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NDSコラム

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健康寿命を延ばすフットケア、人手不足でもできる介護現場でのポイント

2024/11/15

高齢者の健康寿命の延伸にはフットケアが有効です。そのため、家庭だけではなく介護現場においてもフットケアが重要視されています。
しかし、「フットケアにはどのような効果があるの?」と疑問を持つ方や、「人手不足で提供できない」と悩んでいる管理者やリーダーもいるでしょう。
本記事ではそのような方に向けて、フットケアの重要性や人手不足でもできる介護現場でのポイントを紹介します。

介護におけるフットケアの重要性

フットケアとは、足の皮膚や爪を清潔で健康に保つための手入れ方法です。
介護でフットケアが重要とされるのは、巻き爪やタコ、変形といった高齢者の足のトラブルを緩和したり、異常の発見により早期の治療につなげたりするためです。
加齢や慢性疾患などの影響により、多くの高齢者は足にトラブルを抱えています。しかし、視力の問題や手が足に届かないなどにより、自分だけではケアが出来ない方もいます。そのような方に対して、適切なフットケアを提供することが介護の重要な役割の一つです。
介護でフットケアが重要視されるのは、以下の3つの効果が関係しています。

  • 転倒予防
  • 自立生活維持
  • 下肢機能の改善

転倒予防につながる

フットケアの重要性から厚生労働省は、平成15年に「足指・爪のケアに関する事業」を介護予防・地域支え合い事業に位置付けました。そのなかで、足指・爪のケアは転倒予防に役立つことが示されています。
足にトラブルがあると、歩行時や起立時の重心の偏りを引き起こし、バランスを崩して転倒する可能性があるためです。

また、歩行時に痛みが発生することで、足に力が入らなくなり転倒することも考えられます。
高齢者が転倒すると、骨折などの重大なケガにつながりやすく、寝たきりの原因にもなりかねません。つまり、フットケアを実施することは、高齢者の転倒リスクを減らすことが出来るため健康寿命を延ばす可能性を高めます。

自立した生活を維持できる

高齢者が足にトラブルを抱えると歩行を避けたり、痛みやトラブルのある部分をかばって歩行することで、足・腰・関節などに別の障害が発生したりする原因となります。また、歩行を避けるなどにより活動量が低下すると問題となるのはフレイルです。フレイルとは心身や筋力が衰弱し、健康と要介護の中間の状態です。フレイルの状態が続くと介護が必要になり、自立した生活が困難になります。

具体的な足のトラブルには、爪が伸びすぎて歩きにくくなることや巻き爪で皮膚に爪が刺さる痛みなどがあります。

足のトラブルの対策として適切なフットケアを提供することで、発生の抑制や異常の早期発見が可能です。つまり、高齢者へのフットケアは活動量の低下の原因となる足のトラブルを抑制することで、自立した生活の維持に貢献します。

下肢機能の改善が期待できる

フットケアは高齢者の足のトラブルを解消し、歩きにくさを緩和することで、下肢機能の改善が可能です。痛みや歩行の恐怖がなくなると、外出や散歩などで自発的な活動量が増加するためです。

生活の質の改善にもフットケアが役立つといえます。

フットケアの手順

介護現場におけるフットケアの基本的な手順は以下のとおりです。

  1. 1. 足に異常がないかを観察する
  2. 2. 足を洗い清潔にする
  3. 3. 爪を適切な長さに切る
  4. 4. 皮膚を保湿する

上記の手順のほかに適正な靴を履いているかの確認も、転倒予防や自立した生活の維持には大切です。ここでは4つの手順を詳しく解説します。

手順1. 足に異常がないかを観察する

利用者の足にトラブルが発生していないか、異常がないかを観察します。
観察するポイントは足の色や皮膚の状態、匂い、ケガの有無、爪の長さなどです。
タイミングは靴下を履いていない入浴前がおすすめです。

手順2. 足を洗い清潔にする

次に入浴や足浴で清潔にします。
石けんをしっかりと泡立てて、指の間も優しく洗うのがポイントです。
洗い終わった後は、清潔を維持するため指の間まで水分を拭き取ることが大切です。

手順3. 爪を適切な長さに切る

爪を切るタイミングは、爪が柔らかくなる入浴後や足浴後がおすすめです。
爪の切り方は、スクエアカットと呼ばれる方法が推奨されています。爪の端が食い込みにくく、巻き爪を予防できるためです。
具体的な切り方は、指先と同じ程度の長さで爪を一直線に切ります。次に爪の両端を爪やすりで丸く整えます。
スクエアカットのポイントは、爪の白い部分を2mmほど残すことや角を落とし過ぎないようにすることです。

手順4. 皮膚を保湿する

保湿剤を塗って、皮膚を保湿します。
皮膚が乾燥するとひび割れやかゆみ、炎症などのトラブルの原因となるためです。

介護職がフットケアを提供できる?

経営者やリーダーのなかには、「フットケアは医療行為にあたるのではないか?」や「介護職員がフットケアを提供しても良いのか?」と疑問に思っている方もいるでしょう。

この疑問に関して、平成29年に経済産業省は「グレーゾーン解消制度」を活用し、以下の4点について医師の資格がなくても介護職員がフットケアを提供できることを明確にしました。

  1. 1. 軽度のカーブまたは軽度の肥厚(ひこう)の爪について、爪切りできることや爪やすりで削ること
  2. 2. 下腿と足部に医薬品ではない保湿クリームを塗布すること
  3. 3. 軽度の角質の肥厚のある足部について、グラインダーで角質を除去すること
  4. 4. 足浴を実施すること

ただし、医療行為とみなされるフットケアについては、介護職員は実施できないので注意が必要です。

医療行為とみなされるフットケア

医療行為(医行為)とは、医師や看護師などの国家資格を持つ医療従事者のみが行える医業のことです。介護職員は介護福祉士の資格を持っていたとしても、医療行為を実施できません。そのため、医療行為とみなされる以下のケースは対応できないので注意しましょう。

  • 爪に異常がある場合
  • 爪の周囲の皮膚に化膿や炎症がある場合
  • 糖尿病の疾患に伴う専門的な管理が必要な場合

具体的には、巻き爪や爪白癬などの異常のある爪を切ることはできません。また、自分で対応できるかどうか少しでも迷った場合は、必ず医療従事者や上司に確認しましょう。

介護職がフットケアを実施するにはスキル・知識が不可欠

介護職が適切なフットケアを提供するには、スキルや知識を深めるための教育や訓練が必要です。

爪切り一つをとってみても、スクエアカットのやり方や爪やすりをかける方向などに注意すべき点があります。

スキルに関する知識だけではなく、足の疾病や利用者の持病についても把握する必要があります。糖尿病を患っている利用者の場合は、医療行為に該当するため、爪切りが提供できないなどの制限があるためです。

ほかにも高齢者のなかにはスキンテアと呼ばれる、軽く触っただけでも皮膚が破けてしまう方もいます。さまざまな疾病を患っている利用者に対してフットケアを提供できるかの判断や実施には、専門のスキルや知識が必要となるのです。

フットケアのスキルや知識の向上に資格取得を利用しよう

どのようにしてフットケアの教育や訓練をすべきか悩んでいる方もいるでしょう。おすすめは、フットケアの資格取得を利用することです。

一般社団法人 日本フットケア・足病医学会ではフットケア指導士の資格を認定しています。
フットケア指導士とは、以下の項目に関する認定セミナーを受講し、認定試験に合格することで取得できる認定資格です。

  • フットケアを必要とする疾病全般に関する基礎知識
  • フットケアに関する専門知識
  • フットケアの実技技術

また、フットケアの基礎知識から専門技術まで学べるテキストも発刊しています。
このような資格取得を促すことで、フットケアの専門的なスキルや知識を持つ人材の育成につながります。

ただし、フットケア指導士を受験するには介護福祉士や看護師の国家資格を有していることや、3年以上の実務経験などの要件があります。

人手不足でもできる介護現場でのポイント

高齢者のフットケアの重要性を理解していても、人手不足が原因で提供できていない事業者は多くいると思います。また、フットケアに関する人材育成をしたくても、人手不足により時間を割けないと悩んでいる方もいるでしょう。そこで、人手不足でもできる介護現場でのポイントを紹介します。

介護助手を活用する

介護助手とは、介護職員の補助として介護サービス以外の業務を担う職業のことです。
介護助手を導入・活用することは、介護職員の負担を軽減し、フットケアを提供する時間の確保に役立ちます。

介護助手を導入するにあたって、まずは介護職員の現状の仕事内容を整理し、一例として以下のように双方がすべき仕事内容を区分します。

職種 仕事内容
介護職員 ・食事介助
・排泄介助
・移乗介助
・入浴介助
介護助手 ・掃除
・ベッドメイキング
・食事の配膳
・備品の準備

また、介護職員に介護助手を導入する意図や役割、メリットを伝えることも大切です。 「介護助手がいることで介護職員の負担が減る」や「利用者に介護サービスやフットケアを提供する時間を確保できる」などを理解することで、双方がスムーズに業務をしやすくなるためです。

介護職員と介護助手の役割を明確になることで双方が働きやすくなり、人材定着にも役立ちます。

ICTを活用して業務の効率化を図る

人手が足りていない中でフットケアを提供するには、介護施設全体の業務効率化が必要です。業務効率化により、時間や余裕が生まれ、直接的にケアに関わる時間が増えることでその時間をフットケアを提供する時間にあてることが可能となります。

そこで、ICTを活用した業務の効率化をおすすめします。ICTとはPCやインターネット、ソフトウェアなどの情報処理や伝送技術のことです。

介護現場での具体的な活用方法は介護記録ソフトウェアの導入や介護システムとスマートデバイスの連携、見守り機器の設置などが該当します。ICT化を推進するメリットは以下のとおりです。

  • 見守り機器の設置で介護職員の巡回業務を削減できる
  • 介護システムとスマートデバイスの連携で記録業務を効率化できる
  • 介護ソフトウェアの導入で記録業務を自動化できる

このように、ICTを活用することで業務効率化が期待できます。さらにICT化の推進は職員間での情報共有がしやすくなるため、多職種の気づきで足のトラブルや疾患の早期発見につながり、質の高いフットケアの提供にも役立ちます。

チームワークの連携を強化する

フットケアを円滑に提供するには、チームワークの連携の強化が重要なポイントです。フットケアを提供するタイミングは入浴後になりやすく、どの利用者がどのタイミングで入浴するかといった情報共有が必要なためです。

チームワークの連携強化には、インカムなどのICT機器の活用をおすすめします。
インカムは、複数の職員が同時に通話できる通信機器です。業務の分散化や職員同士の円滑なコミュニケーションに役立ちます。またインカムがあれば、フットケアに不慣れな職員への指導もしやすくなるでしょう。

フットケアは健康寿命において大事なケア!

フットケアは健康寿命にも影響する重要なケアの一つです。しかし、人手不足が深刻な介護業界においては、フットケアを行う人材や時間を確保できない事業者もいるでしょう。

ICTの活用はもちろん、介護助手や業務の見直し、運用の再構築など様々な取り組みで業務全体の効率化を図り、ケア提供に多くの時間が割けるよう工夫が必要です。介護業界では介護サービスのニーズの拡大や現役世代の減少により、今後、ますますテクノロジーの活用が推奨されると考えられています。

ICTの活用や運用についてのお困りごとがあれば、NDソフトウェアまでお気軽にお問い合わせください。

当コラムは、掲載当時の情報です。

ライター モミジ丸 介護福祉士として、障がい者支援・高齢者支援に10年間携わる。
社会福祉実習指導者や施設主任の経験を活かし、現在は介護関係の記事を執筆するWebライターとして活動中。
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