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令和3年度報酬改定における
介護職員処遇改善加算・
介護職員等特定処遇改善加算改定のポイント -
2021/10/18
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介護職員の処遇改善のために要件に応じて加算される介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算は令和3年度介護報酬改定で見直しが図られました。これらの加算の算定の要件をしっかりと認識して対応していくことは介護職員の処遇改善に欠かせません。令和3年度最新の介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算の内容について解説します。
処遇改善加算とは
介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算とは介護職員の処遇改善、賃金改善を目的に一定の要件を満たす介護事業所に対し介護報酬に加算し支給する制度です。加算の算定要件にはキャリアパス要件の整備や職場環境の改善、賃金体系の整備等が必要とされ、介護職員の賃金の安定化を図るために活用する、非常に重要な加算です。
多くの介護事業所が処遇改善加算、特定処遇改善加算を算定しており、介護職の確保に欠かすことのできない加算といえます。
従来の加算の内容
介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算は令和3年度の介護報酬改定において算定要件の見直しが図られることになりました。
従来の処遇改善加算はⅠ~Ⅴの5段階の区分が設けられており、算定するために必要な要件は次の通りでした。
・キャリアパス要件
① 職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系を整備すること
② 資質向上のための計画を策定し、研修の実施または研修の機会を設けること
③ 経験もしくは資格などに応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること
・職場環境等要件
賃金改善以外の処遇改善の取り組みを実施すること
これらの要件のうち満たしている項目が多いほど高い加算の算定が可能でした。最も高い加算Ⅰを取得すれば介護職員一人あたり約37,000円の加算が受け取ることができ、事業所の収入増につなげるためでなく介護職員の処遇改善、環境改善に役立てるものとしています。
2019年10月より運用が開始された介護職員特定処遇改善加算は主任やリーダーといった立ち位置の、技能のある介護職員の処遇改善を目的として新設されました。
加算はⅠ、Ⅱの2区分が設けられており
・介護職員処遇改善加算Ⅰ~Ⅲのいずれかを取得している
・職場環境等要件について、「資質の向上」「労働環境・処遇の改善」「その他」の区分でそれぞれ1つ以上の取り組みを行っている
・介護職員処遇改善加算に関する取り組みをホームページなどに掲載し、見える化を行っている
以上を満たすことが算定の要件となります。またサービス提供体制強化加算の最も高い区分、従業者要件のある区分の特定事業所加算、日常生活継続支援加算、入居継続支援加算のいずれかを取得していることで最も高い区分である介護職員等特定処遇改善加算Ⅰの算定が可能です。
支給された加算分の明確な使途は事業所の取り組みに任されていますが配分については一定のルールが設けられています。
・経験、技能のある介護職員の「月額8万円アップ」もしくは「年収440万以上の確保」
・経験、技能のある介護職員、他の介護職員、他の職種の3通りに分け、経験、技能のある介護職員の処遇改善額は他の介護職員の2倍以上とすること他の職員の改善額は他の介護職員の2分の1以上を上回らないこと
以上が2021年3月までの算定要件でした。これが令和3年度介護報酬改定で見直されることとなりました。
改定された処遇改善加算の内容
令和3年度介護報酬改定で見直しが図られた介護職員処遇改善加算ならびに介護職員等特定処遇改善加算についての内容は以下の通りです。
・介護職員処遇改善加算Ⅳ、Ⅴの廃止
介護職員処遇改善加算は創設時より廃止されることが前提として決まっていました。それがこの度の報酬改定で実施される運びとなります。廃止の目的は上位の加算取得を推進し、介護事業所がさらなる処遇改善を図っていくことがねらいです。これにより新たにⅣ、Ⅴの算定を受けることはできなくなりましたが、すでに加算を取得している事業所については2021年度末まで猶予期間として算定することができます。
・介護職員処遇改善加算の要件である「職場環境等要件」の変更
介護職員処遇改善加算の算定要件として定められていた職場環境等要件の細分化が図られました。
従来の職場環境要件は以下のうち1つ以上の取組みを行うこととされていました。
・資質の向上
・労働環境、処遇の改善
・そのほか
この度の令和3年度改正では、以下の6区分に分けられました。
① 入職促進に向けた取組
・法人や事業所の経営理念やケア方針・人材育成方針、その実現のための施策・仕組みなどの明確化
・事業者の共同による採用・人事ローテーション・研修のための制度構築
・他産業からの転職者、主婦層、中高年齢者等、経験者・有資格者等にこだわらない幅広い採用の仕組みの構築
・職業体験の受入れや地域行事への参加や主催等による職業魅力度向上の取組の実施
② 資質の向上やキャリアアップに向けた支援
・働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援や、より専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対する喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職員に対するマネジメント研修の受講支援等
・研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動
・エルダー・メンター(仕事やメンタル面のサポート等をする担当者)制度等導入
・上位者・担当者等によるキャリア面談など、キャリアアップ等に関する定期的な相談の機会の確保
③ 両立支援・多様な働き方の推進
・子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指す者のための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備
・職員の事情等の状況に応じた勤務シフトや短時間正規職員制度の導入、職員の希望に即した非正規職員から正規職員への転換の制度等の整備
・有給休暇が取得しやすい環境の整備
・業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実
④ 腰痛を含む心身の健康管理
・介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の修得支援、介護ロボットやリフト等の介護機器等導入及び研修等による腰痛対策の実施
・短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックや、従業員のための休憩室の設置等健康管理対策の実施
・雇用管理改善のための管理者に対する研修等の実施
・事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備
⑤ 生産性向上のための業務改善の取組
・タブレット端末やインカム等のICT活用や見守り機器等の介護ロボットやセンサー等の導入による業務量の縮減
・高齢者の活躍(居室やフロア等の掃除、食事の配膳・下膳などのほか、経理や労務、広報なども含めた介護業務以外の業務の提供)等による役割分担の明確化
・5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備
・業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減
⑥ やりがい・働きがいの醸成
・ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善
・地域包括ケアの一員としてのモチベーション向上に資する、地域の児童・生徒や住民との交流の実施
・利用者本位のケア方針など介護保険や法人の理念等を定期的に学ぶ機会の提供
・ケアの好事例や、利用者やその家族からの謝意等の情報を共有する機会の提供
以上6区分に分けられ、介護職員等特定処遇改善加算の算定には6区分それぞれに1つ以上の取り組みを実施することが必要で、処遇改善加算の算定にはいずれかひとつ以上の取り組みを実施することとされました。なお、両加算を算定する場合は取り組みが重複してもよいとされています。また年度ごとに新たな取り組みを行うのではなく、前年度と同様の取り組みでもよいとしています。
なお、介護職員等特定処遇改善加算について2021年度実施分については6区分のうち3区分を選び、それぞれ1つ以上の取り組みを実施することで算定可能とする特例措置が設けられています。
また職場環境等要件は、従来は過去の取り組み実績が加算算定の要件となっていましたが、この度の改定で当該年度においての取り組みの実施に変更されました。つまり「行ってきたこと」の報告ではなく、「今年度行う取り組みの計画」と「実績の報告」が必要となります。
・介護職員等特定処遇改善加算の平均賃金改善額の配分ルール変更
従来の加算では技能、経験のある介護職員の処遇改善額は他の介護職員の「2倍以上とすること」とされていたものが「より高くすること」に変更されました。他の職員の処遇改善額が他の介護職員の2分の1を上回らないことはそのままです。
小規模な事業所でもより活用しやすい加算とするための変更ですが、介護職員の処遇改善を図ることがそもそもの加算の目的であるという趣旨は外しておりませんので留意が必要です。
まとめ
介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算は全産業を下回る介護職員の平均賃金を上げ、大きな処遇改善につなげることが可能な加算といえます。加算の算定には要件を満たすことが必要ですが、同加算の算定要件を満たすことは同時に介護職にとって働きやすい職場づくりを推進していくことにもつながります。今年度の介護報酬改定でさらに職場環境等への取り組みが強化されることとなりましたが、人材確保、人材定着を図り質の高い介護サービスを提供していくために積極的に取り組みを実施し加算の算定を目指していくことが重要です。
参考URL
令和3年度介護報酬改定における 改定事項について
介護保険最新情報Vol.941
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当コラムは、掲載当時の情報です。
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その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。