NDSコラム

仕事 2021/08/27
介護の質を高めるために欠かせないアセスメントの重要性とは

介護の仕事に必要な視点である「自立支援」を図っていくには、高齢者の希望する生活を実現させるために計画を立て、サービスを提供していくことが重要です。ケアマネージャーの作成するケアプランや介護事業所が作成する介護計画書に沿ってチーム全体でケアを行っていくことが自立支援には必要であり、高齢者にどのようなケアを提供するかを明らかにするのに必要な作業が「アセスメント」です。アセスメントシートなどを用いて実施していくアセスメントはとても重要であり、アセスメントの質を上げることが高齢者の自立支援に繋がる質の高い計画作成に欠かせません。

介護の仕事に必要な計画作成の質を高めるアセスメントの重要性を今一度確認しましょう。

質の高い介護にはケアプランが大切

介護が必要な高齢者は加齢や疾病などによりADLが低下し、日常生活の活動制限や社会生活の参加制約など様々な生きづらさを抱えるようになります。心身の状態に応じた本人の望む自立した生活を営むためには介護サービス、医療サービスの関わりは非常に重要なものといえます。それぞれの職種が専門性を発揮し高齢者のADL、QOLの向上に努めることで高齢者は自らの希望する生活を自ら獲得していこうという意欲を見出すことができます。

しかし、介護が必要な高齢者へ専門性の高い介護サービスや医療サービスを提供しようとしても「何を目指して」「どのような支援」を「どのような方法」で「誰がどのくらいの量」提供するのかなどがはっきりしていないと専門性は有効に発揮できません。介護が必要な高齢者がどのような生活を送りたいか、そのために提供するべき支援は何か、サービスを提供することでどのような状態になることを目指すのかを定めたものがケアマネージャーの立てるケアプランであり、ケアプランの内容に沿うように介護事業所が作成するものが介護計画書です。これらの計画書は利用者が望む生活の獲得を果たすために必要な支援を明確にするために欠かせません。ケアプランや介護計画書の質はそのまま利用者へのサービスの質として現れます。つまり質の高いケアプランや介護計画書を作成することができれば、利用者へのサービスの質はおのずと質の高いものになるといえます。

アセスメントはケアプラン作成に最重要

質の高いケアプランや介護計画を作成していくために必要になるのが「アセスメント」です。

利用者の情報を収集、分析し計画作成するために行うアセスメントはただ高齢者にどのようなサービスを提供すれば良いかを判断するための作業ではありません。アセスメントの結果から利用者の状態像を正しく理解し、本当に必要な支援を明らかにするために大変重要な役割を持っています。質の高いケアを提供するためには質の高いケアプランや介護計画の作成が必要であり、質の高い計画を作成するには決してアセスメントを疎かにしてはいけないのです。

さらにアセスメントは利用者の計画作成のためだけではなくチームケアの質を向上させていくのにも大変重要な意味を持ちます。言うなればアセスメントの質は介護事業所が提供する介護サービスの質を大きく左右し、ひいては利用者の自立支援の成果を大きく左右することにも繋がるのです。事業所として利用者の自立支援を積極的に図っていくための要になるのがアセスメントといえるでしょう。

アセスメントの重要性

利用者の自立支援に非常に重要なアセスメントの質を高めていく目的には以下が挙げられます。

・生活課題を明確にする

アセスメントは「事業所が利用者にどのようなサービスを提供するかを確認する」という作業ではありません。このような目的でアセスメントを行ってしまうと、利用者のADLや心身機能にばかり着目してしまい、「左麻痺だから移動は車いす介助だ」「認知症を患っているから声掛けで促しが必要だ」など、介護職員本位のケアになってしまいがちです。

アセスメントの大きな役割は「利用者の望む生活を阻害している要因」を明確にすることです。先ほどの「左麻痺だから車いす介助」という利用者へのアセスメントを行った結果「昔から人の手を煩わせることが苦手で自分の力でなんでもやってきた」という方であるということが明確になったとしましょう。この場合、利用者の希望する生活を阻害している要因は「車いす介助」そのものになるとも考えられます。結果として、例の利用者へ必要な支援は「左麻痺の状態から安全に“自力”で移動できる手段」へとケアの方向性が変わってくるのです。

アセスメントで重要なことは利用者の心身の能力にばかり目を向けるのではなく、個人の価値観、考え方、生活習慣、生まれてから現在まで生きてきた環境などにも着目し、利用者の人間像全体を把握することです。利用者本人にとって望ましいサービスでなければ、いかに丁寧なケアを提供したとしてもそれは自立支援には繋がらないでしょう。利用者の全体を把握したうえで利用者が望む生活とはどのような状態がもっとも好ましいのかを考え、どのようなサービスの関わりやケアを行えばそれが解決できるのかという生活課題を明確にすることがアセスメントを行ううえでとても重要なことなのです。

・ケアの統一

質の高いケアを提供するためには介護職員全員が利用者に対し同様のケアを行うことが必要です。介護職員一人ひとりが自分なりの介護を実施してしまうと、利用者が望む生活を達成するための介護ではなく介護職員にとってやりやすい介護、自己判断や自己流の介護に陥りがちです。利用者の生活課題を明確にするアセスメントは、質の高い計画作成に役立てるだけでなく、利用者に提供するケアの根拠を明確にし、携わる介護職員全員がその意図を理解し、同じ目的に進んでいくことが非常に大切です。

ケアプランや介護計画書は、利用者に提供する支援の方向性やケアの内容、目標を定め、チーム全体で達成に向けて実施していくものですが、そこからは「なぜこのケアが必要なのか」を読み取ることはできません。アセスメントの結果をアウトプットしたものがケアプラン、介護計画書であるともいえます。仮に利用者の希望が「歩けるようになりたい」であり、行うケアの実施内容が「手引き介助し歩行を行う」であったとしましょう。介護職員は定められた計画の通りにケアを実施しますが、ただ手引き歩行を行うのでは「なぜ手引き歩行なのか、本当に必要なケアだったのか」が明確にできず、少なからず介護職員の意思が混在してしまいます。場合によっては「あまり無理はさせないでおこう」と考える職員や「転倒が心配だから長い距離は車いすを使おう」と考える職員が出てきても不思議ではありません。

ケアプランや介護計画書は利用者の望む生活を叶えるためや自立支援・重度化防止の観点から生活課題を明確にし、それを阻害する要因を解決できるように行うもので、アセスメントに本当に必要なことはアセスメント結果だけではなく、結果に至るまでの過程であるともいえます。

アセスメントの過程をすべての介護職員で共有することによって、利用者に行うべきケアを定めた計画書の根拠を正しく理解できることに繋がるのです。介護職員が計画に沿った、統一された質の高いケアを提供できるためには、介護計画に至るまでのアセスメントが重要です。アセスメントシートなどを活用し、アセスメントの過程を全介護職員で共有できるようにするのがよいでしょう。

・ケアの向上

質の高いアセスメントは、利用者へのさらなる質の高いケアの提供に大きく繋がるものです。ケアプランや介護計画書に基づいて行われるケアは正しくアセスメントを行った結果をアウトプットしたものであることを先ほど述べましたが、正しいアセスメントとは利用者がどのように今までの人生を生きてきて、その環境や個人の性格等からどのような価値観を持っていて、その結果どのようなことを大切にしているのか、役割を得てきたのか、そしてそれが疾病や加齢の影響でどう失われていったのか、本人はその現状を踏まえ今後をどのように生きていきたいのか、どのような力が発揮できて、何ができなくて、健康と安全にはどのようなリスクがあるのか…など非常に膨大な情報から利用者の歴史からADL、現状のQOL、今後の展望などを分析することです。アセスメントの過程を介護職員全員で共有できると、その分析結果を全員で等しく共有できることに繋がります。ただ介護計画に沿ってケアを提供するのでは気付けなかった利用者の新たな可能性や潜在的なリスクの発見、ケアを提供していく過程で発生する新たなニーズなどの気付きの精度を高めることになり、そこから再びアセスメントを深めていくことによってさらに質の高いケアプラン、介護計画書へと繋げていくことが可能になります。

質の高いアセスメントを行い、常にアセスメントの過程を確認できる環境を整備しておくことは、利用者への質の高いケアの提供に大きく関与するのです。

 

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