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NDSコラム

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令和3年度介護改正:自立支援・重度化防止の取り組みの動向

2021/03/04

令和3年度4月の介護報酬改定に向けて具体的な方向性が定まってきました。前回の平成30年度介護報酬改定で重点的課題に挙げられていた自立支援・重度化防止の取り組みの推進の見直しとさらなる推進のために、今現在の自立支援・重度化防止に関する動向はどのような方向性であるのかを解説します。

自立支援・重度化防止の促進

令和3年度の介護報酬改定では2025年、2040年の介護業界の展望を見据え重点課題として以下が挙げられています。
1.感染症や災害への対応力強化
2.地域包括ケアシステムの推進
3.自立支援・重度化防止の取組の推進
4.介護人材の確保・介護現場の革新
5.制度の安定性・持続可能性の確保

これらのうち2~4については平成30年度介護報酬改定でも重点課題として挙げられていた項目であり、令和3年度介護報酬改定においてさらなる推進が必要とのことで引き続きの課題として挙げられています。そこに昨今の新型コロナウイルス感染症や災害への取り組みが必要との見方から1が追加されています。つまり、令和3年度介護報酬改定における自立支援・重度化防止は前回の取り組みに対して評価、見直しを行いさらなる推進に向けて適正化を図ることが方向性であることが分かります。

科学的介護と多職種連携が重要視される

令和3年度介護報酬改定における自立支援・重度化防止の取り組みでは、さらなる推進として重要視される内容に「科学的介護推進への取り組み」と「多職種連携の強化」が挙げられます。介護保険サービスは介護が必要になった方の尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう必要なサービスを提供することを目的とするものであり、提供されるサービスは自立支援・悪化の防止に資することが必要であるため平成30年度介護報酬改定において利用者の寝たきり化の防止や自立を支援することを目的とした「褥瘡マネジメント加算」や「排せつ支援加算」「低栄養リスク改善加算」や「口腔衛生管理加算」などの加算が新設されました。この度の介護報酬改定で実施状況の評価と見直しが図られた結果、算定基準が困難などの理由で算定率が芳しくない、多職種との連携が必要なため一体的な様式に変更する必要があるなどの意見が出ました。
そこで令和3年度介護報酬改定においては「多職種連携」をさらに強化する方向性で話が進んでいます。
また、以前よりリハビリ分野で導入されていた利用者のリハビリ計画、実施サービス、結果などの情報を提供し、分析して最適なサービスの根拠にしようというデータベース「VISIT」の活用といったITテクノロジーの活用の推進を強化していく必要があるとの方向で話が進められており、介護分野においても利用者のADL等の情報を蓄積するため令和3年度から新たなデータベース「CHASE」(令和3年4月から『LIFE』に名称変更予定)の本格運用を予定しており、これらのデータベースを有効活用するために各事業所に積極的に情報の提供を呼びかけ、集まった情報を基に改善率の高い介護サービスの根拠を明確にしようという「科学的介護」を推進する必要があるとされています。
利用者の自立を支援するための質の高いサービスや悪化を防止する・状態を改善する取り組みを推進していくためには多職種が専門性を発揮した質の高いサービスと、データを活用し科学的根拠に基づいた介護を適切に評価する仕組みが必要であるとの見方から令和3年度介護報酬改定における自立支援・重度化防止への取り組みは「科学的介護」「多職種連携の強化」が基本的かつ重要な視点となると見られています。

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令和3年度介護報酬改定の現在の動向

現在、令和3年度の介護報酬改定に向けて調整が進んでいますが、具体的な動向として提示されている改定内容は以下の通りです。

リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取組の連携・強化

利用者の自立支援や悪化の防止に資するサービスの提供のためには栄養状態の改善や口腔衛生の改善が重要であるとの見方からリハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養に関する加算等の算定要件とされている計画作成や会議について、リハビリ専門職や管理栄養士、歯科衛生士が必要に応じて参加することが明確化される見通しです。 また、リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養に関する各種計画書は重複する内容も多く、多職種が連携して一体的に改善に繋げていくためにも、重複する記載項目を整理するとともにそれぞれの実施計画を一体的に記入できる様式が設けられる予定です。これにより利用者の状態改善に各サービスが連携を取る体制がよりいっそう推進されると見られます。この内容は訪問リハビリテーション、通所系サービス、短期入所系サービス、多機能系サービス、居住系サービス、施設系サービスなど多くのサービスが対象になります。
また平成30年度から対象範囲が拡大していた「生活機能向上連携加算」について訪問介護以外のサービスにおいても(Ⅰ)~(Ⅱ)の区分が設けられます。利用者の計画作成やサービスの実施にリハビリ専門職や医師の訪問、助言が必要であった当加算のさらなる連携強化を図る形で、ICTを活用してテレビ電話等で助言を行ってもよいとされます。なかなか体制が取れなかった事業所も加算を算定しやすくした形です。

施設系サービスの口腔衛生の管理や栄養ケア・マネジメントの強化

平成30年度介護報酬改定で新設された加算等の状況を見直し、加算としてではなく基本的サービスとして基本報酬に組み込まれる形が取られる予定です。これにより口腔衛生管理体制加算、栄養マネジメント加算、低栄養リスク改善加算が廃止され、「栄養マネジメント強化加算」が新設される見通しです。この加算は人員基準に管理栄養士の配置が義務付けられること、栄養計画に沿ったケアの実施状況、評価を医師、看護師、管理栄養士等の定期的な食事の観察で行うなどの算定要件が定められています。3年の経過措置期間が設けられる予定ですが、栄養ケア・マネジメントを実施しない場合は減算処置とするとされています。施設系サービスの利用者における栄養改善、口腔衛生改善が重要であることが分かります。

通所介護等における口腔衛生管理や栄養ケア・マネジメントの強化

通所系サービス、多機能系サービス、居住系サービスの利用者において、6カ月に1回栄養状態を観察しケアマネージャーと情報共有を行うという現行の栄養スクリーニング加算をさらに強化し「口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅰ)~(Ⅱ)」に改定される見通しです。介護事業所を利用する方の口腔状態や栄養状態を素早くケアマネージャーに情報共有することで管理栄養士や歯科衛生士と改善のためのケア計画を立てやすくなると見られます。
また、グループホームにおいては「栄養管理体制加算」が新設され、「管理栄養士(外部との連携含む)が日常的な栄養ケアに係る介護職員への技術的助言や指導を行うこと」が算定要件とされる見通しです。日常的に利用者と接する機会の多い介護職員が口腔状態、栄養状態の状態を最も近くで把握できるよう評価の体制を整えていると考えられます。

介護老人保健施設における在宅復帰・在宅療養支援機能の評価の充実

介護老人保健施設を対象に、在宅復帰等を更に推進する観点から在宅復帰・在宅療養支援機能の評価を充実させることを目的とした見直しが行われる見通しです。方向性は下記の通り、リハビリの充実と医師との連携強化が図られる形です。
・居宅サービス実施数に係る指標において、訪問リハビリテーションの比重を高くする。
・リハビリテーション専門職配置割合に係る指標において、理学療法士、作業療法士及び言語聴覚士の3職種の配置を評価。
・基本型以上についてリハビリテーションマネジメントの実施要件が求められているが、医師の詳細な指示に基づくリハビリテーションに関する事項を明確化する。

CHASE、VISIT(4月から総称としてLIFE)の積極的活用の推進

令和3年度介護報酬改定が施行されると同時に本格運用を目指すCHASE(4月から総称としてLIFE)へのデータ提供とフィードバックを受けることで質の高いケアを提供することを推進するため、様々な加算の算定要件にCHASEの活用が組み込まれる予定です。またリハビリのデータベースであるVISITの活用もさらに推進していくことが方向性として決められています。
ADL維持等加算は通所介護系が加算の算定対象でしたが有料老人ホームや特別養護老人ホームなども対象に含まれることとなる予定です。算定率が低いことが課題となっていましたが算定要件を緩和するとともにCHASEへのデータ提供が算定要件に追加されています。
訪問リハビリや通所リハビリサービスはリハビリテーションマネジメント加算(Ⅰ)~(Ⅳ)が「リハビリテーションマネジメント加算(A)イ、ロ・(B)イ、ロ」の4区分に分けられる予定です。これらの加算はCHASE、VISIT(4月から総称としてLIFE)へのデータ提供を行うことで従来の加算以上の点数を算定できるようになると見られています。また介護医療院や老健施設においてもCHASE・VISITへのデータ提供を評価する加算が新設される予定です。様々な加算にCHASE・VISITへのデータ提供を算定要件として組み込むことで、データ提供に応じる体制を整備した事業所はより多くの加算を算定できるようになるといえます。

寝たきり防止等、重度化防止の取組の推進

寝たきり状態の改善や重度化防止の観点から取り組みとして平成30年度介護報酬改定で新設された褥瘡マネジメント加算や排せつ支援加算において、改善へのプロセス(過程)だけでなくアウトカム(成果)を評価することが必要だとの見方から、加算を拡充する措置が取られる見通しです。現在の方向性としては以下の通りです。
・医師又は医師と連携した看護師が施設入所時等に評価するとともにCHASE(4月から総称としてLIFE)へのデータ提出とフィードバックを活用する
・医師、看護師、介護職員、管理栄養士、介護支援専門員等が共同して計画作成にあたる
・ケアの実施開始から褥瘡の発生がない、おむつを状態から改善したなど自立支援、悪化防止に繋がっている

以上を満たす場合に最も高い加算を算定できるようになると見られます。以前は算定期間に限りがありましたが、令和3年度介護報酬改定では削除されると見られています。自立支援・重度化防止へのケアを継続して行うことが目的であることが考えられます。

自立支援・重度化防止の推進にケアマネジメントが重要

利用者の自立支援・重度化防止には各サービスが専門性を発揮し、多職種連携を図りながら実施していくことが重要ですが、利用者にとってどのような支援が必要かを正確に把握できていなければ必要なサービスが関わることはできません。利用者にとってどのようなケアが必要か、そのためにはどのようなサービスが適切かを正しくアセスメントし、利用者の自立支援・重度化防止に資するサービスを設定するにはケアマネージャーの作成するケアプランがまずは何よりも重要になります。
ケアマネージャーが作成するケアプランに沿って各事業所はサービスを提供し、利用者の自立支援・重度化防止に資するサービスを提供する必要があるためです。そして、適切かつ質の高いケアプランを作成するためには利用者に必要なケアを明確にする適切なアセスメントを取り、根拠に沿ったケアプランの作成を行うことが重要です。しかしケアプランの作成やアセスメントは非常に業務負担や責任感が大きいものであり、ケアマネージャーの経験や知識によりクオリティに差が出てしまう場合もあります。NDソフトウェアの「在宅ケアマネジメント基本システム(AI)」はAIケアプランを標準装備しており、質の高いケアプランの作成のサポートとしてお役立ていただける機能です。
AIケアプランは膨大な量の利用者データや改善率の高かったサービスをAIが分析し、担当の利用者様にとって最も改善率の高いサービスや1年後の状態予測などを提示することでケアプラン作成の補助としてお役立ていただけます。
また「ほのぼのNEXT:アセスメントシステム」では事業所様のニーズに応じた多彩なアセスメント方式をご用意しており、入力内容からアセスメント結果を自動計算するなど複雑なアセスメント業務を大幅に効率化できる機能が揃っています。情報を連動させることでケアプランや計画書作成にも同じ情報を入力する必要がなく業務の効率化にもお役立ていただけます。
各サービスの専門性を最大限に発揮し、利用者様の自立支援・重度化防止を推進するケアプランの作成のためにぜひお役立てください。

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まとめ

令和3年度介護報酬改定における自立支援・重度化防止の取り組みは、多職種連携をさらに推進するために医師やリハビリ職、管理栄養士や歯科衛生士などの職種との連携を明確化することや、科学的介護推進のためにCHASE、VISIT(4月から総称としてLIFE)を本格的に活用していくことが現在の予定となっています。そのために見直しが図られる加算が多くなると見られ、利用者へ質の高いケアを提供し自立支援・重度化防止に努める事業所は高く評価されることが考えられます。新設、見直しが行われる加算を確実に算定できるように体制を整えることが必要だと思われます。
参考URL:
令和3年度介護報酬改定の主な事項について
令和3年度介護報酬改定における改定事項について
令和3年度介護報酬改定に関する審議報告の概要
令和3年度介護報酬改定に関する審議報告

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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