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NDSコラム

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介護職員等の新型コロナウイルス罹患時の労災について

2021/12/24

新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、2021年10月現在やや感染者数は落ち着いてきたかに見えますが、冬の到来とともに第6波への懸念はまだまだ続いています。厚生労働省が発表した昨年のコロナウイルス感染症(COVID-19)に業務に関わることで感染したとされる労働災害認定は、医療福祉の従事者が圧倒的な数に上ることがわかりました。介護事業者は、介護職員が新型コロナウイルスに感染した場合、労災認定の手続きなどをどのように行うべきか、また感染症をはじめ様々な災害に対してどのような対策を立てるべきであるかを解説します。

令和2年度のコロナ感染による労働災害は医療福祉が圧倒的に多い

厚生労働省は2021年4月30日付で発表された「令和2年労働災害発生状況の分析等」で、「新型コロナウイルス感染症のり患による労働災害発生状況について」のまとめを公表しました。令和2年度のおける全産業のコロナウイルス感染者の業務との関わりが深いとされる労働災害発生件数および死傷者数は6,041件で、そのうち医療に関わる者が2,961人、介護福祉に関わる者が1,600人との統計でした。医療福祉を合わせると4,561人となり、全産業の労災と認定された方の実に75%以上が医療福祉に携わる者であるとの結果でした。 これは、新型コロナウイルス感染が疑わしい患者への検査や入院した感染者の治療を行う医療従事者や、免疫力が低下し感染しやすい状態にある高齢者の支援を行う介護従事者がいかに感染リスクの高い状態で業務に従事しているかを明らかにした結果であるともいえます。

業務でのコロナ感染の場合は労災給付の対象になる

業務内容からも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への感染リスクが高いことが明らかな医療従事者および介護福祉従事者ですが、厚生労働省は「医師・看護師や介護の業務に従事される方々については、業務外で感染したことが明らかな場合を除き、原則として労災保険給付の対象」とする旨の通達を出しています。

つまり業務以外の場所で新型コロナウイルスのクラスター感染が発生し、その場所に居合わせたことが明らかな場合などは対象にはなりませんが、そのような場合を除き医療従事者、介護従事者に感染した場合は原則として労災保険の適用を認めるということです。 労災認定された場合に受けることのできる保険給付には以下の種類があります。

療養補償給付

労災指定医療機関を受診すれば、原則として無料で治療を受けることができます。
やむを得ず労災指定医療機関以外で治療を受けた場合、一度治療費を負担してもらい 後で労災請求をすることで、負担した費用の全額が支給されます。

休業補償給付

療養のために仕事を休み、賃金を受けていない場合、給付を受けることができます。

給付日: 休業4日目から
給付額: 休業1日あたり給付基礎日額の8割(特別支給金2割含む)
*原則として「給付基礎日額」は発症日直前3か月分の賃金を暦日数で割ったものです。

障害補償給付

新型コロナウイルス感染の影響で障がいが残った場合に年金または一時金として給付されるものです。

傷病年金

新型コロナウイルスの療養を開始してから1年6カ月を経過した日において症状が完治していない、または傷病による障害の程度が傷病等級に該当すると受け取ることができるとしています。

介護給付

新型コロナウイルス感染により障がい、傷病が発生し該当する年金を受給している際、一定の障害を有して介護を受けている場合に支給されます。

遺族補償給付

業務に起因して新型コロナウイルスに感染したため亡くなった従業者の遺族は、遺族補償年金、 遺族補償一時金などを受け取ることができます。

葬祭料給付

労災により死亡された場合の葬祭を行うために支払われる給付です。

労災申請の手続き方法

介護事業者等の従事者が新型コロナウイルス感染症に感染した場合の労災申請は、原則として感染者本人が行うものとしていますが、請求人が保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合請求人の症状を確認しつつ、適宜、請求書の作成等への助力をするよう定められています。すなわち、感染した職員から労災申請を行うために必要な書類の提出を求められた際は即座に応じる必要があります。

また、介護事業者は職場内での感染が濃厚な職員の労災申請については感染防止の観点からも職員に申請手続きを行わせることは適切とはいえません。その際は介護事業者が申請書を労働基準監督署へと提出する申請手続きを行うほうが自然でしょう。

また労災での給付金は休業してから4日目以降の賃金を保障するものです。休業してから3日目までは介護事業者が「平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない」と定められています。

介護事業者は、介護従事者が業務により新型コロナウイルスに感染したと疑われる際は、介護従事者を守るための行動が求められます。そのために医療機関を受診しようとする場合は、新型コロナウイルス感染症の受診が可能な医療機関を確認したうえで受診を勧めることが必要です。どの医療機関で受診が可能かは「新型コロナウイルスに関する相談・医療の情報や受診・相談センターの連絡先」を確認し介護従事者に伝えるようにするとよいでしょう。

【新型コロナウイルスに関する相談・医療の情報や受診・相談センターの連絡先:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-kikokusyasessyokusya.html

介護職員は自身も感染するリスクを抱えた中で高齢者へのケアを担ってくれる貴重な存在です。介護職員は日々の業務の中で「感染してしまうかもしれない」「感染させてしまうかもしれない」という強いストレスを抱えながら業務にあたっています。介護事業者として、職員の日々のメンタルケアはとても重要な業務です。コミュニケーションを取る機会を十分に設け、職員の業務に関する悩みや不安を常に傾聴、共有することが求められます。万が一職員が感染してしまった場合には、再度職務に復帰できるよう適宜の状況把握に努めることも必要です。

災害に備えたBCP対策の策定が重要

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をはじめ、近年頻発する自然災害による被災など、介護事業者は緊急時、非常時には利用者、介護職員を守るとともに事業運営を継続できるようにも必要な措置を講じていく必要があります。令和3年度介護報酬改定では、介護事業者に対し感染症の発生及びまん延等に関する取組の徹底を求める観点から、委員会の開催、指針の整備、研修の実施、訓練の実施の感染対策と、感染症や災害が発生した場合であっても必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画等(BCP対策)の策定、研修の実施、訓練の実施を義務付けることとしました。2021年度以前から事業を運営している介護事業者は3年の経過措置が設けられていますが、2024年度からは完全義務化します。

つまり介護事業者は今後起こり得る災害や発生し得る感染症に対し事業継続のための計画と準備を整えておくことが必要です。

新型コロナウイルス等感染症については、通常の業務時からいかに衛生的な環境を保っていくかの取り組みが重要となるでしょう。手洗い励行、定期的な消毒実施など感染経路遮断の徹底や職員、利用者の健康管理の方法策定などを定めるとともに、感染症が疑われる際の行動、連絡先を整備しておくことなどがBCP対策として求められます。

自然災害時のBCP対策も同様に利用者および介護職員の安全を守るための計画の策定や訓練の実施が必要ですが、特に重要になるのが事業継続のために必要な情報の保護です。自然災害は火災や水害、落雷など介護事業の運営に必要なカルテ等の記録を害するケースが多くなります。記録類は利用者のケアの情報や請求に必要な情報など、事業の運営に欠かせないものばかりです。想定される災害において記録をいかにして守るかは、大切なBCP対策といえます。紙媒体のカルテよりICT機器を活用した介護記録ソフトを用いると、持ち出す際のデータ量はUSBメモリやHDDドライブなど片手に収まる程度で事足りますが、落雷時や急な水害時などではデータを喪失してしまうおそれもあります。データの保護にはバックアップをとることが一般的な対応策ですが、事業所内のパソコン等でバックアップをとっていると、被災時にはバックアップも同様に被害を受けかねません。

そのような場合を想定してBCP対策を立てる場合有効になるのがオンラインでのバックアップです。NDソフトウェアの「ほのぼの」シリーズonlineプラットフォームは、データセンターに構築した「ほのぼの」シリーズ専用サーバー環境をお客様の事業所や施設から、インターネット経由でご利用いただけるサービスです。インターネットに接続できる環境があればサーバーなどをご用意いただく必要はなく、ネット経由で介護記録を管理できます。バックアップについても定期的にNDソフトウェアが行いますので、非常時にも安心できるBCP対策に適したサービスです。

また自然災害時のBCP対策として利用者様の食事の提供は欠かせません。NDソフトウェアでは最長で5年7カ月の保存が可能な防災食、非常食もご用意しております。災害時を想定した備蓄についてもぜひご相談ください。

▼クラウド版「ほのぼの」シリーズonlineプラットフォーム

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まとめ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による労災認定者は令和2年度において医療福祉の従事者が75%を超える件数であることが明らかになりました。医療福祉の従事者は労働以外の環境で感染したことが明らかな場合を除き感染時は労災の対象になります。介護事業者は感染のリスクから利用者、職員を守るだけでなく職員の感染時には必要な労災保険給付をスムーズに受けることができるよう必要なケアを行うことが求められています。

それに合わせ、令和3年度介護報酬改定で義務化されたBCP対策についても必要な計画を策定し、利用者、介護職員、そして介護事業所の運営を守っていく手立てを講じていきましょう。

業務継続計画(BCP)の作成ポイント

当コラムは、掲載当時の情報です。

参考URL

令和2年労働災害発生状況の分析等

職場で新型コロナウイルスに感染した方へ

介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン

介護施設・事業所における新型コロナウイルス自然災害発生時の業務継続ガイドライン

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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