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NDSコラム

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令和3年度介護改正:入浴介助加算の見直しが図られる見通し

2021/03/05

介護を必要とする方にとって入浴は身体機能の低下などから非常に危険を伴う日常生活行為です。しかし入浴は身体の清潔を保つことで皮膚疾患などから身を守る、温浴効果で血行の流れを良くし心をリラックスさせるなど日常生活において重要な行為でもあります。入浴介助は様々な介護事業所で提供されており、なかでも利用者の在宅介護を支えるサービスのひとつである通所介護、通称デイサービスには「入浴介助加算」という加算が設けられておりデイサービスで提供される入浴がいかに重要な役割を担っているかが窺えます。

入浴介助加算が令和3年度介護報酬改定で見直しを図ることが予定されています。現在、入浴介助には何が求められており、入浴介助加算はどのような変更案が出ているのか、令和3年度介護報酬改定の現在の動向を解説します。

利用者の自立支援が令和3年度介護報酬改定の重要な視点のひとつになる

令和3年度介護報酬改定では2025年、2040年の介護ニーズ増大を見据え介護サービスの質の向上を図るための様々な措置を講じています。介護の質を向上させる大きな目的のひとつに利用者の自立支援に資するサービスを提供できることが挙げられ、令和3年度介護報酬改定において加算の見直しや質の向上を評価する加算の新設などが検討されており自立支援や重度化の防止は重要な視点のひとつであるといえます。現在令和3年度介護報酬改定で自立支援の推進のために見直される予定である加算に利用者の入浴に関する加算「入浴介助加算」があります。

入浴介助加算とは

入浴介助加算は通所系サービスを対象とした加算で、入浴介助を適切に行うことができる人員及び設備を有して行われる入浴介助に対して加算されます。入浴介助には身体に触れる行為以外にも「観察」も入浴介助の内容として含まれます。この加算でいうところの「観察」とは、自立した生活を支援するための見守りなどをいい、利用者の自立支援やADLなどの向上のためになるべく利用者自身の力で入浴しできるように、必要に応じての介助や転倒予防のための声かけ、気分の確認などを行うことをいいます。
つまり利用者の自立支援・重度化防止の視点から提供されるケアはすべて入浴介助加算の対象となるのです。入浴を提供した場合に算定される入浴介助加算は単位が50単位/日で、デイサービス94.5%、地域密着型デイサービスで77.8%、認知症対応型デイサービスで98.1%、介護予防認知症対応型デイサービスで69.8%と非常に高い算定率となっています。

介護報酬改定で入浴介助加算の見直し案が出ている

非常に高い算定率である入浴介助加算は、さらなる利用者の自立支援に資することができるよう要件を見直す案が出ています。算定率は非常に高いものの、あくまでも利用者に対して入浴を提供できる環境を整備し、実際に提供した際に算定できる加算であり、利用者の自立支援に寄与できているかどうかは事業所の取り組みにより大きく分かれているのが実際のようです。
加算を算定している事業所で、利用者が自宅でどれくらいの回数入浴できているかを把握していると答えた事業所は約70%に上りました。それに対して個別機能訓練等の計画書において入浴に係る項目を設定していると答えた事業所は20%程度でした。つまり入浴に関わる利用者の自宅での様子を把握はしているが、自宅での入浴を可能にするために計画立てて入浴介助を行っている事業所は少ないということが分かります。
入浴は転倒や溺水など介護が必要な高齢者にとって非常に危険が伴う行為ではありますが、着脱、立位や歩行といった移動、洗身洗髪、浴槽の跨ぎなどADL全体に関わる重要な行為でもあります。さらに入浴は血行の促進や筋肉をほぐすなどで心身の状態をリフレッシュさせ、ストレスの緩和や身体機能の向上にも効果が見られます。 そのため入浴に関するADLの向上は利用者の自立支援・重度化防止に大きな意味を持つともいえます。
令和3年度介護報酬改定は、利用者の自立支援・重度化防止のために介護の質を向上させることを重点課題として挙げています。提供される介護サービスが利用者の自立支援に繋がるものとなるように様々な見直しが行われており、通所系サービスで提供される入浴介助においては、利用者の自立支援に資するサービスを提供している事業所を適切に評価するとともに、利用者が自宅で入浴できることを目標に据え計画立った入浴介助を行うものとして入浴介助加算が見直されることとなりました。

入浴介助加算の改定案概要

令和3年度介護報酬改定で現在予定されている入浴介助加算の改定案は以下の通りです。
・入浴介助加算に(Ⅰ)~(Ⅱ)の区分を設ける
・現行の加算と同等である入浴介助加算(Ⅰ)の単位を40単位に引き下げる
・入浴介助加算(Ⅱ)の算定に多職種連携と計画書の作成を要件として加える

それぞれの加算の要件を見ていきましょう。

入浴介助加算(Ⅰ)

現行の入浴介助加算と同要件です。入浴介助を適切に行うことができる人員及び設備を有して入浴介助を行うことで算定できますが、単位数が50単位/日から40単位/日に引き下げられます。

入浴介助加算(Ⅱ)

令和3年度介護報酬改定で新たな区分として設けられる見通しの加算です。 利用者が自宅で自身または家族等の介助で入浴を行うことができるよう、利用者の身体状況や専門職の訪問により把握した利用者宅の浴室の環境を踏まえた個別の入浴計画を作成することが算定要件となっています。
つまり算定には入浴介助加算(Ⅰ)の要件に加え「多職種連携」と「個別入浴計画書の作成」が必要です。加算の算定のために必要な多職種連携の内容は、「医師・理学療法士・作業療法士・介護福祉士・介護支援専門員等が利用者の居宅を訪問し、浴室における利用者の動作及び浴室の環境を評価していること」となっています。専門職の中に「介護福祉士」が明確に位置付けられることが特徴的です。なお、通所リハビリテーション事業所も入浴介助加算の改定の対象となりますが、こちらは「医師・理学療法士・作業療法士・介護支援専門員等」となっており、介護福祉士は明文化されておりません。

訪問時の評価の際に浴室の環境が利用者自身又は家族等の介助により入浴を行うことが難しい環境にある場合は、訪問した専門職が介護支援専門員や福祉用具専門相談員と連携して福祉用具の貸与・購入・住宅改修 等の浴室の環境整備に係る助言を行うことが必要とされています。
そして、「個別入浴計画書の作成」においては事業所の機能訓練指導員等が共同して利用者の居宅を訪問した専門職と連携し利用者の身体の状況や訪問により把握した自宅の浴室の環境等を踏まえた個別の入浴計画を作成すること、作成した入浴計画に基づき個浴その他の利用者の自宅の状況に近い環境にて入浴介助を行うこととなっています。なお、通所リハビリテーション事業所では「理学療法士、作業療法士、言語聴覚士」が訪問した専門職と連携して計画の作成を行うこととなっています。
現行の入浴介助加算を算定している事業所において、大浴などの集団入浴と、個別浴槽で個別に入浴を提供している事業所はほぼ半々となっています。入浴介助加算の算定には「自宅に近い環境」が求められていますので、大浴と個浴どちらの場合でも自宅の浴室の環境に近づけられるように出入りの方向などの環境を見直すことも必要になると思われます。

加算の対象事業所は?

入浴介助加算を算定できる事業所は令和3年度介護報酬改定においては現行通り「通所系サービス」つまりデイサービス、デイケア、認知症対応型デイ、地域密着型デイが対象事業所です。(介護予防含む)訪問介護等は対象にはなりません。しかし、利用者のADLが向上し自宅での入浴が介助にて可能になれば訪問介護は入浴介助のために身体介護としてサービスを提供する機会が増えることも考えられます。その際には利用者が自宅での入浴を継続できるように訪問介護員が利用者のADLに合わせた入浴を提供することも「多職種連携」「自立支援・重度化防止」に必要な視点となるでしょう。令和3年度介護報酬改定に向けての加算の見直しや新設される加算に関する情報はまだ方向性の段階で確定情報ではないことにご注意ください。令和3年度介護報酬改定の最新情報に関する改正情報ページを設けておりますのでそちらをチェックしていただくようお願いいたします。

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まとめ

令和3年度介護報酬改定においてデイサービスなどの通所系サービスの「入浴介助加算」が(Ⅰ)~(Ⅱ)の区分に分けられ、現行の加算は単位数が引き下げられる予定です。新設される(Ⅱ)の算定には利用者が自宅でも入浴できるように専門職が連携をとり自宅の環境を評価するとともに個別入浴計画を作成し、それに沿った入浴を提供することが必要になりそうです。利用者の自立支援に資するサービスを提供できる事業所がより評価される方向性ですので、自身の事業所の入浴環境が利用者の自立支援にアプローチできる環境であるかを見直してみるのも良いでしょう。

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参考URL:
令和3年度介護報酬改定の主な事項について
令和3年度介護報酬改定における改定事項について
令和3年度介護報酬改定に関する審議報告の概要
令和3年度介護報酬改定に関する審議報告

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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