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誤嚥性肺炎予防やオーラルフレイル対策に有効な口腔ケア方法

2022/09/07

高齢者は生理的な老化や疾病による老化で心身に様々なトラブルを抱えやすくなります。中でも口腔の健康状態低下による誤嚥性肺炎は命にも関わる重大なトラブルであり、高齢者の健康的な生活を守るためには口腔ケアは非常に重要な意味を持ちますが、何より重要なことは口腔の健康状態が衰弱してしまうオーラルフレイルをいかに防いでいくかです。介護職員は高齢者のどのようなポイントをチェックしオーラルフレイルを感知するのか、予防のためには日々どのような支援が必要なのかを解説します。

高齢者に多い誤嚥性肺炎

人間は20~30歳頃までに成長のピークを迎え、以後は緩やかに心身機能が低下する老化が始まります。老化は生理的機能の低下を招き、様々な疾病にかかるリスクを生じさせます。65歳以上の高齢者になると、嚥下機能の低下や免疫力の低下から誤嚥性肺炎のリスクが飛躍的に高まり、救急搬送される原因の多くを占めます。誤嚥性肺炎は最悪の場合は命を落としかねない重大なリスクです。事実65歳以上になると死亡原因の第4位に肺炎が挙げられており、年代が上になるほど死亡率は上昇しています。

口腔ケアが誤嚥性肺炎予防には重要

高齢になるほど発生リスクが上がり、なおかつ重篤な症状に陥りやすい誤嚥性肺炎は、口腔の状態を清潔に保つための口腔ケアが効果的であることが分かっています

高齢者は先述した通り老化の影響を強く受けます。老化は全身機能を低下させ、それは嚥下反応の低下や咳嗽反射の低下、咀嚼力の低下といった嚥下に関わる機能にも大きな影響を与えます。これにより高齢者は非常に誤嚥しやすい状態になり、さらに関係が深いものが口腔内の健康状態です。誤嚥性肺炎の細菌には歯周病の原因菌が多く見つかっており、これらの細菌が肺炎を生じさせやすいのではないかと見られています。つまり高齢者は誤嚥しやすいことだけが肺炎の発生リスクではなく、口腔内のケアが行き届かず細菌が繁殖しやすい不衛生な状態であることも発生のリスクに大きく関与しているのです。要介護者に口腔ケアを定期的に実施している介護事業所では肺炎の発生頻度が少なくなったとの声も出ており、口腔ケアの重要性が非常に注目されています。

口腔の健康を保つためには

高齢者の命と健康を守るためには口腔ケアが重要であることは分かりましたが、最も望ましいのは高齢者が必要以上の介護を受けることがない状態を自ら保つことといえます。口腔機能の低下は肺炎のリスクだけではなく全身機能の低下や歯の欠落、口臭等による社会性の維持を困難にさせることにも繋がります。高齢者が心身の健康を保つための非常に重要な要素が口腔機能の維持なのです。そこで近年よく聞かれるようになったのが「オーラルフレイル」という概念です。

オーラルフレイルとは

オーラルフレイルはオーラル(口腔)とフレイル(虚弱)を合わせた言葉で、高齢者の口に関するささいな衰えを放置する、適切な対応を行わない等で、口の機能低下、食べる機能の障がい、さらには心身の機能低下まで繫がる負の連鎖が生じてしまうことに対して警鐘を鳴らした日本で生まれた概念です。

定義は「老化に伴う様々な口腔の状態(歯数・口腔衛生・口腔機能など)の変化に、口腔健康への関心の低下や心身の予備能力低下も重なり、口腔の脆弱性が増加し、食べる機能障がいへ陥り、さらにはフレイルに影響を与え、心身の機能低下にまで繋がる一連の現象及び過程」としています。

つまりオーラルフレイルとは老化に伴う口腔機能低下が摂食障がいや全身機能の低下に繋がり、さらには全身の機能低下から要介護状態に至ってしまうことを危惧する考えと言えます。

介護職員はすでに要介護者となった方に対してケアを提供する立場ではありますが、介護の仕事には大切な視点に「介護予防」「「重度化防止」があります。また利用者は要支援者から要介護者まで幅広い状態像の方が対象です。介護職員は利用者一人ひとりのケアにおいてオーラルフレイルの視点を持って日々の健康増進に資するケアを提供することが利用者一人ひとりの健康を守ることであり介護予防、重度化防止を図ることにも繋がるといえます。

日々のケアでの観察ポイント

オーラルフレイルについては全国的に注目を集めており、口腔衛生向上が介護予防に繋がることへの期待の大きさが窺えます。自治体でも積極的に検診を受けることができるよう独自の取り組みを行っていますが、効果的に取り組むには定期的な受診以上に毎日の口腔状態の評価が必要です。介護職員は要支援者といった軽度の方だからといって観察の姿勢を取らないことは適切とはいえません。また要介護3以上の中重度の方だからといってオーラルフレイルの概念を持たずに支援することもやはり適切とはいえません。

利用者一人ひとりの状態をつぶさに観察し、口腔状態の異変がないかの観察を毎日続けること、変化が見られた場合は歯科医院や病院等の医療機関とすばやく情報共有し連携を図ることが必要です。介護者がオーラルフレイルの視点で利用者を観察するにはどのようなポイントに注意すればよいかを見てみましょう。

口の健康リテラシーの低下

オーラルフレイルの第1レベルでは最初の段階として口腔の健康に対する自己関心度の低下が挙げられています。高齢者自身が自分の口腔への関心が低下してしまうと不衛生な状態を招き歯の欠落などからさらに重篤な状態へ進行してしまう重要な段階です。

介護職員は利用者自身が自発的に歯を磨く、うがいをしているかを毎日観察し口腔機能を保つために自助努力をしているかを把握しましょう。もし以前より関心が低くなっていると見受けられた場合は決して楽観的な見方をしないことが大切です。本人がしっかり自分で健康維持に取り組むことができるように声掛けや助言をしていきましょう。

口のささいなトラブル

第2レベルでは口のささいなトラブルとして主に食を取り巻く環境に悪化が見られる段階としています。介護現場では多くの要介護者が抱える問題であるともいえます。食べこぼしやムセ、食欲の低下などは何かしらの口腔機能のトラブルが関係していることが多いため注意が必要です。食事摂取が自立している利用者であってもただ摂取量だけを見るのではなくしっかり噛めているか、充分な量を食べられているか、食べづらそうにしていないかを観察することが大切です。また食に関すること以外にも口のささいなトラブルには滑舌の低下も重要なポイントとされています。利用者の話が聞き取りにくい、話しにくそうだと感じた場合は口のささいなトラブルの状態にあるのではないかと感知していくことが必要です。

口の機能低下

第3レベルでは口の機能低下として咬筋力の低下や嚥下機能の低下が顕在化した状態であるとしています。この段階では医療機関が口腔機能の維持、向上のために関わっていることが多くなります。介護職員は日々の食事や口腔内のケア、コミュニケーションを通じて利用者の状態を観察し、変化があればすぐに情報を提供していく役割が求められます。

食べる機能の障がい

第4レベルは摂食嚥下機能低下や咀嚼機能不全から、要介護状態、運動・栄養障害に至る段階で、「摂食嚥下機能障害」として診断がつく段階としており、このレベルへの対応は、言語聴覚士等による摂食嚥下リハビリテーションとして標準化された評価及び対応が整備されています。介護現場の要介護者がこのレベルにある場合は適切な食事形態や最適なポジショニング等全職員が利用者ごとの留意点を把握してケアにあたることが重要です。

日常的なオーラルフレイル対策

訪問介護や通所介護、介護施設等の介護事業所では利用者への日常的なケアの一環として様々なオーラルフレイル対策が可能です。日常生活を支援する専門職である介護職員だからこそできる日常的なオーラルフレイル対策は高齢者の口腔機能の維持、向上にはもっとも有効な方法であるともいえます。

適切なコミュニケーション

口は食べ物を食べるだけでなく、言葉を発してコミュニケーションを取ることにも重要な役割を担っています。高齢になり人と会う機会が少なくなるとコミュニケーションを取る機会も少なくなり、口を動かす頻度が少なくなります。老化により心身機能が低下しやすい高齢者にとっては口腔機能がさらに低下してしまうリスクとなってしまいます。介護職員は利用者と日々のケアを通じて十分なコミュニケーションを取る口を動かす機会を多く設けていくことが大切です。

活動量を増やす取り組み

自身の口腔への関心の低下や食欲の低下はオーラルフレイルの重要な要素であり口腔ケアが重要とされていますが、そのほかにも重要な要素として利用者本人の心身の状態への視点も欠かすことはできません。いくら歯が健康でも体調が悪い、悩みごとがある時などは食欲がない、何もする気が起きないものです。日常生活で何かしらのケアを必要とする方々は1日を通して活動量が低下しやすくなります。また他人にケアを受けていることそのものが利用者の自己肯定感を低下させていることもあります。これらは生活への意欲を減少させ、オーラルフレイルに陥るリスクを飛躍的に高めてしまいます。介護職員は利用者が意欲的に日常生活を送ることができるよう本人が役割を感じられるようにする、やってあげるのではなく、できるように支える等の支援を行っていくことが重要です。

毎日の健口体操

介護施設やデイサービス等の食事を提供している介護事業所の多くで活用されているのが「健口体操」です。食事前に発声して食事に必要な口腔機能を活発にする、覚醒状態を鮮明にする等の効果が期待できます。

健口体操には「パタカラ体操」や「あいうべ体操」など様々なものがあります。食事前以外にもレクリエーションを始める前に一斉に行うなどルールを決めて毎日取り組むことで高齢者の口腔機能を高めることに繋げることができるでしょう。

まとめ

オーラルフレイル対策には要支援者、要介護者それぞれの状態をしっかりと観察し、要支援者には自分で口腔機能の維持を図っていくためのケア、要介護者には口腔機能をそれ以上に低下させないためのケアを行っていくことが重要です。毎日のケアに関わる介護職員だからこそ高齢者のオーラルフレイル対策のとても重要な立ち位置であることを意識することが大切です。

当コラムは、掲載当時の情報です。

参考URL

人口動態統計年報

オーラルフレイル対応マニュアル

ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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