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介護現場の安心をつくる利用者家族とのコミュニケーションのポイント
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2024/10/22
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介護職員のなかには、利用者家族への対応に不安を感じている方もいます。
介護施設の管理者として、不安を抱えている介護職員の対応力を高め、自信をもってコミュニケーションをとっていただきたいと感じませんか。施設全体の対応力が向上すれば、地域や近隣の評判を獲得するだけではなく、利用者や家族からのクレームが軽減して介護職員が安心して働ける職場づくりにつながります。
しかし、どのようにして対応力を高めればよいのかは悩みやすいポイントでもあります。
そこで本記事では利用者家族に安心してもらえる対応方法として、適切なコミュニケーションや信頼関係を築くためのポイントを紹介します。
目次
介護職員が利用者家族とのコミュニケーションを難しいと感じる理由
まずは、なぜ介護職員が利用者家族とのコミュニケーションに悩んでいるかを知ることから始めましょう。考えられる理由は以下のとおりです。
- 利用者家族から理不尽なクレームをいわれた経験があり、対応に不安を感じる
- 介護業務が忙しく、利用者家族の対応に時間を割けない
- 何を話せば良いのかわからず会話が続かない
- 利用者の情報を伝えても反応がほとんどない など
このように、介護職員によって苦手と感じる理由はさまざまです。しかし、なかには「介護業務が忙しい」などのように、介護施設の取り組みで改善できる理由もあります。そのため、介護施設は介護職員の対応力を向上する対策に加えて、見守り機器の設置や介護ソフトの導入といった介護職員の負担を軽減する取り組みも大切です。
利用者家族への適切な対応によるメリット
介護職員によっては、利用者家族の対応を「面倒くさい」や「できることならしたくない」と感じているかもしれません。
このような苦手意識や拒否感を軽減し、介護職員に利用者家族の対応を「やってみよう」と感じさせるためには、メリットを理解してもらうことが大切です。そこで、ここでは利用者家族への適切な対応による3つのメリットを紹介します。
① 利用者に関する情報を聞き出してケアに活用できる
適切なコミュニケーションにより利用者家族と信頼関係を築くことで、利用者に関する細かな情報が聞けるようになります。例えば、若いときの趣味や利用者が大切にしていたことなどです。これらの情報はケアプランや介護サービスに反映することで、利用者や利用者家族の満足度向上につながります。
② 利用者家族に安心して任せてもらえる
利用者家族は利用者を心配するあまり、「嫌な思いをしていないか」や「きちんとした介護を受けられているか」といった不安を感じているものです。利用者家族への適切な対応は、このような不安の軽減につながります。
例えば「最近飲み込む力が弱くなってきた」や「歩行時にふらつく場面がみられるようになった」など、利用者の情報を家族と共有することで、利用者家族は「しっかりと見てもらっている」と感じるでしょう。このように、利用者家族から安心して任せてもらうためには、コミュニケーションが重要といえます。
③ トラブルやクレームを抑制できる
円滑なコミュニケーションで利用者家族と信頼関係を構築できると、トラブルやクレームを未然に予防できます。密なコミュニケーションで利用者の状況を共有すると、利用者家族が今後の起こり得るリスクを判断しやすく、不安を軽減できるためです。
利用者家族へ適切な対応をすることでトラブルやクレームを減少できるため、安心して働ける職場づくりに貢献します。
利用者家族とのコミュニケーションのポイント
利用者家族とのコミュニケーションに、身構えてしまう介護職員もいるでしょう。しかし、利用者家族だからといって、難しいコミュニケーション手法を用いる必要はありません。以下の5つのポイントに気を配ることで、誰でも対応できます。
- 身だしなみ
- 挨拶
- 表情
- 言葉遣い
- 態度
各ポイントのチェック項目を紹介します。

① 清潔感のある身だしなみ
コミュニケーションは、話し方や内容以前に身だしなみが重要です。
ボサボサの髪形や汚れのある服を着ていると、利用者家族にだらしない印象を与えてしまうためです。身だしなみに気を配れないと、「気が利かなそう」や「仕事が雑そう」などと思われるかもしれません。場合によっては、「任せても大丈夫かな」と利用者家族を不安な気持ちにさせるでしょう。
そこで身だしなみでは、以下の項目をチェックしてください。
髪 | 寝癖がなく整えているか、長い髪はまとめているか |
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顔 | 髭が生えていないか、化粧が濃すぎないか |
服装 | 汚れやシワがないか |
靴 | ボロボロではないか、汚れやすり減りが目立たないか |
爪 | 長さは適切か |
身だしなみを意識してもらう対策方法としては、清潔感のある身だしなみかどうかのチェックリストを作成し、介護職員に徹底してもらう方法があります。
② 積極的な挨拶
コミュニケーションの基本は挨拶です。挨拶は人間関係の潤滑油に例えられるほど、重要な役割を果たします。明るく大きな声で挨拶をされて、不快に感じる方は少ないでしょう。
反対に目線をそらして挨拶をしない場合、相手は無視されたと感じ嫌な気持ちになります。そのような状態からコミュニケーションをしても、会話を続けることは難しいでしょう。
そこで、挨拶をするときは以下の項目に注意してください。
声量 | 利用者家族にしっかりと聞こえるか |
---|---|
タイミング | 自分から先に挨拶をしているか |
目線 | 目線を合わせているか |
表情 | 笑顔で挨拶をしているか |
声のトーン | 明るい声でできているか |
姿勢 | 背筋が伸びているか |
しっかりとした挨拶をすると、利用者家族も話をしやすくなります。もしかすると、利用者家族は話すタイミングを探っているかもしれません。そのきっかけをつくるという意味でも挨拶は重要です。
また積極的な挨拶は、風通しのよい職場づくりにも役立ちます。介護事業者は利用者家族に対してだけではなく、普段から来客や職員同士でも積極的に挨拶が行われるように取り組むことが大切です。
③ 明るい表情
表情は自分の感情や気持ちを伝えてしまいます。そのため、「疲れている」や「今忙しいのに」と思ったまま、利用者家族とコミュニケーションをするとマイナスな感情が表情にでてしまうかもしれません。そのような表情で話されても、利用者家族は話をしにくいでしょう。
そこでコミュニケーションの際は、意識的に明るい表情をつくります。具体的には以下の項目に注意してください。
口元 | 口角を上げて明るい表情にする |
---|---|
歯 | 歯を少し見せる |
目 | 目の力を程よく抜く |
このようにすることで、自然な笑顔がつくれます。ただし話す内容によっては、暗い表情のほうが向いていることもあるので注意が必要です。
④ 丁寧な言葉遣い
利用者家族とコミュニケーションをする際は敬語で話します。利用者家族に対して、敬意を表すためです。
介護職員のなかには、ため口で話してしまう方もいるかもしれません。しかし、ため口は利用者家族への敬意が感じられず、トラブルやクレームの原因となります。
例えば自分がレストランなどで食事をする際、初対面の店員がため口だと不快に感じるでしょう。同じように、利用者家族も不快に感じています。
また敬語で話す以外に、言葉選びも重要です。専門用語や流行語などは、控えるようにしましょう。利用者家族がわからないとプライドを傷つけたり、意図したように伝わらなかったりする可能性があるためです。
そこで、言葉遣いで注意すべき項目は以下の2つです。
言葉遣い | 敬語で話しているか |
---|---|
言葉選び | 専門用語や流行語を避けているか |
このような言葉遣いや言葉選びは、職員同士の会話でも気を付けると良いでしょう。習慣づけることで、家族との会話がスムーズになりますし、職員同士の会話を利用者や家族が聞いていることもあるためです。
⑤ 話を聞く環境と態度
コミュニケーションのポイントは、親身になって利用者家族の話を聞くことです。親身になって話を聞いていることを示すためには、以下の項目に注意します。
環境 | 安心して話ができる環境か |
---|---|
態度 | 相槌を打つなど、共感を示しているか |
このようなに話を聞くことで、利用者家族も悩みや不安を相談しやすくなるでしょう。
利用者家族と信頼関係の築き方のポイント
介護職員が安心して働ける職場にするためには、利用者家族との信頼関係を構築してクレームやトラブルを防ぐことが重要です。介護職員は家族とのトラブルやクレームがあると、モチベーションが低下したり、仕事に対して不安を感じたりするためです。そこで、先に紹介したコミュニケーション方法に加えて、信頼関係の築き方のポイントを押さえておきましょう。
① 利用者家族のことも気遣う
利用者家族にはさまざまな不安やストレスがあります。介護サービスにかかる費用の負担や介護疲れ、将来に対する不安などです。そこで「最近、お身体調子はいかがですか?」などのように、利用者家族と関わる際は利用者家族自身についても気遣うようにしましょう。このような声掛けの積み重ねにより、利用者家族は「親身になって悩み相談に乗ってもらえる」と感じて、信頼関係が築けます。
話を聞くだけでも不安やストレスが緩和する場合もありますし、介護サービスの提供により介護の負担を軽減できる場合もあります。このように、利用者家族の悩みを親身になって相談に乗ることは、さらなる信頼関係の強化に役立ちます。
② 正確な情報を伝える
利用者家族と信頼関係を築くには、タイムリーで正確な情報を伝えることがポイントです。反対に古い情報や間違った情報を伝えてしまうと、利用者家族が「いい加減な施設」や「でたらめをいわれた」などと感じ、信頼を失うリスクがあるためです。とくに、利用者の様子や状態に関する情報は、どの職員であってもタイムリーで正確な情報を伝える必要があります。
そこで役立つのは介護ソフトです。介護ソフトを導入することで介護記録を職員が共有しやすくなり、過去の記録も簡単に遡れるため、どの職員でも利用者家族にタイムリーで正確な情報を伝えやすくなります。また他の職員が記入した記録も共有できるため、対応した職員が異なる場合でも、それぞれの対応について他の職員が把握できるのも介護ソフトのメリットです。
さらに、介護ソフトに音声入力などの入力支援機能があれば、パソコン操作に苦手な介護職員の負担を軽減できます。入力業務の時間短縮にもつながるため、利用者や利用者家族とのコミュニケーションの時間を確保しやすくなります。
③ コミュニケーションの回数を増やす
信頼関係を構築するには、コミュニケーションの数を増やすことが有効な手段です。しかし、介護施設に来訪したときだけコミュニケーションをとっていたのでは、なかなか回数は増やせません。とくに利用者家族が遠方にお住まいの場合、月に何度も来訪するのは難しいでしょう。
そこで、電話や手紙などの手段によりコミュニケーションの回数を増やす方法もあります。 電話の場合は、通話料金が発生することや相手の都合もあるため、ゆっくりと話すことは難しいかもしれません。しかし、利用者の近況を報告するだけでも、良好な関係構築に役立ちます。
また手紙やお知らせは、請求書と一緒に送付することで近況を共有できます。ただし、2024年10月から郵便料値上げのため、量によっては大きな影響があるでしょう。
介護ソフトには、利用者家族にアプリで連絡などを送る機能やサービスがあります。NDソフトウェアでは「つながる家族」という請求書やお知らせなどをデジタル化して利用者家族のスマホに共有できるサービスがあります。書類のペーパーレス化で職員の作業時間や郵便費用の節約を実現します。請求書や領収書の他、おしらせとしてPDFや画像も送れるため、日常の様子を伝えることが可能です。利用者家族は届いた通知を好きな時間に確認できるだけでなく、過去の請求書やお便りを保管する負担の軽減が期待できるため利用者家族の満足度向上も図れます。
利用者家族の対応方法を工夫して安心の職場をつくろう
利用者家族への対応方法を適切に行うことは、安心できる職場づくりにつながります。利用者家族との信頼関係を構築できると、トラブルやクレームを未然に防げるためです。
介護職員に安心できる職場を提供したい管理者は、紹介したポイントを参考に施設全体の対応力を向上させましょう。また、介護職員が働きやすい環境を実現するには業務の負担軽減の取り組みも重要です。
負担軽減に役立つ介護ソフトやお知らせのデジタル化に興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。
当コラムは、掲載当時の情報です。
社会福祉実習指導者や施設主任の経験を活かし、現在は介護関係の記事を執筆するWebライターとして活動中。

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