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障がい福祉サービスにおける個別支援計画書の重要性について解説
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2022/06/08
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障がい福祉サービスは、障がいを抱える方々の共生社会の実現や社会参加の機会を確保するために欠かせないサービスです。そしてサービスを提供するためには個別支援計画書の作成がとても重要です。個別支援計画書を作成し、内容に沿った支援を提供していかなければ減算があるなど事業所の運営に大きな支障が出ることになってしまいます。
今回は、障がい福祉サービスにおける個別支援計画書の重要性について解説します。
障がい福祉サービスの提供には個別支援計画書が必要
障がい福祉サービスとは、「障害者総合支援制度」に定められたサービスであり、障がいを持つ方々の社会参加の機会を確保すること、共生社会を実現させることを基本理念として日常生活や社会生活を総合的に支援することを目的としたサービスを提供しています。
利用者がサービスを利用するには事業者や市町村へ申し込みを行うことが必要ですが、サービスを実施する障がい福祉サービス事業所がサービスを提供するためには「個別支援計画書」の作成が必要です。
個別支援計画書の内容とは
個別支援計画書には、「サービスに対する利用者本人の希望及び家族の希望」「希望を叶えるために目指すべき総合的な目標」「目標を達成するために本人が取り組むこと」「目標を達成するために必要な支援」「支援をいつ、どこで、誰が行うのか」といった内容が含まれます。
利用者の望む生活の実現に解決すべき課題の明確化と、必要な支援を明確にするために情報を収集し分析するプロセスに「アセスメント」があり、個別支援計画書に書かれている内容はすべてがアセスメントにて明らかにされるものです。しかしアセスメントは事業所が利用者の状況を正しく理解するために用いるものであり、その情報量は膨大です。対して個別支援計画書はアセスメントの結果、行うべき支援を利用者、職員ともに分かりやすくまとめたものです。
したがって、アセスメントを行った書類は個別支援計画書の代わりにならないことには留意が必要です。
個別支援計画書は利用者やその家族に支援計画を説明し、了承をいただくことが義務付けられており、障がい福祉サービス事業所として正当にサービスを提供することを証明する公的な書類です。
個別支援計画書を作成したうえで利用者、家族への説明と同意を得た状態でないと、障がい福祉サービスは提供できないばかりか、作成しないままサービスを提供してしまうと事業所にとって大きな不都合が生じることになります。
個別支援計画書を作成しない場合の影響
個別支援計画書は障がい福祉サービスを提供するために必ず作成する必要がありますが、その作成を怠ってしまうとどのような事態に陥ってしまうでしょうか。このような場合、利用者、事業所双方にとても大きな不都合が生じます。
利用者が望むサービスが提供できない
先述の通り、個別支援計画書は利用者が障がい福祉サービス事業所で取り組むべきことや、職員が支援すべき内容をまとめ、計画的に支援を行うために作成するものです。
その思考過程を記載したアセスメントでは、具体的にいつ、どこで誰が、どのような支援を行うのかが簡潔にまとめられていません。それを読む職員一人ひとりの解釈の違いや理解に差が必ず生じます。
その結果、アセスメントを行った職員は何をするべきかイメージできていたとしても、職員間で等しく情報共有は行えていない状況に陥ります。そのような状態で支援にあたってしまうと、利用者は職員によって違う支援を受けることになってしまい望む生活のための最適な支援が受けられません。そのままサービスを利用し続けたとしても当然利用者のニーズを満たしていくことは困難であることは想像に難くありません。
つまり個別支援計画書を作成しないまま支援にあたってしまうことは利用者への支援の質を大きく低下させることにつながります。さらにはそれが利用者や家族の不信感になり大きなクレームにつながることも考えられます。そのような事態に陥ってしまうと、職員の自己肯定感も大きく低下し人材が離れてしまうことにもつながるでしょう。
個別支援計画書を作成し行うべき支援を分かりやすい形にしておくことは、職員間で正しく情報共有し質の高い支援を提供するために必須なのです。
減算、指定取り消しの対象になる
障がい福祉サービス提供のプロセスは以下の手順を踏んでいます。
①サービス担当者会議
利用者の支援に関わる相談支援事業所や関係事業所で情報共有や役割の確認を行う
②アセスメント
利用者の情報を収集し、ニーズを満たすために必要な支援を明確にする
③個別支援計画書の作成
アセスメントによって明らかにした支援内容を実施するための計画
④計画書に沿った支援の実施
計画書に沿ってすべての職員が同様の支援を提供する
⑤モニタリング
提供した支援が計画通りに実施できているか、想定通りの結果が得られているかを定期的に評価し、必要に応じて個別支援計画書を変更する
以上のプロセスを繰り返し行っていくことで利用者へ質の高い支援を提供することが可能となります。逆を言うと、このプロセスの1つでも欠けてしまうとサービスの質は低下することにもなります。
また障がい福祉サービスはその指定を受けるための運営基準に個別支援計画書の作成を行わなければならないと定められており、個別支援計画書を作成し、適切に支援を展開しないと減算や最悪の場合は指定を取り消されることもあります。
減算については、計画書を作成するサービス管理責任者がいない場合に適用されるもので、最大で70%の減算が適用されます。指定取り消しについては、サービス管理責任者が不在であるにも関わらず減算の届けを出さずに報酬を請求するといった不正請求を行ってしまう場合や、行政から個別支援計画書の作成、モニタリングを行うよう再三の指導を受けているにも関わらず改善が見られない場合が取り消し理由になることが多いです。
障がい福祉サービス事業者は運営基準に定められた義務を遵守し、質の高い支援を展開するためのプロセスを適切に実施することが健全な事業運営に必須なのです。
個別支援計画書の様式
個別支援計画書の作成は障がい福祉サービス事業所の義務ではありますが、その様式は全国で統一されているものではありません。厚生労働省が提示している様式のほか、各自治体が独自に様式を定めている場合もありますので注意が必要です。必要な項目が記載されていれば事業所が独自に作成したものでも良いとしている自治体もあります。
適切に個別支援計画書を作成していくために、所在地の自治体に問い合わせる、ウェブサイトで検索するなど様式を確認しておくことが重要です。
参考
盛岡市:【PDF版】個別支援計画例(計画・モニタリング・就労モニタリング)
効率的な障がい福祉サービス提供のために
個別支援計画書を作成し、適切かつ質の高い支援を展開していくためには効果的なアセスメントや定期的なモニタリングが重要ですが、自治体の求める様式に合わせなくてはならない点や利用者への支援に手いっぱいで事務作業まで手が回らないといった例も多いと思います。
しかし個別支援計画書作成を含む支援のプロセスは、適切に展開しなければそもそもの質を低下させることになり、事業所運営が危ぶまれる事態に陥ります。解決するためには支援の展開を効率化することで負担を減らしながら利用者への支援を提供していくことです。それを可能にしていくためには個別支援計画に関わる業務のシステム化がおすすめします。
NDソフトウェアの「ほのぼのmore」は障害者総合支援法に対応し、障がい福祉サービスの様々な業務をトータルでサポートしています。アセスメントや日々の支援記録をパソコンやタブレット上で手軽に行えるだけでなく、自治体独自の様式が定められた個別支援計画書もVBレポート機能で自治体の様式に対応したものを作成可能です。
画面上ですぐに情報を共有できるため職員間での支援の統一を図りやすく記録の手間も大幅に効率化できることが効率的な事業所運営にお役立ていただけます。
質の高い障がい福祉サービスのお手伝いをいたしますのでぜひともお問い合わせください。
まとめ
障がいを抱える方々が日常生活、社会生活を豊かに暮らしていくためには、質の高い障がい福祉サービスの関わりが欠かせません。個別支援計画書を作成し質の高い適切な支援を展開していけるようプロセスのシステム化など必要な効率化を図っていきましょう。
当コラムは、掲載当時の情報です。
障がい福祉サービスのさまざまな業務を総合的にサポートする障害者総合⽀援法対応版「ほのぼのmore」について知りたい・相談したい⽅は、まずはお気軽にお問い合わせください。
参考URL
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。