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NDSコラム

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退院前カンファレンスで重要な多職種連携の効率化(ケアプランデータ連携活用)

2023/04/07

在宅で介護や医療を受けている高齢者が入院する事態が起きた時、退院時には今までの生活状況が大きく変わることがしばしばあります。退院後も本人の望む生活を継続するために重要なことが、本人に関わる全ての医療職や介護職が緊密に連携を取ることであり、そのために開かれるのが退院前カンファレンスです。
退院前カンファレンスの中心となる職種はケアマネージャーですが、質の高い多職種連携を可能にし、高齢者の生活を守っていくためには情報連携の効率化を図ることが重要です。そこで今回は退院前カンファレンスにおけるケアマネージャーの役割と、その効率化について解説します。

在宅生活の高齢者の入院が及ぼす影響

高齢者は介護や医療が必要になった状態でも、本人の望む暮らしを送る権利があります。住む場所を選ぶのも当然本人の権利であり、多くの高齢者が自宅での生活を希望しています。

しかし介護や医療が必要になった場合の自宅での生活には様々な困難さが生じるのも事実です。要介護度に応じて生活行為を自力で行えない場合や家族の協力が得られない時は介護サービスの介入が必須となります。また医療サービスにおいても介護が必要になった原因となる疾患の管理や高齢が原因で起こり得る疾患の予防へのアプローチが欠かせません。 介護と医療サービスの介入により自宅での生活を希望する方の、その人らしい生活を続けることができるのですが、入院が必要になってしまうと事態は大きく変わることもしばしばです。

自宅で生活する高齢者が入院する理由としては様々なケースが考えられますが、急な入院で多いものとしては転倒による骨折や、体調を崩したところ二次感染で肺炎に罹るなどが考えられます。高齢であることを理由とする入院としては持病の悪化や老化に起因する疾病の発症などが考えられるでしょう。

若い世代の場合は骨折で入院したとしても手術、リハビリで骨折前の生活に戻ることはしばらくの時間があれば可能であることが多いですが、高齢者はそうもいきません。

高齢者の場合、歩行機能や内臓の機能は衰えてしまうと元に戻すことは難しく、入院が長引くほどさらに困難になっていきます。いざ退院の運びとなっても、以前までの生活には戻れないケースが非常に多く見られ、今までの介護や医療の関わりでは本人の望む生活を継続できないこともしばしばです。

退院時のケアマネージャーの役割とは

入院した高齢者が退院して在宅へ戻る際、そのまま退院させてしまっては日常生活の継続が困難になることが多々あります。歩行できなくなり車いすが必要になった。介護用ベッドが必要になった。自力でできないことが増えたなど、何かしらの能力低下を伴うことがほとんどであるため、以前の生活には戻れないことが多いのです。

そこで重要になるのがケアマネージャーです。ケアマネージャーは高齢者の退院が決まった際、今後の在宅生活をどう支えていくかを考えるための最初の窓口といってもよいでしょう。退院し在宅生活へ戻る高齢者の状態が著しく変化した際や、新たに介護保険の要介護度認定を必要とする場合など、訪問介護や訪問看護、訪問リハビリや通所介護などの様々なサービスの利用が必要になります。以前から何かしらのサービスを利用していた方でも回数の変更が必要になる、ケアの方向性の修正が必要になるといったケースは多く見られます。ケアマネージャーは必要に応じてケアプランを変更する必要があり、以前から利用していたサービスの再開や調整、場合によっては新たなサービスの設定もしなくてはなりません。そのため退院が決まった際に最初に窓口になるのがケアマネージャーなのです。

そして病院の退院前に、関連する業種を集めて行われるのが退院前カンファレンスです。退院前カンファレンスは退院後の生活を安心安全に過ごすために主に病院側が主催しますが、介護保険サービスの事業所の参加を呼び掛けるのはケアマネージャーが行うのが一般的です。すでに利用しているサービス以外にも新たなサービスも含めてカンファレンスを行う必要も多いため、ケアマネージャーは高齢者の入院中から病院側と密に連絡を取り、退院後の生活を見越した上でのプランの見直しを図ることが求められます。

多職種連携の重要性

退院前カンファレンスは病院と、窓口となるケアマネージャーが中心となって行いますが、なぜ関わるすべてのサービス事業者が参加する必要があるのでしょうか。それは高齢者の支援において多職種連携が非常に重要だからです。

以前から関わっていたサービスは、利用者が入院して退院したからといってそのままサービスを再開すると、状態の変化に気付くことができず利用者の現状に合ったサービスを提供することが困難になります。また、退院時の状態によっては大幅なプラン変更が必要となり、各サービスに求められる役割に変更が生じることもしばしばです。

カンファレンスはただ自分たちのサービスに必要な情報を得るためのものではなく、高齢者の望む生活を支えるために必要なサービスが一丸となってケアプランの達成に各々の専門性を発揮するものでなくてはなりません。高齢者の状態を正しく知るため、ケアプランに変更が生じた際に自分たちの役割を把握するため、そしてケアプランの達成に他の業種がどのように関わっているのかを把握するために開催されるのが退院前カンファレンスです。多職種連携の観点は高齢者のケアには必須です。それはケアマネージャーも例外ではなく、多職種連携の要に位置しているのがケアマネージャーなのです。つまりケアマネージャーがいかに退院前カンファレンスを通して他事業所と情報連携を図っていくかが高齢者の退院後の在宅生活を守るといっても過言ではありません。

ケアプランデータ連携の活用の有用性

ケアマネージャーは退院前カンファレンスを通して多職種連携を図るための重要な立ち位置ではありますが、その業務内容は非常に煩雑です。

病院との連携の結果、退院の時期が明確になってくると、現在の高齢者の状態に合ったプランに変更するために他事業所との調整を行いながら退院前カンファレンスに備えます。カンファレンス時には変更したケアプランの素案を関連事業所に配付しますが、事業所によっては実施が困難なプランであったり、逆に事業所から別の提案があったりする場合もあります。その結果をさらにケアプランに反映させ、関連事業所に再配布してようやく退院後のサービス提供基盤が整います。しかし配布する作業も関連する事業所が多いほど都度の郵送やFAX送信などで非常に多くの時間を取られてしまいます。

そこで厚生労働省はケアマネージャーのケアプランに係る業務の効率化と情報連携の質の向上を目的に、令和5年4月より「ケアプランデータ連携」を開始する予定です。

ケアプランデータ連携とは、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の間で毎月やり取りされるケアプランのうち、サービス提供票の予定や実績をデータ連携するために標準仕様を作成し、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所間でそのデータを連携する取り組みをさらに発展させ、ケアプランをデータとして連携できるように現在調整が進められています。

これにより記載時間の削減、データ管理による文書量の削減、情報の転記誤りの削減、介護職員、ケアマネージャーの負担軽減が期待されており、利用者への支援にかけられる時間が増えることでケアの質の向上を図ることや、人件費や印刷費、郵送費といったコストの削減も期待されています。

ケアプランがデータとして連携できるようになると、利用者支援の大元となるケアプランを関連事業所が共通認識として情報共有できるようになり、ケアの質の向上が期待できるだけでなくケアプラン送付のためにかかっていたコストがすべて不要になるため費用の軽減、時間の確保といった業務の効率化をより一層図ることができるでしょう。

退院前カンファレンスを通して変更されたケアプランも関連する事業所が即座に共有できるので、迅速かつ密なやり取りができるようになることが期待できます。

ケアプランデータ連携システムの利用には以下の2点が必要です。

  • インターネットが使用できるパソコン(Windows10以降)
  • 厚生労働省のケアプラン標準仕様に準拠した介護ソフト

事業所間でデータ連携を行うためには送信側、受信側双方がシステムの利用登録を行う必要があります。居宅介護支援事業所は、介護事業所がケアプランデータ連携システムを積極的に利用しケアの質を向上させるためにも率先してケアプランデータ連携システムの利用登録を行うことが良いでしょう。

現在予定されているスケジュールでは、令和5年4月1日から利用申請の受付が開始され、令和5年4月14日以降にクライアントソフトのインストールが可能となる予定です。(1事業所1端末を想定)実際にデータ連携のシステムを利用できるのは令和5年4月20日の予定です。

まとめ

高齢者の退院時は状態が大きく変わることが多く、それによりケアプランにも変更が生じることがしばしばです。ケアプランのやり取りに関わる業務は非常に手間がかかることが多く、ケアの質を低下させることにも繋がるため、ケアプランデータ連携システムを積極的に活用し、居宅介護事業所、介護サービス事業所双方の業務効率化を図るとともに質の高いケアの提供につながる密な情報連携を図ることができるよう今から準備を進めていきましょう。

当コラムは、掲載当時の情報です。

参考URL

ケアプランデータ連携システムについて

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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