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認知症の介護ポイント!コロナウイルス禍でもできる予防策(2)

2020/06/18

介護が必要な高齢者の原因疾患の一つに認知症があります。認知症とは以前は痴呆症と飛ばれており「何もわからなくなる病気」とされていましたが、今は「認知機能に障害が出る疾患」と考えが改まっています。今の新しい生活様式に沿った環境でも認知症予防や認知症の進行を予防するためには認知症とはどういう病気で、どのようなケアが必要かを再確認することが必要です。

今回は、認知症という疾患の解説と、予防のためのケアについて解説します。「認知症の介護のポイントとは?コロナウイルス禍でもできる予防策を解説(その1)」の続編です。是非あわせてお読みください。  

認知症介護のポイント

認知症介護は、家族にとっても介護職にとってもストレスとなりやすいものです。その原因の一つは「認知症という疾患を正しく理解できていないこと」です。認知症とは以前獲得した認知機能が障害を受けるものであることは先述の通りです。認知症の方は今現在の目の前の世界がどのような世界であるかを正しく認識できない状態なのです。そこに私たちが「現実はこういう世界だからこうしろ」と言ったところで認知症の方はそれを受け入れられるはずもなく様々な、私たちにとっては問題行動であるような行動を取る、心理状態に陥るといった状態になってしまうのです。認知症を正しく理解したうえでの認知症の方への介護のポイントとして、介護者がどのように認知症のケアにあたればよいかは以下の通りです。  

認知症の方に見えている世界の登場人物になる

認知症の方が見ている世界と私たちが見ている世界は同じ空間であったとしても認識が違います。それこそ介護職を家族と認識していることもあれば家族を他人と認識していることもありますし、子育ての真っ最中や仕事をバリバリとこなしているのが現在の自分と認識していることもあります。認知症の方のケアにあたるうえでやってはいけないことは「本人の認識の間違いを正すこと」です。認知症の方に見えている世界は今見えている世界が本人にとっては正解の世界であり、それを間違いだと指摘する人間は「話の通じない者、邪魔をしてくる者」といった風に捉えられかねません。自分にとって不都合な人間とは接したくないのは人間誰しも同じです。つまり、我々がいかに現実を認識してもらおうとしても、その行動が利用者とのコミュニケーションを断絶してしまいかねないものだということを理解しましょう。認知症の方が見えている世界を会話から想像し、その見えている世界を否定することなく登場人物になれば、認知症の方は「話を分かってくれる人」と感じ、安心感を得ることができます。その安心感が情緒の安定につながっていくのです。  

行動ではなく感情に目を向ける

認知症の方は複合的な判断力など、認知機能は失われやすいですが、感情においては我々と同じ喜怒哀楽を変わらず持っている場合がほとんどです。つまり、認知症の方がとる周辺症状は、それがどんな行動であったにしろ何かしらの感情が起因となっていることが非常に多いのです。例えば夜眠れずに深夜を過ぎても徘徊を繰り返す認知症の方がいたとしましょう。介護職や家族は「深夜なのにいつまで起きているんだ」という、深夜なのに眠らずに歩き回るという行動に目を向けがちです。しかし、ここで認知症の方の感情に目を向けてみると「眠れない、どうすればいいか分からず歩き回っている」という感情を読み取ることができます。その感情は場合によっては自分が今どこいるのか分からない、ここにいていいのか分からないという不安もあるでしょうし、こんなに暗いのに家族はどこに行ったのだという怒りの感情もあるかもしれません。この感情に目を向けずに行動だけ正そうとしても認知症の方は自分の気持ちを解決できずに同じ行動を繰り返してしまいます。私たちの目から見て理解しがたい認知症の方の行動も、その裏にある感情に目を向けることで行動の意味が理解できることもありますし、その結果行動が落ち着くこともしばしばです。なぜ認知症の方がそのような行動をとるのか、その裏の感情に目を向けましょう。  

認知症の方に「今」の役割を持ってもらう

認知症の方が「子供が帰ってくる」「仕事に行かなくてはいけない」といって徘徊や不安の訴えなどを行うことはしばしばあります。それらはすべて「自身にとって役割を自覚できていた頃」であり、いわば自身が社会生活の中での居場所を強く認識していた状態でもあります。なぜ自身がその頃に戻ってしまうかを考えると、現在の自分に何も役割がなく、自身の社会的な存在意義を感じられないのかもしれません。 私たちが「昔は良かった」と回顧するのと似たようなもので、認知症の方は時間や現在の状況を正しく理解できないために自身が一番充実していた頃に返ってしまう一種の心の適応規制ともいえます。認知症の方を介護するにあたり、本人のできないことを理解しつつできることに着目し、その役割を持ってもらうことで「あなたの存在は私たちに役に立っている」という実感を本人に感じてもらうことができれば、認知症による周辺症状は穏やかになる場合が多く知られています。 そのためにはそれぞれの認知症の特性や個人差を理解し、本人の生活史や価値観に合った役割を持ってもらえるように支援することが重要になってきます。    

新型コロナの影響の中で認知症を予防するケアの心得

認知症について解説をしてきましたが、今現在は新型コロナウイルスの影響で外出できない、家族と面会できないなど介護施設、在宅サービス問わず未曾有の対応に追われています。認知症の方は今の新型コロナウイルス禍による自粛などの対応は正しく認識できていない方が多いでしょう。その影響で狭い空間で過ごさざるを得ず、結果的に認知症を発症する方や認知症が進行する方が出るかもしれません。そのような環境下であっても認知症の予防や認知症の進行予防のためにぜひとも実践していきたいケアを紹介します。  

生活習慣病や生活不活発病を防止する

認知症の発症と糖尿病や脳血管疾患といった生活習慣病は関連性が高いとされています。新型コロナウイルスの影響で外出できずに家庭内や施設内で過ごす方々は活動量が低下し病状の悪化や生活不活発病の進行が心配されます。これらを予防していくためには新しい生活様式に沿った適切な運動とともに生活習慣病の進行を防ぐための栄養管理などが必要です。  

生活の中で手伝えそうなことは手伝ってもらう

認知症の方やそうでない方でも生活の中で「できるのにやってない行為」はたくさんあると思います。 例えば座ったままでもできる洗濯物をたたむ仕事、テーブルを拭く、掃除機をかけるといった清掃作業や洗い物など、できることは非常にたくさんあります。男性の認知症の方で、今までそういった家事をしたことがなかった方でも自分が「できる」と認識し、私たちがその役割に感謝することでその方にとって新たな役割を見いだせることもあります。外出できない状況であってもその生活の中でできることを積極的にやってもらうことが今現在の役割を見出すことに繋がり、その達成感が認知症の発症や進行予防に役立ちます。  

体と頭を同時に動かす

介護施設では体操などの運動や、塗り絵や計算問題などの頭を使うレクリエーションを行っているところが多いと思いますが、認知症の予防には体と頭を同時に動かすプログラムが有効だとされています。例えば「椅子に座ったままで行進しながら数を数え、7が付くときだけ手拍子をする」「童謡を歌いながら風船バレーをする」などです。それによって脳の刺激が活性化し、認知症の予防や進行の予防を図ることができます。  

積極的なコミュニケーションを取る

新しい生活様式を取り入れて利用者間でもソーシャルディスタンスを取っている介護施設も多いかと思われますが、やはり人間は社会的な生き物ですので人と人との繋がりを求めています。離れて過ごさなければならないから人と話さないという状況では活動意欲の低下を招き認知症の発症や進行を誘発するでしょう。そのためにはコミュニケーションを取ることが重要ですが、密接した会話は避けなければならないこともあるかと思われます。スマホやタブレットを用いたテレビ通話であればソーシャルディスタンスを気にすることなく利用者同士や職員との会話もできるほか、面会できない家族との遠隔面会にも有効でしょう。    

まとめ

新型コロナウイルスの影響で行動が規制されることで認知症の発症や進行が懸念される今求められるのは、認知症の発症、進行予防のためにできることを積極的に行うことです。そのためには認知症を今一度正しく理解し、「できること」に目を向けて本人が今の自分の現状においての役割や達成感を感じてもらえることが必要です。今の環境で本人ができることは何があるのだろうかということを意識して実践すれば、まだ情勢の定まらないコロナ禍においても利用者のために介護職ができることはたくさんあります。できることに目を向けたうえでできることから積極的に始めていきましょう。    

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参考文献:
政府広報オンライン もし、家族や自分が認知症になったら 知っておきたい認知症のキホン
厚生労働省老健局 認知症施策の総合的な推進について (参考資料)
公益社団法人大阪府看護協会 認知症ケアマニュアル

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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