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節電が求められる中での高齢者の熱中症対策とは

2022/08/08

今年の夏も猛暑が予想されており、特に熱中症に注意が必要です。しかし同時に電力不足も懸念されており、全国的に節電も呼びかけられています。熱中症対策と節電対策のバランスが重要な中で、介護職員が高齢者の健康を守っていくためにはどのような点に注意が必要でしょうか。今回は高齢者の熱中症対策のポイントについて解説します。

夏は熱中症に注意が必要

日本の夏は高温多湿の気候であるため、特に熱中症のリスクが高いといわれています。毎年熱中症で約5万人が救急搬送されており、そのうち約1,000人が命を落としています。

また近年は新型コロナウイルスの予防のために夏でもマスク着用の意識が強く根付いたこともあり、マスク着用による熱中症リスクも懸念されています。

近年は節電とのバランスが求められる

全国的に熱中症予防対策が呼びかけられている中で、近年新たな懸念となっているのが電力不足です。複数の火力発電所が災害により長期停止に追い込まれた影響などもあり、2022年の春に電力ひっ迫警報が出たことは記憶に新しいでしょう。今年の夏も依然として電力量の増大により予備電力が足りなくなってしまうことが懸念されており、国は積極的な節電を呼びかけています。

熱中症を予防するには適切なエアコン等冷房機器の使用が重要ですが、それにより全国的に電力が不足することのないように熱中症予防と節電とのバランスが求められます。

高齢者と熱中症について

一般的に高齢者は老化の影響などから熱中症リスクが高いとされています。例年熱中症により救急搬送される方のうち、約56%は65歳以上の高齢者です。また熱中症が原因で死亡された方のうち、65歳以上の高齢者が占める割合はなんと85%以上です。如何に熱中症が高齢者にとって危険であるかが分かります。

高齢者の健康と安全を守る仕事である介護職員は、高齢者が熱中症になってしまうとなぜ危険であるのかを深く理解し、適切な健康管理を図っていくことが求められます。

高齢者が熱中症になりやすい理由は以下の通りです。

暑さを感じにくくなる

高齢者は老化の影響による感覚機能の低下から、暑さを感じるセンサーのはたらきが鈍くなる傾向があります。夏場になっても冷房を適切に使用しない高齢者が多く見られる理由のひとつに暑さを感じていないため冷房を使用する必要性を感じていないことが挙げられます。しかし外気温が高い状態だと高齢者本人が暑さを感じていないとしても体内の温度は上昇していきます。その結果細胞が機能不全を起こし多臓器不全を起こしてしまうのです。

体内の水分量の低下

高齢者は若い世代に比べ身体の予備力が全体的に低下します。予備力とは体内の栄養や水分を溜めておけるタンクと考えてもいいでしょう。これらタンクの容量が低下することで、高齢者は汗をかくことで水分を放出した結果脱水症状になりやすくなります。通常の場合は体内の水分が不足していると身体が感じた場合は口渇感を感じるよう脳が命令を出し、水分を摂取しようとしますが高齢者はこのはたらきも鈍くなりやすいため、体内の水分不足に気付かないまま意識状態の低下、こん睡状態に陥りやすくなるのです。

体温調節機能の低下

人間の身体は体温や血圧などを一定の状態に保つための生体恒常性機能があります。自律神経や内分泌などが関係していますが、高齢になるとこれらの機能の反応が鈍くなります。その結果、体温が上昇しても汗をかく反応が見られないといった状態を招き熱中症になりやすくなります。

高齢者の熱中症対策支援のポイント

介護職は介護を必要とする高齢者の熱中症になりやすい理由をしっかりと理解した上で熱中症にならないための支援が重要です。高齢者を支援する上で最も基本的な熱中症対策は、高齢者の状態をしっかりと観察することです。ほか、熱中症予防には適切に冷房等を使用し室温が上がりすぎないようにすることが効果的といえますが、高齢者は先述の通り暑さに気付きにくいため冷房を使用したがらないこともしばしばです。むしろ高齢者は暑さを感じにくく、寒さは感じやすい傾向があります。冷房を使用したがらない高齢者の気持ちにも配慮しながら熱中症を予防していくために必要な支援のポイントや、節電が呼びかけられている中で熱中対策にどのような工夫が必要かのポイントを見てみましょう。

在宅の高齢者への支援

在宅で生活する高齢者は、最も気温が高くなる日中に1人になることがしばしばあり、非常に熱中症になりやすい環境といえます。しかし先述の通り冷房を使用したくないという方や場合によっては冷房をつけていない高齢者もいらっしゃいます。節電のためにはそれでよいかもしれませんが、熱中症対策としては非常に危険な状態です。在宅で高齢者が1人になる場合でも熱中症を予防できる対策が必要です。

水分、塩分を補給できる環境を整える

独居の高齢者が熱中症や脱水症に陥ってしまった際、自力で水分補給のために行動することは非常に困難です。高齢者は自身の体調変化に気付きにくいため、重篤な熱中症、脱水症になってはじめて自身の異常に気付くのです。

在宅で暮らす方、特に独居の方のそういったリスクを解消していくためには、本人の手の届く範囲に水分、塩分を補給できる環境を整えておくことです。水分はもちろんのこと、塩分は生体恒常性を一定に保つために非常に重要な役割があります。できれば水分と塩分を同時に補給できる経口補水液やノンカフェインの麦茶をすぐ飲めるように用意しておくことが望ましいでしょう。冷房を使用したくない方は汗をかくことで体温調節することが必要ですので、手の届く範囲に2リットルほどは用意しておくとよいでしょう。

なお、緑茶やウーロン茶、紅茶はカフェインが含まれているものがほとんどです。カフェインは利尿作用がありますので過剰摂取は逆に脱水症になりやすいので注意が必要です。ノンカフェインの麦茶であればそのリスクを回避でき、なおかつミネラルも補給できるためおすすめです。

また在宅介護の現場で利用者が排せつを自立できている場合は水分摂取量や排せつの回数等の把握は困難な部分もありますが、熱中症や脱水症対策として水分をどれくらい摂取できているか、排せつはしっかり出ているかの確認は必要といえます。可能な限り濃縮尿になっていないか、適切に汗をかけているかの把握に努めることが大切です。

湿度を一定に保つ

熱中症は外気温が高くなることが発症リスクに直結しますが、もう一点重要な要素が湿度です。日本の夏は高温多湿であり、湿度が高い状態では汗をかいて体温を下げるための気化熱が作用しにくくなります。その結果汗を大量に消費しても体温が下がりにくい状態となり熱中症や脱水症に陥ります。つまり、室温が高い状態であっても湿度を適切に保てば汗をかくことによる体温調節機能は維持しやすくなります。除湿器の使用や除湿剤、備長炭などの湿気を吸収しやすい素材を室内に用意し、温湿度計で湿度を見える形にしておくことが効果的です。湿度は常に50~60%程度を保てるようにしましょう。

空調のタイマーを活用する

高齢者は寒さを感じやすいため冷房を連続で稼働させていると身体が冷えすぎてしまいます。また連続稼働は節電の観点からも不適切です。そこで冷房のタイマーを活用することを検討しましょう。特に最も気温が高くなる日中の12時~15、6時頃だけ限定的に冷房をつけるようにすれば体が冷えすぎることもなく、電力消費も最小限に抑えることができます。気温が下がり始める夕方以降は湿度管理を適切に行うことで熱中症のリスクを抑えることが期待できるでしょう。

施設介護での注意点

ほとんどの介護施設では空調設備が整っており、熱中症になるリスクは在宅に比べ低いといえますが、それでも健康管理を怠ってしまうと熱中症や脱水症になるリスクは存在します。在宅介護と比較すると要介護度の平均が高くなりやすいが故の注意点を把握しておくことが重要です。

水分量の管理をしっかりと行う

人間は1日の生活の中で気付かないうちに多量の汗をかきます。さらに排せつでも尿として水分を消費しています。それは高齢者も同じで、1日の間に2.5リットルほどの水分が失われています。いくら室温を適切に調節しても、水分の摂取量が不足してしまえば脱水症に陥ります。利用者がどれくらい水分を摂取しているかをしっかりと記録に取って適切に管理していくことが重要です。

室内を冷やしすぎない

介護施設を利用する高齢者は要介護度が高い方が多くなりやすいため、冷房を効かせすぎるのは非常に危険です。介護度が高くなるにつれ高齢者は活動範囲が狭くなりやすくなり、生理的機能もそれに伴い低下しやすくなります。室内を冷やしすぎると熱中症のリスクは下がりますが逆に低体温症のリスクが上がります。室温は25~27℃程度を保つとよいでしょう。動き続ける介護職員にはやや暑いと思いますが、高齢者の特性に合わせた環境整備が最も重要なのです。

適度に運動する

熱中症や脱水症を予防するには適度な運動も重要な要素です。高齢になり運動量が低下すると発汗能力も低下することが知られており、適度な運動量を確保すると若い世代にも負けないほどの発汗能力を維持できることも分かっています。利用者の運動能力に合わせた適度な運動を1日30分程度は行い、体温を調節する機能を正常に保つことは施設で生活する利用者への大切な熱中症対策です。

まとめ

節電が呼びかけられている中での熱中症対策のポイントを解説しました。介護職員は高齢者が熱中症に陥ってしまう原因を正しく理解し、冷房を使用する以外の熱中症対策も同時に行っていくことが高齢者の健康を守ることにつながります。

参考URL

令和3年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況

熱中症はどれくらい起こっているのか

熱中症を防ぐためには

当コラムは、掲載当時の情報です。

ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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