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NDSコラム

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「介護職員初任者研修」を受講するメリット

2023/03/13

介護職員の資格保有の現状

介護業界は慢性的な人材不足のため、就業の応募があった際にはなるべく採用したいと考える介護事業所は多いことでしょう。

公益財団法人介護労働安定センターが発表した「令和3年度介護労働実態調査」によると、介護職員の資格保有者の割合は介護福祉士が49.9%、介護職員初任者研修が34.4%と資格保有率が高いことが分かりますが、一方で無資格者の割合は8.6%でした。

介護保険事業は訪問介護を除き、その業務を遂行することに特別な資格の保有を必要としていません。特別養護老人ホームや老人保健施設といった介護福祉施設、デイサービスやショートステイといった在宅介護サービス、小規模多機能型居宅介護といった地域密着型サービス等多くの介護事業は資格がなくても始めることができます。

介護の仕事に興味を持った方が介護の仕事をしてみようと思った場合、まず資格を取るのではなく、資格を保有せず応募してくることが比較的多いといえます。人材不足に悩む事業所では、資格がなくてもまずは採用し、人員を充実させたいと考えるのが自然です。

ですが、介護の仕事は資格を保有せずに始めることはできますが、やはり介護の知識、技術がないと非常に危険を伴う仕事でもあります。 介護事業所としては、スタートは資格がなくても働きながら資格を取得し知識、技術のブラッシュアップを図っていってもらうよう適切にサポートしていくことが望ましいでしょう。

2024年4月から受講が義務付けられる「認知症介護基礎研修」

現在は資格がなくても始めることができる業種の多い介護保険事業所ですが、2021年の介護保険制度改定で、介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を有さない方について「認知症介護基礎研修」を受講させるために必要な措置を講ずることが介護事業者に義務付けられました。

なお、既存の無資格者については施行から3年間の経過措置、新規職員については採用後1年以内の猶予期間が設けられています。

つまり2024年4月からはすべての無資格者が認知症介護基礎研修を取得していることが介護の仕事を始める前提条件になるのです。

「介護職員初任者研修」と「認知症介護基礎研修」の違い

以前から介護業界で働くにあたり取得が推奨されていた資格に「介護職員初任者研修」があります。では、「介護職員初任者研修」と「認知症介護基礎研修」の違いを比較してみましょう。

まず認知症介護基礎研修は6時間の研修で取得可能であり、その内容は認知症の理解と対応の基礎知識です。

介護を必要とする方への直接的ケアを提供する際、資格のない方や未経験者の多くが対応に苦慮するのは認知症対応です。認知症介護基礎研修は、介護の仕事として高齢者に接する以上必ず身に付けておくべき最低限の知識、技術を学ぶ資格であり、介護の仕事を始める最低限のスタートラインという位置付けといえます。実施機関によってはeラーニングでの受講が可能で、取り組みやすいのが特長です。受講費用については数千円が一般的ですが、自治体によっては無料で受講できるものもありますので、お住いの地域での実施状況について確認し、実施スクールごとの開催日程や費用、事業所が費用を補助するのかどうかなどの必要な情報等、職員が受講しやすい体制を整えておくことが必要な措置として望ましいでしょう。

対して介護職員初任者研修は以前の「ヘルパー2級」と同等の資格です。
※資格「ペルパー2級」は、2013年4月1日に廃止されました

位置付けとしては認知症介護基礎研修と同じく介護職として働くためのスタートアップ的な資格ですが、取得までは認知症介護基礎研修と比較すると、130時間のカリキュラムをこなす必要があり、1日で取得することはできません。しかしその内容は介護保険制度の知識から認知症の基礎知識、高齢者の特性の理解から生活介護に必要な知識と技術など、介護職として働くための基礎的な内容を網羅しています。

いわば介護職員初任者研修資格の取得は、基本的な介護を実践できる証明にもなります。そのため、利用者宅へ基本的に単独で訪問し介護サービスを提供する訪問介護の仕事は介護職員初任者研修以上の資格を有している者しかできません。

介護職員初任者研修の受講費用はスクールによって差があり、5~6万円前後が一般的ですが自治体が実施している研修では求職者を対象として無料で受講できる場合もあります。 両者の資格の関係性は、介護職員初任者研修の内容から認知症に関する項目だけを抜き出したものが認知症介護基礎研修であるといえるでしょう。

介護職員初任者研修を取るメリット

介護の仕事に就くにあたり、介護職員初任者研修を取得するメリットは非常に大きいです。主なメリットは以下の通りです。

処遇が向上する

介護の仕事は有している資格に応じ資格手当が付く事業所がほとんどです。多くの事業所で介護職員初任者研修を修了している職員へ資格手当をつけていることでしょう。 無資格の場合でも業務内容に差はありませんので、同じ仕事をしても手当分が多くなるのは大きなメリットです。

利用者対応の負担が軽減する

介護の仕事は認知症の対応だけでなく、食事・入浴・排せつ等の日常生活介護やそれに付随する移動・移乗の介助、さらには日常的な健康管理やコミュニケーションなど、利用者の心身の状況に応じた適切な支援が求められます。その方の疾病や障がいに応じたケアを提供することは想像以上に大変です。未経験や資格を保有していないケースの場合、自身のバックボーンとなる知識や技術の裏付けがないことでどのような介護を行うのが最適か判断できないこともしばしばです。介護職員初任者研修を修了している場合、130時間の研修で得た知識、技術が自身の介護の根拠として機能します。だからこそ利用者に応じた適切な介護の実践に自信を持って取り組むことができ、身体的にも精神的にも負担を軽減しやすくなります。

就職の選択肢が広がる

先述の通り、介護職員初任者研修は基礎的な介護の知識と技術があることを証明できる資格ですので、訪問介護の仕事を行うには必須の資格です。また、介護事業所によっては介護職員初任者研修の資格を最低限持っていることが就職の条件としているところもあります。 介護の仕事を始めようとする際、介護職員初任者研修を修了しているか否かで、選べる業種や事業所は各段に広がるでしょう。

キャリアアップに繋げやすくなる

介護職員初任者研修を修了しているか否かで介護の仕事への取り組みやすさは大きく変わってきます。無資格で働くのに比べ仕事への慣れも早いと思われますし、介護保険制度や介護過程の基礎も学べますので現場の直接ケア以外の業務の下地もある程度身に付きます。その結果、資格がない場合と比較すると様々な仕事を任されやすくなるでしょう。介護の仕事を通じてキャリアアップを図っていきたい人にとっては、無資格で働くよりも介護職員初任者研修を取って働く方がメリットは大きいといえます。

資格をもっていない職員への働きかけはどうする

前述のように、無資格で働くよりも介護職員初任者研修を取ってから働くことのメリットが多い介護の仕事ですが、あまり資格取得に前向きでない介護職員も一定数存在します。 もし資格を保有せずに入職したとしても、そこから改めて資格を取得となると仕事と並行して受講もこなすことが介護職員にとって負担が大きいのも事実です。介護事業所側からしても、介護職員初任者研修を取得してもらったほうが恩恵は大きいので資格取得に前向きになってもらいたいでしょう。ですが職員の負担を考慮せずに一方的に受講を呼びかけるのは逆に働きにくい重圧にもなりますので促すことをやめるなども含め、注意が必要です。

そこで大切になってくるのが、介護職員初任者研修を取得していない職員に前述のメリットをしっかりと説明し、能動的に受講の意欲を高めてもらうことです。介護職員自身が前向きに資格を取得しキャリアップを目指すために受講する姿勢にならなければ、研修の効果を最大限に発揮することは困難です。

また受講しやすいように介護事業所側から介護職員初任者研修のスクール情報など十分な情報を提供することも重要です。受講を勤務として扱うかどうかは介護事業所の方針もありますので一概には言えませんが、介護職員が受講に前向きになるためには、受講中の勤務方法などを介護職員の希望を踏まえてできる限り応えていくことが大切です。受講日に夜勤入りである、勤務と受講日のせいで介護職員自身が休める日がないなどの事態は避けるようにしましょう。

2024年度からの新制度「介護助手」からキャリアアップとしても

厚生労働省は2024年度より、利用者への直接ケアを提供しない間接的な業務を行う職員として「介護助手」を正式に位置付ける方向で調整を進めています。介護助手の活用は、利用者への直接ケアと並行して事務作業や掃除、洗濯等の家事支援も行うことが大きな業務負担となっている介護職の負担を大きく軽減し、その結果ケアの質を大きく向上させることが期待されていると共に、幅広い人材を呼び込み介護業界の慢性的な人材不足を解消する手立てになるとも期待されています。

さらに介護の仕事に興味があっても知識、技術が不安なため介護助手の仕事からスタートした職員が経験を積んでいき、利用者への直接ケアも行いたいと希望する場合もあるでしょう。その際は介護助手として働きながら介護職員初任者研修を受講し、修了後は介護職員として働くというキャリアアップの計画を立てやすくなることにも繋がりますし、介護事業所側からしても利用者への直接ケアを提供できる資格を持った職員が増えることは事業所の質の向上に非常に役立つことでしょう。しかし、介護助手として働き方を希望する職員も当然いると思われます。介護事業所は、職員一人ひとりの希望する働き方やキャリアアップの意思をヒアリングし、その人に合った働き方を支援することが大切です。

介護助手からスタートし、介護職員初任者研修の受講を経て介護職員として働くというキャリアの道筋を事業所が整えた上で介護助手を採用、活用していくことは、将来的に事業所の人材不足解消、質の向上の重要なポイントになると思われます。自身の事業所での介護助手の活用方法を今の段階からしっかりと考えていくことが重要です。

まとめ

介護職員初任者研修は、介護の仕事を行っていく上で身に付けるべき基礎的な知識、技術を学べる資格です。介護事業所は無資格の職員や認知症介護基礎研修を受講した職員が積極的に受講する意欲を持てるように受講しやすい環境を整え、事業所の質の向上に努めていきましょう。

当コラムは、掲載当時の情報です。

参考URL

令和3年度介護労働実態調査

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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