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【2021年度版】介護事故が起こった際の報告書様式の標準化について

2021/09/30

介護事業所を運営していくにあたり、介護事故の発生はどのような場合でも起こり得る問題です。利用者の健康と安全を守っていくためには介護事故が発生する原因分析を行い、対策を練ることが重要で、そのために広く活用されているのが「事故報告書」です。
令和3年3月19日の介護保険最新情報Vol.943では、介護事業所から市町村への事故報告について期限や対象、様式の標準化について言及しています。介護事故が起こり得る事業所では標準化される様式をどのように報告し、活用していくべきでしょうか。
今回は介護事故報告書に関する最新情報と活用方法について解説します。



介護事故はすべての介護事業所で起こり得る

介護の仕事は疾病や加齢による機能低下など何かしらの要因により日常生活に支援を要する方々に対してサービスを提供します。心身機能の低下は生活の中での事故発生リスクに大きく影響します。下肢筋力の低下により歩行状態が悪化すれば小さな段差にも躓きやすくなり転倒事故に繋がります。認知症等により見当識障害や判断力の低下が生じてしまうと、火や刃物の取り扱い時などの安全確保が不十分になりやすくなるため生命にかかわる事故に発展するおそれもあります。つまり、介護事業所で支援を必要とされる方々の何かしらの事故を起こすリスクは避けられるものではないのです。

また、サービスを提供する側と受ける側は共に人間である以上、疲れやストレスなど様々な心身の状態変化が日常生活に影響を与えるため介護事故のリスクを絶対的にゼロにすることはきわめて困難であるといえます。

 

介護事業所は様々な支援を要する方々に対して個別に自立支援、尊厳の保持を図っていく一方で、介護事故のリスクを最大限に除去しながら健康と安全を守っていくことが大切です。

介護事故を予防していくには「介護事故報告書」の活用が必須

介護事故を予防していくためには、把握できるリスクはすべて把握し防ぐことのできる事故はできる限り未然に防いでいくことが重要です。そのために有効な方法が「事故から学ぶ」ために活用する「介護事故報告書」です。

 

介護事故には、事故に繋がった要因がいくつも隠れています。介護事故報告書の活用は、その隠れた事故リスクを明らかにすることで「見える化」し、次の事故を起こさないための対策として非常に重要です。

そのためにも介護事故報告書はただ起こった事故を書き留めておくのではなく、リスクを明らかにするためのものとして作成していく必要があります。

正しく活用された介護事故報告書は利用者のリスクや介護職員の知識、認識を明らかにするだけでなく、介護事業所のシステム上の問題に気付かせてくれることもあります。幅広い視点から介護事故のリスクを把握していくためには介護事故報告書の活用は必須であるといえます。

介護事故は行政への報告が必要

介護事故報告書の大切な役割に情報提供の際の公的書類であることも挙げられます。介護事故はその程度により行政への報告義務があり、その際に多く用いられている報告書類が介護事故報告書なのです。

行政への報告を要する介護事故とは、医師の診断を要した事故や死亡事故が該当します。その他の事故のおいても自治体により報告を義務付けているものもありますので注意が必要です。

将来を見据え、介護事故報告書の様式が標準化される

介護事故報告書は事業所の事故予防に役立てるものであり、 令和3年3月19日の介護保険最新情報Vol.943では 「報告された介護事故情報を収集・分析・公表し、広く介護保険施設等に対し、安全対策に有用な情報を共有することは、介護事故の発生防止・再発防止及び介護サービスの改善やサービスの質向上に資する」との考えから事故報告書の標準化の周知を呼びかけています。

将来的には様式に沿った事故報告を統合、分析し事故予防への有効な対策を各介護事業所へ情報提供できるようになると見込まれています。

介護事故報告書の標準化された様式の内容

介護保険最新情報で周知を呼びかけている標準化された介護事故報告書様式の内容は以下の通りです。

 

1. 事故状況(受診や治療の有無、入院、死亡など)
2. 事業所の概要(法人名や施設名など)
3. 対象者(事故対象者の氏名や性別、要介護度など)
4. 事故の概要(発生日時、場所、事故の種別、事故内容、発生状況など)
5. 事故発生時の対応(事故に対しどのような対応を行ったか)
6. 事故発生後の状況(利用者の事故後の状況、家族への連絡、連絡した関係機関など)
7. 事故の原因分析(発生要因の分析)
8. 再発防止策(再発を防止するために講じた策とその結果など)
9. その他特記事項

 

介護保険施設等における事故の報告様式等について 別紙様式(事故報告書)  

これらの様式に沿っていれば事業所で独自に作成した報告書でも差し支えないとしていますが、行政への報告の際は可能な限り所定の様式を使用することが望ましいとされています。市町村のウェブサイトでは事故報告書の様式のテンプレートが公開されていますので、それに沿う形で報告書を作成するか、そのままのものを使用するとよいでしょう。

介護事故報告の必要がある対象の事業所とは

公開されている事故報告書の様式は介護保険制度における施設系サービス、つまり特別養護老人ホームや老人保健施設、介護医療院を想定して作成されていますが、介護保険最新情報ではサービス付高齢者向け住宅、有料老人ホーム、グループホーム等の介護サービスや、デイサービス、ショートステイ、訪問介護等の在宅介護サービスにも可能な限り活用してほしいと呼びかけています。

つまり、介護保険サービスを提供するすべての事業所を対象に様式に沿った事故報告を求めているということです。

施設系サービス以外で様式に沿っていない事故報告書を活用していた場合、これを機に標準様式の活用もしくは標準様式に沿った事故報告書に変更することをお勧めします。

 

また介護保険最新情報では事故報告の期限についても言及されており、事故報告の第1報は少なくとも様式の1~6について可能な限り記載し速やかに報告、遅くとも事故発生時から5日以内を目安に提出することとしています。

その後については状況の変化等あれば都度報告を行い、事故の原因分析や再発防止策等については作成次第報告することとしています。

事故発生から5日以内とはされていますが、可能な限り迅速な対応が望ましいでしょう。

 

報告方法については電子メールでの報告が望ましいとされているほか、自治体によってはウェブサイトから直接報告書を作成できるようにしているところもあります。事業所の所在地の自治体の指定する方法で報告するとよいでしょう。

 

介護事故報告書はどのように活用していくか

すべての介護保険サービスに対し提出を求められる介護事故報告書ですが、そのためだけに作成するのはやはり本来の意味ではありません。行政の求める様式に沿った形で作成しながら自事業所の事故予防に活用していくことが最も重要な役割といえます。

そのためには事故報告書を作成するにあたり持つべき意識、守るべき記入方法があります。

・事故を無くすために前向きに作成する

事故報告書は事故を起こした介護職員の懲罰や始末書の類ではありません。事故状況を明確にし、原因を分析して同様の事故や類似事故を起こさないようリスクの除去に資するよう活用するものです。つまり、事故報告書は「事故を無くす」という意識のもと作成にあたらなければなりません。そのためには事故を起こした本人を責めるような雰囲気、体制は言に慎みましょう。

・状況や原因を正しく分析できるように客観的に書く

事故報告書は行政への報告書となる場合もある公的な書類です。さらには事故を無くすことを目的に原因を分析するために活用するものです。つまり、作成者、報告者以外の人間が読んでも同じ状況をイメージできるように書かなくてはなりません。

記入例としては「明け方」ではなく「午前〇時」など時間情報を分かりやすく書く、「部屋で転倒していた」といった抽象的な表現ではなく「〇〇号室にてベッド側に足を向けた状態で床にうつぶせに倒れていた」など体勢や位置関係を正確に書くなどです。

 

状況の記載が不十分だと転倒事故の場合は「転倒していたこと」だけが問題視され、原因は「利用者の足が弱っている」「職員の見守りが不足している」などになりがちです。そうなると当然予防策は「職員の目の届くところで見守り強化する」といった利用者を心理的に拘束するほか職員の業務負担が増す方向に進みやすくなります。こうなっては、事故は一向に減らないだけでなく利用者の尊厳を傷つけることにも繋がりかねません。事故状況を正しく認識することが正しい原因分析に繋がると意識する必要があるでしょう。文章だけで状況を把握することが難しい場合は事業所内で使用するデバイスなどで写真や動画として残しておくことが非常に有効です。

・事業所全体の問題として取り組む

事故予防には「事故は偶然起こったのではなく、起こるべくして起こった」との考え方があります。職員の不注意や知識、認識不足であったとしても、それは職員一人の責任ではなく事故に繋がりかねないリスクを把握しきれていなかった事業所の問題ともいえるのです。誰かが起こした事故であっても事業所で起きた事故は働く職員全員の問題であるという意識を持つことができれば、積極的に事故を予防していこうと全職員が認識できるようになります。

安心と安全を守るために積極的に事故予防に努める環境を整えよう

利用者の安心と安全を守るために積極的な事故予防を図っていくには事故報告書の活用が大変重要ですが、所定の様式に沿って事故報告書を作成していくのは決して簡単な作業ではありません。その結果「とりあえず書かなくてはいけないものだから形だけ適当に書く」といった形骸化した報告書になっている事業所も少なくないのではと思います。

重ねて述べますが事故報告書は前向きに作成することで原因を正しく分析し、事故の再発に役立てる大変重要な意味を持つ書類です。

意識的に事故報告に取り組んでいくためには、事故報告書作成業務そのものを効率化することも必要になるでしょう。

最も有効な方法は記録に係る業務を電子化し、紙ベースでの報告書ではなく電子データとして報告書を作成することです。

 

NDソフトウェアの「ほのぼのNEXT」では記録に関する業務をすべてICTで電子化することで記録業務の効率化を図るだけでなく、入力した情報を連携させることで各種報告書に転記することができます。これにより記録の二度手間を防ぎ、報告書作成の大幅な効率化を図ることができます。タブレット端末にも対応しておりますので事故状況の写真、動画をカメラで撮影し添付することもできますので原因分析にも大いに役立ちます。

またメールでの提出が望ましいとされている行政への事故報告にも電子データで報告ができるため報告書をスキャンするなどの手間を省くことにも繋がります。

積極的に事故予防に取り組む環境を構築していくためのお手伝いをいたしますので、ぜひご相談ください。

まとめ

介護事業所において事故は避けようがありません。それが故に防げる事故はすべて防ぐという意識が重要です。事業所全体で事故報告書を積極的に正しく活用し事故のリスクひとつひとつに対策をしていくことが必要でしょう。

令和3年度改正ではすべての介護保険サービスに対して死亡事故や医師の診察を要した事故を行政に報告するよう求めており、その際に沿うべき様式も明示されました。介護業界全体で事故予防に有効な対策を立てられるよう、事業所単位で積極的に取り組むことが求められます。

当コラムは、掲載当時の情報です。

参考URL

介護保険最新情報Vol.943

厚生労働省 介護報酬改定に関する通知等

 

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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