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口腔ケアで口腔衛生管理加算を逃さない!実務のポイントと口腔連携強化加算との違いも解説

2025/11/28

2024年度介護報酬改定で、口腔衛生管理は全施設で対応が求められる運営基準となりました。しかし、施設の管理者の方からは以下のような声も聞かれています。

● 義務化された基準と加算の違いは何?
● 加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の要件は?
● 口腔連携強化加算とは何が違うの?

そこで本記事では、運営基準と口腔連携強化加算との違いを押さえた上で、加算算定に向けた実務のポイントを解説します。安定的な施設運営のためにも、ぜひ最後までお読みください。

口腔衛生管理加算とは

口腔衛生管理加算とは、歯科医師から指示を受けた歯科衛生士が専門的な口腔ケアを計画的に実施する事業所を評価する加算です。ここでは、土台となる運営基準を解説し、その上で加算(Ⅰ)と(Ⅱ)、口腔連携強化加算との違いについて解説します。

なお、基本的な口腔ケアの実施ポイントについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
生口腔衛生管理加算とは?算定要件や実施のポイントを解説

加算算定の大前提:ケアの質向上が経営安定につながる

まず、加算を算定することを「目的」と捉えないことが大切です。本来の目的は、口腔ケアを通じて利用者の健康を守り、ケアの質を高めることです。口腔の衛生状態を良好に保つことは、誤嚥性肺炎のような疾病を予防し、入院のリスクを軽減させます。

結果的に稼働率の安定という経営面のメリットにも直結し、こうした質の高いケアを実践した結果として加算取得につながると捉えるのがよいでしょう。

加算算定の前に整えるべき運営基準

この大前提のもと、次に取り組むべきことは、加算の算定の有無にかかわらず、全施設に義務付けられた「運営基準」の整備です。
具体的な内容は以下の通りです。

  • 協力歯科医療機関を定める
  • 歯科医師または歯科衛生士から、職員が技術的な助言・指導を受けられる体制を確保する
  • 入所者ごとに、施設入所時及び入所後、月に1回程度の口腔の健康状態の評価を実施する
  • 個々のケアプランに口腔ケアの内容を盛り込む

運営基準と加算の要件を混同している方も多いため、区別して理解しましょう。

口腔衛生管理加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違い

運営基準の体制を整えた上で、さらに専門的な口腔ケアを提供する事業所が算定できるのが本加算です。この加算には(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類があり、主な違いは科学的介護情報システム(LIFE)の活用の有無です。

両者の違いを以下の表にまとめました。

項目 口腔衛生管理加算(Ⅰ) 口腔衛生管理加算(Ⅱ)
単位数 90単位/月 110単位/月
LIFEへの情報提出 不要 必須

加算(Ⅰ)の要件は、以下のように定められています。

  1. 歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士の技術的助言及び指導に基づき、入所者の口腔衛生等の管理に係る計画が作成されていること。
  2. 歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、入所者に対して口腔衛生等の管理を月二回以上行うこと。
  3. 歯科衛生士が(1)における入所者に係る口腔衛生等の管理について、介護職員に対し、具体的な技術的助言及び指導を行うこと。
  4. 歯科衛生士が(1)における入所者の口腔に関する介護職員からの相談等に必要に応じ対応すること。
  5. 通所介護費等算定方法第十号、第十二号、第十三号及び第十五号に規定する基準のいずれにも該当しないこと。

また、加算(Ⅱ)の算定要件は以下の通りです。

  1. 加算(Ⅰ)の基準のいずれにも適合すること。
  2. 入所者ごとの口腔衛生等の管理に係る情報を厚生労働省に提出し、口腔衛生の管理の実施に当たって、当該情報その他口腔衛生の管理の適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用していること。

【引用1 厚生労働省告示第九十五号 六十九】

加算(Ⅱ)では、(Ⅰ)の要件に加え、LIFEで情報を提出し、フィードバックをケア改善に活用することが求められます。

口腔連携強化加算との違い

口腔連携強化加算は、訪問介護やショートステイ等の介護職員が利用者の口腔状態を確認し、その情報を歯科医療機関やケアマネジャーに提供する「連携体制」を評価するものです。歯科衛生士が直接ケアを行う口腔衛生管理加算とは異なり、あくまで専門職へつなぐ「橋渡し」の役割が評価されるため、単位数は50単位/回(月1回まで)となっています。

主に在宅系の利用者を対象とした加算で、施設系の口腔衛生管理加算とは目的も内容も異なります。法人内で訪問系サービスも運営されている管理者の方は、その違いを理解しておく必要があります。

口腔衛生管理加算算定に向けた4つの実務ポイント

本加算を算定するには、要件に沿った体制構築と計画的な運用が求められます。ここでは、管理者が押さえるべき4つの実務ポイントを、加算の要件に沿って解説します。

ポイント1:歯科医師と連携し計画書を作成

口腔衛生管理計画は、歯科医師や、歯科医師から指示を受けた歯科衛生士が作成します。内容は、利用者の口腔状態や摂食嚥下機能の評価に基づき、具体的なケアの目標や方法を定めたものです。
留意すべきは、この計画は一度作成して終わりではない点です。利用者の状態変化に合わせて定期的に評価・見直しを行い、常に最適なケアが提供されるよう管理しなくてはなりません。管理者は、各施設でこの更新サイクルが適切に運用される仕組みを整える必要があります。

計画書の書式は厚生労働省から提示されていますので、ご参照ください。
(別紙様式3)口腔衛生管理加算 様式

ポイント2:歯科衛生士による月2回以上の口腔ケア体制を構築

加算算定のためには、歯科衛生士による口腔ケアを月2回以上行う必要があります。
方法は以下の2通りです。

  1. 協力歯科医療機関に所属する歯科衛生士に対応してもらう
  2. 歯科衛生士を施設で雇う

多くの施設では、協力歯科医療機関による歯科往診の一環として対応を依頼するケースが一般的でしょう。歯科医師が一人で訪問することは少なく、歯科衛生士が同行するケースがほとんどです。そのため、医師が診察している間に、歯科衛生士が別の利用者の口腔ケアを行うことが一般的です。ただし、具体的な対応方法や対象者を事前に歯科医と協議する必要があります。また、往診の時間が限られているため、多くの利用者の対応はできず、月によっては算定できない利用者も出てくるケースがあります。

一方、施設で歯科衛生士を雇えば、全利用者の対応を継続的に行えるでしょう。しかし、人件費が発生するため、加算による収益と人件費のバランスを考慮し、法人の方針に合った方法を選択する必要があります。

ポイント3:歯科衛生士から介護職員への技術的助言・指導体制を整備

月2回の専門的な口腔ケアに加え、歯科衛生士から介護職員へ技術的な指導を行うことで、日々のケアの質が向上します。具体的には、全職員を対象とした定期的な研修会の開催や、ケアの現場で直接指導を行うOJTなどが考えられます。

例えば、歯科衛生士が実施する口腔ケアを介護職員が見学し、専門的な技術を学ぶ機会を設けるのも一つの方法です。これを動画で撮っておくことで、他のスタッフへの展開も可能になります。

このような取り組みが、職員のスキルアップと自信につながり、質の高い口腔ケアの提供体制を支えます。

ポイント4:LIFEへ情報を提出し、加算(Ⅱ)の算定を目指す

より高い単位数である加算(Ⅱ)を算定するには、科学的介護情報システム(LIFE)へのデータ提出が必須です。これは単に情報を提出するだけでなく、国からのフィードバックを分析し、ケアプランや日々のケアに活かすPDCAサイクルを回していくことが評価されます。

しかし、日々の記録に加えてLIFEへの入力・提出作業は、現場の大きな負担になりかねません。計画書の管理から日々の記録、LIFEへのデータ連携までを人の手だけで行うと、時間もかかりミスも起こりやすくなります。

介護ソフト「ほのぼのNEXT」は、日々の記録データを活用し、LIFE提出用の情報をスムーズに作成・連携できるため、記録の入力負担を大幅に削減します。創出された時間で、より質の高いケアの提供やPDCAの実践に注力できます。

口腔衛生管理加算算定のためのケア方法と道具選び

加算算定には、体制構築と並行し質の高いケアの実践が欠かせません。ここでは特に配慮が必要な4つのケース別に、具体的なケア方法と適切な道具選びについて解説します。

嚥下障害がある方

飲み込む力が弱く、唾液や汚れが気管に入りやすい特徴があり、誤嚥性肺炎のリスクが伴います。ケアの際は、上半身を45〜90度に起こし、顎を引いた姿勢を保つことが安全確保の基本です。水分量を調整し、むせ込みに注意しながら丁寧に行います。唾液や水分を吸引しながら清掃できる「吸引ブラシ」や、水を使わずにケアできる「口腔ケア用ウェットティッシュ」の活用が有効です。

義歯を使用している方

義歯と粘膜の間に汚れが溜まりやすく、義歯性口内炎やカンジダ症のリスクがあります。ケアの基本は、必ず義歯を外して洗浄することです。義歯は通常の歯ブラシでこすると傷がつく恐れがあるため、必ず「義歯専用ブラシ」を用いて流水下で優しく磨き、夜間は「義歯洗浄剤」に浸けて保管します。同時に、義歯を外した後の歯ぐきや舌も「粘膜ケアブラシ」などで優しく清掃し、血行を促進することが口腔内の健康維持につながります。

口腔乾燥がある方

唾液の分泌が減り、口腔内が乾燥している状態です。唾液による自浄作用が低下するため、虫歯や歯周病、口内炎のリスクが高まります。ケアを行う際は、まず「保湿ジェル」やスプレーで口腔内を十分に潤わせることが基本です。乾燥した粘膜は傷つきやすいため、毛先の「柔らかい歯ブラシ」や「スポンジブラシ」を用いて、優しく丁寧に清掃することを心がけましょう。

汚れがこびりついている方

舌苔や痰などが乾燥し、粘膜に固くこびりついている状態です。付着した細菌が誤嚥性肺炎や口臭の原因となります。ケアの際は、汚れを無理に剥がそうとせず、まず「保湿剤」で汚れを十分にふやかしてから除去するのが鉄則です。柔らかい「スポンジブラシ」で優しく汚れを絡め取り、舌の汚れには「舌ブラシ」を使用します。一度で取り切ろうとせず、日々のケアで少しずつ清潔にしていく姿勢が重要です。

まとめ

本記事では、口腔衛生管理加算と運営基準との違いから、算定に向けた具体的な実務ポイントまでを解説しました。加算の算定は施設の収益安定化につながりますが、その裏では計画書の作成・更新や、加算(Ⅱ)で必須となるLIFEへの情報提出などの記録業務が発生します。

これらの業務負担を軽減し、加算の確実な取得を目指すなら、介護ソフトの活用が有効です。NDソフトウェアが提供する「ほのぼのNEXT」は、日々の記録からLIFE連携までをスムーズに行い、記録業務を効率化します。職員の負担を減らし、ケアの質の向上に注力できる体制づくりに関心のある方は、ぜひお気軽に資料請求・お問い合わせください。

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当コラムは、掲載当時の情報です。

参考URL

厚生労働省 令和6年度介護報酬改定における改定事項について

厚生労働省 口腔衛生管理加算 様式

厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1344 口腔連携強化加算に係るリーフレットについて

【引用1厚生労働省告示第九十五号 六十九】

織田 さとる ケアマネジャーや生活相談員、介護福祉士として20年以上の実務経験をもち、現在は特別養護老人ホームの副施設長として勤務。これまでの経験を活かし、介護・福祉分野の記事を数多く手がけている。
ケアマネジャー/社会福祉士/介護福祉士/公認心理師など
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