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高齢者の冬の寒さ対策と、節電の工夫

2023/01/16

本格的な冬の訪れと共に気になるのが電力への影響です。今年の冬も寒くなると見込まれており、国は昨年に引き続き全国各地へ節電を呼びかけています。
しかし介護施設で暮らす高齢者や在宅で介護を受ける高齢者は、過度の節電が心身に悪影響を及ぼすことも考えられ、高齢者を守りながら節電も行っていくためには寒さ対策が重要になります。
今回は、介護施設や在宅で暮らす高齢者の寒さ対策と節電について解説します。

2022年~2023年の冬も寒さは強いと予想されている

昨年は東からの風が強まるラニーニャ現象により全国的に冷え込みが厳しく、春先になっても気温がなかなか上がってこないほどの寒気に見舞われました。今年の冬はどうなるかというと、ラニーニャ現象が続くと見られています。つまり昨年と同様の冷え込みが予想されています。朝晩の冷え込みと日中との寒暖差により体調を崩しやすくなりますのでしっかりと防寒や感染症予防に努めることが介護職員、高齢者双方に求められます。

全国的に節電が呼びかけられている

冷え込みが激しくなると、当然暖をとるための電化製品の使用量は増えます。しかしそれに伴い懸念されるのが冬の電力不足です。2022年3月、季節外れの大寒波で初めて電力需給ひっ迫警報が発令されたのは記憶に新しいと思います。今年の冬も昨年と同様の冷え込みが予想されている以上電力不足は懸念されており、政府は大規模な発電所のトラブルが起こると安定受給は厳しいとして無理のない範囲での節電を呼びかけていますが、高齢者の心身を守るために電化製品の使用が大前提となる介護事業所等からは「難しい」との声が挙がっているようです。

もう一点今年の冬に節電に取り組むことになるであろう大きな理由が、電気代の高騰です。社会情勢が不安定なことから現在、発電に必要なエネルギーの輸入量は高騰しており、それが電気代にも影響を与えています。高齢者の生活を守るために常時暖房や医療機器を使用している病院、介護事業所、高齢者が生活する家庭においては非常に頭を悩ませる問題でしょう。

過度の節電が高齢者に与える悪影響

節電の呼びかけと電気代の高騰から積極的に節電に取り組む家庭や介護事業所は少なくないと思いますが、介護を必要とする高齢者には冬に必要な電力を節電してしまうことによって心身に大きな悪影響を及ぼすことも介護職員は把握しておく必要があります。

高齢者が暮らす環境で過度に節電した場合、最もリスクとして考えられるのが低体温症です。高齢者は筋力の衰えや食事摂取量の低下等から熱の産生機能が低下します。室内でも長時間冷えた場所にいると身体の深部温度が下がり意識障害を引き起こし、最悪の場合は死に至ります。冬の寒さが厳しい時は、高齢者の意識状態が鮮明であるかどうかを介護職は必ず確認するようにしましょう。

もうひとつ過度の節電が招きかねないリスクがヒートショックです。ヒートショックは寒い場所から暖かい場所へ急に移行した時などに急激な血圧変化が起こり意識の消失や脳出血を引き起こすものです。こちらも最悪の場合は死に至りますので注意が必要です。ヒートショックが最も起こりやすい場所がお風呂です。寒い場所から暖かいお湯で身体が温まるといった急激な体温の変化がヒートショックを起こすリスクになります。ヒートショックを起こさないためにはやはり脱衣室と浴室、居室と廊下といった場所場所の温度変化を極力無くすことが何よりもの予防策です。

節電できない箇所、できる箇所

介護事業所や在宅など、介護を必要とする高齢者が生活をする場所では無理に節電しない方が良い箇所があります。しかしなるべくなら節電の呼びかけに最大限応えたい、なるべく不要な電力は消費しないで節約したいという考えもあると思います。では介護を必要とする高齢者が生活する場所で、節電を考えない方が良い箇所と節電できる箇所についての一例を以下に見てみましょう。

節電に適さないもの

暖房器具

エアコンやストーブといった暖房器具は、もはや冬の必需品となっている家庭も多いと思います。極度に冷えた環境では活動意欲が削がれやすいため高齢者においては活動量の低下に繋がりやすくなります。また先述の通りヒートショックを起こさないためにも暖房を適切に使用し、生活空間に極端な温度差を作らないことが重要です。

在宅酸素などの医療機器

呼吸器疾患を持つ方や喀痰吸引が必要な方などは在宅酸素機器や吸引器を使用する機会がしばしばあると思われますが、これらの医療機器は使う必要が生じた時にすぐに使える環境を整えておくことがとても重要です。節電のためにと、電源プラグを抜いている状態では、いざ使う時になると電源が入らず焦ってしまうこともあるでしょう。急変時等にはその焦りが介護職員や家族の心を乱し適切な対処ができない要因にもなり得ます。

見守りセンサーなどのICT機器

特に在宅介護を受けている高齢者の場合、近年では離れた場所でも自宅の様子が確認できる見守りカメラや、電気ポット使用時に離れた家族の元へ使用をメールで知らせてくれる電化製品など様々なICT機器が存在します。これらの機器は、当然ながら電源が入っていないと使用できません。しかし過度に節電の意識が先行し、機器の電源を切ってしまうとICTの機能はまったく意味を為さなくなります。通信機能などを備えたICT機器は常時接続しておくことが望ましいでしょう。

照明器具

2022年の3月に電力需給ひっ迫警報が初めて発令されてから、全国的に電力の消費を抑えようという機運は高まったように思います。商業施設やスーパー、コンビニなどでも照明の一部を切るなどして節電に励んでいる姿を目にした方も多いのではないでしょうか。
高齢者施設や在宅でも照明を極力点けないところや、調光式のタイプでは明るさを落とす等の対策をしているかもしれませんが、高齢者にその対応は禁物です。高齢者は加齢の影響で明るさを感じにくく、照明の明るさを落とした状態では私たち以上に見えにくくなってしまいます。その結果転倒などの思わぬ事故の発生要因となり得ます。高齢者の生活動線では照明は高齢者に適した明るさで照らせるようにしておくことが望ましいです。

節電の工夫

暖房を効きやすくする

高齢者においては暖房は節電すべきでないと先ほど述べましたが、やはり冬の電力消費量が多くなる最大の理由も暖房であるといえます。電気代そのものが高騰している現在では、なるべくなら節電したいと考える方も多いでしょう。
そこで気を付けたいのが暖房の清掃です。介護事業所も施設の形態によって壁付け型のエアコンや埋め込み式のエアコンなどの違いは生じると思いますが、ほとんどの機種にはフィルターが付いています。このフィルターが目詰まりしている状態ですと暖房の効果は落ちてしまい、室内を暖めるために大量の電力を消費することになります。年末が近付いていますので、大掃除がてら清掃してみるのもよいでしょう。また室外機のフィルターにホコリが溜まっている状態も暖房の電力消費を増やす原因となります。柔らかいブラシなどでホコリを落とすと節電効果は高まります。

使わない部屋は積極的に電気を消す

高齢者の生活動線上の照明を点けておくことは事故防止のために必要なことですが、使わない部屋や日常的に使わない場所は積極的に電気を消すこともやはり節電には必要な意識です。高齢者施設の場合、日中は寝食分離として極力ベッドから離れて食堂ホールなどで過ごす方も多いでしょう。その方がご自分で居室に戻る場合等は例外ですが、介護職員が必ず付き添う方の場合においては居室から離れる際には部屋の照明をこまめに消すことも小さな節電の積み重ねです。また夜間においては高齢者の使用時に必要な明るさを確保できるよう人感センサーのスポット照明を使うのも有効な手段といえます。そして電気を消す意識を積極的に持ちたいのが主に介護職員が使用するスペースです。更衣室や休憩室といった介護職員専用の部屋等は、使用時以外は電気を消す意識を全員が共有できるように皆で協力することも大切です。

常時使用しない電化製品はプラグを抜く

電化製品の待機電力は僅かなものではありますが、それでも毎日の積み重ねとなるとそれなりにまとまった電力量となります。待機電力はテレビやオーディオ機器が代表的なものといえます。夜間の就寝時などは電源プラグを抜くことも細かな節電となり、事業所規模が大きければそれに比例して節電効果も高まることが期待できるでしょう。

熱を逃がさない工夫をする

暖房の使用で電力を多く消費してしまう大きな要因に、温まった空気が冷やされてしまうことが挙げられます。空気を冷やす最大の原因は窓です。近年はペアガラスや3層ガラスなど高性能となっていますがそれでもやはり外の冷気は主にガラスを通して室内に伝わります。その結果いくら室内を暖めても窓際から室温は下がっていくのです。そこで窓ガラスに熱を逃がしにくいシートなどを張ることで外の冷気が伝わりにくくする、室内の空気がガラスで冷やされにくくする等の対応がおすすめです。もうひとつは、ドア枠の下に空いた隙間を塞ぐことです。隙間が空いている状態では暖まった空気は冷たい空気の方向へと流れ、暖房の効率を下げることになります。両面テープで貼り付ける等のスポンジシートを貼れば暖気が逃げることを防ぐだけでなく、ある程度の防音効果も期待できますので高齢者の安眠にも繋がるといえます。

高齢者の寒さ対策の工夫

高齢者は若い世代と比べ、特に末梢の冷えに悩む方が多くおられます。血流の低下や熱産生機能の低下から手や足の先まで血が巡りにくく温まりにくいために、冬の寒さは気分が高揚しない、寝付きにくいなどの心身機能の低下を招きます。暖房を最大限に効かせることで室温を上げ、冷え症状を緩和することは可能ですが、暖房を効かせすぎることは電気の使用量が増えることだけでなく、空気を乾燥させることにも繋がり、感染症のリスクを上げてしまいます。そこで考えたいのが暖房だけに依らない高齢者の寒さ対策です。以下に一例を紹介しますので参考にしてください。

運動量を増やす

高齢者は体温が上がりにくいため、運動量が低下すると身体の温度はそれに比例して下がりやすくなります。予防には無理のない範囲での運動が適しています。椅子に座って体操をするなど体を動かす機会を設けて体温を上げる工夫をしましょう。

足湯

高齢者の血流を良くするために有効なのが足湯です。40~42度程度のお湯を足湯容器やタライ等に入れ、5分~10分程足を浸けてもらうことで血管が拡張し、血流が良くなります。身体が温まるだけでなく、同時に爽快感を得ることもできるので寝付きを良くする等の効果も期待できるでしょう。

電気アンカや電気毛布を活用する

エアコンを使いたくない高齢者は比較的多く見られます。節電にはなるのですが、冷えの対策にはなり得ません。そこで有効活用したいのが電気アンカや電気毛布、湯たんぽなど、臥床時に用いる暖房器具です。しかしこれらを活用する際には直接皮膚に触れない、長時間使用しないことに注意が必要です。電気アンカや湯たんぽは直接皮膚に触れてしまうことで低温やけどになり、電気毛布は長時間使い続けることで寝床内温度が上がりすぎ逆に安眠の妨げになる、発汗が増えかゆみの原因になることがあります。あくまでも寝付くまでという場面に限定して使うようにしましょう。

まとめ

介護を必要とする高齢者が冬の寒さの中でも健康的に生活していくためには、過度な節電には注意を要することが多くあります。しかし電気代が高騰している現在、高齢者の特性を理解した上で寒さ対策を講じ、最大限節電していくことも介護事業所の運営には必要な意識です。本格的な寒さの到来が目前となった季節、高齢者の生活する環境を見直してみるのも良いでしょう。

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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