NDソフトウェア株式会社
NDSコラム

介護支援ソフト「ほのぼの」シリーズのNDソフトウェアです。介護業界・障がい福祉業界の、トレンドや情報を発信しております。

介護記録を紙で残すリスクについて

2023/08/22

介護事業所の運営には多くの書類を必要とします。業務を円滑にするためや、管理上必要な書類など毎日何かしらの記録を残し続けることが求められます。また利用者へ提供したケアを記録し続けより良いケアに活かすための介護記録は欠かすことのできない書類であり、利用者の数だけ記録の数も比例して必要となります。
このように大量の記録を要する介護業界において、紙媒体で記録している介護事業所では介護記録等の保管が悩みの種となることも少なくありません。それだけではなく介護記録等を紙媒体で保管している場合、業務に支障をきたすリスクやデメリットもとても多いのです。
今回は介護記録等の書類を紙媒体で行う際に生じるリスクと、その解決策について解説します。

介護事業所の運営には記録が絶対不可欠

介護の仕事では、毎日何かしらの記録を残すことは絶対的な義務です。
理由のひとつは介護の仕事は介護保険制度の指定を受けて実施する事業ですので、運営に透明性が求められるためです。介護報酬を受け取るために必要な提供票の管理や各種加算を取るために必要な記録など、これらの記録はしっかりと残しておかないと仮に業務を適切に行ったとしても証拠がありませんので、最悪の場合は不正請求となってしまうこともあります。

もうひとつの理由に、利用者に対して「質の高いケアを提供するため」が挙げられます。 介護の仕事とは簡潔に言うと「介護を必要とする状態となっても、自分の望む暮らしを送ることができるよう必要な支援を行う仕事」であるといえます。この「必要な支援」を明らかにするためには利用者本人の希望だけでなく、なぜそう希望するのか、なぜその希望が叶わないのか、どうすれば叶うのかなど膨大な情報を分析する必要があります。そして実際のケアにおいても毎日状態を観察し希望の実現に向けたケアを提供できているのか、利用者の状態像に変化は見られるのかといった経過をケア記録して積み重ね、それをまた分析していく必要があります。

つまり介護事業所の運営には日々の記録を残すことは正当に事業を行っていることを証明するために不可欠なものであり、また介護事業所として質の高い仕事をするためには、利用者へのケアの記録は残せば残すほど利用者を分析するための情報が多くなり、それを活用することで質の高いケアに役立つものなのです。

介護事業所の記録では膨大な紙が必要

介護事業所の運営やケアの質の向上のために欠かせない介護記録を紙で残す場合、一日どれくらいの枚数が必要でしょうか。事業所の規模や事業所の種類によって違いはあるでしょうが、まずどの事業所においても一日数枚程度の話ではありません。数十枚~百枚単位で必要となる事業所も珍しくないのです。

利用者の観察結果や提供したケアの記録を残す介護記録は、当然ながら詳細に書き残したほうが利用者の状態像を把握するために役立ちますし、チームケアの助けにもなります。例えば一回の食事の記録でも「〇割摂取した」と食べた量だけを記録するなら大した記録量にはなりません。しかし食べた量が分かった程度では、利用者像の分析にはあまりにも不十分です。何をどれくらい食べた、食べなかった残りはなぜ食べなかったのか、食べている様子はどうだったのか、職員がどのように関わり、それに対しての反応はどうだったのかなど、食事全体で観察すること、アプローチすることはたくさんあります。要点をまとめて記録したとしても、その記録量はかなりのものとなり、さらにこれこそがケアの質を向上させるために機能する記録です。これを一日のサービスで記録していくとなると、利用者一人につき一枚程度で済む話ではないのが分かるかと思います。
そして介護事業所に必要な記録は利用者のケア記録だけではありません。

例えば利用者の一覧表でバイタルチェック、食事量や内服の確認、排泄に関する記録をつける介護日誌や当日の職員の配置、役割を記載した予定表、送迎を行っている事業所であれば送迎表、そのほかにもヒヤリハットや事故報告書といった報告書の類など業務を円滑にするために必要な記録は非常に多いのです。

これらをすべて紙媒体で扱う場合は、一日に大量の紙を消費することになるのは想像に難くありません。

紙記録のリスク

介護保険制度が始まった当初から、介護事業所の運営には大量の紙による記録が必要であり多くの介護事業所がそれに倣ってきたと思います。今もなお紙媒体での記録を主としている事業所も数多いでしょう。

しかし紙媒体での記録には非常にリスクやデメリットが多く、現在の環境下では適切とはいえません。

紙媒体で記録する主なリスク、デメリットは以下の通りです。

保管場所に困る

紙媒体で記録している介護事業所のほとんどが頭を悩ませること、それが記録の保管です。

介護記録の保管には一定のルールがあり、利用者の個人情報が記載されたケア記録は鍵付き書庫に保管していることという規則があります。また保管期間についても管轄の自治体によって多少の差異はありますが、多くの自治体でサービス終了してから5年間は保管することと定めています。

単純に言えば、利用者数が増えるほど保管しなくてはならない紙の枚数は増えますし、利用者が長くサービスを使ってくれる以上、保管しなくてはならない記録は増えるのです。つまり介護事業所は長く運営すれば、それに比例して保管しなくてはならない介護記録が増え続けていくといってもよいのです。

そうなると困るのが保管場所です。大量の介護記録を鍵付き書庫にすべて保管できるほど広い介護事業所ばかりではありません。収納できる場所にロックできるように鍵をつけて無理やり書庫にした結果、備品を収納する場所に困ることや職員しか通らない階段室などになんとか保管したはいいが、避難経路を塞いでしまっているため消防署の指導を受けてしまう事業所もしばしば見られます。

過去の記録を参照する際に困る

1人の利用者が介護事業所のサービスを長くお使いいただいている場合、当然その方の介護記録は長期間記録されているはずです。そうなると、介護記録を綴じるためのファイルがパンパンになってしまい非常に使いづらくなります。そのため多くの事業所は古い記録は綴じ紐で綴じてしまい、ファイルを使いやすくしていると思います。

この場合に困るのが過去の記録を参照する必要が生じた場合です。過去の記録を参照する機会はさほど多くはないかもしれませんが、考えられる一例として開示請求があった場合や、新たなケアが必要となった際の計画作成で、過去の状態を知る必要がある場合などが考えられます。しかし古い書類を一旦別の場所に保管してしまうと探し出すことは非常に困難です。広い保管場所で利用者の名前順に並べて保管しているなら簡単かもしれませんが、そのような事業所はほぼないといってよいでしょう。大体は段ボール箱に無差別に詰められていることがほとんどです。探し出すだけで相当の時間を使うことになるでしょう。

さらに言うと、過去の記録を参照できない場合の大きなデメリットに新しいスタッフがケアの根拠を把握しにくいことがあります。その介護事業所に長く勤務している職員は記録の内容を事細かに覚えていなくとも、利用者の状態変化をそばで観てきたことでなんとなくわかっていることが多いです。しかし勤務して間もない職員はなぜその方にはこのケアなのかといった利用者ごとのケアの仕方の根拠がわかりません。過去の記録を参照できれば辿ってきたケアの変遷を掴めるでしょうが、その記録を見ることができないので根拠もわからずただ言われた通りにケアすることになります。

これは事故に繋がりやすかったり、不適切なケアになりやすいなど非常に良くない風習です。

非常時に消失するリスクが高い

近年は台風や集中豪雨等の水害が頻発しており、介護事業所が被害を受けることも十分にあり得ます。水害以外にも地震や火災など不測の事態により被災するリスクは完全にゼロにすることは不可能です。

もしこれらの災害が発生した場合、大量の紙媒体での介護記録を守りきることができるでしょうか。

答えは、不可能です。

災害時には命を守る行動が最優先です。当然介護事業所にとって記録は非常に大切ですが、段ボールを何箱も抱えて、記録のファイルを何冊も抱えて命を守る行動を取ることはできません。水害や火災が発生し、保管場所が被害を受けた場合、そのほとんどは消失するでしょう。

介護記録の消失は、利用者にどのようなケアを行ってきたかを証明する手立てを失うことであり、事業所の適切な運営に大きな影を落とす要因となり得ます。

LIFE加算が取れない

令和3年度介護報酬改定から新設されたLIFEを活用した加算は、介護記録ソフトを使用していることが前提となっています。

適切に利用者情報等のデータを管理し情報共有、連携を行っていることが算定の要件となる加算の場合、適切にデータを管理していない事業所は算定が困難です。仮に算定したとしても要件を満たすためには多大な労力を支払うことになります。

今後の介護業界はLIFEを算定していることが前提の加算が新設される、または切り替わっていくことが予想されるため、LIFE加算が取れない介護事業所は苦境に追いやられるかもしれません。

紙媒体での記録に比べ初期導入は費用がかかりますが、それに余りあるメリットを享受することができます。

記録の電子化で大幅な効率化を図ろう

介護記録を紙媒体で記録、保管することは介護保険制度がスタートしたばかりの頃はスタンダードでしたが、今現在はそのデメリットやリスクのみが目立つものとなっています。

紙は比較的安価で手に入りますので費用が安く抑えられるといった点はメリットといえるかもしれませんが、デメリットによる業務効率の低下やリスクに繋がる事象発生時に被る損害を見ると、これらは絶対に避けるべきリスクに該当するといえます。

そこで紙媒体による記録で生じるデメリットやリスクを解決する方法ですが、それは介護記録ソフトを使用し記録の電子化を行うことです。

紙媒体での記録に比べ初期導入は費用がかかりますが、それに余りあるメリットを享受することができます。

記録はデータで管理

紙媒体での記録との根本的な違いは物理的な紙媒体での保存か、データ化された情報として保存するかの違いです。例えば、過去一年分の利用者から平均介護度を求める作業をするとしましょう。紙媒体の場合、1年分の利用者の名前をピックアップし、該当する利用者の記録を探し、介護度を書き留めて平均介護度を求める計算をする必要があります。これは1時間程度では終わらない作業量です。しかし介護記録ソフトでなら情報が電子化、データ化されていますので即座に求めることができます。紙媒体の記録と電子情報としての記録は、その記録内容には違いがなかったとしても、その後の活用方法に大きな違いが生じます。特に過去の記録の閲覧が容易であることは大きなメリットです。

非常時のデータ消失リスクを大幅に軽減

水害や火災発生時、紙媒体での記録では記録のすべてを守ることはほぼ困難であることは先述しましたが、介護記録ソフトを使用している場合、その記録の保管場所はパソコンの中です。いざ避難する必要が生じた場合でも、パソコン本体さえ持って避難することができればデータは守られる可能性が飛躍的に向上します。さらに安全性を高めるなら記録をパソコン内ではなく外付けハードディスク等の外部メディアにする、定期的にUSBメモリ等にバックアップを取る、そもそもの記録の保管先を介護事業所内のパソコン等ではなく遠く離れた場所にあるサーバーにインターネット経由で保管するクラウドストレージの利用などでさらに安全性を高めることができます。

LIFE加算と連動

今後の介護保険制度において、各種加算を算定するための必要条件や、上位加算を算定するための必要条件と目されるのがLIFEを利用していることであると言われています。 有り体に言うと、今後の介護業界はLIFEを活用する事業所は上位加算を算定できるなど評価の高い事業所と判断され、そうでない事業所は加算が取れないなど評価の低い事業所と判断される状態になると考えられます。

今後の介護事業所を運営していくにあたり、LIFEに関連した加算を算定できる要件や環境を整えておくことは介護事業所にとって必須であるともいえるのです。

紙媒体での記録では最悪LIFE加算を取れないこともありますが、介護記録ソフトを使用している場合はほぼ確実にLIFE加算を算定する要件に該当してきます。

介護記録ソフトは様々な種類がありますが、導入の際にはLIFEと連動しているかどうかを考えることがとても重要です。

NDソフトウェアの介護記録ソフト「ほのぼのNEXT」はLIFEと完全対応していますのでLIFEへの対応が容易に行えます。その他ケア記録においてもタブレット端末を使用して記録ができるためパソコンに不慣れな方でも扱いやすく、過去の記録や計画書の閲覧が容易など業務を大幅に効率化させることが可能です。

▼ほのぼのNEXT

まとめ

介護保険制度が始まった当初は当然であった紙媒体での記録は、介護記録ソフトの登場によりそのデメリットやリスクが大きく目立つものとなっています。

今後の介護業界は介護記録ソフトを使用していることで算定できる加算が多くなると予想されているため、今なお紙媒体での記録を行っている事業所は早い段階で介護記録ソフトの導入を検討すべきでしょう。

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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