器の3種類すべての導入が必要です。
  • 介護職員が介護に集中できる時間帯を設けることや介護助手の活用などにより、役割分担を行っている

事業年度ごとに提出が必要なデータの種類

加算(Ⅱ)の3種類の書類に加えて、以下の2種類の提出が必要です。

種類 対象 データ内容
介護職員の心理的負担の軽減 介護職員(全員) ・SRS-18調査 ・モチベーションの変化に係る調査
機器の導入による業務時間の調査 介護職員(複数人) ・5日間のタイムスタディ調査の実施

※SRS-18調査は、18項目の質問により対象者の心理的ストレス反応を測定する調査方法です。
※タイムスタディ調査は、介護職員が業務に費やした時間を分単位で記録した表を指します。

さらに、加算(Ⅰ)で必要だった「総業務時間や超過勤務時間の調査」「年次有給休暇の取得状況の調査」について、介護職員全員を対象とした調査データが必要になります。
加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)の違いは、テクノロジー機器の導入数と提出書類の種類です。
また加算(Ⅱ)から加算(Ⅰ)の取得を目指すには、加算(Ⅱ)の取り組みを3カ月以上継続し、データにより以下の3点を示す必要があります。

  • 利用者の満足度評価が下がっていないこと
  • 介護職員の総業務時間や超過勤務時間が短縮していること
  • 年次有給休暇の取得数を維持、または増加していること

上記に加えて、加算(Ⅰ)の要件を満たすことで加算(Ⅱ)から移行できます。

初めから加算(Ⅰ)を取得するには

基本的には加算(Ⅱ)から取得する制度設計ですが、最初から加算(Ⅰ)を取得することもできます。
新設前から加算(Ⅰ)の要件を満たす生産性向上の取り組みを実践している事業者は、以下の3項目を示すデータの提出が必要です。

  • 利用者の満足度評価が下がっていないこと
  • 介護職員の総業務時間や超過勤務時間が短縮していること
  • 年次有給休暇の取得数を維持、または増加していること

データがない場合は、利用者へのヒアリング調査で介護機器の導入が利用者の満足度を低下させていないと確認することでも可能です。
また新設前から実践していない事業者の場合、まずは生産性向上の取り組みを3カ月以上継続する必要があります。そのうえで上記3項目を示すデータを提出し、加算(Ⅰ)の要件を満たすことで取得できます。

生産性向上推進体制加算の取得に向けた準備のポイント

生産性向上推進体制加算を取得したくても、「何から準備すればよいかわからない」と悩んでいる方もいるでしょう。そこで生産性向上推進体制加算の取得に向けて、今からすべき準備のポイントを紹介します。

生産性向上ガイドラインの把握

生産性向上推進体制加算は見守り機器などのテクノロジー機器を導入し、「生産性向上ガイドライン」にもとづいた業務改善を継続的に行うことを目的としています。
そのため、「生産性向上ガイドライン」の把握は重要な準備ポイントです。

介護サービス事業ごとに作成・公開されていますので、厚生労働省の「介護分野の生産性向上」より各ガイドラインを確認しましょう。

委員会の設置・運営

2つ目の準備のポイントは、生産性向上を目指す委員会の設置・運営です。3カ月に1回以上、委員会の開催が加算の取得要件となっているためです。

まず委員会のメンバーを選定します。メンバーは管理者だけではなく、介護職員を含めた多職種から選抜し、また、利用者の状況を把握しているユニットケアリーダーの参画も必要です。

メンバーが決まると以下の4つの内容について検討・改善を行います。

  • 利用者の安全やケアの質の向上
  • 職員の負担軽減や勤務状況への配慮
  • 介護機器の定期的な点検
  • 職員への研修

加算(Ⅰ)を取得する場合は、業務の効率化のために必要な職員研修を定期的に実施する必要があります。 また、加算を取得するためには加算算定する月より以前に委員会を開催していることが必要です。例えば4月から算定するのであれば、4月以前の委員会の実施と議事録等の確認が必要となるため、計画的に進める必要があります。

テクノロジー機器の選定・導入

次にすべき準備は、テクノロジー機器の選定・導入です。

ポイントは委員会などで業務内容や実情を確認し、課題解決に適したテクノロジー機器を選定することです。これにより生産性向上推進体制加算の目的である業務の効率化、介護職員の負担軽減、サービスの質の向上につながります。

ここでは選定の際の参考となるように、3種類のテクノロジー機器について紹介します。

※加算(Ⅱ)は1種類以上、加算(Ⅰ)は3種類すべての導入が必要です。

見守り機器

見守り機器とは、利用者がベッドから起き上がったり、離れたりした際の動きを感知するセンサーです。以下のような課題を抱えている事業者におすすめします。

  • 立位が不安定なのに自力で立ち上がろうとする利用者の安全を確保したい
  • 夜間の介護職員の負担を減らすために、巡回業務を減らしたい
  • 訪室を嫌がる利用者の安否確認や異常の早期発見の方法に悩んでいる

このような課題に対して、見守り機器の導入で期待できる効果は以下のとおりです。

  • 巡回業務の削減
  • 介護職員の負担を軽減
  • 介護職員のストレスや不安の軽減
  • 利用者の異常の早期発見
  • 利用者の安全の確保

見守り機器には、人感センサーやバイタルセンサー、シルエットセンサーなどさまざまなタイプがあります。利用者の特性にあわせて選択しましょう。ただし、加算(Ⅰ)の算定にはすべての居室に設置が必要です。 また利用者のプライバシーへの配慮から、家族や利用者の意思によっては、機器の使用を停止する運用も認められています。

インカムなど

インカムはイヤホンとマイクのついた通信機器を装着・利用することで、複数人で同時に会話できるテクノロジー機器です。離れた場所にいる職員同士のコミュニケーションを円滑にするため、以下のような課題の対応方法におすすめします。

  • 新人職員が先輩職員にすぐに意見を聞けずに困っている
  • 利用者の転倒などの緊急時にすぐに複数の職員を呼ぶ方法がない
  • 介護職員が1人で対応する際の不安を解消したい

このような課題に対して、インカムの導入で期待できる効果は以下のとおりです。

  • 緊急時の対応の迅速化
  • 業務の効率化・分散化の促進
  • 孤独感が減少し、ストレスや不安が軽減

導入時の注意点は、生産性向上推進体制加算の要件に、同一の時間帯に勤務するすべての介護職員が利用することと定められていることです。またインカムだけではなく、チャットツールなどの職員間の連絡を迅速にできるICT機器の導入も認められています。

インカムを活用するメリットは、職員間のコミュニケーションが円滑になるだけではなく、利用者の満足度の向上につながることです。例えば、利用者の介助中に他の利用者から介助を依頼されるケースもあるでしょう。そのような場合にインカムを使い他の職員に依頼することで、利用者は介助が終了するまで待つ必要がなくなります。これにより素早く必要な介護を提供することが可能になります。

インカムを選定する際のポイントは、介護職員が使いやすいかどうかです。介護職員は手が離せないことや、対応に追われて聞き逃してしまうこともあるためです。

ほのぼのTALK++」では、介護で使用することを前提に開発されたデジタルインカムで、iOS端末をインカムとして活用できます。音声に加えてテキストで確認できるのが特徴です。ネックスピーカーにも対応しており、両手が空くので介助の妨げを減らし、長時間イヤホンを装着することによる耳の痛みや不快感といった介護職員の負担軽減にも配慮しています。

介護記録ソフトウェアなど

3種類目のテクノロジー機器は、介護記録の作成効率化に役立つICT機器やソフトウェアです。例えば、見守り機器と連携させることで、利用者の状態を自動的に記録するソフトウェアなどがあります。 介護記録ソフトウェアの導入で期待できる効果は以下のとおりです。

  • 記録業務の削減
  • 介護職員の負担軽減
  • 超過勤務時間の削減

記録業務が減少することで、介護職員は介護業務に集中できるため、介護職員だけではなく、利用者にもメリットがあるといえます。

ただし、どの介護記録ソフトウェアがよいのか迷う方もいるでしょう。「ほのぼのNEXT」は介護業務向けの支援ソフトウェアで、72,400を超える事業所で利用されています。音声やタブレットによる記録、見守り機器との連携などの豊富な機能が特徴です。

記録の電子化にお困りのことがありましたらNDソフトウェアまで、お気軽にご相談ください。

介護助手の活用

加算(Ⅰ)の取得を目指す場合、介護助手の活用を検討しましょう。

生産性向上推進体制加算(Ⅰ)の要件として、介護助手の活用や業務が個人に集中しないように役割分担を明確化する必要があるためです。ほかに、介護を伴わない業務を外部に委託する方法も認められています。

介護補助の活用方法には施設内の掃除や食事の片づけ、備品の準備、ベッドメイキングといった補助業務が考えられます。

福祉医療機構(WAM)の「2023年度特別養護老人ホームの人材確保に関する調査について」によると、介護助手を配置した特別養護老人ホームは全体の61.3%で、そのうち72.0%の事業所で介護職員の負担感が減少したとのことです。このように介護助手の活用は、介護職員の負担軽減に貢献します。

生産性向上推進体制加算に取り組んでみよう

2024年度の介護報酬改定で新設された生産性向上推進体制加算は、介護職員の負担軽減を目的に、介護機器やICT機器の導入・活用を要件としています。

加算を取得することは、介護職員が働きやすい環境整備に貢献します。制度を活用して取り組む事業者が増えると予想されることから、対応しないことは人材確保の面で不利となるでしょう。

テクノロジー機器の導入とソフトウェアの活用により負担軽減の効果が生まれるため、加算の取得をきっかけに生産性向上に向けた取り組みを検討している際はぜひNDソフトウェアへお気軽にお問合せください。

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター モミジ丸 介護福祉士として、障がい者支援・高齢者支援に10年間携わる。
社会福祉実習指導者や施設主任の経験を活かし、現在は介護関係の記事を執筆するWebライターとして活動中。

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