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障がい者の高齢化に伴う介護の問題について

2023/03/27

障がいをお持ちの方を巡る問題として近年、障がい者の高齢化に伴い介護の必要性が増すことが取り沙汰されています。障がいをお持ちの方が高齢になることは、その生活にどのような不安が生じ、どのような介護が必要になるのでしょうか。
今回は、障がいをお持ちの方が高齢になった場合に利用できるサービスについて解説します。

障がい者の高齢化が進んでいる

日本における障がいをお持ちの方の数は増加傾向にあります。厚生労働省によると、平成20年の推計では障がいをお持ちの方は人口の約5.8%、約744万人でしたが平成30年には人口の約7.6%、約964万人がいらっしゃるとしています。

そして顕著になっているのがその高齢化です。平成20年の推計では約744万人のうち65歳以上の高齢者の割合は46%であったのに対し、平成30年では65歳以上の方の割合は52%まで増加しています。

それに伴い障がい福祉サービスの利用者の高齢化も目立ち、国保連データで平成23年4月と令和3年4月のサービス利用者の65歳以上の割合は居宅介護で8.6%から13.2%、重度訪問介護では16.9%から26.3%、生活介護では9.8%から14%とほとんどの障がい福祉サービスで高齢化が進んでいることが分かります。

障がい者の高齢化に伴う問題

障がい者の高齢化の背景には脳梗塞によるマヒや緑内障による失明など、加齢に起因する疾病で障がいとして認定されるケースもありますが、やはり注視すべきは先天性の障がいや疾病や事故などで後天的な要因で障がいを負った、高齢期より前から障がい認定を受けていた方の高齢化です。

障がいは重度になるほど日常生活、社会生活の継続になんらかの支援を要す場面が多くなります。在宅で生活をしている方の場合、親や配偶者が支援の担い手になることも少なくありませんが、障がい者が高齢化すると共にその親や配偶者も歳を重ねることから以下の問題が生じてきます。

身体介護が必要になる

障がいを受けた部位の支援のみならず、筋力の低下や関節の変形拘縮、歩行状態の悪化や認知症の発症など加齢に伴う老化は心身機能の低下を引き起こすものがほとんどで、身体介護の必要性が増加してきます。

家族が介護を担う場合、身体介護の必要性の増加と共に介護の難易度から負担は大変に大きくなります。

障がい者施設で生活をしている方も同様で、高齢化に伴う身体介護の必要性が増加することは、施設職員の介護負担に繋がります。また障がい者施設によっては高齢化に対応した介護技術が未熟で、高齢の障がい者への対応に苦慮することもしばしばです。

医療依存度が増す

障がいをお持ちの方の高齢化は、今まで以上に医療の介入を要す事態が多くなります。内部障がいが特に顕著で、夜間の呼吸発作や定期的な吸引、常時の観察など支援が不足すれば命にも関わることも多くなるため医療的な関わりは欠かせません。

高齢化に伴い他の機能も低下が著しくなり、急変リスクは増大します。

介護の担い手が不足する

在宅で生活する障がい者の場合、時には24時間体制での介護を要することもあります。介護する家族自身の年齢がそう高くない内は介護を行うことも可能ですが、障がい者の高齢化に伴い家族も高齢化することは避けられません。配偶者が介護する場合は老老介護になり介護負担は著しく上昇します。先天性の障がいの場合は親が介護を担う場面が多く、高齢化すると親が先に死去するおそれが出てきます。障がい者の介護には障がいの状態やADLを熟知した介護者が欠かせません。その担い手が不足してしまうことで障がい者の在宅生活は極めて困難となってしまうのです。

高齢の障がい者が利用できるサービス

障がいをお持ちの方が利用できるサービスは障害者総合支援法に基づいて提供される障がい福祉サービスがあります。障害者総合支援制度は、障がいをお持ちの方が個人としての尊厳にふさわしい日常生活、社会生活を営むことができるよう必要なサービスを受けることができ、そのサービスには介護サービス以外にも地域で生活するために必要な自立訓練や就労支援が含まれており障がいをお持ちでも健常者と同じ社会で生きる「共生社会の実現」が理念です。

しかし障がい福祉サービスの利用は65歳以上の高齢者になると一部注意が必要になってきます。障がいのある65歳以上の方が利用できるサービスを以下に見てみましょう。

介護保険サービス

65歳以上の高齢者で日常生活になんらかの支援を要する方の尊厳の保持と自立した生活を支えるために提供される介護保険サービスは、障がい福祉サービスの利用者が65歳になると同等のサービスは原則として介護保険サービスが優先されます。

訪問介護はヘルパーが居宅に伺い生活援助や身体介護を行います。障がい福祉サービスにおける居宅介護と同様のサービスです。65歳になるまで居宅介護を利用していた方は、65歳になると訪問介護サービスの利用が優先されます。

その他にもいわゆるデイサービスである通所介護は生活介護と同様であり、短期入所も同様のサービスです。これらはすべて介護保険が優先されます。

介護保険サービスは65歳以上の要介護認定を受けた方が利用できるサービスですが、65歳未満であっても40歳以上であれば利用できる場合があります。ただし40歳以上の介護保険の適用には以下の16種類の特定疾病により介護が必要な状態であると認定を受ける必要があります。

  • がん(自宅等で療養中のがん末期)
  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
  • 後縦靭帯骨化症
  • 骨折を伴う骨粗しょう症
  • 多系統萎縮症
  • 初老期における認知症
  • 脊髄小脳変性症
  • 脊柱管狭窄症
  • 早老症
  • 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  • 脳血管疾患
  • 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
  • 閉塞性動脈硬化症
  • 関節リウマチ
  • 慢性閉塞性肺疾患
  • 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

障がい福祉サービス

障がい福祉サービスは65歳以上になると介護保険サービスが原則として優先されると先述しましたが、決してすべての障がい福祉サービスが利用できなくなるのではありません。 両者の適用関係は「社会保障制度の原則である保険優先の考え方の下、サービス内容や機能から、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合は、原則介護保険サービスに係る保険給付を優先して受けることになる」としていますが、65歳以上であるからといって一律に介護保険サービスが優先されるのではなく、障がいをお持ちの方個別の状況に応じ、必要としているサービスが障がい福祉サービスであることが適当と判断される場合は障がい福祉サービスからの提供が可能です。

また、市町村が必要と認めるサービスの支給量が介護保険サービスだけでは確保が困難であると認められる場合も障がい福祉サービスの利用が可能です。例を挙げると、重度の身体障がい者の方が在宅での生活を希望する場合、日常生活のほとんどの場面で介護を要しますが、訪問介護サービスでは必要なサービスをすべて賄うことはほぼ不可能といってもよいでしょう。その際は重度訪問介護や居宅介護サービスを複合して受けることが可能です。 その他として、障がいをお持ちの方が希望する障がい福祉サービスに該当するサービスが介護保険サービスにない場合も障がい福祉サービスの利用が可能です。

共生型サービス

共生型サービスは平成30年度の法改正により新設された制度です。この制度は、先述した65歳以上の障がい者は原則として介護保険サービスが優先される際に生じる問題を解決するための制度といえます。

障がいをお持ちの方は、自身の生活でできないことを他者に委ねることが求められます。そのためやはり自身のことを理解してもらえているかどうかがサービスの満足度にも繋がりますし安心感になります。また精神障がいの方も慣れ親しんだ環境や見知った介護者によるサービスを受けるほうがこころの安定に繋がるでしょう。しかし65歳以上になり介護保険が優先と判断されると、従来使っていた居宅介護や生活介護は利用できなくなります。また新たに介護事業所との関係性を構築していくことは障がいをお持ちの方の暮らしに不便さを感じさせるものとなり得ます。

こうした問題を解決できるように、介護保険事業所が障がい福祉サービスを、障がい福祉事業所が介護保険サービスを提供できるよう事業所指定の基準を特例で緩和し同一事業所が両方のサービスを提供しやすくしているのが共生型サービスです。

共生型サービスの対象事業所は介護保険サービス、障がい福祉サービスと内容が共通するサービスとして2023年現在以下の3つと定められております。

  • 利用者宅へ訪問しサービスを提供する訪問介護と居宅介護および重度訪問介護
  • 施設に通い必要な介護や支援を受ける通所介護と生活介護および自立訓練、児童発達支援、放課後等デイサービス
  • 短期間入所して介護を受ける短期入所生活介護と短期入所介護保険サービスに位置付けられている小規模多機能型居宅介護および看護小規模多機能型居宅介護は訪問、通い、泊まりを一体的に提供するサービスであり、そのうちの通いと泊まりについては共生型サービスとして指定を受けることが可能です。

現在共生型サービスを提供している事業所は介護保険事業所が圧倒的に多く、令和2年10月実績で607件がサービスを提供しています。対して障がい福祉サービスが共生型サービスを提供している数はまだまだ少なく、同年同月の実績では117件に留まっています。

障がいをお持ちの方が利用するサービスの選択肢を増やし生活を豊かにするためにも障がい福祉事業所の積極的な共生型サービスの提供が望まれます。

2024年度に障害者総合支援法の改正が行われる

介護保険制度は2024年度に法制度改正が行われる予定ですが、同時に医療分野では医療報酬改正、さらに障がい福祉分野でも障害者総合支援制度の改正が行われ、医療福祉分野の足並みを揃えたかなり大規模な改正になるものと見られています。

障害者総合支援法の改正においてはまだ具体的な情報は少なく方向性は不透明な部分は多いですが、現在の検討段階では以下の内容について検討が進められています。

障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり

障がいを持つ方が地域生活を実現させ、またそれを継続するために必要な支援をさらに充実させる方向で議論が進んでいます。地域共生社会の実現のために高齢者、児童、生活困窮者の分野の施策と連携し、相談支援や社会参加支援、居場所づくりを一体的に支援する体制の整備や精神障がい者にも対応した地域包括ケアシステムの構築をさらに推進する方向です。

社会の変化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応

発達障がいが広く認知されたことに伴い増加したニーズに対し、質の確保が重要な課題であるとして、支援体制を整える必要があるとしています。

また地域共生社会の実現、推進の観点から年少基からの包括的ケアを推進し、障がいの有無に関わらずそれぞれの子どもが互いに学び合う経験を持てるようにする必要があるとも発言されています。それにあたり障がい児の利益を第一にしながらも家族支援の視点が重要であるとも指摘されています。

持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現

利用者の多様化とともに提供事業所が増加する中で、個別のニーズに応じた質の高いサービスを提供する必要があるとして、特に相談支援専門員の資質向上に取り組む必要があるとしています。

また現在障がい福祉分野には介護保険でいう第三者評価といった外部評価を受ける仕組みがなく、質の向上のために取り組みを推進する必要があるとも議論されています。

上記の内容はまだ議論の段階であり今後さらに新たな内容や具体的な方向性が定まってくるでしょう。今後の流れを注視しましょう。

まとめ

障がいを持つ方が65歳以上になると介護を要する場面が増え、介護を担う家族や職員の負担も多くなりますが、介護保険サービスや障がい福祉サービス等障がいを持ちながらでも希望する生活を支えるためのサービスは柔軟に組み合わせて提供することが可能です。 2024年の法改正ではさらに地域共生社会の実現を目指すための方策が深化するものと思われます。今後の動向に期待しましょう。

当コラムは、掲載当時の情報です。

参考URL

高齢の障害者に対する支援等について

障害福祉サービスについて

障がいを持った場合でも公的介護保険のサービスは利用できる?

障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて

障害者総合⽀援法対応版「ほのぼのmore」

障がい福祉サービスのさまざまな業務を総合的にサポートする障害者総合⽀援法対応版「ほのぼのmore」について知りたい・相談したい⽅は、まずはお気軽にお問い合わせください。

ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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