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NDSコラム

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2020年開始予定のCHASE科学的介護知っておきたい内容

2020/06/25

2025年、団塊の世代が後期高齢者になり介護需要がより一層高まると見込まれる中、厚生労働省は介護の質の向上、自立支援のより一層の推進を目的に、「CHASE」という介護データベースを2020年度夏頃に本格稼働することを目指しています。介護の分野において、現在いくつかの種類のデータベースが稼働しているのですが、この「CHASE」とはどのようなもので、CHASEが稼働することにより介護業界にどのような影響をもたらすのか、またCHASEの稼働にあたっての課題はどのようなものがあるのかを解説いたします。

▼前回の「科学的介護データベース「CHASE」とは?:CHASEコラム(第1回)」とあわせてお読みください。
 

現在稼働している介護分野のデータベース

今現在で実際に稼働している介護分野のデータベースは以下のものがあります。

介護保険総合データベース

介護保険総合データベース(介護DB)とは、平成25年度から運用が開始されたデータベースで、各市町村の介護保険被保険者の要介護認定情報、介護保険レセプト情報を収集しています。以前は任意での収集でしたが、平成29年の介護保険法改正により、市町村から厚生労働省へのデータ提供が義務化されました。
 
情報を収集する目的は「介護保険事業計画の作成・実施及び国民の健康の保持増進及びその有する能力の維持向上に資するため」とされています。(※1)
収集される情報からは各市町村の要介護分布や使っているサービスの種類や回数などを分析することが可能ですが、実際にどのようなサービスを受けているかというサービスの内容までは把握できず、現段階では行政のみの利用に留まり第三者にデータを提供した実績はありません。今後目指すべき姿として、利用目的が公益性の高いものの場合に第三者への提供を可能とするとされています。(※2)
 

VISIT

VISITは、全国の通所・訪問リハビリテーションの事業所からリハビリテーションマネジメントに係るデータを任意に収集するものです。収集するデータの内容は対象利用者の心身機能、活動、参加、環境因子といったICF(国際生活機能分類)に沿った情報や、リハビリ計画書、サービスの実施内容などです。平成28年度から任意で情報提供する形で運用が開始されていますが、平成30年度よりVISITへデータ提供した事業所に対しての評価として「リハビリマネジメント加算(Ⅳ)」(※3)が新設されています。2019年3月から、より効果的なリハビリテーションマネジメントの推進のために利用者単位、事業所単位で提供された情報に対してフィードバックが行われています。
 
リハビリテーションは利用者の自立支援に深く関わることの多いサービスであるのですが、VISITの現状においてはあくまでも対象が通所・訪問リハビリテーションの利用者であり、介護保険を利用する要介護認定者全体の自立支援に活用することは困難といえます。
 

「CHASE」とは科学的介護を実践するために必要なデータベース

2020年度に稼働を目指す「CHASE」(Care HeAlth Status&Events)とは、先述しました「介護保険総合データベース」「VISIT」に不足している情報を補完するためのデータベースとしての運用が見込まれているものです。
 
今現在、介護事業所が提供している介護サービスにおいてどこまで狙った効果が出ているか、どのようなリスクが生じているかについて、科学的な裏付けのある情報を厚生労働省が充分に収集できていないのが現状です。
さらに、今後ますます需要が高まると見込まれる介護業界には介護職員の働き方改革と質の向上を両立させる手立てが必要としており、そのためには科学的手法に基づいた分析を進めながらエビデンス(根拠)を蓄積、活用していくことが必要とされています。(※4)
「CHASE」により収集したデータを分析し、科学的な根拠に基づいた成果を事業所にフィードバックすることで科学的介護の実践を図るとともに質の向上を図る狙いがあるのですね。
 
「介護保険総合データベース」「VISIT」「CHASE」を連結し、総合的なビッグデータとして情報の収集分析を行い、介護業界においても根拠に基づいたケアが実践できることで介護の質の向上を図り、その結果適切な介護サービスを受ける利用者は自立支援に近付くことができるというイメージです。

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「CHASE」で収集する基本的な項目とは

「介護保険総合データベース」では利用者の基本情報やレセプトの介護保険の利用情報、「VISIT」ではリハビリサービス利用者の課題分析、リハビリテーションの計画書や実施内容が主に収集している情報でしたが、では「CHASE」は、どのような情報を収集するのでしょうか。
 
2018年3月の段階では「CHASE」のデータベースに用いる初期項目として265項目が挙げられていましたが、2019年7月の検討会において整理され、現在は合計201項目がデータベースに用いる初期項目として設定されています。今後の状況次第で修正・追加を行っていく予定とされています。
 
201項目の内訳はそれぞれ利用者の基本情報や既往歴、ADLなどの「総論」、食事形態や誤嚥性肺炎の既往などの「口腔」、診断からケアの実施とその評価を一連の流れとする「認知症」、食事摂取量や栄養状態といった「栄養」の4つに分類されています。
 

なるべく多くのデータが欲しい「基本的な項目」

201項目の中でも「基本的な項目」としてできるだけ多くの事業所に入力されるべき30項目が挙げられています。つまり、集めれば集めるほど科学的な分析が可能になるデータということですね。  

総論

保険者番号、被保険者番号、事業所番号、性別、生年月日、既往歴、服薬情報、同居人等の数・本人との関係性、在宅復帰の有無、褥瘡の有無・ステージ、Barthel Index(移乗、移動、食事、排せつコントロールなどの基本ADL)  

口腔

食事の形態、誤嚥性肺炎の既往歴等  

認知症

認知症の既往歴等、DBD13(認知症行動障害尺度)、Vitality Index(意欲の指標)  

栄養

身長、体重、栄養補給法、提供栄養量(エネルギー)、提供栄養量(タンパク質)、主食の摂取量、副食の摂取量、血清アルブミン値、本人の意欲、食事の留意事項の有無、食事時の摂取・嚥下状況、食欲・食事の満足感、食事に対する意識、多職種による栄養ケアの課題
 
今後、モデル事業所の実施状況次第で変更や修正を行いながら2020年度中の運用を目指しています。
 

「CHASE」の課題とは

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科学的な根拠に基づいた質の高い介護のために期待される「CHASE」の課題は以下のものがあります。

調査の事務負担が増すのでは

利用者の生活を支える介護業界は求められる情報が広範囲に渡るので、「CHASE」への情報提供のためにはたくさんのデータを入力する必要があり、それが現場の負担にならないかというものです。
そこで、一定数の事業所ですでに電子化されているであろう情報や、電子化が進んでいる事業所への情報提供を促すとともに、今後はなるべく負担にならないシステム構築や項目の絞り込みが課題とされています。
一方で「VISIT」のように「CHASE」においても情報提供に協力する事業所へのフィードバックやインセンティブなども検討されており、積極的な協力は事業所の質の向上に資することが大いに期待できるでしょう。そのためには情報や記録の電子化を図ることが重要になってくると思われます。
 

幅広い職種で同じ評価ができる必要がある

介護業界は介護職のみでなく、様々な職種が一人の利用者のケアのために連携しています。「CHASE」で収集する項目においても多職種が関わるため、項目ごとの評価が職種ごとに変わってしまうおそれがあります。そのために食事形態を文字情報でなく写真にするなど、どの職種でも同一の評価が可能なガイドラインの設定や研修を行うことが必要とされています。
これについても介護記録などを電子化することで対応が可能です。
 

QOLをどう評価していくか

介護の現場は、利用者の機能向上や自立支援のみを図ればよいのではなく、利用者本人の生活への満足度や本人の望む社会への参加、幸福感といったQOLの向上が大きな目標となります。既往歴や栄養状態、ADLなどを「CHASE」で分析するだけでは質の高い介護を科学的に行うには不十分なため、本人の意思の尊重、本人の主体 性を引き出すようなケアの提供方法等をどのように現場にフィードバックしていくか、「CHASE」に取り込んでいくかが課題とされています。
 

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まとめ

2020年度の稼働を目指す「CHASE」とは、すでに運用されている介護保険総合データベース、VISITに足りない情報を補完し、それぞれの情報を連結しビッグデータとして分析することで介護現場の質の高い介護サービスを提供し利用者の自立支援を科学的根拠に基づいて行う、科学的介護を可能とすることに期待されているものです。今後の報酬改定でも利用者への「CHASE」に関係した加算が新設されると思われますので、介護記録や基本情報の電子化とともに科学的根拠に基づいた介護を提供できる事業所を目指していくことが必要です。
 
★今後こちらのコラムでは、「CHASE」の最新情報を随時連載していきます!お楽しみに!

参考文献:
※1_介護保険総合データベース 要介護認定情報・介護レセプト等情報について
※2_介護領域のデータベースにおける今後の取組等について
※3_「医療・介護データ等の解析基盤に 関する有識者会議」(第10回) 参考資料集
※4_科学的裏付けに基づく介護に係る検討会 取りまとめ
 

(※2)2020年6月25日時点の「第5回科学的裏付けに基づく介護に係る検討会資料」を参考としました。
現在は、「要介護認定情報・介護レセプト等情報の提供に関するガイドライン」(p6-p7)の資料の通り、
介護DBは平成30年度より第3者提供を開始しております。
その他の内容については、掲載当時のものです。

更新日:2020年8月17日

 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
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2020年5月より利用申込が開始されたCHASE(チェイス)と科学的介護の概要を解説!
※2020年6月現在の情報です
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ライター 寺田 英史
短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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