NDソフトウェア株式会社
NDSコラム

介護支援ソフト「ほのぼの」シリーズのNDソフトウェアです。介護業界・障がい福祉業界の、トレンドや情報を発信しております。

令和6年度 障害者総合支援法改正のポイントをわかりやすく解説!

2023/11/09

障がいを持つ方々への社会参加の機会の確保や自立した生活の支援のために必要なサービスを定めた障害者総合支援法が、令和6年度(2024年4月)に改正されます。
この改正でどのようなことが変わるのかは現在も議論が進められていますが、改正内容の方向性はある程度定まってきました。そこで今回は令和6年度に改正される障害者総合支援法改正のポイントをかんたんに解説していきます。

グループホーム利用者が希望する地域生活の継続・実現の推進

障害者総合支援法におけるグループホームでは、障がいにより自力での生活を送ることに何かしらの不安がある方が共同で生活し、相談援助や生活に必要な支援を受けています。
グループホームの利用者は、そのままグループホームで生活を続けたいと希望する方もいる一方で、グループホームを出て一人暮らし等で生活したいと希望する方もおられます。こうした希望に対してグループホームが行うべき支援として、グループホーム退居後も一定期間グループホーム事業者が相談支援を継続することを業務とすると明確化する方向で調整が進んでいます。

かんたんに言うと一人暮らしをしたい方の場合は入居中に一人暮らしの訓練をし、一人暮らしを始めた後もしばらくは支援を続けることをグループホームの役割としてハッキリ示すようにするということですね。明確化されるグループホームの具体的な役割としては以下のような形になると見られています。

入居者に対して

  • 主に夜間の食事や入浴、排せつ等の生活支援
  • 相談業務

一人暮らし等を希望される入居者に対して

  • 一人暮らしに向けた調理や掃除等の家事支援
  • 買い物等への同行
  • 金銭や服薬の管理支援
  • 住宅の確保の支援
  • グループホーム退居後の一定期間

  • 生活状況の確認
  • 生活に関する相談支援業務
  • 地域の障がい者・精神保健に関する課題を抱える者の支援体制の整備

    地域に暮らす障がい者の相談支援の拠点として総合的な相談業務や成年後見制度利用支援事業等を実施する市町村の機関が、平成24年度から法律で位置付けられた「基幹相談支援センター」です。しかし、設置している市町村は半数程度にとどまっています。

    また障がい児、障がい者の重度化・高齢化や「親亡き後」を見据え、居住支援のための相談や体制づくりを市町村の実情に応じて柔軟に実施できるよう定めた「地域生活支援拠点等」は平成27年度に位置付けられましたが、こちらも半数程度の設置にとどまっています。 令和6年度の改正では、これらの機関について設置を努力義務化し地域の相談支援の中核機関として役割・機能の強化を図るよう調整が進んでいます。

    また、現状精神保健福祉士の支援業務は精神障がいを抱える方が主ですが、何かしらの精神保健に課題を持つ方への支援も必要であるとし、精神障がい者だけでなく精神保健に課題を抱える方も対象とする見通しです。

    なお「精神保健に課題を抱える方」をどこまで含むかは現状では明らかになっていません。

    就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化等

    障がいを抱える方の望む生活で「就労」に関するニーズはとても強く、障害者総合支援法では障がい者の社会参加の機会として就労を支援するためのサービスを多く打ち出してきました。しかし就労を希望する障がい者に合った働き方や就労先の選択ができているかという点については、サービス利用前に就労能力や適性について支援する事業所が把握していながらも、成果には結びついていない場合もあることが課題とされています。

    障がい者の就労に関するニーズが多様化するなか、障がい者が働きやすい社会を実現するために一人ひとりの希望や能力に沿った、よりきめ細かい支援を提供することが必要です。そこで令和6年度の改正では新たなサービスとして「就労選択支援」が創設される見込みです。このサービスでは、障がい者本人が就労先や働き方についてより良い選択ができるように、就労能力や適性を客観的に評価して本人の強みや課題を明確化し就労に向けて必要な支援や配慮を整理する「就労アセスメント」の手法を活用し、より良い選択ができるよう支援するサービスになると見られます。

    また一般企業等で働き始めた際に勤務時間を段階的に増やしていく場合や復職を目指す場合、一時的に就労継続支援事業所等を利用できるよう改定される予定です。

    「入院者訪問支援事業」の創設

    精神科病院へ保護入院となった場合等でも孤独感を防ぐ上で外部との面接の機会を確保することは重要とされています。しかし家族との音信がない方の場合は、外部との交流が途絶えやすいことが課題となっています。

    それを受け、尊厳の保持や権利擁護を目的に都道府県が定める研修を修了した「入院者訪問指導員」が患者本人の希望により病院を訪問して話を傾聴する、必要な情報を提供する「入院者訪問支援事業」が都道府県の任意事業として創設されます。

    精神科病院における虐待防止に向けた取組の一層の推進

    精神科病院に入院する患者への虐待を防止するために、組織全体で虐待防止に向け取り組んでいくことの周知や、都道府県の指導監督機能の強化として虐待が疑われる際は予告なしに実地指導を実施できる等、虐待防止の取り組みは今もなお推進されています。

    令和6年度の改正ではこれらがさらに強化するよう見直しを図る見込みです。現在想定されている見直し内容は以下の通りです。

    • 従業員への研修や患者の相談体制の整備等、虐待防止に資する措置を管理者に義務付ける
    • 虐待を受けたと思われる患者の発見時には速やかに都道府県へ通報することを義務付ける。それによって不当な解雇等がないことを明確化する
    • 都道府県等は、毎年度虐待状況等を公表する
    • 国は従業員による虐待に係る調査、研究を行う

    虐待の通報について障害者福祉施設では障害者虐待防止法に規定されていますが、この度の改正で障害者総合支援法にも規定されることになりますので、すべての障がい福祉サービス事業所が虐待の通報義務の対象となると見られます。

    地域のニーズを踏まえた障害福祉サービス事業者指定の仕組みの導入

    障がい福祉サービス事業は、市町村が定める障害福祉計画において地域に必要なニーズを把握しサービスの提供体制の確保を図りますが、そのために必要な事業者の指定は都道府県が行います。これが市町村の定めた障害福祉計画等の円滑な推進に必要なサービス事業者の整備に課題となっているとの指摘がありました。

    そこで令和6年度の改正では、都道府県が事業者の指定や更新を行うことは従来通り変わりませんが、都道府県の指定、更新について市町村が意見を申し出ることができるようにし、都道府県はその意見を勘案して指定、更新に必要な条件を付すことができるよう見直される予定です。

    つまり障がい福祉サービス事業者が指定の更新を受けようとする場合を例に挙げると、更新申請を都道府県に出すのは現行通りですが、都道府県は市町村に申請があったことを通知し、市町村はその通知を受け必要な意見を都道府県に申し出ることができるようになります。都道府県がその意見を認めた場合、サービス事業者に対し更新に必要な条件を付与することができるのです。

    なお、市町村が申し出ることができる内容は、あくまでも障害福祉計画等に定めた地域のニーズや目標に沿うものであるとしています。

    想定される条件の例として以下が考えられています。

    • 事業者のサービス提供地域や定員の変更を求める
    • 中重度の障がい者の受け入れ体制が不足している場合、研修参加等で受け入れ準備を進めるよう求める
    • サービスが不足している近接の市町村に対してもサービスを提供する
    • 事業者の連携体制の構築に記載がある場合、事業者のネットワークや協議会と連携、参加する

    条件を付された事業者がその条件に反した場合、都道府県は勧告、指定の取り消しを行えるとのことです。

    まとめ

    令和6年度の障害者総合支援法改正の大まかな改正ポイントを解説しました。

    印象としては「暮らし方、就労に関する利用者のニーズへの柔軟な対応」「精神障がい者や精神保健に課題を抱える方への対応の充実」「虐待防止の徹底」「関係機関との連携強化」が大きな方向性かと思います。

    また改正のたびに新たなサービスが創設されている同法律ですが、今回も新たなサービスが新設される見込みです。改正の流れとしては支援体制の充実とともに連携を強化しサービスの質を向上させることも狙いでしょう。次回の改正を機に今のうちからサービスの質の向上を目指した取り組みを図ることが大切です。

    新たなサービスの創設や法改正に柔軟に対応していくためには、煩雑な記録や事務仕事をNDソフトウェアの障がい福祉ソフト「ほのぼのmore」の導入で効率化するのがおすすめです。法改正にもスピーディーに対応した実績がありますので、安心してお使いいただけます。

    業務の効率化や電子化を検討されている事業者様や、現在別のシステムをお使いの事業者様の見直しについてもお気軽にご相談ください。

    当コラムは、掲載当時の情報です。

    障害者総合⽀援法対応版「ほのぼのmore」

    障がい福祉サービスのさまざまな業務を総合的にサポートする障害者総合⽀援法対応版「ほのぼのmore」について知りたい・相談したい⽅は、まずはお気軽にお問い合わせください。

    参考URL

    障害者の日常生活及び社会生活を総合的に 支援するための法律等の一部を改正する 法律の施行に関する政省令事項について

    ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
    その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

    PAGE TOP