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NDSコラム

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夜間の人手不足解消やリスクマネジメントに活用できる「見守りセンサー」導入について

2024/02/27

介護ニーズが増大すると見込まれている2025年が目前に迫っています。急激な介護ニーズの増大は介護事業所の人材不足をより深刻にするおそれがあり、その中で人材を有効活用すること、人材不足の中でもケアの質の向上を図ることが介護事業所に求められています。そこで人手不足の解消およびケアの質向上や、リスクマネジメントへの有効なアプローチとして期待されているのが、センサーの活用です。
近年は介護事業所にセンサーを導入することを国が推奨し、補助金も活用できます。
令和6年度介護報酬改定では介護ロボットやICT等のテクノロジーの活用促進として、見守りセンサー等のテクノロジーを導入し、その効果を示すデータを提供した事業所を評価する生産性向上推進体制加算(Ⅰ)~(Ⅱ)が新規加算として新設されるなど、こうした技術の導入は今後ますます導入促進が活発になると見られます。
今回は特に見守りセンサーに着目し、その活用方法について解説します。

人手不足が招くリスク

介護業界は増え続ける介護ニーズに対して人材供給が追い付かず、慢性的な人材不足が続く中でも利用者の自立に向けた質の高い介護を提供することが求められています。

その一方で要介護者の日常生活は常に転倒や急変といったリスクが存在しており、これらの事故が生じるとADLは大きく低下し介護を要する場面が増加するため自立支援はますます遠のきます。利用者の自立を支援するためには、ADL低下となる事態を防ぐため体調管理や安全確保のための見守りが介護事業所にとって非常に重要な業務となるのです。

しかし人材が不足している状況では見守りが必要な利用者に対し満足に見守りが行えず目の届かないところで転倒し骨折したり、居室で急変したが気付かずに対応が遅れてしまい重篤な状態に陥る等の事態が発生するおそれがあります。要介護者は身体に不自由さを抱えていたり、急変する可能性のある疾病を抱えていたりするため事故を完全に防ぐことは困難な部分もありますが、それでも介護事業所側の対応が遅れてしまうと万が一訴訟に発展した際には見守りが不足していたとして不利な状況になることが考えられます。

トラブルが起きないよう緊張を抱えた中で見守りを行うことは介護職員にとって常にストレスがかかります。特に夜間帯の見守りについては人員が限られますので非常に負担が大きく、メンタル面に不調をきたす介護職員もいるのが現状です。

見守りセンサーの種類と活用事例

介護事業所の見守りセンサーは多様な種類があり、それぞれに特長があります。見守りに活用できる機器は以前からありましたが、現在も進化を続けており非常に高機能なものが揃っています。

ベッドセンサー

ベッドの下に敷き、利用者が臥床した状態から身体を起こした場合に感知してナースコールで知らせるタイプのセンサーです。

活用例

  • 介護施設等で転倒リスクの高い利用者の臥床時に使用し一人歩きを予防する
  • 通所介護や短期入所で一時的に休まれる方が動かれる場合にすぐ駆けつけられるようにする

センサーマット

ベッド下の床にマットを敷き、そこを踏むことで感知してナースコールで知らせるタイプです。

  • 介護施設等で転倒リスクの高い利用者に使用し端座位を取った際に早急に駆けつける
  • グループホーム等の出入り口に設置し、人の出入りを感知できるようにする

見守りカメラ

居室内にカメラを設置し、リアルタイムで観察できます。画面内で動きを検知するとアラートで知らせる等の機能があります。映像で観察できるのはメリットといえますがプライバシーの問題を指摘されることもあるためシルエットで見守りを行うシルエットセンサーもあります。

  • 介護施設で常時見守りが必要な利用者の居室に使用し状況を逐次確認できるようにする
  • 出入口付近に設置し離設発生時に早急に対応できるようにする

バイタルセンサー

ベッドセンサーをさらに進化させたのがバイタルセンサーで、ベッドセンサーのように使用しますが体動の感知だけでなく、寝ている状態の利用者の脈拍、呼吸のバイタルサインを測定し睡眠状態であるか覚醒状態であるかを判別します。

  • 介護施設の夜勤帯で利用者が入眠しているか覚醒しているかの巡回の補助に使用する
  • バイタルの異変を感知し急変に素早く対応できるようにする
  • 睡眠リズムを把握し、健康管理やスケジュール把握に活用する

赤外線センサー

任意の場所に設置し、人がそこを通ると赤外線が感知するシステムです。

  • バックヤード等利用者が入ると危険が生じる場所に設置し事故を予防する
  • 出入口付近に設置し夜間の離設発生時に早急に対応できるようにする

見守りセンサー導入のメリット

介護事業所の形態によって様々な場面で用いられる見守りセンサーですが、活用することは負担の大きい見守り業務を効率化し、不測の事態に備えるリスクマネジメントになるなどメリットがあります。具体的なメリットは以下の通りです。

利用者の状況を把握しやすくなる

介護事業所の規模やユニット型か従来型かにより差異はありますが、見守りを要する利用者の数に対し介護職員の数は圧倒的に少ないのが実情です。食堂などで食事の時のように同じ場所で過ごしておられる場合の見守りと、各々の居室で過ごしておられる場合の見守りは異なり、どうしても目が行き届きにくくなります。

ベッドに臥床している利用者にベッドセンサーやセンサーマットを使用することで、離れた場所にいても臥床していると判断できることで介護職員の目だけでは行き届かない部分を見守りセンサーを併用することで補い、多くの利用者の状況を把握し安全を確保できるようになります。

介護職員の負担を和らげる

前述の通り、介護施設では夜間帯ほど少ない職員数で多くの利用者をケアする必要があります。夕食~就寝までを例に挙げると夕食介助、口腔ケア、排泄ケア、更衣介助、居室誘導と就寝介助、眠剤の内服介助、それぞれのケアの記録といった業務があり、それを限られた人員でこなすため見守りに割ける時間はあまり取れないのが実情です。

夜勤帯ではさらに人員が少なくなり、排泄に起きられた利用者や中途覚醒してしまった利用者の対応や転倒リスクの高い認知症を有する方のケアも必要となります。特に転倒リスクの高い方への対応は急務となり、対応が遅れると転倒し骨折する事故に繋がることも少なくありません。その際は救急車を呼んだり、管理者や家族に連絡を取るなどの対応に追われ、他の利用者を見守ることは難しくなり事故リスクが増したりさらに業務がひっ迫したりします。

こうした実態は、介護職員の強いストレス源となり夜勤のない職場を希望する場合や最悪の場合は離職につながります。

転倒リスクの高い方へのセンサーマットや容態の観察が必要な方へのバイタルセンサーといった見守りセンサーを活用することは目だけでは行き届かない方の安全を確認する手段となり職員の安心感に繋がるだけでなく、いざ緊急事態が発生した際の対応の優先順位をつける判断材料にもなります。その結果少ない人員でも心理的に負担の少ない業務を遂行することに繋げられるのです。

人手不足解消の手助けになる

慢性的な人材不足の介護業界では、処遇改善加算で介護職員の収入を増やすなどの人員の流出を防ぐ取り組みが行われています。と並行して少ない人員でも業務を効率的に行い、負担を減少させることも推奨されています。見守りセンサーの使用は限られた人員で負担の大きい見守り業務を補うことで他の業務にかかる時間の確保や、ストレスで離職してしまうことを避けることに繋げることが期待できます。

見守りに対して介護事業所がしっかりと対策を講じれば、職員にとっては安心して働ける事業所となり離職が減るだけでなく、対策が浸透すればぜひ働きたいという新たな人材の呼び水になることも期待できます。

万一の際の証拠になる

介護事業所で転倒からの骨折や急変して死亡した等の事故が生じた際、どのような対応を行ったかを利用者家族に説明する必要があります。

すべての利用者を物理的に見守ることは不可能であり、事故を完全に防ぐことは困難なのですが、転倒リスクがありながら1人歩きをして転倒に至った、急変リスクがありながら急変時に対応が遅れた等の説明は時に利用者家族から対応に問題があったとして訴訟に発展してしまうことがあります。

この際に介護事業所を守るものは、その時の状況や職員の対応に過失がなかったことを明らかにする証拠となる記録です。

バイタルセンサーの情報と対応の記録があれば急変時の具体的な時間が判断でき、対応した時間が適切であったかの証拠になり得ますし、見守りカメラの情報と対応の記録があれば利用者がどのような行動で転倒に至ったか、また職員がどのように応対したかの証拠になり得ます。

訴訟に発展しないことが一番ではありますが、いざという時に職員の正当性を証明する手段があることは事業所としても働く職員としても非常に安心できるものになります。

見守りセンサーは介護ソフトと連携してはじめて有効活用できる

見守りの効率化を図り負担を軽減する、リスクマネジメントに繋げることに期待できる見守りセンサーは、単体で使用した場合はあくまでも利用者の何かしらの行動を見える化したり知らせたりする機能が主となるものが多くあります。そのため、介護ソフトの記録と連携することで、ICT機器として真価を発揮します。

例えば利用者が離床してセンサーが作動し対応した場合、センサーが鳴った時間や対応結果を記録に残す必要があります。見守りという業務は見守った結果を記録に残してこそ意味があります。ですが複数のセンサーを活用すると見守りができる範囲が増えた分確認するものや記録しなければならない量も増え、結果的に業務の負担は増えたと感じるかもしれません。

またセンサーで感知した利用者の変化が事故に繋がった際、緊急対応が最優先となり記録は後回しになります。後に記録に残す際に正確な情報を残さないと行政への報告や万一の訴訟の際の有効な証拠にならないばかりか、申し送りや再発予防対策の検討材料にも不十分なものとなり改善に繋げることが難しくなります。

そこで、センサーと介護記録ソフトを連携させてどんな時にどのような記録を残すかルールを決めて運用することで、センサーを最大限有効活用することができます。

介護ソフトと連携させることでセンサーが作動した時間は自動で転記されるため、メモからの転記や紙やExcelの台帳へセンサー作動時間の記載の手間を省くことができ、いつ、どこで、誰がという具体的な情報を記録し介護ソフト上で一元管理ができます。

厚生労働省はICT機器を活用した見守りが人員基準の緩和の要件にもしており積極的に活用を推奨しています。冒頭でも説明しましたが、令和6年度介護報酬改定では見守りセンサーをICT機器として活用している事業所を評価する加算、生産性向上推進体制加算が新設されます。この加算はひとつ以上見守り機器等のテクノロジーを導入し、再発防止への取り組みを定期的に行う場合等が要件の(Ⅱ)が10単位/月、見守り機器等のテクノロジーを複数導入し、職員の適切な役割分担を図っている等の要件を満たす場合の(Ⅰ)が100単位/月という加算ですが、いずれも1年以内に1回、利用者のQOLの変化や残業時間の変化等、業務改善の取り組みによる効果をオンラインで報告することが要件です。見守りセンサーを業務改善に紐づけて加算として算定可能にするには、介護ソフトと連携させて見守りセンサーの機能を最大限活用することが前提となり、利用者にとって安全安心に過ごせる事業所づくりと職員の働きやすい職場づくりに大いに役立つのです。

導入する前に知っておきたいこと

介護事業所の業務の手助けとして積極的に導入を検討したい見守りセンサーですが、導入する前に知っておきたい注意点があります。以下を把握しておくことで導入の検討がスムーズに進む、導入後の失敗を回避することができます。

あくまでもセンサーは補助であることを理解する

見守りセンサーは、職員の目に代わって見守りをしてくれるものではありません。あくまでも職員が行う見守り業務の補助という立ち位置が見守りセンサーの正しい活用方法です。

センサーがあるから見守りしなくてもよいという理解では、利用者の安全を守りきれず事故に至ってしまいます。

また見守りセンサーがあるから職員は少なくても良いという理解もよいとは言えません。ICT機器を活用した見守り環境を構築すると夜間の人員基準は緩和が認められてはいますが、だからといって積極的に夜間の人員を減らす方向では職員の負担は逆に大きくなってしまうでしょう。見守りセンサーを活用することで夜間の配置職員がギリギリの中でも安心して業務ができるよう環境改善を図ったり、日中に必要な人員を確保する手立てにしたりすることができ、人員配置基準の緩和に役立てることが期待できます。見守りセンサーは利用者、職員の安心安全を確保するために活用できる手段のひとつであり、解決策そのものではないことに注意が必要です。

いつ、どこで、誰に導入するかを明確にしておく

見守りセンサーは利用者の行動や状態の変化を知ることができ非常に便利ですが、安易に使いすぎると逆に負担が大きくなることがあります。例えばセンサーマットの場合は利用者が床に足を着けると作動します。10人に使用した場合、10人が一斉に端座位を取ると一斉にコールが鳴ることになります。

安全を確保するためのセンサーですが、限られた人員で一気にコール対応することは不可能です。またセンサーの対応に追われて職員が業務できない事態になってしまうこともしばしばです。

これでは逆に介護職員にとって働きにくい環境になってしまいますので、導入を検討する際は施設の実態に応じて、急変リスクの高い利用者がいるからその方の見守り補助としてバイタルセンサーを使う、転倒リスクの特に高い利用者に限定してセンサーマットを使うなどどの部分に使うかを明らかにしておくことが大切です。

また見守りセンサーを導入した数だけ、そこから得られる情報は膨大になっていきます。それらすべてを記録することは非常に手間がかかり、いざ情報を活用するとなったら該当データを調べるだけでも相当な時間を要します。だからこそ見守りセンサーと記録を連携させ、大切かつ膨大な情報を正確に残せるようにする、必要な際に必要な情報を探し出しやすくすることが大切なのです。

補助金が使えるかどうかを確認しておく

見守りセンサーは導入する機器によって変動はありますが、安い費用とはいえずある程度の経費がかかります。しかし国は介護事業所の積極的なICT機器の活用を推奨しており、その導入に補助金を出しています。

前年度実績では生産性向上に資する計画に沿った導入の場合最大で3/4の補助金(上限金額あり)が出ています。

今年度は補助対象に「介護ロボットやICT等を活用するためのICTリテラシー習得に必要な経費」も盛り込まれさらに拡充された「介護テクノロジー導入支援事業(仮称)」として予算の整備が進められています。

見守りセンサーの導入を検討する際に、補助金の受付が開始されているのかを確認し積極的に補助金を活用することで負担の少ない導入に繋げることができるでしょう。

<参考:令和6年度概算要求の概要(老健局)の参考資料
https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/24syokan/dl/gaiyo-12-2.pdf >

まとめ

見守りセンサーの活用は令和6年度の介護報酬改定でもICT機器としての見守りセンサー等を活用したことを評価する加算が新設される等、人材不足の介護業界において見守り業務の効率化を図り生産性を向上させることや、利用者、職員双方の安心と安全に繋がることが大いに期待されています。ICT機器としての見守りセンサーの活用により業務負担の軽減や生産性向上に繋げるには記録との連携が必須です。

補助金を積極的に活用し、質の高い介護事業所づくりに役立てていきましょう。

補助金の開始時期や補助金の要件についての情報をチェックし、介護ソフト等の導入が必要であればNDソフトウェアにお気軽にご相談ください。

当コラムは、掲載当時の情報です。

参考URL

令和6年度介護報酬改定における改定事項について

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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