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NDSコラム

介護支援ソフト「ほのぼの」シリーズのNDソフトウェアです。介護業界・障がい福祉業界の、トレンドや情報を発信しております。

介護ソフト導入・入れ替えのリスクと失敗しないためのポイントを解説

2024/01/23

介護現場の業務効率化を目指して介護ソフトを導入、活用したいが、失敗したくない、リスクを最大限減らしてうまく運用したいとお考えの事業所は多いでしょう。
実際に、介護ソフトは事前に備えておかないと失敗に繋がってしまうケースがいくつかあります。
しかし気を付けるべきポイントを把握して介護ソフトを導入、あるいは入れ替えすることができれば、失敗を避けることができ事業所の業務を効率化し現場の働き方改革に繋がるだけでなく、利用者へ質の高いケアが提供可能となるなど大きなメリットを生み出します。
そこで今回は、介護ソフトの導入を成功させるために「介護ソフト導入時や導入後、入れ替え後によくみられるリスク」とその対策について解説します。

導入後、入れ替え後に発生するリスク

介護ソフトは主に計画書業務、保険請求業務、記録業務といった事務作業をデジタル化します。これにより導入前は紙媒体に手作業で行っていた業務Excel等を駆使してひとつひとつ手入力で行っていた業務に係る作業の効率を大幅にアップすることが期待できます。 介護現場の業務を例に挙げるとパソコンやタブレット上で記録を行うようになるため、紙の消費量が少なくなり省スペース化します。

また記録に関する業務も定型文の使用や項目に必要な情報を入力するだけで文章を書く手間が少なくなる、過去の記録を簡単に検索できるので今までに提供してきたケアの確認や評価がしやすい、現在の状態を確認しやすいなどケアの質、記録業務そのものの質を高めることにも役立ちます。

しかしこれらは介護ソフトを導入し運用を始めてから、一定期間が経ってようやく実感できる効果です。さらに、導入したから必ず効果が出るわけではないので、効果が出るように運用しないと満足のいく成果が得られず、事業所の運営に大きなダメージとなりかねないリスクが存在します。

介護ソフト導入後、リプレイス後によくあるリスクを以下にご紹介します。

職員の反発や離職

現場の業務に介護ソフトを導入することで、それに馴染めない職員が反発、離職してしまうことがあります。

介護業界はほとんどの事業所で紙媒体での記録が当たり前でした。手書きによる記録に課題を感じることはなく、またデジタルに不慣れな職員も多いことから、新しい記録の手法となるデジタル機器への強い拒否感に繋がりやすいと言えます

その結果、新たな環境に馴染めずデジタル化を受け入れられない職員からは反発の意見や離職をほのめかす意見が出てしまい、折り合いがつかないと最終的に職員の離職やデジタル化そのものを断念してしまうことがあります。

しかし拒否感の強い職員の意見があるからと介護ソフトを導入しないことは反対に介護ソフトを導入して働きやすい職場にしたいと考える職員のモチベーション低下を招きかねず有効とはいえません。様々な年代の方が働く介護現場では違う意見、反対意見が出るのは当然です。反対する職員をどうにか説得しようということではなく、事業所として労働環境を改善していきたいという考えと、介護ソフトを導入することでどう改善されるのかをイメージしてもらえるよう働きかけることが大切です。そのためには介護ソフトの導入に肯定的な職員にも働きかけに参画してもらう、職員全員に説明する機会を設けるなど事前にしっかりと対策をし、不慣れな職員が適応できるよう適切な対応を取ることで、今までよりさらに働きやすい職場にすることができ安定した雇用に繋げることもできるのです。

データを移行する必要がある

介護ソフトを新規に導入する場合、当然ながら介護ソフトに今までの記録や利用者情報は入力されていませんので、利用者のフェイスシート等の基本情報をすべて入力する必要が生じます。そのため運用始めは入力作業に利用者数相応の手間がかかります。

またリプレイスした際においても、利用者情報を介護ソフト間でデータ移行する手間が発生し、メーカーによっては利用者データしか引き継げない場合や引き継ぐこと自体ができないケースも考えられます。そうなると今まで入力したデータはまた初めから入力し直す手間が発生し、入力しなおしを避けると今まで蓄積した記録を参照しにくくなるなど活用しにくくなり、ケアの質を低下させてしまう要因になります。利用者情報やケアの情報の取り扱いは事業所の質に直結するといっても過言ではありません。手間がかかってもデータを再度入力することでケアの質の維持、あるいは向上を図れますし経営データの分析にも役立ちますので新規導入、リプレイスどちらの場合においても介護ソフト導入に伴うデータ移行の必要性は忘れてはならない要素です。

作業効率が低下する

介護ソフトを導入、運用直後は作業効率が低下します。せっかく業務効率化のために介護ソフトを導入したのに作業効率が下がるとなっては、導入した意味がないという印象を持ってしまうことになりかねません。

しかしこれは避けようがない事です。業務を変革させる際はまだ流れに不慣れなことや、想定通りにいかずに新たな課題を発見するなど試行錯誤しながら進めていくことになります。慣れ親しんだ今までの業務の流れと比較すると、どうしても効率は悪くなったという印象になってしまうのです。

ですが、これはあくまでも一時的です。新たな業務の流れに慣れていくことで作業効率は上がっていきます。この作業効率の一時的な低下からまた上昇していくカーブの形を取って「U字の法則」といいます。

業務の流れを見直す必要がある

介護ソフトを導入して業務の効率化を進めていくためには、ただ導入するだけでは失敗のリスクが高くなります。

介護ソフトの導入は手書きやExcelでの入力管理からデジタル機器への入力に置き換わるだけではありません。また入れ替えを行う際もただ別の介護ソフトに替わるだけではありません。各種報告書をはじめとする帳票類や経営資料など、様々な書類を介護ソフト上で扱うようにもなりますし、入れ替えの場合は使用感も変わってきます。そのため効率的に使うには今までやってきた業務の流れを見直す必要が生じます。記録の仕方を変えるのではなく、介護ソフトの導入に合わせ業務の流れ全体を見直すという意識で向き合うことで、当たり前にやってきたが削減可能なことに気付くことができる等、無駄を見える化することに繋げることができます。

リスクへの対策方法

介護ソフトを導入したことで発生するおそれのあるリスクは、なるべくならすべて避けたいものです。リスクを避ける、またはリスクを軽減するためには先述したリスクが起こり得ることを想定した上で、それぞれに対策を練っておくことがとても大切です。

リスクに対しての体制を万全に整えていると導入から運用までスムーズに運びやすくなり、U字の法則でいう作業効率が低下する期間を短くすることや、効率の低下度合いを軽減すること、効率を早くあげることに繋がります。また職員の反発に対しても最大限にケアを行うこと、導入に前向きな推進派を見極め導入に参画させることで離職者を出さずに事業所一丸で運用を進めていくことも期待できます。

ここからは、介護ソフトを導入することで生じるリスクに対しての対策方法を以下にご紹介します。

導入目的を明確にする

介護ソフトは導入しただけで業務効率化するものではありません。事業所のどの業務を効率化させたいかを考えて、その解決手段に介護ソフトをどう活用するのか、活用した結果どうなってほしいのかを事前に明確にしておくことがとても大切です。

例として挙げると
・記録をデータ化することで、ケアの分析に活用したい
・記録時間を減らして利用者のケアにあたる時間を増やしたい
・帳票類の作成をスムーズにして事務作業の負担を減らしたい
・記録をデータ化してBCP対策にしたい
などです。

「○○したい」との希望があるならば、現状はその希望は叶っていないはずですので、それを叶える手段が介護ソフトであり、希望が叶った状態が「業務を改善した」状態なのです。 こうした目的を明確にしておくことは、事業所が介護ソフトを導入する方向性をしっかりと明示することにもなり、後述するリスクへの対策も講じやすくなります。

そのためには現状の業務のどの部分を改善したいのか、どうなれば理想的な形なのかイメージを掴めていればよいでしょう。

管理者や経営者からでは見えない現場ならではの悩みがありますので、現場で働く職員から意見の聞き取りを行うのも有効です。実施する際は、業務を改善したいという意思が明確な職員を対象に「負担の大きい業務は何ですか?」「どうなれば効率的になりますか?」などある程度具体的な目的、方向性を示してヒアリングするとよいでしょう。

現場から出た声を解決する手段が介護ソフトの運用であるならば、職員も抵抗感なく受け入れやすくなることが期待できます。

導入の目的を職員にしっかり説明する

介護ソフトの導入は現場で働く職員にとっては大きな変化です。そのため、導入時には職員全員にしっかりと説明し納得してもらえるよう努めることが重要です。

説明とは、なぜ介護ソフトを導入するのか、介護ソフトを導入したことで現場のどの業務を変えたいのか、どのような効率化を図り、その結果職員にはどんなメリットがあるのかなど、職員が具体的にイメージできるように説明することが大切です。

またその際に介護ソフトに対して抵抗感を示す職員も出てくると思います。職員の中には、デジタル機器をあまり扱ったことがないという職員がどの事業所でも必ずおられます。

そうした声には例えばスマホで入力できる、音声で入力できるなど職員の実態に合わせて扱いやすい介護ソフトを選定し、理解を得やすくしましょう。スマホの普及率は90%を超えており、ほとんどの人が使い慣れたデジタル機器です。パソコン操作をせずとも介護ソフトが使えることが伝われば抵抗感は和らぎやすいでしょう。音声入力についても操作が苦手な人のみでなく、入力の手間が大きく省けることや両手がふさがった状態でも記録できることを伝えれば受け入れられやすいでしょう。

また、なるべく職員全員が納得する形を取りながらも推進派と協力し、丁寧にコミュニケーションを取り導入を進めていくことで置き去りにされたと感じる職員を出さず、全員が前向きに取り組めるような風土を作ることが大事です。運用が成功した頃には現場の満足度も高くなっていることが大いに期待できます。

導入から運用まで計画を立てておく

介護ソフトの導入は簡単ではなく、環境の構築や職員への説明、研修会の開催、運用方法の策定から実施など導入前から運用に慣れるまでかなりの時間を要します。そのため、介護ソフトの導入を考えてメーカーに相談する段階から計画を立ててスケジュールに沿って進めていくことが重要です。時間がかかることを前提に計画を立てておくことで余裕を持って取り組む、導入がうまくいかない際も計画と照らした上で評価、修正できることがメリットです。

また現場業務の根幹に関わる記録や計画書管理のやり方が大きく変わりますので、導入直後の職員の不安を和らげるには、時間をかけて操作に慣れることができる、システムを理解できるよう根気強く取り組む必要があり、そのためには導入直後からすべてをシステム化するのではなく、段階を踏んで徐々にシステム化していくことが大事です。そして段階に応じたシステム化に取り組む際は、決まった曜日や決まった時間に研修会、勉強会を開催して確実に職員が参加できるよう、勤務を調整するなどスケジュール管理を行うことが大切です。

データ移行やサポートについてメーカーに確認しておく

初めて介護ソフトを導入する場合、当然利用者データは一切入力されていない状態ですので新規で地道に入力していけるようスケジュールを調整、確保しておけばよいですが、入れ替えする場合、利用者データを引き継げるのかはとても重要な要素です。新たな介護ソフトメーカーに相談する際は、今使っている介護ソフトから利用者データの他、どんなデータの移行ができるのかを必ず確認しておくことをおすすめします。

また運用直後は特に、事業所だけではどうすれば分からない事態がいつ発生してもおかしくありません。その際にメーカーがどのようにサポートしてくれるのかも確認しておくと、導入の不安も大きく緩和されることでしょう。

導入に前向きな職員に参画してもらう

介護ソフトの導入は管理者や経営者サイド、現場の職員などを含めたプロジェクトチームを組むことが有効ですが、その際にはぜひ介護ソフトの導入に前向きな職員に参画してもらうことをおすすめします。介護ソフト導入に前向きな職員は、業務の現状を変えたい、介護ソフトを活用して業務効率化を実現させたい、利用者へ質の高いケアを提供したい、職員の負担を軽減して職場環境を良くしたいなど、事業所にとってプラスの欲求を持っています。いきなり職員全員に理解をしてもらおうとするのではなく、前向きな人から参画してもらい事業所内に導入を浸透していくことで徐々にに広がり、会議で有益な情報を提供してくれる、他の職員への説明を積極的に行ってくれるなどスムーズな導入に繋がります。また、プロジェクトに参加して導入を成功させたことは本人にとっても大きな成功体験となります。

しかし職員全員が受け入れきれていない状態で前向きな職員のみに任せきってしまうと、他の職員との熱量の差で軋轢が生じる場合もあります。最悪の場合は拒否的な職員が逆に意固地になる、前向きな職員が意欲を失ってしまうこともあり得ます。管理者やプロジェクトリーダーは、前向きな職員がスムーズに動けるようにプロジェクト全体の方向の調整や進捗管理は行う一方で、成功体験に繋がる部分や現場職員への推進などは必要以上に口は出さずに注意深く見守る姿勢で、業務終了後に成果についてヒアリングし、不安点などのすり合わせを行うなど後方支援を行うことも大切です。

まとめ

今回は介護ソフト導入後に発生しやすいリスクと、その対策について解説いたしました。

この度紹介しましたリスクは、ほぼすべてが避けては通れないものですが、対策をしっかり練っておくことで発生を限りなくゼロに近づけることができたり、リスクによる弊害を最小限に止めたりできるようになります。これを乗り越えて介護ソフトの運用を成功させることで、職員にとって働きがいのある職場づくりと、利用者にとって質の高いケアを受けることができるより良い事業所づくりに役立てることができます。

また、対策として挙げた導入までのスケジュール作成、職員の勉強会のスケジュールの策定など介護ソフトのメーカーもサポートしてくれる場合があります。相談する際にどこまでサポートしてくれるのかを確認することでスムーズに導入を進めることができるでしょう。

NDソフトウェアの「ほのぼの」シリーズは専門知識を持つ専任のサポートスタッフが対応いたします。導入までに必要なスケジュールの作成以外にも職員様への勉強会講師も務めております。またサポートにおいても電話相談のほか文字情報が残るチャットでのサポートも実施しております。導入または入れ替えを検討していらっしゃる事業所様は、ぜひお気軽にご相談ください。

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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