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看護師だけではない!?介護記録には看護師の記録手法「SOAP」が有効

2022/12/06

介護事業所では老人保健施設や特別養護老人ホーム、通所介護など業種により介護士だけでなく看護師などの医療職も配置が必要と定められており、ひとつの事業所で複数の職種が関わる多職種連携が必須です。事業所の運営基準に看護師等の配置が求められていない訪問介護等のサービスとは異なり、利用者へ提供したケアや健康状態の観察結果はカルテ等に全職種が記録することがほとんどです。
看護師等、医療職が記録を書く際には「SOAP」という書き方を守ることが欠かせないといわれていますが、介護職員は「SOAP」を意識した書き方をするべきでしょうか。また、多職種連携を円滑にするために様々な業種が関わる事業所での記録業務はどのように統一するとよいのでしょうか。今回は介護事業所における看護職をはじめとした医療職の記録と介護職の多職種連携を意識した記録について解説します。

介護事業には介護記録が必須

介護事業所では単に利用者へのサービスを提供するだけでは不十分で、利用者の日々の健康状態をはじめ、行ったケアの内容や利用者の反応などを記録することが欠かせません。

そもそも介護サービスは介護を必要とする方に介護を提供する仕事という理解ではなく、要介護状態になったことで自分らしく生きることが困難になった時に、介護サービスを受けることで自分らしく生きることを継続できるように支援することが正しいといえます。

そして望む暮らしの実現に向けて介護支援専門員が作成した介護計画書に沿って介護事業所は必要とする支援を提供していきます。つまり介護サービスとは非常に計画的に提供されるものであり、計画通りに支援できたかどうかを評価するためには毎日のケアを介護記録に記すことが欠かせないのです。

多職種連携が基本となる介護事業所

介護事業所の業務では介護の業務だけでなく看護師をはじめとする医療職との多職種連携が必須です。

介護が必要な高齢者は本人の希望する自立した生活を目指したケアを受けるということは先述しましたが、介護が必要になった要因となる加齢や疾病には必ず医療的なサポートも必要となるためです。また高齢者は加齢の影響により感染症にかかりやすくなる、転倒しやすくなる、食事をはじめとする生活行為のADLが低下しやすくなるなど健康状態が何らかの影響で低下しやすくなるリスクが上がります。

介護職が常日頃から利用者を観察することも大切ですが、それ以上に利用者を医療的な面から観察し健康状態の維持や向上を図ることは医療職の専門分野です。介護を必要とする高齢者の暮らしをサポートするためには介護と医療がしっかりと連携して支援することが欠かせません。

介護士と看護師の役割の違い

介護士と看護師が同じ事業所内で勤務することが前提となる介護事業所は数多く存在します。

特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護医療院といった施設系サービスでは介護職員だけでなく看護師の配置が義務付けられています。また居宅においては通所介護や短期入所生活介護等も同様です。

そこで提供されるケアは当然利用者の自立を支援するためのケアですが、介護職と看護職は利用者を見る視点が違います。例として脳梗塞により左半身にマヒが生じている方のケアを行う場合、介護職は主に現在のその方がどのように生活したいかをアセスメントし、その実現に向けて現在のADLでできる限り自力でやってもらう、できないことをできるように不十分なところを支援するといった寄り添い方がケアとして求められます。しかし看護職はその方がケアを必要とする要因になった脳梗塞をいかに再発させないか、運動機能の低下を防ぐかなどが主なアプローチになります。

この両者の違いは、日常的に利用者を観察する視点の違いにつながります。どちらが優れているわけでもなく、この両者の視点が利用者を多角的にケアするために欠かせないのです。介護職は利用者の生活を守る専門職であり、看護職は健康を守る専門職といってもよいでしょう。

看護師の記録に欠かせない「SOAP」とは

ケアを通して利用者を見る視点が介護職とは異なる点のある看護師はその業務において非常に客観的かつ科学的な観察が求められます。それは記録する内容にも当然求められており、看護師が書く記録は「SOAP」に沿って記載することが不可欠といわれています。それぞれの内容は以下の通りです。

S(subjective):主観的情報

看護師の目線から得た情報

(例:利用者が腹痛を訴えている。)

O(objective):客観的情報

検査等から得た客観的データ

(例:排便が3日間確認されていない、飲水量が500ml/日)

A(assessment):評価

医師の診断やS+Oから分析、解釈を行った結論

(例:便秘により腹痛につながったと思われる)

P(plan):計画(治療)

Aに基づいて実施する治療などの方針

(例:緩下剤を与薬する、飲水量を増やす)

このSOAPに基づいて記録を書いていくことで、観察の結果なぜそう思ったのか、その根拠となる情報は何か、そこから考えられる原因は何なのか、どのように解決するべきなのかというフローが明確になり、記録者本人だけでなくその他の看護師たち全員が問題点の把握とその解決に向けての方針を共有しやすい情報となるのです。

介護職にもSOAPは必要?

看護師にとって今や記録をする際の基本ともいわれるSOAPの視点は介護職にも必要な記録方法なのでしょうか。

答えはその通りです。介護職も先述しましたが介護計画書に沿って利用者の望む生活を実現させるために日々のケアを提供します。その過程でただケアを行った記録を書くだけでは不十分で、介護職が感じたことや、それを根拠づけるために利用者に聞いたことや他の専門職との連携、そこから推測される内容などを日々記録し、必要であれば介護計画書を見直すことも大切です。

介護職は医療の専門ではありませんので医療的な判断をすることは厳禁ですが、介護職が観察した結果感じた内容には医療的な問題が隠れていることがしばしばです。SOAPに沿って記録する意識をつけていくことは医療職との連携の必然性を高めることにもつながり多角的な視点から介護の質が大きく向上することに役立ちます。介護職の記録の質を高めるにはSOAPに沿って情報をまとめていく手法は積極的に身に付けていきたいですね。

多職種協働の介護事業所での介護記録

介護職や看護職といった多職種が勤務する介護事業所では、介護記録はどのような方法で記載されているのでしょうか。

事業所の方針により様々なルールが設定されているかと思われますが、介護記録として分かりやすく、かつ情報として把握しやすくするためには時系列をしっかりと把握できることが重要です。介護職と医療職の部署が完全に分かれているのであれば記録様式はケア記録やカルテ等それぞれ独立したものになることが多いですが、それでもやはり介護職、医療職はお互いの記録を参照できた方が利用者の状況を多角的に捉えることができます。多くの業種が連携する事業所ではその専門性を活かして包括的なケアを提供できることが強みといえますので、できる限りは同じ記録媒体に記載していくことが効果的です。

しかし一冊のケア記録、カルテに様々な職員が記録を書いていくのはいささか不便であるともいえます。そこで有効な手立てが記録のシステム化です。介護記録ソフトを導入することでそれぞれ異なる職種の情報を簡単に参照できるため、時系列に沿った利用者情報の把握や異なる職種のケア記録から利用者の状態を正確に把握できることにつながります。また、介護記録や看護記録をタブレットやスマホ、パソコンなどで記録するようにすれば、どこでも気軽に情報を記録できます。

質の高い記録は活用しやすいシステムにしてこそ最大限に利用者へのケアならびに多職種連携に役立てることができます。

NDソフトウェアでは介護記録アプリ「Care Palette(ケアパレット)」をご用意しております。タブレットへの簡単入力で記録を効率化するだけでなく、音声入力にも対応しており、タイムリーにその場で情報共有ができますのでさらに記録にかかる時間を短縮することができます。利用者様の日々の食事や排泄といった記録だけでなく看護ケア記録等の多職種連携にも対応しております。ぜひお気軽にご相談ください。

▼Care Palette(ケアパレット)

まとめ

看護師にとって基本的な記録手法である「SOAP」は介護職にとっても積極的に身に付けたい手法です。利用者を主観的、客観的両面から捉え、効果的なケアを提供していくためには介護職と看護職双方がSOAPに沿った記録を残し、多職種で共有することによって包括的なケアに活かすことが求められます。

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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