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NDSコラム

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認知症の介護ポイント!コロナウイルス禍でもできる予防策(1)

2020/06/15

介護が必要な高齢者の原因疾患の一つに認知症があります。認知症とは以前は痴呆症と飛ばれており「何もわからなくなる病気」とされていましたが、今は「認知機能に障害が出る疾患」と考えが改まっています。今の新しい生活様式に沿った環境でも認知症予防や認知症の進行を予防するためには認知症とはどういう病気で、どのようなケアが必要かを再確認することが必要です。今回は、認知症という疾患の解説と、予防のためのケアについて解説します。

介護事業所は認知症の進行予防に様々なケアをもって臨んでいますが、近頃の新型コロナウイルスにより労働環境や生活環境は激変しました。利用者にとっても外出できないなどの弊害が出ており、閉鎖的な空間で過ごすことで認知症が発症するのではないか、認知症が進行してしまうのではないかと懸念されています。今の新しい生活様式に沿った環境でも認知症予防や認知症の進行を予防するためには認知症とはどういう病気で、どのようなケアが必要かを再確認することが必要です。今回は、認知症という疾患の解説と、予防のためのケアについて解説します。

認知症とは?

認知症という疾患は「獲得した複数の認知機能や精神機能が日常生活や社会生活に支障をきたすほどに持続的に障害された状態」です。
例えば私たちが夏のある朝、天気予報を見て最高気温が32℃、降水確率が70%であったとしましょう。仕事に行くとした時、私たちは「今日は32℃だから半袖で十分だな」「雨が降ってもいいように折り畳み傘を持っていこう」「雨が降るから電車通勤の人が増えるかもしれない。少し早めに家を出よう」などと様々なことを考えてそれに合わせて行動します。 この行動は天気予報を見聞きして情報を収集し、過去の経験などから得た知識を記憶から引き出して自身の適切な行動を複合的に判断している状態なのです。こういった様々な事柄を複合的に判断する機能を認知機能といいます。
認知症の方はこの認知機能が障害されるため、障害の度合いによって適切な行動や適切な認識が一部できなくなってしまう状態なのです。つまり、痴呆症と呼ばれていた頃の「何もできなくなる病気」という認識ではなく、「認知機能の障害のために日常生活に一部支障をきたす病気」という理解のほうが正しいでしょう。

認知症の症状とは

認知症の症状は「中核症状」と「周辺症状」があります。中核症状とは認知症の方にほぼ共通して見られる症状であり、対して周辺症状とは、中核症状がある認知症の方が現実の生活に適応しようとした時、その認知機能の障害から様々な心理症状や行動症状を起こすものです。周辺症状は認知機能の障害以外にも本人の体調や価値観などの個性によって症状の現れ方が変化するのが特徴です

中核症状

記憶障害 記憶を司る海馬がダメージを受けることにより覚えることができない、覚えておくことができない、思い出すことができないといった症状が見られます。

見当識障害

時間や場所、季節や時間など、周囲を正しく認識できなくなる状態を見当識障害、または失見当識といいます。

失認・失行

失認とは目で見えている、耳で聴こえているなど感覚器の機能は障害されていないにも関わらず目で見たものや耳で聴いたものを正しく認識できない状態のことをいいます。家族の顔を見てもそれが誰か分からなくなるなども失認にあたります。
対して失行とは立つ、歩く、座る、持つなど身体機能は障害を受けていないにも関わらず服の着方が分からなくなる、トイレの仕方が分からなくなるなど目的に応じた行動がとれなくなる状態のことをいいます。

計算力や判断力の低下

複雑な計算や複合的な判断などが認知機能の低下により難しくなる状態です。買い物した代金を支払えない、道路を歩いていて危険な車道に出てしまうなどといった症状が見られます。

実行機能障害

認知機能の低下によって、一連の行動に必要な計画、実行などが困難になる状態です。
例えば、私たちは「お風呂に入る」という一言で自分がどのような手順でお風呂に入るのかを思い描けるかと思いますが、その一言の内容は
・お風呂という場所まで移動する
・脱衣する(上着、下着、靴下など)
・体を洗う(髪の毛、体など)
・湯舟に浸かる
・温まったら湯舟から上がる
・体を拭く
・着衣する

といった複雑な行動が含まれています。私たちはそれを複合的に判断して計画し行動しますが、認知症の方は実行機能障害のために「お風呂に入る」と言われてもどのような行動をとればいいのかの理解が困難な状態なのです。

周辺症状

周辺症状は「行動症状」「心理症状」に分かれており、中核症状を有する利用者の体調や精神状態、外部環境によってさまざまな症状が見られます。

行動症状

・徘徊
・帰宅行動
・不潔行為
・収集癖
・異食 など

心理症状

・不安感が続く
・抑うつ
・幻覚や妄想
・不眠
・感情失禁 など

周辺症状は認知機能に障害を持った方に見えている世界と現実世界とのギャップにより起こるものです。あなたが突然見たこともない街に一人で立ち、街ゆく人はみな自分が聞いたこともない言葉で話していたと想像してみましょう。自分が元いた場所に戻るための方法を探して歩き回ったり、自分はどうなるのかと考えて不安になったりといった行動を取ることでしょう。
それは自分にとっての世界と目の前に見えている世界は「違う世界」であると認識しているからです。
認知症の方も同じようなギャップを感じて、私たちには一見理解しがたい行動を取ってしまうのです。
他にも、自分自身が「物を大事にして捨てない」という価値観を持っていた場合は、使い捨てのおしぼりや使用済みのティッシュなど、私たちの判断では「捨てるもの」とされているものでも認知症の方はそれを認識できず「もったいない」という価値観で捨てずに溜めこんでしまうといった収集行動が見られるなど、周辺症状は認知機能の低下によるものであったとしても、その背景に何かしらの要因が存在していることがほとんどです。

認知症の原因となる疾患

認知症の原因となる疾患は非常に多岐にわたりますが、代表的なものはアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症です。それぞれの疾患による認知症は症状の現れ方にある程度の特徴が見られます。

周辺アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞が脱落し、脳が委縮していくアルツハイマー病を原因として起こる認知症のことです。なぜアルツハイマー病を発症するかは現在ではまだはっきりとは分かっていません。アルツハイマー型認知症は記憶の障害を中心に脳の機能全体が徐々に失われていきます。ぱっと見はちょっとした物忘れ程度にしか見られないところから発症するため、はっきりと症状が現れる頃には症状が進行していることが多いです。
初期には記憶の障害からいつも探し物をしている、買ったものを忘れて同じものを買ってくるなどの行動障害や、すぐに忘れてしまうことへの不安感、抑うつ状態なども見られる場合があります。
症状が進行してくると季節や場所などが分からなくなる失見当識が顕著に見られるようになり、言葉が分からなくなる失語が進行するため自発的な会話があまり見られなくなります。
後期になると発語や思考活動は見られなくなり、寝たきりの状態となります。

脳血管性認知症

脳血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患でダメージを受けた脳の箇所によって発症する認知症です。アルツハイマー型認知症とは違い、脳のどこがダメージを受けたかによって症状の出方は人それぞれです。マヒや食事を飲み込む嚥下機能などの神経症状を伴うことが多いです。
ダメージを受けた箇所の認知機能や運動機能、神経症状が急激に現れますがその後のリハビリ次第では症状の進行を抑えることもできます。しかし、脳血管疾患の再発などによりまた脳がダメージを受け急激に認知症が進行するといったリスクもあります。

レビー小体型認知症

レビー小体という物質が脳の神経細胞に出現することにより認知症になるものですが、詳しい原因ははっきりしていません。レビー小体型認知症は幻想、幻覚、幻聴などが見られたり、動作がゆっくりになる、表情が無表情になる筋肉がこわばり動きにくくなるといったパーキンソン病に似た症状が現れたりの症状が特徴的です。症状が見られない場合との差がはっきり分かれており、周囲から見ると急激に人が変わったかのような印象を受けてしまうことがしばしばあります。

ピック病

ピック病とは前頭側頭型変性症に伴う認知症のことで、初老期の認知症に多く見られます。前頭側頭葉変性症は思考や感情、性格、理性などの働きを担う前頭葉と記憶、言語、判断力、聴覚などの働きを担う側頭葉が委縮することで認知機能の障害が起こります。症状が現れると急に性格が変化する、感情を抑えきれず怒り出すなど周囲から見ると人が変わったように見えてしまうのが特徴です。
また、決まった行為を決まった時間に毎日しないと気が済まないといった「常同行動」を取ることが多く見られます。この常同行動を止められると怒り出す、暴力を振るうといった感情を抑えられない行動に出ることもしばしば見られます。こういった常同行動はピック病の症状であることを理解した関わりが重要です。
次回はこちらの続き「認知症の介護のポイントとは?コロナウイルス禍でもできる予防策を解説(その2)」をおおくりします。 入浴方法に応じた入浴介助の手順内容になりますのでお楽しみに!



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参考文献:
政府広報オンライン もし、家族や自分が認知症になったら 知っておきたい認知症のキホン
厚生労働省老健局 認知症施策の総合的な推進について (参考資料)
公益社団法人大阪府看護協会 認知症ケアマニュアル

当コラムは、掲載当時の情報です。



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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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