NDソフトウェア株式会社
NDSコラム

介護支援ソフト「ほのぼの」シリーズのNDソフトウェアです。介護業界・障がい福祉業界の、トレンドや情報を発信しております。

『介護助手』と介護職の違いについて

2023/02/17

2025年、介護業界は75歳以上の高齢者が爆発的に多くなり、それに伴い介護ニーズが著しく上昇すると見込まれている、いわゆる「2025年問題」を迎えます。
しかし介護業界は慢性的な人手不足であり、このままでは介護のニーズに対して供給が追い付かなくなる恐れがあります。
介護保険制度は人材確保のために介護職員の処遇改善や職場環境の改善等の施策を実施していますが、次回の介護保険制度改正で正式に位置づけられると目されているのが『介護助手』という職種です。
『介護助手』とはどのような仕事をする職員で、その活用は事業所にとってどのようなメリットがあるのか。また、介護助手として働くことにはどのようなメリットがあるのかについて解説いたします。

『介護助手』とは?

介護助手とは介護職員が行う業務のうち、身体介護などの専門的な業務以外の仕事を担う職種です。病院ですと似た職種に看護助手があります。看護師が担う専門的な医療サービス以外の業務を担っているのが看護助手であり、欠かせない職種となっている病院もあるのではないでしょうか。

老人保健施設や特別養護老人ホームといった介護施設ではすでに介護助手を採用している施設もあり、2022年には厚生労働省が介護助手を採用することの効果について調査を始めています。

『介護助手』が正式に介護保険制度に位置付けられる見通し

2023年1月現在、介護助手は介護保険制度上の職種としては扱いがありません。しかし厚生労働省は次回、2024年(令和6年)の介護保険制度改正で介護助手を正式に職種として位置付けることを検討しています。

その背景には介護業界の慢性的な人材不足が深く関係しており、次回の介護保険制度改正は介護ニーズが爆発的に増えると見込まれている2025年を目前に控えた重大な改正となります。ここで介護業界に人材を広く呼び込むことは、今後の介護業界の安定にも大きく関わってきます。逆に2025年までに明確な人材不足解消の方法について道筋を立てられていないと、介護が必要なのに介護が受けられない高齢者が急増したり、介護サービスを提供したいのに人員が確保できず閉業せざるを得ない介護事業所が増えたりすることにも繋がっていきます。

介護助手の導入は三重県などが早くから導入(もしくは、早くから導入に取り組み、介護職員の支援に など)に取り組んでおり、その狙いは以下の3点でした。

介護人材の確保

介護助手という働き方を支援することで幅広い人材確保の裾野を広げ、人材不足を解消する

介護業務の質の向上

介護職員が行う業務を介護助手と分担することでより専門的な介護サービスに注力できるよう環境を整え、質の向上を図る

高齢者の就労や健康づくりの実現

就労したいと考える高齢者が働ける環境を構築し、身体機能の維持向上や認知症予防、健康増進を図る

2024年(令和6年)の介護保険制度改正で介護助手が正式に位置付けられることになれば、上記の内容を踏襲したまま就労を希望する高齢者だけでなく時短勤務希望者や子育て世代なども含む、さらに幅広い人材を呼び込める形になることが予想されます。
介護助手という働き方をどのような位置付けに据えてくるのか、今後の動きに注目が必要です。

介護職と介護助手の違い

では、介護助手とはそもそもどのような働き方をする職種であるのか、一般的な介護職員と比較してみましょう。

資格の有無

介護職は働く業種によっては無資格も可能ですが、業務内容は高齢者の生活のサポートだけでなく身体介護や認知症対応など専門的な知識、技術を必要とするものがほとんどです。そのため介護現場で働くための資格は所持しているほうが働きやすいといえます。資格は一例ですが、「福祉住環境コーディネーター」「介護職員初任者研修」「介護福祉士実務者研修」「介護福祉士」などです。
一方で介護助手には特別な資格を必要とせず、無資格でも働きやすいといえるでしょう。

仕事内容

介護助手の仕事内容は大きく言うと「介護職員が行っている業務のうち、直接利用者支援に関わらない業務」を担当します。
介護施設での食事を例に挙げると、介護職員が行う業務は以下のような流れが一般的です。

  • 食事の準備、調理
  • 水分の準備、トロミ付け
  • 食堂ホール等、机の清掃
  • 利用者の離床介助、誘導
  • エプロンやおしぼりの配布
  • 食事の配膳
  • 食事介助、見守りや声掛け
  • 服薬介助
  • 下膳、洗い物
  • 食事量や特記事項の記録

非常に簡単に見えますが、利用者一人ひとりに合わせて食事形態やトロミ具合を確認、調整をし、食事介助を実施しながら誤嚥がないよう広く見守りを行い、下膳と並行しながら服薬介助を都度行っていくことは、非常に慌ただしい業務です。それゆえに他者の薬を服薬させてしまう誤薬事故や、バタバタと食事介助してしまうことで誤嚥事故を起こしてしまうなどのトラブルやリスクが常に身近にあります。

介護助手は、この食事の業務の中で「直接利用者に関わらない」「専門的知識、技術を要しない」部分の業務を担当します。

上記の業務の中から介護助手が担当する作業を分けると以下のようになります。

  • 水分の準備
  • 食堂ホール等、机の清掃
  • エプロンやおしぼりの配布
  • 食事の配膳
  • 見守り、声掛け
  • 下膳、洗い物

いかがでしょうか。介護現場では利用者の直接ケアに関わらない業務は意外と多いのが分かります。その業務を介護助手が担当することで食事介助や服薬介助といった慎重さをもってあたるべき専門的な業務により注力できるようになるのです。

また福岡県では介護助手の働き方として介護助手をさらに3つにクラス分けし

Aクラス(専門業務)

一定程度の専門的知識・技術・経験を要する比較的高度な業務

Bクラス(要注意業務)

短期間の研修で習得可能な専門的知識・技術が必要となる業務

Cクラス(単純作業)

マニュアル化が容易で、専門的知識・技術がほとんどない方でも行える業務

と、そのクラスに応じて担当できる業務の範囲をさらに細分化しています。

食事を例に挙げるなら

Aクラス…見守り、声掛け
Bクラス…食事の配膳、水分の準備
Cクラス…食堂ホールの清掃、エプロンやおしぼりの配布、下膳、洗い物

という分け方になることが想定されます。

このように直接的な「介護」に携わらない間接的な業務が介護助手の仕事内容であり、対して介護職員は利用者へのケアに直接関わる部分が業務となり、明確に業務の分担を図ることが可能になります。

その他の介護助手の業務としては次のような内容が該当するでしょう。

  • 居室の清掃、換気、ゴミ捨て
  • 洗濯
  • ベッドメイク、利用者不在時のシーツ交換
  • 物品の補充、買い出し
  • 車両の運転や洗車

施設の業務内容に合わせ介護助手の業務も様々ではありますが、非常に多岐に渡るといえます。

待遇

介護助手の待遇は、一般の介護職員と比較すると、利用者に対して専門的なサービスを提供しない分、給与面ではやや少なくなると見るのが正しいでしょう。ですが、ボランティアとは違い賃金が支払われることになれば、介護助手は1人の職員として扱うことになります。法定有休休暇やその他福利厚生については介護職員と変わるものではありません。

介護助手として働くメリット

では、介護職員としてではなく介護助手として働くメリットはどのようなものがあるでしょうか。
まず、介護助手を介護事業所が採用することには以下のメリットがあります。

経営者、管理者

人材確保による職場環境の改善、働き方改革の推進、雇用を生み出し地域に貢献する

介護職員

業務の負担軽減と、業務分担を行うことでより専門的な介護サービスを提供でき、質が向上する

利用者

介護職員が利用者へのサービスに集中できるようになることでより質の高い介護を受けられる
このように、介護助手がいることは介護現場に非常に大きな好影響を与えることができます。
では次に、介護助手として働くメリットを見てみましょう。

間接的に利用者を支援できる

介護助手は利用者への直接ケアを業務とはしませんが、介護助手が業務を分担してくれることで介護職員が利用者に集中できる環境を生み出すことができます。

介護職員が利用者に専門的介護を提供する時間が確保できれば、おのずと介護の質は上がり、利用者のADL、QOLの維持向上に成果を出しやすくなるでしょう。

この成果は介護職員だけが出したものではなく、介護助手の存在があるからこそ出せるものだともいえます。介護の仕事や高齢者の支援に興味がある人が介護職員として働くことは難しくとも、介護助手として働くことでただのお手伝いではなく、間接的に利用者を支援できるのは介護助手として働くメリットといえるでしょう。

心身の負担が少ない

介護助手として働くメリットはやはり利用者への直接的ケアを行わないことは心身の負担が少ないであろうことが挙げられます。

介護の仕事は障がいを持つ方や認知症を有する方の心身にアプローチする仕事ですので、肉体的にも精神的にも疲弊しやすいといえます。介護助手の業務には利用者に直接触れる業務がないため、介護職員と比較すると心身に余裕を持って働きやすいといえます。体力的に不安のある方や、生命に関わる業務であるからこそ躊躇してしまう方にとって、介護助手の働き方はうってつけといえるのではないでしょうか。

もちろん介護職員も介護助手がいてくれるからこそ責任のある仕事に細心の注意を持ってあたることができるので、どちらが上、下ではなくよきパートナーとしての関係性を構築していくことが重要になってくるでしょう。

介護助手として働きながら介護職を目指せる

どんな仕事でもそうですが、誰もが最初は初心者です。しかし介護の仕事は初心者の段階から利用者へのケアを行う必要が生じることもしばしばで、未経験での就業の場合、仕事を覚えるまでの期間は非常に負担の大きいものとなりがちです。介護の仕事を始めてみたものの業務についていけず早期に離職してしまう人は一定割合いるのです。

ですが、介護助手としてならまずは利用者への直接ケアではなく間接ケアとしての業務ですのでいきなりすべての業務を覚える必要はありません。実際に介護の現場に触れながら間接的な業務を覚え、キャリアステップとして介護の仕事をしてみたいと思ったのなら初任者研修を受講する等で介護職員を目指すことも良いと思います。

人材確保解消の手立てになる

介護助手を積極的に採用していくことは、介護業界が抱える人材不足を解消する手立てとなります。

介護助手は介護職員と比較して仕事内容の難易度が低く、介護未経験者や高齢の方でも取り組みやすい仕事です。介護事業所は、介護助手に対して勤務時間や働く条件の希望に柔軟に合わせていくことで、パートやアルバイトのような形、隙間の時間で働きたいと希望する人たちにとっては非常に働きやすい仕事となり、ひいては法人全体の働き方改革にも繋がることが期待できます。

介護助手としての働き手が増えることは介護現場の負担軽減にも繋がるため、人材不足に悩む運営者や管理者、業務負担に悩む介護職員、自分に合った条件で働きたい介護助手全員のメリットになります。

介護助手の活用は、今後の事業所運営に大きな影響を与えることが予想されます。介護事業所でどのように介護助手を位置付けていくか、入念に考えた上での採用や活用をしていくことが重要になるでしょう。

まとめ

介護業界の人材確保として次回2024年(令和6年)の介護保険制度改正で正式に位置付けられる見通しの介護助手は、介護助手として働く本人はもちろんのこと介護事業所、介護職員、そして利用者にも非常に良い影響を与えることが期待されています。これからも議論を重ねる中で介護助手の位置付け具体的な取り扱いが少しずつ明確になっていくと思われます。今後の動向に注目しましょう。

当コラムは、掲載当時の情報です。

参考URL

三重県 介護助手の導入支援について

介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進について

介護助手の手引き

まずはお気軽に
お問い合わせください
  • 介護・福祉・医療など、事業に適した製品やその活⽤⽅法が知りたい
  • 製品・サービスを体験してみたい・購⼊を検討している
  • まずは知識豊富な⼈へほのぼのシリーズの利⽤について相談してみたい
ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

PAGE TOP