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NDSコラム

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介護や障がい福祉業界のIT化、DXへの取り組み「IT」「ICT」「DX」それぞれの意味とは

2022/05/17

一般に日本はデジタル後進国と呼ばれており、世界各国と比べデジタルの普及が遅れているとされています。しかし今現在日本では積極的にIT機器といったデジタルを活用し、社会を変容させようとするデジタルトランスフォーメーション(DX)が推進されており、それは介護業界や障がい福祉業界でも例外ではありません。IT化やDXは介護分野、障がい福祉分野にどのような影響をもたらすのか、そして事業所がそれに対応していくためにはどのような取り組みが必要なのかを解説します。

日本の産業全体で求められるDX

日本は世界各国と比較してデジタル化が遅れているといわれています。近年、全世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症により「新しい生活様式」が発表されるなど、私たちの生活は大きな変化を求められました。日本のデジタル化の遅れはその際に顕在化し、IT機器等の活用が十分にできていないことを痛感させられました。

またデジタル化の遅れについて以前から指摘されていた問題に「2025年問題」があります。この問題は、日本のデジタル化への対応の遅れやIT技術を活用しきれないことにより国際経済において大きく遅れをとり、経済的な損失が著しくなることを懸念しています。

これらの問題を解決していくために、現在日本では積極的なIT技術の活用と、それを活用して経営のあり方そのものを変えていくデジタルトランスフォーメーション(DX)を積極的に推進しています。

この流れは慢性的な人手不足が続く介護業界や障がい福祉業界においても同様であり、これからの時代に合った経営を続けていくためには、積極的にITを活用しDXを図っていくことが必要です。

『IT』『ICT』『DX』の違い

デジタルに関する言葉で「IT」は私たちが普段耳にするものですが、先ほどの「DX」や「ICT」といった言葉もよく聞く機会の多い言葉ではないでしょうか。

それぞれの言葉がどのような意味であるのかを知ることは、事業所のデジタル化を図っていくために有効です。以下にその意味を紹介します。

IT

「Information Technology」つまり、情報技術のことをいいます。パソコンやスマートフォン、タブレットといったハードウェア機器、アプリや人工知能といったソフトウェア、インターネットに代表される通信技術という3つの要素で構成されています。

私たちの暮らしに欠かせない存在になりつつあるスマートフォンは、ITが進歩したおかげで手軽に通信ができたり便利なアプリを使えたりするのです。

ICT

「Information and Communication Technology」の略で「情報通信技術」と訳されます。

ITと同じ意味合いで使われることも多いですが、イメージとしては、ITはデジタル化された機器や技術そのものを指し、ICTはそれらの機器や技術を使いデジタル化された情報をやり取りすることを指します。つまりITをどのように活用していくのかに焦点をあてた技術がICTといえます。

DX

「Digital Transformation」の略で直訳すると「デジタル変換」という意味ですが、概念としては「デジタル技術を用いることで、生活やビジネスが変容していくこと」を指します。英語圏では「Transformation」の「Trans」の部分を「X」と略すことが一般的なためDXと略されます。

DXは、社会の激しい変化に企業が対応し、データとデジタル技術を活用してビジネスモデルを変革するとともに業務そのものや組織、プロセス、企業文化、風土を変革し競争上の優位性を確立することとしています。つまりDXとはIT、ICTを活用することだけを指すのではなく、環境変化に合わせてIT、ICTを活用することで事業所のあり方そのものを変えていき、質の高い事業所を作っていくことを意味します。

DXが目的で、ITやICTは手段ということになります。

介護業界、障がい福祉業界の実践例

介護業界や障がい福祉業界においてもITやICTを活用することでDXを実現させることの必要性は説かれていますが、実際にはどのようなことを指すのでしょうか。それぞれに見ていきましょう。

IT化

介護業界、障がい福祉業界は人の手による業務が多く存在し、比較的アナログな要素の強い業界です。これらの人が行う業務をデジタル機器に置き換えようとすることがIT化です。

例えば利用者宅へ伺うための地図出しは、従来は地図帳などから探し、印刷するやり方でした。これをインターネット上での地図帳を活用すれば検索する時間は大幅に減少します。 ほかのIT化の例で言うと、記録のデジタル化が挙げられます。従来は手書きで記録していたものをパソコンに入力することで情報が電子化され、紙の消費量や作業効率を上げるだけではなく、検索や絞り込みなどが簡単に行えます。このように人の手で行っていた作業を機械化することがIT化といえます。

ICTの活用

上記のIT化に加え、近年の通信技術の進歩によりさらに業務の効率化に資するための取り組みがICTの活用です。

介護業界や障がい福祉業界はこのICTの進歩により大きな変化を遂げようとしています。先述した記録のデジタル化は、ICTを活用することでさらに便利になりました。ただ記録を電子化するだけでなく、パソコンやスマートフォン、タブレット機器等で情報を共有できるようになったり、センサー情報の取込みや見える化によって現場での業務は大幅に効率化することができます。利用者への支援にチームケアを要する介護、障がい福祉分野では情報の共有がとても大きな意味を持ちますが、ICTを活用することでより多くの情報を効率的に共有することが可能です。

DX

介護業界、障がい福祉業界でDXを図っていくとは、ICTを活用することで業務を効率化することだけではいけません。DXの目的はビジネスモデルの変革であり、ビジネスの質を変化させることです。そもそも介護の現場でICTを活用して業務を効率化していくことはどのような意味があるのかを考えることが重要であり、それは利用者への質の高いサービスに繋がること、安定した経営に繋がることといえます。

介護現場では記録業務に追われて利用者へのサービスの質が低下しがちです。介護記録ソフトで記録業務を効率化すれば業務の負担は軽くなり、その分の時間を利用者への直接サービスに充てることができます。その業務スタイルを事業所のスタンダードに変えていくことこそがDXです。

また、ICTを活用してビジネスモデルを変革させていくことは、職員の業務負担の効率化による残業の軽減、ペーパーレス化によるランニングコストの削減にも繋がります。経営上の支出を減らし安定した経営を実現することも他事業所との差別化となりDXを図ることといえるでしょう。

DXのためには何でもICT化すればいいのではない

事業所のDXのためにといって手あたり次第にICTを導入することは効果的とはいえません。ICT化は介護現場の業務効率化を図るために導入するものですが、DXはあくまでも事業所のビジネスモデルを変革することです。つまり現在の事業所のビジネスモデルの質をさらに向上させていくためには何を変革する必要があるのかを明確にすることが重要です。

まずは事業所の業務フローを見直し、どこを変える必要があるのか、変わることでどのような質の向上が見込めるのかを見定める、「業務フローの見える化」が必要です。ICTの活用は、その先のDXを考えながら推し進めていくことが大切です。

介護現場でサービスの質の低下に繋がる要因になりやすいのは、多くは記録業務と職員間の情報共有です。これらの業務をICTで効率化し質を向上させていくには事業所内のルールも大きく見直す必要が出てきます。ただ効率化するだけでなくそれにより運営の在り方そのものを変えていくことでDXが実現できるのです。事業規模や事業種別により利用者の見守りの質をICT活用で向上させる、送迎ルートの設定をICTで効率化する、根幹業務をICTで連携させて効率化するなど様々な効率化方法が考えられます。それぞれの事業所の想いを実現するためにどのようなビジネスモデルの変革を生み出せるのかまでを考えて、抜本的なルールの見直しやIT、ICT化を図っていきましょう。

まとめ

DXはデジタルの活用をすることではなく、デジタルを活用してビジネスモデルを変革し、サービスの質や職員の働きやすい環境の提供など、事業所そのものの質を向上させていくことです。

効率化することを目的とせず、効率化することでどのように質の高い事業所に変えていくことができるのかを意識して事業所のDXを推進し、これからの介護業界で生き残ることができる事業所づくりを目指しましょう。

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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