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NDSコラム

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介護職における事故報告書の目的と書き方

2022/02/17

介護事業所は、介護が必要な高齢者を対象にサービスを提供します。その際に重要になるのが介護事故をできる限り防ぐことです。介護事業所での事故予防に広く活用されているものが事故報告書やヒヤリ・ハット報告書です。
事故報告書やヒヤリ・ハット報告書の作成、活用のためには、介護職全員で事故を予防する意識を持ち情報を共有していくことが求められます。また、テンプレートを作って工数を削減することも重要なポイントのひとつです。

事故報告書の目的

事故報告書は、単に事故の情報を共有するだけではなく以下の目的があります。

万が一の際に、適切な対応をしていたことを示す

事故報告書を詳細に書くことで、万が一の際に適切な対応をしていたことの証明になります。介護事業所はご家族の求めに応じて記録類を開示することもあります。事故に関する記録類の開示を求められた際、適切に作成した事故報告書を提示することで、ご家族に介護事業所としての対応に不備がなかったことをご理解いただき、結果として訴訟リスクなどを下げることに繋がります。

ケアの質の向上

事故の事例や内容を職員が話し合うことで、ケアの見直しに繋がります。事故には必ず事故に至った背景や事故を起こした原因があり、事故内容について介護職員全員で原因を考え事故に繋がる要因を見つけやすくするために事故報告書を活用することが重要です。事故から学ぶことで介護職員一人ひとりが事故予防を意識して、より安全で安心できるケアを目指すことで、ケアの質の向上が期待できます。

事故を繰り返さない

同じ事故を繰り返さないためには、どうすればよかったのか、そのためにはどんな対応が必要かを考えることが重要です。事故報告書で職員全体が共有するだけではなく、事故に繋がった原因を取り除くための改善策も考えましょう。考えられた施策を実施し、さらに改善を加えていくことで、事故を防ぐことができるようになります。

しかし事故の原因には人間であるが故の事故、ヒューマン・エラーが存在します。これは発生を完全に予防することはできません。ヒューマン・エラーを起こさせる原因を考えるとともに、どうしても発生を予防できない事故については事故発生時の被害を最小限に止めるための方法を考えることも必要です。

事故とヒヤリ・ハット

介護事業所で起こり得る事故を予防していくには事故報告書の活用だけではなく、ヒヤリ・ハットと呼ばれる報告書を活用、共有することで、さらに事故予防の意識を高め、介護事故を未然に防ぐことができます。

ヒヤリ・ハットとは

ヒヤリ・ハットは、事故までには至らないけれども、事故につながる危険性が高いトラブルのことです。
ただし、利用者の方が精神や身体に不利益を被ることがあれば、それは事故として対処しましょう。例えば転んで頭をぶつけた場合、ヒヤリ・ハットで対応してしまうと、後日脳内で出血が見つかることもあります。 事故として報告を上げていないことで、「深刻なケースとしてとらえていなかった」と判断されますし、事故扱いにすることで対応も変わってきます。

ヒヤリ・ハットを活用していくことは、重大な事故に至らなかったとしても内容から背景にある「不安全な状態」と「不安全な行動」を明らかにすることに繋がります。

ヒヤリ・ハットを共有することで、事故を事前に防ぐ

ヒヤリ・ハットを共有することで、事故を事前に防ぐことができます。 事故報告書やヒヤリ・ハット報告書はいつでも確認できる場所に置くだけではなく、必ず職員全体に共有をしましょう。その際、報告に対してどんな意見があったのか、改善施策なども記入しておくことで、後から見直した際に参考になります。事故やヒヤリ・ハットが起こったと考えられる不安全な状態と不安全な行動を介護職員全員で分析し、介護職員一人ひとりの意識を改善することや、場合によっては業務の進め方を見直すこと、必要な環境整備を行うことで事故の再発防止や、事故を事前に防ぐための手立てとして活用できるのです。

どんなケースを報告するか決めておく

先ほどお伝えしたように、利用者の方のこころや身体、持ち物などに影響が及ぶ可能性があることは、「事故」として報告するのが確実です。

報告のフローはまず、上司や責任者に口頭で報告をし、同時に事故報告書を作成します。事故報告書をどこまで一人で書くかは介護事業所のルールによって変わります。 一人で判断せずに責任者の判断を仰ぐように指示しておきましょう。引継ぎや全体会などで事故報告書をもとに報告を行い、職員全体に共有することも重要なポイントです。

介護事故を起こしてしまう、立ち合ってしまうことは、利用者はもちろんのことですが介護職員にとっても大きな精神的負担になりますので、施設長や管理者、リーダーといった上長にあたる立場の方は、介護職員の負担についての理解が求められます。事故を起こしてしまったことについて介護職員個人を責め立てることは前向きな事故報告書を事故予防のための前向きな記録として活用できなくなるおそれがあります。

事故報告書やヒヤリ・ハット報告書は事業所で起こった事故を事業所全体で減らしていくために活用するものであることを伝えていくとよいでしょう。

事故報告書の書き方

事故報告書は場合によっては行政への報告資料としても使われる公的な記録文書です。そのため事故報告書の書き方には一定の決まり事があります。

全体のルールとして、事故報告書は事実を端的に記載することです。必要な情報を必要なだけ記載することが重要です。また記載の抜けや漏れがないように、日付や記載者欄を設けたテンプレートを使うのがお勧めです。テンプレートには事業所で作成している場合もありますが、事業所所在地の自治体が公開しているものもあります。自治体公開のものは行政への報告様式に沿っていますので、手間がかかりません。

また令和3年度介護報酬改定では介護保険施設等幅広い介護事業所を対象に事故の報告様式等の標準化が呼びかけられました。 その内容は大きく以下の3点です。

  1. 死亡事故、医師の診察を受けた事故については原則市町村へ報告する

  2. 可能な限り自治体が定める様式を使用し、提出は電子メールが望ましい

  3. 起こった事故の内容についての報告の第一報は遅くとも5日以内、その他の対応や改善策などは作成次第報告すること

②については様式に沿っていれば独自のものでも構わないとしています。

この標準化の目的は将来的に事故報告の完全標準化を目指し全国の事故情報を蓄積、事故予防のための分析に有効活用することとしています。積極的な報告は、将来的に事業所内の事故リスクを減らすことができるための重要な分析材料として活用されます。

では、その他の報告書の書き方について以下に見ていきましょう。

5W1Hを意識し時系列でまとめる

英語の基本である、「5W1H」を意識し時系列でまとめます。

  • いつ(When)
  • どこで(Where)
  • だれが(Who)
  • 何を(What)
  • なぜ(Why)
  • どのように(How)

を明確にすることで、状況を的確に伝えることができます。

例えば利用者が転倒事故を起こしたのを目撃した場合は「〇〇さんが転倒した」と書くのではなく「〇時〇分、〇〇さんが廊下を歩いていたところ右足で躓き前のめりに転倒し、肩を強打した」という風に書きます。介護職員は自分の目で見ているため自分が理解しているように書いてしまいがちですが、他人が読むものであるということを意識して書くことが重要です。作成した文章に5W1Hが含まれているか確認するようにするとよいでしょう。

客観的な事実を書く

事故報告書には、客観的な事実を書きましょう。

主観を入れずに、見たままもしくは聞いたままを記載し、推測などを記入する際には、文章の末尾に記載します。事実と推測がわかるように、改行をして間をあけたり、「『』と推測いたします」と記入しておいたりすると、事実との混同を防ぐことができます。

また、主観を書く場合にもっとも重要なことは同意を得るための根拠です。推測の場合は介護職員の一方的な主観ではなく、客観的事実に基づいた推測であることを記載する必要があります。例えば利用者が居室で倒れていた場合、客観的な事実はあくまでも「利用者が居室で倒れていた」ことです。これを「転倒したと推測する」にはそれに値する根拠が必要なのです。「利用者に確認したところトイレへ行こうとして躓いたとの返答があった」というやり取りを行った場合、利用者自身の証言を根拠として「転倒したと推測する」ことができるのです。

誰が読んでも伝わる文章を意識する

事故報告書は、介護職員だけではなく、必要に応じて家族に開示することもあります。事故報告書に記載する内容には医療福祉の専門用語や職場のみで使われる略語や通称はなるべく避け、部外者が読んだ場合でも伝わる文章を心がけましょう。

必要に応じて図を活用する

文章で表現が難しい場合には、図を用いて情報を視覚化しましょう。とはいえ図を描くのに時間がかかっては、別の業務に支障が出てしまいます。難しく考えずに「伝わりやすいように工夫」することだけを考えるのが大切です。

もっとも効率的な方法のひとつとして動画や写真に収めることをお勧めいたします。事故発生時には対応する職員によって状況の確認精度に差が出てしまうことは否めません。後日原因を検討する際に重要な要素を見落としてしまっていることも十分にあります。そこで動画や写真を残しておくことは客観的事実として非常に有効な資料となります。事業所内での事故発生時の対応としてスマートフォンやタブレット、デジカメなど動画や写真を残せるツールを整備していくことは事故予防の効率化に大きくかかわるでしょう。

将来の事故を予防していくための環境整備

介護事業所において事故は完全に避けることが難しく、また利用者の心身の健康にも重大な影響をおよぼすものです。日常からヒヤリ・ハット報告書を活用して事故に繋がる原因の把握、起こってしまった事故については適切な事故報告書の作成と原因分析が必要です。

また、先述の通り令和3年度介護報酬改定では事故報告様式の標準化が呼びかけられました。これも介護保険業界全体で事故を分析し予防していくためという大きな目的があります。

介護事業所は、自事業所の事故予防に真剣に取り組み、行政と連携を図っていくことは将来的に自事業所の安全意識を大いに高めることに繋がるでしょう。そのためには事故報告書を書くことを確実かつ効率的に行っていくことが求められます。しかし、手書きでの報告書作成は時間もかかりますし書く者により表現が大きく異なってしまうこともあります。

解決のためには報告書作成を手書きで行うのではなく介護記録ソフトを活用することが有効です。NDソフトウェアのほのぼのNEXTは、事故報告書がパソコンで簡単に作成できるうえ、令和3年度制度改正で標準化された様式にも対応しているため確実かつ業務負担を大幅に減らした報告書作成をお手伝いいたします。また、タブレット製品でなら写真や動画も撮影できるため客観的な情報を残すことや事故原因の分析にもご活用いただけます。画面上で閲覧が可能なため介護職員様の迅速な情報共有にもお役立ていただけます。

▼ほのぼのNEXT

おわりに

事故を防ぐためには、事故報告書やヒヤリ・ハット報告を書くだけではなく、介護職員全員で事故を共有し、原因を分析するとともに再発防止に努めることが重要です。利用者が安心して利用できるよう、事故防止とケアの向上のために、事故報告書を活用する仕組み作りをしましょう。

投稿日:2019/9/9
更新日:2022/02/17

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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