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NDSコラム

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2024年(令和6年)介護保険制度見直しの方向性

2023/02/14

介護保険制度は定期的に見直し及び改正が行われています。次回の改正は2024年(令和6年)を予定しており、この改正は介護保険制度においてひとつの節目となる大きな改正となると見られます。
すでに次回の介護保険制度改正に向けての議論は進められており、その動向が注目されています。今回は2024年(令和6年)の介護保険制度改正についての議論の方向性をご紹介します。

2024年(令和6年)は重要な法改正になると見られる

2000年4月に施行された日本の介護保険制度は、社会情勢に柔軟に対応しながら定期的に見直し及び改正が行われてきました。

日本の介護をめぐる大きな問題にはいわゆる団塊の世代が後期高齢者に達し、介護ニーズが爆発的に上昇すると見込まれている「2025年問題」があり、介護保険制度はこの2025年問題をどう迎えるかのために様々な改正や制度の整備を図ってきた背景もあります。

制度の施行以来ひとつの大きな節目と目されていた2025年問題。その直前となる2024年(令和6年)の介護保険制度改正は、日本の介護保険における第一フェーズの総決算として大きな改正となることは間違いないでしょう。

2024年(令和6年)介護保険制度見直しの方向性

2022年12月に社会保障審議会介護保険部会で行われた「介護保険制度の見直しに関する意見」から、2024年(令和6年)の介護保険制度の改正は現在どのような方向で議論されているのかについて解説していきます。

地域包括ケアシステムの深化・推進

介護が必要になっても、できる限り住み慣れた地域でこれまでの日常生活に近い環境で暮らし続けたいという願いを国民共通の願いとし、その願いを実現させるためには介護や医療サービスだけでなく住まいや生活の支援、社会参加の機会を包括的に確保していくために環境を構築していくことを「地域包括ケアシステム」といいます。

これは2025年を見据えて介護保険制度が取り組み続けている施策であり、2024年の改正ではさらに深化・推進させることが必要だとしています。

しかし今後は都市部を中心に介護ニーズが急増すると見られる一方で、地方では介護ニーズの上昇のピークを過ぎているところもあり、地域によってばらつきが生じています。

こうした介護ニーズの地域差にも対応していけるよう新たな介護サービスの創設も検討されています。以下に特に重要になると思われる点を挙げます。

通所介護と訪問介護を組み合わせたサービスを新設

介護業界は慢性的な人材不足であり、そのために必要なサービスを必要なだけ受けられない方々が多くいらっしゃいます。在宅介護サービスの利用者にはその傾向が顕著に見られ、介護ニーズの増大に対しサービスの供給が追い付いていない状態ともいえます。

それを解消するためのひとつの策として打ち出されたのが通所介護と訪問介護を組み合わせた新たなサービスの新設です。通所と訪問を別々の事業所で提供するのではなく、ひとつの事業所が一体的に提供することで利用者の介護ニーズへの柔軟な対応や相互連携等で在宅サービスの質を向上させること、人材不足への対策が狙いとしています。

新たなサービスの新設は2012年の定期巡回・随時対応サービスや看護小規模多機能型居宅介護以来となり、大きな動きとなりそうです。

特別養護老人ホーム特例入所の明確化

現在特別養護老人ホームの入所基準は要介護度3以上が周知されていますが、要介護1、2の場合においてもやむを得ない事情の場合においては特例として入所が認められています。しかし自治体によって要件を満たしている場合においても入所が認められないなど、地域によって差が大きいことが指摘されていました。この入所基準を緩和するのではなく、特例入所のルールを分かりやすく明確化することで、個々の実情に応じた柔軟な運用を可能にする狙いがあります。

在宅での生活がどうしても困難である方にとって特養への入所は大きな支えとして機能する必要があり、ここを分かりやすく整備することは高齢者やその家族にとって非常に助けとなると思います。

LIFE、科学的介護のさらなる活用と推進

2021年度に運用が開始されたLIFE(科学的介護情報システム)は、情報を提供した事業所に対し2024年の介護保険制度改正から本格的なフィードバックを開始する予定としています。

LIFEを活用する意義は、フィードバックを活用することでPDCAサイクルを推進していくこと、ビッグデータで分析したフィードバックを活用することでエビデンスに基づいた質の高いケアを実施していくことにあります。今現在はそのための準備段階と捉えることが重要です。

LIFEを役立つものとして活用していくためには多くの事業所がLIFEを活用して情報提供することが必要であり、さらなるデータ収集、データの充実のためには入力負担の軽減や収集項目がエビデンスの創出及びフィードバックに資するものであるかをさらに精査することとの方向性で議論が進んでいます。

介護保険制度ではLIFEの活用は今後必須事項になると言ってもよく、2024年の改正でも加算の新設等があるならば、それらはほぼすべてがLIFEに関連しているであろうとの見方もあり、LIFE加算を算定できる事業所においては現段階からでも算定を検討しておくことが必要と見られます。

介護予防支援を行う事業所拡大

今現在、要支援者へのケアマネジメントは地域包括支援センターが主体となっています。しかし地域包括支援センターの負担が非常に大きいこともあり、2024年の介護保険制度改正で居宅介護支援事業所を指定対象として加えることがほぼ決定的となっています。

現段階では地域包括支援センターの一定の関与を担保したうえで居宅介護支援事業所が介護予防支援を行えるようにする方向で議論されています。

介護DXの推進、介護情報利活用の推進

現段階の議論で非常に多岐に渡る項目について頻発する話題にICTの活用や新たなシステムを開発、活用しようという動きです。

今現在は介護サービスを利用する利用者の情報は、保険情報やケア情報等事業所や行政によってバラバラに分散しているのが現状であり、また利用者自身がその情報を閲覧することもできません。これらの情報を一元的にマイナポータル等で閲覧できるようにすることが検討されています。そうなると事業所が提供したLIFEの情報や介護計画書の情報も本人が閲覧できるものとなることが想定されますので、公的文書であることを踏まえたリテラシーがさらに求められるものとなっていくでしょう。

また介護事業所間においても介護情報の共有を可能にしようとの取り組みが検討されています。2021年度にはリハビリの計画書の様式が統一される等の標準化が図られましたが、これを2024年もさらに深化させていき、介護事業所間やひいては介護と医療の間でも情報共有を可能にしようというものです。これが実現すると利用者へのケアに役立てられるのはもちろんのこと、情報収集や情報提供に必要だった時間の大きな短縮が期待できそうです。

2024年は、介護業界のデジタル化はさらに大きなトレンドとなることが予想されます。今現在からDXに取り組めるところを検討しておくことが望ましいでしょう。

介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進

介護業界の長年の悩みである人材不足に、介護保険制度は実に様々な施策を講じてきました。2025年という大きな節目を迎えるための最後の改正となる2024年でも引き続き人材の確保及び介護現場の生産性向上の推進を図ると共に、新たな施策も検討されています。

介護助手の位置づけ

介護職員は利用者へのケアだけが業務ではなく記録業務等の事務作業、利用者の生活支援、生活空間の維持管理等その業務範囲は非常に多岐に渡ります。そこに慢性的な人材不足が重なることで利用者への質の高いケアの提供の妨げとなり生産性の低下が問題となっています。

解消のための施策として2024年の介護保険制度改正で検討されていることに「介護助手」の存在を介護保険制度に位置づけるというものです。利用者の洗濯や清掃等、直接的ケアに関わらない介護事業所の業務を担う職種を採用している介護事業所は以前からありましたが、それらはあくまでも事業所が独自に活用しているものであり、介護保険制度には明確な位置づけはされていませんでした。しかし介護現場の生産性の向上、職場環境の改善を図るためには介護職員が不足している現状では解決できないため、介護助手を正式に位置づけることで多様な人材の呼び込みを図りたい考えです。

今後は介護助手に切り分け可能な業務の体系化や評価・教育のあり方を2024年までにさらに議論していくことになると見られ、今後も注目です。

財務状況公表の義務化

現在、社会福祉法人や障がい福祉サービス事業所は法令の規定により事業所の財務状況を公表していますが、2024年からは介護事業所にも公表が義務付けられる見通しです。 その目的は経営状況、財務状況の「見える化」です。介護保険事業所の経営状態の報告を義務付けることで、報告された情報から国はデータベースを構築、分析を行い利用者に公表することで今以上のサービスの選択材料にすることが狙いと見られます。

また職員の賃金についても公表の対象とするよう検討されており、待遇の良い事業所には介護職員が集まりやすい等の流れもできてくるのはないかと考えられます。

義務化はほぼ決定事項と見てもよいので、どのような情報を公表しなくてはならないのか、今後の情報に注目です。

まとめ

2025年を目前に控えた2024年(令和6年)の介護保険制度改正は新たなサービスの新設や新たな職種の位置づけなど新規の施策から介護DXといったデジタル化のさらなる推進、科学的介護、LIFEの本格的なフィードバックの開始など非常に激動の改正となる見通しです。最新の情報をしっかり確認し、事前に対策が必要ならば備えておく等、迅速な準備が大切になってくると思われます。新たな情報が出ればご紹介いたしますのでまたご覧ください。

当コラムは、掲載当時の情報です。

参考URL

介護保険制度の見直しに関する意見

介護保険制度の見直しについて

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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