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介護事業所が定めておくべき感染症BCPについて

2023/01/20

依然として新型コロナウイルスは、介護従事者や介護事業所の利用者にとって脅威であることは変わりません。厚生労働省は先日、介護保険最新情報VOL.1111にて「感染対策における業務継続計画(BCP)の策定のための集団研修に係る募集」を発表しました。介護事業所に策定が義務付けられたBCP対策と、新型コロナをはじめとした感染対策をどのように図っていくべきか、いざ感染症が出た時にはどのような対応が望ましいのかを改めて考えてみましょう。

新型コロナウイルス第8波への警戒が強まる

2020年ごろから爆発的に世界中で猛威をふるった新型コロナウイルスは、現在もまだ感染者を出し続けています。

検査方法の確立やワクチン接種等で発生当時ほど世間の関心は薄れている気配もありますが、まだまだ予断を許さない状況です。2023年の冬現在も感染者数は上がり始めており、今年もインフルエンザとの同時流行に警戒が必要と呼びかけられています。

介護事業所はクラスター予防が責務

介護事業所においても依然として新型コロナウイルスのクラスターは発生しています。基礎疾患を持つことが多く免疫力が低下した高齢者は、いかにワクチンを接種したとしても感染リスクを完全に防ぐことは難しく、また基礎体力も若年層に比べ低下しています。

もし感染症にかかった場合には肺炎などの二次感染にかかってしまうリスクが飛躍的に上がり、死亡リスクが高くなります。新型コロナウイルスだけでなくインフルエンザやノロウイルスその他の感染症は前提として高齢者に感染させないように必要な対策を整えておくことが、高齢者の健康と安全を守ることが仕事の介護事業所として最低限の責務であるといえます。

介護事業所に義務化されたBCP対策

自然災害等の緊急事態が発生した場合でも、最大限に支障を少なくし安定した介護サービスが提供できるよう必要な策を講じておくことをBCP対策(Business Continuity Plan:業務継続計画)といい、介護保険業界においても令和3年度介護報酬改定で策定が義務付けられました。(令和3年度以前からサービスを提供している事業所では3年の経過措置)

介護事業所の運営に支障をきたす例として自然災害はもちろんのこと感染症も非常に多くのリスクを伴います。それも高齢者のみならず介護職員にも感染が蔓延した場合、高齢者は健康を脅かされ生命の危険が生じます。介護職員の場合も高齢者を守るための人員が不足する事態となり、正常な介護サービスの提供は著しく困難になるといえるでしょう。

介護事業所にとって感染症は、火災や水害、地震発生時の災害発生時と変わらないくらい大きなリスクであると認識し、普段からの感染予防対策やもしもクラスターが発生した時の対応などをしっかりと計画しBCP対策に盛り込むことが求められます。

感染症BCP対策

介護事業所が定めておくべき感染症に関連したBCP対策には以下を検討しておくことや、平時からの備えをしておくことが望ましいでしょう。

職員の連絡体制の整備

感染症発生時には感染疑いのある職員を出勤させるか否か等の判断が必要となり、大幅にシフトを変更せざるを得ない状態になることも想定されます。その際にトップダウンの通達方法や、職員間の情報連携体制は速やかに行うことが望ましいです。有事の際に情報共有ができずバタバタすることがないよう整備するとともに、事態を想定した訓練も定期的に行うことが求められます。

感染予防に資する用具の確保

感染症発生時にはマスクやガウン、手袋といった感染予防具が日常のケア以上に必要になることがあります。さらにはアルコール消毒や次亜塩素酸ナトリウムといった消毒液もまた大量に消費するようになります。クラスターが発生した際に十分に供給可能な量は施設規模によって異なりますが、感染症が蔓延しやすい冬には全国的に手に入りにくくなることもしばしばです。どれくらいの量が必要かを検討し、いざという時に備えることができる量を常にストックしておけるようにしましょう。

業務の優先順位をつけておく

介護事業所内でクラスターが起こると、日常的なケアは一変します。高齢者の症状への対応、行政との連携、他の医療機関との連携、他事業所との連携、ケアマネージャーとの情報共有等、感染症が発生していない段階では行わない業務が発生します。通常行っている業務にさらに感染症発生時の業務が増えてしまうと、当然ながら時間も労力も足りません。介護職員にも感染者が出て出勤できない状態になると事態はさらに悪化します。

しかしこれらはクラスターが発生した際にすべて想定できることです。必ずやらなくてはならない業務と、そうでない業務の重要度のランク分け及び優先順位をつけ、有事の際にはその必要性の高いものを優先的に実施できるよう整備しておくことはとても重要です。

職員体制の確保

建物やインフラに大きな被害が生じる自然災害とは異なり、感染症は人への健康被害が主となります。高齢者が利用する介護事業所となるとその被害は甚大で、サービスの提供自体が困難になってしまうことで経営自体が危うくなるリスクも生じます。そのため職員にもクラスターが発生したことを想定した人材確保の手段を整えておくことはとても重要です。

法人で複数の事業所を運営しているのであれば、法人全体で人員の応援体制を決めておくことも有効ですが、小さな法人ともなるとそうもいきません。自治体によっては緊急時に応援を派遣する事業を実施しているところもあります。感染症BCPの策定に際し人員の問題をあらかじめ自治体に相談しておくことも必要でしょう。通所介護や訪問介護など施設系サービス以外では、思い切って事業所を休業させることも選択肢のひとつとなるでしょう。その場合、利用者が必要なサービスを受け続けることができるようケアマネージャー含めしっかりと情報連携しておくことが求められます。

感染者(疑いも含む)発生時の対応について訓練する

介護事業所において当然利用者の急変はないほうが良いですし、自然災害等の非常事態は起こらないに越したことはありません。しかし実際には自然災害に遭われた介護事業所もあり、利用者の急変もやはり高齢者であることを鑑みると起こり得るものと理解しなくてはなりません。それは感染症も同じくで、新型コロナやインフルエンザ、ノロウイルス、MRSAなどは感染しないことが一番ですが免疫力の低下した高齢者は感染リスクも上がりますし、目に見えない細菌ウイルスは介護職員にとっても完全に予防することは難しいものです。

つまりこれらの緊急事態、非常事態は「いつ起こってもおかしくないもの」と認識することが最も重要です。多くの事業所で発生時の対応についてマニュアルを定めているものと思いますが、実際に発生してみると思いの外マニュアル通りに行動できないことがほとんどです。やはり緊急事態の際には何度も繰り返し訓練した動きが大切なのです。常日頃から事態の発生を想定した訓練を行うことが、いつ起こるか分からない事態に備える最も重要な対策です。集団感染が起こった、介護職員に感染が発覚したら即座に感染疑いの者も含めて適切な応対ができるよう必要な動きを定期的に実践形式で訓練しておくよう計画しておきましょう。

サービス提供を安定させる備蓄を確保する

もしも介護施設でクラスターが発生した場合、業務の優先順位をつけ提供するべきサービスは提供し続けられるように体制を整える必要がありますが、必ず提供しなくてはならないサービスとして優先度、重要度が共に高いが高齢者の日常生活を支えるためのサービスです。

主に食事、入浴、排せつの生活介護が挙げられますが、特に欠かせないものは食事です。咀嚼や嚥下機能が低下しがちな高齢者は新型コロナウイルスやインフルエンザ、ノロウイルスなどの感染症に罹患してしまうと食事を摂取することが非常に困難になり栄養状態の悪化から肺炎等の二次感染を招くことも少なくありません。また通常通りの食事では満足に嚥下できず誤嚥や嘔吐から肺炎にかかることも考えられます。その際には食事形態を変更する等を計画しておくことも必要ですし、少ない摂取量で充分なカロリー摂取が見込める高濃度カロリー食などを常備しておくことも計画として必要です。

しかし職員側にも感染者が出て人手不足に陥った場合、そもそもの食事の提供体制自体が確保できないおそれもあります。その際に外部から食事を調達する方法は、感染を拡大する懸念もあり安全とはいえません。であるとすれば、有効な方法は食事の提供に係る手間を減らしながらも確実に食事が提供できる体制の確保です。

最も有効な方法は、いざという時にすぐ提供できる食事を備蓄しておくことです。長期間保存が可能なレトルト食にも介護食に対応したものが多く出ておりますのでそれらを十分な量備蓄しておくことで高齢者への食事体制の確保のみならず、介護職員が自宅で隔離中などに職員の食事として配布することも可能です。一人暮らしなどで自炊が困難な職員もおりますので非常に助かることと思います。

NDソフトウェアでは5年以上の長期保存が可能な非常食として「UAA食品 美味しい非常食・防災食」をご用意しております。形態はやわらか食やムース食など咀嚼・嚥下機能に応じて食べやすいものを揃えております。感染症発生時以外にも自然災害発生時の備蓄としてもご活用いただけます。

▼UAA食品 美味しい非常食・防災食

感染者が出た時の対応について

新型コロナウイルスをはじめとする感染症の感染者が出た場合、介護事業所がどのような対応をすることが望ましいかのポイントを介護職員、利用者それぞれに見てみましょう。

介護職員

介護職員に感染者が出た、または感染が疑われる場合は速やかに管理者に報告すると共に、感染者が出勤しない体制を整える必要があります。

特養等の介護施設では高齢者が外に出る機会は少なく、感染症が流行する冬にはさらに少ないものです。それが集団感染するとなると、感染源は外部からやってきていると考えるのが自然です。特に介護職員が感染に気付かずに利用者と接触してしまって感染が広がってしまうことが大きなリスクといえます。

感染者を出勤させないだけでなく、利用者の健康状態に変化がないか、他の職員に自覚症状はないかも速やかに確認し、自治体や医療機関と緊密な連携を取りましょう。

利用者

利用者に感染した場合、自治体及び医療機関と速やかに情報連携をし、必要に応じて入院する等利用者の生命の安全を確保する策を講じておくことが重要です。介護施設で療養する対応となった場合でも、重症化を避けるため利用者の健康状態を適切に観察、管理し関係職員全員で情報を共有する必要があるでしょう。また他の利用者にも感染しないよう利用者全員の健康状態を介護職全員が情報を共有し把握しておくことは欠かせません。

その際、介護職員には自覚はなくとも大きなストレスがかかってしまうことが指摘されています。そのような対応をせざるを得ない場合の職員のメンタルヘルスをいかに把握し対応していくかも重要なBCP対策です。

毎日の健康管理を適切に行うことが重要

感染症発生時でも事業を継続できるよう定めておくことが感染症BCPですが、もちろん感染発生時だけでなく、通常時からいかに感染を発生させないよう努めているかも大切なBCP対策となります。多くの事業所で実施しているであろう基本的な感染予防対策(スタンダード・プリコーション)を改めて見直し、定期的な清掃や消毒、利用者と職員の健康管理、ケア前後の手洗い、排せつ物の取り扱い、マスク着用の徹底といった感染予防マニュアルにも定めているであろう内容を介護職員全員で再度共有し、必要に応じて訓練していくことも大切です。

また感染発生を予防するためには日常的に利用者の健康状態を適切に観察、把握、情報共有していることが求められます。昨日と比べバイタル値がどう変化しているのか、食事量や排せつ量に変化はないのか。こういった毎日の観察及び記録の積み重ねが利用者の感染が発覚したとしても感染初期で抑えることに役立つのです。しかし通常の介護記録では全利用者の健康状態を把握することは手間もかかり非常に困難となりがちです。

そこで有効な方法が介護記録の電子化です。利用者の健康状態を介護記録ソフトに入力するシステムであれば、利用者のバイタル値等の変遷は視覚的に非常に分かりやすいデータとなります。またタブレットやパソコン等のひとつの機器から全利用者のデータを参照できるため、日常的な健康管理が非常に効率化できるでしょう。

NDソフトウェアでは介護記録ソフト「ほのぼのNEXT」をご用意しております。タブレットやスマホで利用者の健康記録からケア記録まで記録業務をすべて電子化するので情報を管理しやすいだけでなく記録にかかる作業量の効率化にもお役立ていただけます。さらに「Care Palette(ケアパレット)」をご使用いただくと、Bluetooth通信に対応したバイタル測定機器と連携することで測定結果を自動で入力することができ、確実かつスピーディーな記録の効率化につなげることができます。利用者様の健康と安全を守る質の高い介護記録環境を整えていくためにも、ぜひお気軽にご相談ください。

▼ほのぼのNEXT

▼Care Palette(ケアパレット)

まとめ

新型コロナウイルスは未だ介護事業所の大きなリスクとして存在し続けています。改めて感染症BCP対策に取り組み必要な体制の確保や環境の整備を進めることで利用者および介護職員の健康と安全を守ることが求められます。しっかりと計画を立ててそれに沿った行動を行っていくことで感染症の発生リスクの減少ならびに感染症発生時にも事業の安定した継続につながります。

当コラムは、掲載当時の情報です。

参考URL

介護保険最新情報Vol.1111

介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン

ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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