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NDSコラム

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【最新版】令和6年度の介護保険法改正・介護報酬改定の動向について解説

2024/02/07

令和6年度の介護保険報酬改定は、いわゆる団塊の世代が後期高齢者になり介護需要の爆発的な増加が見込まれる2025年を目前に控えた大きな山場となる改正です。現在も審議は続いていますがある程度の動向が明らかになっています。
介護保険法の改正時は新たな加算の創設や廃止、介護報酬の増減の調整など介護事業所の運営に大きく関わる変更が生じる時期です。そのため最新情報を把握し、改正に備えておくことはとても重要です。
令和6年度の介護保険法改正は、報酬改定率が+1.59%であることが明言されていますが、その内訳は介護職員の処遇改善分が+0.98%、本体が+0.61%となっており、前回は+0.7%でしたので、実質マイナス改定です。
また訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導の4つのサービスの報酬改定と、介護職員の処遇改善については施行が2024年6月、その他のサービスの報酬改定については4月施行と、2段階の時期に分けての改定となりました。
その他、現在明らかになっている動向について解説します。

処遇改善加算の一本化

現在介護職員等の処遇改善に資する加算は、「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3本立てとなっていますが、これらが2024年6月施行で「介護職員等処遇改善加算」という名称に1本化されます。

2024年2月から~5月は補正予算による新たな補助金として月額6,000円程度引き上げる「介護職員処遇改善支援補助金」が支給され、この6,000円は現行の「介護職員等ベースアップ等支援加算」に上乗せという形ですが、1本化される際に補助金としてではなく加算という形で組み込まれます。

新設される加算では現行の加算金額を下回ることはないとしており、どのような区分になるかはまだ明言されていませんが区分算定のための職場環境要件の内容は見直される予定です。

総合マネジメント体制強化加算の見直し

定期巡回・随時対応型訪問介護看護、(予防)小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護が対象の総合マネジメント体制強化加算が見直され基本報酬に組み込まれる見通しです。

総合マネジメント体制強化加算は利用者の心身状況等に応じて計画作成責任者、看護師、介護職員その他関係者が協働しサービスの見直しを随時行うことや、病院や診療所、老健等関連施設に対し事業所が具体的に情報を提供することが算定要件で、1,000単位/月の大きな加算でした。

これが総合マネジメント体制強化加算(Ⅱ)として800単位/月に引き下げられますが、新たに総合マネジメント体制強化加算(Ⅰ)が新設され、こちらは1200単位/月となり現行の上位加算という形になります。

算定要件は従来の要件に加え

  1. 日常的に利用者と関わりのある地域住民等の相談に対応する体制を確保していること
  2. 必要に応じて、多様な主体が提供する生活支援のサービス(インフォーマルサービスを含む)が包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していること
  3. 地域住民等との連携により地域資源を効果的に活用し、利用者の状態に応じた支援を行っていること
  4. 障害福祉サービス事業所、児童福祉施設等と協働し、地域において世代間の交流の場の拠点となっていること
  5. 地域住民等、他事業所等と共同で事例検討会、研修会等を実施していること
  6. 市町村が実施する通いの場や在宅医療・介護連携推進事業等の地域支援事業等に参加していること
  7. 地域住民及び利用者の住まいに関する相談に応じ、必要な支援を行っていること

以上の新たな要件のうち小規模多機能・看護小規模多機能については①、②と③~⑥のうちひとつ以上実施、定期巡回については①、③と④~⑦のうちひとつ以上を実施していることが算定要件です。

通所介護:個別機能訓練加算(Ⅰ)ロの要件緩和

通所介護で個別の機能訓練を提供する体制を整えた場合に算定できる個別機能訓練加算は、LIFEを活用する場合に算定できる個別機能訓練加算(Ⅱ)と個別機能訓練加算(Ⅰ)があります。個別機能訓練加算(Ⅰ)は機能訓練指導員を配置時間は特に定めず専従で1名以上配置した場合に算定できる個別機能訓練加算(Ⅰ)イと、同加算の最高区分であり、サービスを提供している時間帯は専従配置する必要のある個別機能訓練加算(Ⅰ)ロに分かれています。

このうち最高区分である個別機能訓練加算(Ⅰ)ロについて、機能訓練指導員をサービスの提供時間帯は1名以上配置しなければならないとしている要件を緩和するとともに、評価の見直しが図られる見通しです。現行では専従の機能訓練指導員は、例えば看護師が行う場合、看護師として人員に数えることはできませんでしたが、実際には通所介護で一日中機能訓練指導員として従事することはほぼありません。そのため機能訓練の時間帯だけの配置に緩和される形です。

しかし常時機能訓練指導員として従事する必要がないことが明記されるということは、同加算は限られた時間帯だけの配置を見越した報酬額に減額されることを意味します。

現在個別機能訓練加算(Ⅰ)ロに対応して常勤で職員を配置している通所介護事業所は、減額分そのまま人件費が増してしまうかもしれないのです。

具体的な減額単位は明言されていませんが、動向に注意しましょう。

通所介護・通所リハビリテーション:入浴介助加算の見直し

通所介護の通所系サービスの利用者に対し入浴サービスを提供し、入浴中の利用者の観察を含む介助を行った際に算定できる入浴介助加算(Ⅰ)の算定要件が見直され、入浴介助に必要な技術の更なる向上を図るとして入浴技術研修の実施が加わる見通しです。

現在同加算を算定している事業所のうち約4割が入浴に関する研修を行っておらず、この度の改正で入浴技術研修を算定の要件に組み込むことで質の高い入浴サービスの提供を可能にするねらいがあると思われます。

また通所リハビリテーションにおいて入浴介助加算の上位区分である入浴介助加算(Ⅱ)は医師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、介護支援専門員等が利用者宅を訪問して浴室における動作や浴室の環境を評価し、機能訓練指導員が訪問した者と共同して個別の入浴介助を作成して、計画に基づいて利用者の自宅の近い環境で入浴介助する際に算定できます。しかし専門職が利用者宅を訪問する人員の確保や連携が困難である等の理由から同加算を算定する事業所は1割前後に留まっています。

この実態を受けて、入浴介助加算(Ⅱ)の算定要件である利用者宅の訪問について医師等の専門職でなくともICT機器を活用して状況把握を行い、医師等が評価・助言した場合でも算定可能とする方向性です。つまり介護職員等が利用者宅を訪問し、リモートで専門職が評価する形でも構わないということでこちらは要件の緩和が図られると見てよいでしょう。しかし評価はやはり専門職でないといけませんので、この緩和により算定率が上昇するかは不明です。

短期入所生活介護の看取り対応体制強化

短期入所生活介護には現在看取りに関する加算はありませんでしたが、看取り期の利用者に対するサービス提供体制の強化を図ることを目的に新たな加算が新設される見通しです。

短期入所生活介護はあくまでも在宅生活を継続するためのレスパイト機能が大きな役割ですが、在宅看取りを選択されている利用者においてもそれは同様です。質の高い看取り介護を短期入所生活介護でも提供できるよう、看護職員の体制確保や対応方針が定められると見られます。

短期入所生活介護の長期利用の適正化

短期入所生活介護は30日を超えて連続利用することは原則としてできませんが、実際には在宅生活が困難でありながらも特養等にも入所できないといった利用者が大勢おられ、そのような方々の受け皿になっているのが現状です。短期入所の長期利用者が増加することは本来のレスパイト機能の役割を期待する利用者が利用できない事態にもなり、本来のサービスの目的と外れてしまいます。

そこで長期利用については施設入所の報酬単位と均衡を図ると明言されました。これにより長期利用者に関しては基本報酬が減額されると見てよいでしょう。

訪問介護:特定事業所加算の要件に看取り期が追加

質の高いサービスを提供する訪問介護事業所を評価するとして5つの区分に分かれている特定事業所加算の見直しが図られます。

特に上位区分を算定するために求められる重度者対応要件について、現行では要介護度4以上、認知症、喀痰吸引の必要性の割合が要件でしたが、ここに看取り期の利用者が加わることが決定しています。

訪問介護:同一建物減算の強化

訪問介護において、同一の建物内に居住する利用者に対してサービスを提供した場合、同一建物減算として基本報酬が減額されますが、これがさらに強化される見通しです。

背景には、サービス付き高齢者向け住宅への訪問介護が増加していることが挙げられます。この場合、同建物内の多くの利用者に訪問介護を提供する形となり移動時間等の負担が軽く済んでいることが指摘されており、この度の改正では報酬の適正化を図り新たな区分の新設および見直しが図られることになりより一層の減額が予想されます。

訪問看護:専門性を評価する加算の新設等

訪問看護は在宅で医療ニーズの高い利用者の利用が増えており、質の高い訪問看護を提供する必要性が増しています。その背景から必要な技能を習得した専門性の高い看護師が訪問看護サービスや看護小規模多機能居宅介護の実施に関する計画的な管理を行うことを評価する加算が新設されます。これにより訪問看護の役割はますます強化されると見られます。

また要介護者が病院を退院する際は原則として訪問看護は算定できませんでしたが、医療ニーズの高い方の場合は医療的サービスの介入がないことはリスクが高いことが指摘されていました。そこで在宅生活への移行をより円滑に進めるため、看護師が退院、退所の当日に訪問することを評価する区分が新設される見通しです。

さらに新設される区分には、急変等で緊急に訪問看護を提供した際に算定する緊急時訪問看護加算において、24時間対応体制を充実させることを目的に、夜間対応への配慮を評価する区分が設けられる見通しです。

居宅介護支援:遁減制の緩和と同一建物内ケアマネジメントの見直し

居宅介護支援は地域包括支援システムや多職種協働の要となる職種です。そのためこの度の改正では居宅介護支援を対象に様々な見直しが図られ、大きな変更がケアマネジメントの質の確保と業務効率化を進めて人材を有効活躍するための遁減制の緩和です。

現行では40件以上を担当した場合報酬が減額される遁減制が、一律「45件以上60未満」に緩和されます。

また現行ではケアプランデータ連携システム等ICT機器を活用すること、事務職員を採用することの要件を満たす場合、45件以上が遁減の対象となっていますが、こちらは「50以上60未満」に緩和されます。

これはケアマネジャーの業務を効率化することで担当件数を増やすことを可能とし、事実上の収益増に繋げることを期待しての改正だと考えられます。

しかし居宅介護支援事業所と併設・隣接しているサービス付き高齢者向け住宅等に入居している場合や、複数の利用者が同一建物に入居している場合には、報酬は引き下げられることが示唆されているため、事業所の収益の増減には注意が必要です。

施設サービス:協力医療機関を定めることの義務化

特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護医療院の施設系サービス共通で以下3点の要件を満たした協力医療機関を定めることが義務化されます。また、義務化については3年を期限に経過措置を設けるとしています。

  1. 入所者の病状が急変した場合等において、医師又は看護職員が相談対応を行う体制を常時確保していること
  2. 診療の求めがあった場合において、診療を行う体制を常時確保していること
  3. 入所者の病状の急変が生じた場合等において、当該施設の医師又は協力医療機関その他の医療機関の医師が診療を行い、入院を要すると認められた入所者の入院を原則として受け入れる体制を確保していること

これは施設内で対応可能な医療の範囲を超えた場合でも適切な対応を行える体制を確保することを目的に、協力医療機関と連携を図ることを求めています。また要件を満たせば複数の医療機関を定めても差し支えないとしており、協力医療機関と1年に1回以上急変時等の対応を確認するとともに、協力医療機関の名称について指定を受けている自治体に提出する必要があります。

また施設入所者が協力医療機関に入院した後に退院が可能となった場合は速やかに再入所できるよう努めることも明言されました。

特別養護老人ホーム:透析を必要とする入所者の送迎を評価

特別養護老人ホーム等に入所する利用者が透析を必要とする場合は、定期的に透析を受けるために外出する必要があります。透析を実施する病院が送迎を実施しているケースが多く見られますが、送迎が困難な場合もありその際は施設の職員が対応する必要が生じます。

この場合において、月12回以上の送迎を行ったことを評価する新たな加算が新設されます。

特別養護老人ホーム:緊急時等対応方針の見直しと義務化

特養に入所する方の医療提供体制を確保する観点から、あらかじめ定める緊急時の対応方法については配置医師や協力医療機関の協力を得て定めることが義務付けられます。また1年に1回以上配置医師、協力医療機関と共に見直しを行うことが必要とされました。

そのほか、入所者が急変した際の対応について、配置医師の日中の駆けつけ対応をより充実させるために現行では早朝・夜間・深夜のみであった配置医師緊急対応加算について日中も算定可能にする区分が新設されます。

老人保健施設:在宅復帰・在宅療養支援機能の強化

老人保健施設は在宅復帰を目指すことに対して高く評価される方針で、そのための環境を整えた施設においては基本報酬が引き上げられる可能性が高くなっています。また在宅復帰のためのチームにおいて支援相談員として社会福祉士を配置していることを評価する、リハビリテーションマネジメント計画書情報加算についても新たな加算区分を新設するなど、老人保健施設に求める機能をさらに明確にするとともにそれを評価する体制の見直しが大幅に行われる見通しです。

特定施設入居者生活介護:夜間看護体制加算の見直し

有料老人ホームや軽費老人ホーム等の特定施設入居者生活介護の夜間対応について、夜間対応の看護職を配置している場合と、24時間の連絡体制を整えている場合とで評価に差を設ける方針です。

現行の夜間看護体制加算 10単位/日は夜間看護体制加算(Ⅱ)として9単位/日に引き下げられ、夜勤又は宿直を行う看護職員の数が1名以上であって、かつ、必要に応じて健康上の管理等を行う体制を確保している場合は18単位/日の夜間看護体制加算(Ⅰ)を算定可能となります。

また喀痰吸引等、医療依存度の高い入居者に対して質の高いケアを提供する事業所を評価する入居継続支援加算について「膀胱留置カテーテル」「在宅酸素療法」「インスリン投与」を新たに追加し看護職員がこれらのケアを行うことを評価する区分が設けられます。

まとめ

令和6年度介護保険法改正はここで解説したもの以外にも各サービスそれぞれに細かい見直しが図られます。基本的な方針は質の高いケアを提供する事業所は高く評価し、そうでない事業所の報酬は引き下げる方向性になると思われます。

今後も新たな情報が随時公表されていくはずですので、今後も動向を注視しましょう。

参考URL

介護報酬改定率、多床室の室料負担、基準費用額(居住費) について(報告)

令和6年度介護報酬改定に関する審議報告

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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