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NDSコラム

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認知症ケアの技法「ユマニチュード」とは

2022/02/10

介護を必要とする方々は高齢化や疾病による心身機能の低下で日常生活に様々な支援を要します。なかでも認知症を有する方々は認知機能の低下によりこころに大きな不安を抱えて生活しています。介護職は認知症を有する方々の日常生活をよりよくするための認知症ケアに取り組むことが大変重要です。
近年「ユマニチュード」という認知症ケアが注目を集めています。フランスから生まれたこの技法は認知症を有する方々に対して心身の安定を図ることができるケアとして取り入れる介護事業所が増加しています。
新たな認知症ケアの技法「ユマニチュード」についてと、実践するために必要な環境整備について解説します。

ユマニチュードとは

ユマニチュードはフランスで生まれたケアの技法で、「人間らしさを取り戻す」という意味を持つ造語です。認知症を有する方がある時はケアを受け入れ、ある時はケアを拒絶することについての原因を「見る、話す、触れる、立つ方法」の違いであることに着目した認知症ケアのコミュニケーション技法で、一部では認知症を有する方の心身状態が目覚ましく改善することから「魔法の技法だ」との声も聞かれます。

認知症の有無に関わらず高齢者をケアするにあたり、その尊厳を保持することは現在では基本視点となっており「その人らしさ」「人間らしさ」を重視したユマニチュードの技法を取り入れる介護事業所は増加しています。

ユマニチュードの「4つの柱」と「5つのステップ」

ユマニチュードでは、誰かが相手の健康のために考え行うこと全てを「ケア」と定義しています。さらに、「ケアを行う人」は、ケアを受ける人が自分のことは自分で決める「自律」と、できることは自分で行う「自立」を実現できるよう援助をする人であると定義しています。つまり認知症を有する方の立場になって考え、その方の自己決定権を尊重した関わりを実践することを「ケア」と呼んでいるのですね。

そして、そのケアのためには以下の「4つの柱」を基本的な技術としています。

ユマニチュードの「4つの柱」

見る技術

相手と平等であることを示すための目線の高さや、相手に対して正直であることを示すために正面から見る等、ただ観察のために見るのではなく相手にしっかり「あなたを大切に思っています」というメッセージを伝えるための技術です。

話す技術

相手への言葉がけを行う際に「~してください」という伝え方は丁寧なつもりでも「命令」にあたります。「~してもらえますか?」「~しましょうか」等の言葉がけを行い、相手を大切に思っていることを伝える技術です。

触れる技術

「広い面積で触れる」、「つかまない」、「ゆっくりと手を動かす」といった相手に不快感を与えないための技術です。身体介護では指でつかむといった行為は高齢者の体に点で触れることになり、圧迫感を与える、行動の自由を奪うことにも繋がります。ユマニチュードの技法としてだけでなく、安全の面から考えても避けるべき行為です。

立つ技術

ユマニチュードでは、立つことを「人間らしさ」の表出のひとつと捉えています。1日に合計20分、立つ時間を作ることで能力の維持と寝たきりを防ぐことができるとしています。 排せつ時、食堂等への移動時、入浴時といった生活場面でできるだけ立つ時間を増やしていくことが必要です。

またユマニチュードではすべてのケアを一連の物語のような手順として以下の「5つのステップ」で実施することとしています。

ユマニチュードの「5つのステップ」

①出会いの準備

自分の来訪を告げ、相手の領域に入って良いと許可を得る

②ケアの準備

ケアの合意を得る

③知覚の連結

実際にケアを提供する

④感情の固定

ケアの後で共に良い時間を過ごしたことを振り返る

⑤再会の約束

次のケアを受け入れてもらうための準備

5つのステップすべてに「4つの柱」の技法を用い、ケアの始まりから終わりまでをひとつの物語としてコミュニケーションを図ることがユマニチュードの特徴といえます。

ユマニチュードは特別な技法ではない

ユマニチュードは最新の認知症ケアとして近年注目を集めていますが、なかには「介護職が普段やっていること」との声もあり、特別なことではないとの意見もあります。
まずいえることは、ケアを必要とする人の生活へのニーズは私たちと何ら変わるものではありません。

いわば「ケアを必要としているから特別な人たち」ではなく、「ニーズそのものは変わらないが達成するためには私たち以上の困難が生じる方々である」といえます。つまり介護職が普段やっている、その方の尊厳を支えるためのケアはユマニチュードに似通っていてもなんら不思議はありませんし、特別な方々を対象としたものでもありません。

またユマニチュードでは実践目標を以下の3段階に定めています。

1.回復の促進

積極的に動いてもらうことで自尊心の回復や心身機能の向上を目指します。

2.機能の維持

本人の能力を最大限発揮した生活を支援し、心身機能の維持を図ります。

3.最期まで寄り添う

本人の能力を奪わないよう配慮しながら穏やかな最期を迎えられるよう付き添います。

これらも介護職にとっての回復期、維持期、終末期のケアに該当することです。
ユマニチュードは介護職にとっては特別でもないこれらのケアに、介護者からの一方的な声掛けではなく支援を要する方の主体性に重きを置いて、丁寧な説明や合意形成、自己決定の尊重など、高齢者の尊厳を徹底的に意識したコミュニケーションを用いることでさらに効果を大きくすることを期待できるケア技法であるといえます。

ユマニチュードの効果と必要性

ユマニチュードを実践している介護事業所では、以下の効果が表れているとの声が聞かれます。

周辺症状の軽減

ユマニチュードを実践することで、認知症を有する方々の情緒が安定し、介護暴力や徘徊、不定愁訴が大幅に減少したといった効果がよく報告されているようです。
ユマニチュードはケアを必要とする人としてだけでなく尊厳あるひとりの人間として寄り添うケアですので、感情面へのアプローチは必要不可欠です。認知機能の障がいがある方は複雑な計算や合理的な判断力は失われやすいですが、感情は私たちとなんら変わることはありません。うまく表現できない気持ちに寄り添ってくれることは情緒の安定に大きく繋がることが期待できるでしょう。その結果周辺症状が軽減できるのです。

介護離職を防ぐ

ユマニチュードの実践は現場の負担を軽減し、介護離職を防ぐことへの効果が期待できます。認知症を有する方のケアの難しさに「行動してもらえるまで時間がかかる」ことが挙げられますが、徹底的に相手の感情に寄り添うユマニチュードは周辺症状を和らげるとされているため強い不安感や介護拒否も軽減します。そのため介護者はケアを提供しやすくなり、結果的に現場の負担感が減少することが期待できるためバーンアウトなどを起こしにくくなり離職を防ぐことができると考えられます。

認知症を有する方はケアされることそのものを嫌う方もおられますが、そもそも「介護が必要な方」は「介護をしてほしい」のではありません。自身の現状を認識するからこそ誰かの世話になることを受け入れざるをえないといってもよいでしょう。認知症を有する方はその現状の認識が不十分な方なのです。ケアに対して拒否的な反応をされる方がいてもそれは自然なことです。介護が必要な方として接するのではなく、ひとりの人間として接するユマニチュードは認知症を有する方にピッタリのケア技法ともいえます。ケアの質を高めるためと現場の負担を減らすためには積極的に取り組んでいくのもよいでしょう。

ユマニチュードを実践するには

ユマニチュードの実践がなかなかできない場合として「ケアの時間を捻出できない」という声がよく聞かれます。

現場の人手不足のために利用者一人ひとりに丁寧なケアをしている時間がないというのがもっとも大きな理由です。業務に振り回されて利用者への直接ケアの時間が捻出できないことはユマニチュードの実践だけでなく事業所全体の介護の質を低下させることにも繋がります。介護者が余裕を持ってケアにあたる環境を整えることが相手の感情に寄り添うケアを可能にし、ユマニチュードの実践や介護の質の向上にも繋げられるのです。

解決するためには現場の業務負担を効率的に減らしていくためのアプローチが有効です。現場の業務の中で特に記録は大きな負担となっている業務として挙げられています。そして記録業務といったバックヤード業務はICTの活用により大幅に効率化することができます。介護業務をICTで電子化することにより記録などの手間を大幅に縮小すると、利用者へ直接ケアを提供できる時間に余裕を持てるようになり、ユマニチュードの実践が可能になります。ユマニチュードの実践に取り組むことはさらにケアの負担軽減に繋がる効果が期待できるため、認知症を有する方々の尊厳を保持した質の高い介護にも繋げることができるでしょう。

ICTを活用した介護記録にはNDソフトウェアの「ほのぼの」シリーズがおすすめです。日々の記録業務だけでなく介護計画書や請求業務など幅広いバックヤード業務を電子化することで業務の大幅な効率化をサポートいたします。介護事業所様の負担軽減を全力でお手伝いいたしますのでぜひご活用ください。

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まとめ

ユマニチュードは認知症を有する方が人間らしく生活できることを目的としたコミュニケーション技法です。ユマニチュードの実践は利用者への質の高いケアを提供できるだけでなく周辺症状を和らげ現場の負担感を減少させることにも効果が期待できます。
ユマニチュードを実践できる環境を整え、介護現場の質の向上と業務負担の軽減を目指すことを考えてみるのもよいでしょう。

当コラムは、掲載当時の情報です。

参考URL

日本ユマニチュード学会

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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