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介護施設における兼任、兼務のメリット・デメリットとは

2022/08/05

慢性的な人材不足が続く介護業界や障がい福祉業界では職種の兼任や兼務が多く見られるのが実情です。介護施設や在宅介護事業所、障がい福祉事業所での兼任、兼務にはそれぞれメリットもあればデメリットもあり、効率的な運営のためにはメリットを活かしつつデメリットを解消する手立てが必要です。今回は介護業界を対象に、介護施設や在宅介護事業所に多い兼任、兼務のメリット、デメリットについて解説します。

介護業界には兼任、兼務が多い

介護保険事業 や障がい福祉事業は行政の指定を受けて運営できる公益性の高い仕事です。そのため介護保険サービス事業所や障がい福祉サービス事業所では運営に人員基準が厳しく設けられています、しかし慢性的な人材不足が続く介護業界において人員基準を満たせる十分な人員を確保できない事業所も数多くあります。

そのこともあり多くの介護保険事業所、障がい福祉事業所では管理者やサービス提供責任者、サービス管理責任者、介護事務や清掃員が他の職務を兼務、兼任しているのが実情です。

介護事業所での主な兼任、兼務

介護施設や在宅介護事業所での主な兼任、兼務の例を以下に見てみましょう。

管理者が併設している事業所の管理者を兼任する

本来介護事業所における管理職は他事業所の管理職を兼任することはできませんが、同一の建物内に併設されている事業所であると管理職を兼任することが認められています。 例として、サービス付高齢者向け住宅の管理者と併設されている訪問介護の管理者を兼任する、居宅介護支援事業所の管理者と併設されている訪問介護等の管理職を兼任するなどです。

サービス提供責任者が管理者や訪問介護員を兼務する

訪問介護事業所で利用者の訪問介護計画の作成や訪問介護員の管理を行う役職であるサービス提供責任者は訪問介護事業所において必ず配置が義務付けられている重要な役職です。しかし訪問介護事業も慢性的な人手不足であるため、サービス提供責任者が訪問介護員や管理者を兼務することは決して珍しくありません。介護保険制度ではサービス提供責任者が管理者や訪問介護員を兼務することを認めていますが管理者と訪問介護員すべてを兼務することは認めていませんので注意が必要です。

介護事務や清掃員等が介護職員を兼務する

通常では介護施設等の現場で直接ケアを提供する立場ではない介護事務や施設の清掃員、補助スタッフが介護職員としても勤務する場合があります。兼務の仕方は様々で、一日の勤務時間帯のうち介護事務や清掃員等として働く時間と介護職員として働く時間が湧けられている場合や、シフトにより介護事務等として働く日と介護職員として働く日が明確に分けられている場合等です。

兼任、兼務のメリット・デメリット

介護施設や在宅介護事業所での兼任、兼務が多い理由は人材不足が要因であるのは確実ではありますが、決して悪い側面ばかりではありません。兼任、兼務を行うことは、メリットもあればデメリットもあるのです。

メリット

少ない人員でも人員基準を満たせる

介護保保険事業は人員基準が厳しく設けられていると先ほど述べた通り、人員が不足している事業所では事業所を運営するために必要な人員基準が満たせなくなる場合があります。 その際には管理者が介護職員も兼務する、サービス提供責任者が訪問介護員を兼務する等の対応で人員基準を満たし、事業所の運営が持続可能となります。

人材を確保しにくい介護事業所では兼任、兼務で人員基準を満たすことは運営を可能にすると同時に人件費の削減にもつながります。

現場の意見を汲みやすい

管理者やサービス提供責任者が介護職員や訪問介護員を兼任することは、管理業務と同時に直接ケアを提供する側としても働くことになります。管理職の仕事は職場環境を整えることや職員の管理が主になりますが、自身がケアの現場から離れてしまうとやはり現場は見えにくくなるものです。それが介護職員との認識の差につながってしまうこともあります。管理業務と直接ケア両方を兼務することで、介護職員の気持ちや実情を汲みやすくなることは大きなメリットといえるでしょう。

キャリアップにつながることもある

介護の直接ケアに関わらない介護事務や清掃員等は、それぞれの職務においては専門性を発揮できますが、介護業界で働いていることの実務経験にはなりません。しかし介護職員と兼務で働くことで実務経験を積むことができるのです。特に介護福祉士は3年以上の経験が必要ですが、1日のうち数時間を介護職員として働く兼務の形であっても1日の実務経験としてカウントができます。メインは事務や清掃で働きながらも介護福祉士を目指してのキャリアアップを目指せるのは兼務の強みです。

効率的な運営がしやすくなる

管理者が併設する事業所の管理者も兼任する場合は、職員の配置や利用者の割り振りなどがすべて一人の管理者が行うことになります。職員のバランスや各事業所ごとの収益バランスなどから利用者の調整などを行いやすくなることで、無駄のない効率的な事業所運営が可能になることもあります。

デメリット

多忙になりやすい

兼任、兼務の大きなデメリットに「仕事量が増えること」が挙げられます。併設事業所の管理者を兼任することや、サービス提供責任者が管理者や訪問介護員を兼務したとしても、業務量まで半分の負担になるわけではありません。それぞれの仕事をこなしていくために残業する、休日出勤する必要がある等のリスクが生じやすく、ライフ・ワークバランスが崩れてしまうおそれがあります。無理な兼任、兼務は結果的に離職を招き、さらなる人材不足に陥ることもあるのです。

外部との連携不足が生じやすい

管理者やサービス提供責任者の大切な仕事に「外部との連絡調整」があります。新規利用者の受け入れやケアマネージャー、他事業所、家族、行政とのやり取りなど多岐に渡る外部との連絡は事業所運営や利用者へのケアの質を高めるために欠かせません。しかし兼務で管理業務が満足に行えない状態では外部との連携不足が生じるおそれがあります。管理業務が疎かになってしまうと、ひいては事業所全体の質を低下させることになる場合もあります。

必要な人員基準が満たせなくなることもある

介護施設や在宅介護事業所の人員基準は「常勤換算数」で満たせばよいものや、「専従でなくてはならない」など様々な規定が設けられています。特に専従であることを要する場合は、兼務をしてしまうと「非専従」とみなされてしまいます。その場合は必要な人員基準を満たしていないことになってしまうのです。事業所の人員基準を満たすための要件をしっかりと確認しておくことが重要です。

デメリットの解消はどうする

兼任、兼務はデメリットも多いですがその一方で有効に活用すればメリットもあることが分かりました。ではそのメリットを活かしていくためにどのようにデメリットを解消していけばよいかを見てみましょう。

管理者やサービス提供責任者が介護職員を兼務する場合

介護施設の管理者やサービス提供責任者が介護職員としても働く場合に生じる最大のデメリットは仕事が回らなくなることです。管理者は施設運営や環境整備、外部との連絡調整、サービス提供責任者は訪問介護計画の作成や利用者との契約、訪問介護員の調整など非常に多くの仕事を抱えています。それを解決するには業務の効率化を最大限に図っていくことが最も有効です。外出中でも外線電話を取れるようシステムを導入する、計画書作成や管理をICTで効率化するなどで業務負担を減らすことで介護職員も兼務する傍ら管理者、サービス提供責任者としての職務も全うできるようになり業務の質の低下を防ぐことができます。

事務員や清掃員と介護職員を兼務する場合

利用者へ直接ケアで関わらない介護事務や清掃スタッフが介護職も兼務する場合も同様に仕事が回らなくなることが挙げられ、事務作業に関してはシステムの導入で効率化を図ることができますが兼務する以上事務員や清掃員の数が足りなくなることは否めません。

そのデメリットを解消するためには短時間勤務や週に数日の勤務でなら働けるという人材を多く呼び込むことです。介護施設や介護事業所が多様な働き方を可能にし、幅広い人材が働ける体制を整えることで職員一人あたりの業務負担を減らすことにもつながります。

また介護事務の場合は月末月始に介護保険請求に関する業務が発生します。その時期には介護事務員は事務作業に集中できるよう勤務調整をすることも必要です。

兼任、兼務を継続するために必要な体制づくり

介護業界では慢性的に人材が不足しているため、一切兼任、兼務を行わずに運営できる事業所は稀なケースです。中規模、小規模な事業所の多くが兼任、兼務をせざるを得ないのが実情です。ですが兼任、兼務にはデメリット以外にメリットもあるため、やらざるを得ないというのであればメリットを最大限に活かしつつ適切な事業所運営をしていくことが大切です。

そこで課題になるのが特にこれからの時期に考える必要のある、令和3年度の介護報酬改定で全事業所に義務付けられた、災害などの発生時に事業が継続できるように備えをしておくBCP対策です。 管理者やサービス提供責任者はもちろんのこと、介護事務員や清掃員も介護職員を兼務する以上は非常事態が発生した際に介護職員として利用者の安全確保や事業継続のために適切な対応を行っていく必要があります。

「人手が足りないから」という理由でただ介護現場の業務にだけ従事させている状態では、自然災害時の対応や利用者の急変時の対応はできないといっても過言ではありません。兼務であったとしても介護職員全員が常日頃からの定期的に備蓄の確認を行うことができるようにする、緊急時の安全確保の方法や避難方法、守るべき大切な情報の保護の手順を身につけるなど、全職員が同じマニュアルに沿って動くためには、現場でのケアにあたる者全員で定期的にBCP対策に沿ってマニュアルの確認や手順の訓練を行っていくことが兼任、兼務を継続していくために必要な体制づくりといえるでしょう。

まとめ

介護施設や在宅介護事業所の兼任、兼務について解説しました。

人手不足が続く介護業界は兼任や兼務が常態化しているところもありますが、それによって得られるメリットを最大限活かすためにデメリット解消と体制強化を図っていくことが求められます。

当コラムは、掲載当時の情報です。

ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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