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令和4年度診療報酬改定での訪問看護の法改正の現況

2022/03/15

令和4年度の診療報酬改定に向け、現在も中央社会保険医療協議会では議論が進められている最中です。その中で介護保険制度とも深い関係のある訪問看護について、現在どのような議論がなされているのかの現況についてご紹介いたします。

令和4年度診療報酬改定で訪問看護についての議論

現在、中医協(中央社会保険医療協議会)で進められている令和4年度診療報酬改定に向けた議論の中で、訪問看護については以下の方向性で議論がされています。

専門性の高い看護師による同行訪問

現行の訪問看護の制度では、専門の研修を受けた専門看護師や認定看護師といった専門性の高い看護師が他の訪問看護ステーションの看護師と共同で訪問看護を行った際に訪問看護基本療養費Ⅰのハを算定できますが、専門性の高い看護師が単独で訪問看護を行った際は通常の訪問看護療養費しか算定できないこととなっています。

また2025年に向けて在宅医療の推進を図っていくためには医師や歯科医師の判断を待たずに手順書により一定の診療の補助を行える看護師を養成するために必要な研修を受ける「特定行為研修」を実施することで専門性の高い看護師の養成に取り組んでいますが、現行では特定行為研修修了者の同行では訪問看護基本療養費Ⅰのハは算定できません。

この現状に対し現在議論が行われており、専門性の高い看護師による訪問看護は在宅療養患者の早期治癒や状態の改善、通院負担の軽減といった効果が確認できることから、これら専門性の高い看護師による訪問看護への評価を見直すべきとの声が出ています。

一方で専門性の高い看護師による訪問看護自体を評価するのではなく能力を活かした看護を提供したことを評価すべきとの声や、専門性の高い看護師単独の訪問看護では同行訪問とは違い一般看護師への教育の効果がないとの声も出ています。

いずれにしても、専門性の高い看護師への評価を高める方向での議論が行われており、在宅でサービスを受ける患者、利用者にとってはより一層の質の高いサービスを受けられることが期待できます。

議論が進む中で現状としては、通常の訪問看護診療費に加え緩和ケア、褥瘡ケア、人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた専門性の高い看護師が訪問看護を行った際に、新たな加算である「訪問看護管理療養費」を上乗せする方向性で話が進んでいます。

理学療法士等による訪問看護

令和2年度の診療報酬改定で、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による訪問看護の週4日目以降の評価が見直されました。今現在の訪問看護ステーションにおいても従事者のうち理学療法士等が占める割合は増加傾向にあり、約3割の利用者がサービスを受けているとのことです。脳血管疾患や筋骨格・運動器疾患、神経難病においてリハビリ専門職による訪問看護は一定の効果を上げていることは評価すべきとされていますが、具体的にどのようなケアを提供しているのかは明確ではなく、理学療法士等が行っている訪問看護の実態を明らかにするべきとの議論がされています。

令和4年度診療報酬改定ではリハビリ専門職による訪問看護の実態をもとに評価の適性化として、医療保険制度における理学療法士の訪問看護においても訪問看護指示書に記載欄が設けられる見通しです。

小児の訪問看護における関係機関等との連携

令和2年度の診療報酬改定では、訪問看護ステーションから自治体への情報提供した際に算定できる加算(訪問看護情報提供療養費1)に15歳未満の小児利用者も追加されました。また、医療的ケアが必要な児童等について、訪問看護ステーションから学校への上程教に保育所や幼稚園が追加され、通園や通学する利用者についての情報を学校等からの求めに応じ必要な情報を提供した際に算定できるよう見直されたものもありました。(訪問看護情報提供療養費2)

近年、訪問看護を受ける小児の利用者は増加傾向が著しく難病や医療的ケアに該当する方の利用は特に著しい増加傾向が見られます。しかし実際には訪問看護情報提供療養費2を算定できなかったと答えている事業所が多く見られ、その理由として「算定対象となる利用者ではなかった」「算定対象となる情報提供先ではなかった」との答えが多く見られました。

見直された訪問看護情報提供療養費2については、高等学校や指定障害児相談支援事業所等は情報提供先の対象となっておらず、見直しされた結果が思うように成果に繋がっていない点が挙げられます。小児へのニーズは増加傾向にあるものの、15歳に到達した時点で訪問看護のニーズが不要になるともいえず、今後のさらなる連携強化において訪問看護が情報を提供することへの評価がなされる方向性で議論されており、保育所及び大学を除く学校を対象とする見通しです。

在宅での看取りを支える提供体制の整備

在宅での最期を希望される患者、利用者にとって訪問看護サービスは欠かせないものです。

平成30年度の診療報酬改定では、ICTを利用した看護師との連携による死亡診断が可能になるといった「在宅患者訪問診療料」の拡充が図られ、住み慣れた自宅で最期を迎えることに期待が寄せられています。その一方で、同加算はICTを利用した死亡診断を行った医療機関にのみ算定できるものであり、支援を行う訪問看護ステーションについては評価されませんでした。また、在宅で死亡した利用者についてターミナルケアを行った際に算定できる「訪問看護ターミナルケア療養費」は退院日とその翌日には算定対象とならず、これが在宅看取りの推進と整合性が取れていないとの指摘がされています。

在宅での最期を希望される方々を支える提供体制整備のため、訪問看護が行うターミナルケアについても見直される方向で議論が進んでおり、現在は主治医の指示に基づき、ICT機器を活用して医師の死亡診断の補助を行った場合に訪問看護ターミナル療養費に上乗せする形で「遠隔死亡診断補助加算」が新設される見通しです。

機能強化型訪問看護ステーションにおける役割の強化

24時間365日対応やターミナルケアの実施、重症者の受け入れ等を積極的に行う、また地域の訪問看護の人材育成等の役割を担うことができるといった体制を整備していることを評価する「機能強化型訪問看護ステーション」は質の高い訪問看護や人材育成のための機関としての役割に大きな期待を寄せられています。

現状で9割を超える機能強化型訪問看護ステーションで地域住民への情報提供や相談、人材育成のための研修の実施が行われていますが、さらなる役割の強化の方向性で話がされており、現行では機能強化型訪問看護ステーション1及び2の要件である地域における人材育成等は「行われていることが望ましい」とされていますがそれを義務化にしてもよいのではないかとの意見が強くなっています。また現在約1/3の事業所に専門看護師や認定看護師が所属しており、他の訪問看護ステーションへのコンサルや研修を実施しているほか、約7%の事業所に特定行為研修を修了した看護師が所属し、職員向けの指導研修を実施していることも明らかになっています。令和4年度診療報酬改定ではさらなる機能強化に向け、専門性の高い看護師の配置や実績をさらに評価することが検討されています。

利用者の状態に応じた訪問看護の充実

難病等を有する利用者等に1日複数回の訪問看護を行う際に算定する「難病等複数回訪問加算」「複数名訪問看護加算」は令和2年度診療報酬改定で見直しが行われ、それぞれ減算の対象となりました。しかし難病等複数回訪問加算の算定回数及び算定人数は増加傾向にあり、同加算の在り方についてどう考えるかが議論されています。また複数名訪問看護加算においては看護師以外にも准看護士や看護補助者それぞれに区分が設けられていますが、実際に複数名での訪問看護サービスを要する方々は特別訪問看護指示書の交付を受けた医療依存度の高い方が多く、サービスの質を担保する上で職種別の状況を考慮した同加算についての見直しが行われ、看護師複数名による訪問についても算定可能とする、看護補助者を「その他の職員」として扱うことで議論が進んでいます。

ほか、医療依存度の高い利用者の約半数が退院日当日の訪問看護を利用しており、長時間の医療処置を受けているとの実態があり、その際の訪問看護サービスでは通常の訪問看護基本療養費を算定できず「退院支援指導加算」となっていることが現状にそぐわないとの指摘がありました。医療的なニーズの高い利用者の円滑な在宅療養への移行を促進する観点から、同加算をどのように考えるかの方向性として、算定額を上げることが予定されています。

まとめ

令和4年度の診療報酬改定における訪問看護サービスでは、次回令和6年度に予定されている介護報酬改定との同時改定に向けてさらなる質の強化を図ることが大きな方向性となりそうです。今後の動向に注視していきましょう。

当コラムは、掲載当時の情報です。

参考URL

中央社会保険医療協議会 総会(第500回)議事次第 在宅(その5)

中央社会保険医療協議会 総会(第516回)議事次第 個別改定項目について

ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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