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【特養・老健向け】生産性向上推進体制加算(Ⅱ)(Ⅰ)の違い、(Ⅰ)取得へ向けた実践ロードマップ
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2025/11/27
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人材不足が深刻化する介護現場において、職員の負担軽減と業務効率化は、喫緊の課題です。「生産性向上推進体制加算」は、この状況を打開し、ICTやデータ活用を通じて、働きやすい職場環境の構築を目指す施設を後押しするため、2024年度の介護報酬改定で新設されました。
しかし、いざ算定を目指そうとしても「(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いが複雑で、何から手をつければ良いか分からない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、主に特養・老健の担当者に向けて、本加算の正しい算定手順と、取得に向けた具体的なロードマップを分かりやすく解説します。この記事を読めば、明日から取り組むべきアクションが明確になるので、ぜひ最後までお読みください。
生産性向上推進体制加算の取得を目指す理由
本加算は、ICT機器の活用や業務改善を通じて、介護サービスの質の維持・向上と職員の負担軽減を両立している施設を評価する加算です。この加算の取得は、人材不足の時代に「選ばれる職場」をつくるための対策とも言えます。国が推進する業務改善は、職員の負担を減らすだけでなく、2024年度から一本化された「介護職員等処遇改善加算」の算定要件である職場環境の改善にもつながります。
なお、本加算に関する詳しい解説は、以下の記事を参照してください。
生産性向上推進体制加算とは?加算を取るための準備のポイントをわかりやすく解説
生産性向上推進体制加算 取得へのロードマップ
この加算の取得は、業務を改善するための体制を整え、加算(Ⅱ)の取得を目指すことから始まります。認知症やその他の疾患で入所を敬遠されやすい利用者でも、ICTの活用や業務改善によって受け入れ体制の構築が可能になります。
稼働率の向上にもつながり、施設収入の安定やさらなる設備投資、人員補充が可能となり、加算(Ⅰ)を目指すことが可能になります。ここでは、加算(Ⅰ)の取得を目指す具体的なロードマップについて解説します。
加算(Ⅰ)を取得する手順を理解する
本加算は、まず「体制」を評価する加算(Ⅱ)を算定し、その体制で得られた「成果」をデータで証明して上位の加算(Ⅰ)へ移行するのが一般的です。
ステップ1:加算(Ⅱ)の算定
「生産性向上委員会」を設置し、見守り機器・インカム・介護ソフトのうち1種類以上を導入して、業務改善のための体制を整えます。
ステップ2:加算(Ⅰ)への移行
加算(Ⅱ)の体制で業務改善に取り組み、以下の3つの成果をデータで証明します。そのうえで、ICT機器を3種類すべて導入するなど、定められた要件を満たすことで、加算(Ⅰ)を算定できます。
- 利用者の満足度
- 総業務時間・超過勤務時間
- 年間の有給休暇の取得状況
なお、本加算の算定要件については、以下の記事を参照してください。
生産性向上推進体制加算とは?加算を取るための準備のポイントをわかりやすく解説「生産性向上委員会」を設置・運営する
加算取得に必須である生産性向上を目的とした委員会は、現場の課題を吸い上げ、継続的な業務改善につなげる役割があります。現場職員を含む委員が3カ月に1回以上集まり、現場の実態に即した課題を発見・改善することで、施設全体での改善文化を育んでいきます。
委員会の議題は以下のような内容です。
- サービスの質の向上:利用者の安全確保やサービス改善策
- 職員の負担軽減:業務効率化やICTの活用方法
- テクノロジーの導入:新技術の効果測定と評価
また、新しい機器の導入だけでなく、整理・整頓・清掃・清潔・しつけといった「5S活動」もテーマとして取り上げられます。
※しつけ:職場で決められたルールや標準を、いつも正しく守る習慣をつけること
- 記録類やその他の備品の配置を見直す
- 職員の詰所の整理整頓
- 入浴介助後の浴室の清掃方法の統一
これらの議題を通じて、介護現場の生産性向上を図ります。また、この委員会での取り組みは、「介護職員等処遇改善加算」の職場環境等要件にもなっています。
生産性向上と処遇改善加算に関する解説は以下をご確認ください。
令和7年度介護職員等処遇改善加算の職場環境等要件としての生産性向上と5Sの実施ICT機器を選定・導入する
ICT機器は、要件を満たすためだけに導入するのではなく、自施設の課題を解決するツールとして、目的を明確にして選定することが成功の鍵です。
例えば、見守り機器ひとつをとっても、以下のように機能はさまざまです。
- 睡眠状態を把握し、健康管理に役立てるタイプ(例:眠りスキャン)
- 離床や転倒リスクを検知し、事故防止につなげるタイプ(例:aams)
- プライバシーに配慮した映像で、室内の状況を把握できるタイプ(例:シルエットセンサー)
このように、機器の特徴は多様で、用途に応じた選定が求められます。「記録に時間がかかる」「見守りの目が届かない」など、委員会で検討した課題を解決できる機器を選ぶことが、効果的な業務改善につながります。
NDソフトウェアの「ほのぼのNEXT」は、多くのメーカーの見守り機器との連携に対応しており、情報の収集や共有に役立ちます。
なお、ICT機器の導入には費用がかかりますが、国や自治体の補助金を活用すれば、初期投資の負担を軽減できます。代表的なものに、都道府県が主体となって実施する「介護テクノロジー導入支援事業」があり、介護ソフトの利用料や見守り機器の購入費などが対象です。公募期間が限られているため、自治体のホームページなどで常に最新情報を確認することが重要です。
| ICT機器 | 弊社販売サービス |
|---|---|
| 見守り機器 |
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| インカム |
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| 介護ソフト |
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業務改善を実践し、PDCAサイクルを開始する
ICT機器の導入はゴールではなく、業務改善のスタートです。まずは職員への研修や運用ルール作りを通じて、全員が機器を正しく使える体制を整えます。その上で、日々の業務で活用しながら課題や効果のデータを収集し、委員会での評価・改善につなげるPDCAサイクルを回しはじめましょう。この地道な実践の積み重ねが、加算(Ⅱ)の安定的な算定と、その先の加算(Ⅰ)取得への土台となります。
生産性向上推進体制加算(Ⅰ)取得へ向けたデータの活用と業務改善の実践
加算(Ⅱ)の算定がはじまったら、次はいよいよ加算(Ⅰ)への移行を目指します。加算(Ⅰ)の取得には、定められたデータを提出し、そのデータに基づき「業務改善の成果」を客観的に証明しなくてはなりません。ここでは、この2つの要件をクリアするための実践方法を解説します。
step-1 定められたデータを「実績報告システム」へ提出する
加算(Ⅰ)を算定する事業所は、事業年度ごとに1回、業務改善の実績を国に報告する必要があります。この報告は、LIFEとは別の「生産性向上推進体制加算実績報告システム」を通じてオンライン上で行います。
加算(Ⅰ)では、加算(Ⅱ)と共通の項目に加え、より詳細なデータの提出が求められます。
【主な報告データ項目と調査方法の例】
| 1. 利用者の満足度評価 |
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|---|---|
| 2. 総業務時間・超過勤務時間の調査 |
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| 3. 有給休暇の取得状況の調査 |
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| 4. 介護職員の心理的負担の評価 ※加算(Ⅰ)のみ |
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| 5. 業務時間の内訳調査 ※加算(Ⅰ)のみ |
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これらの多岐にわたるデータを、日々の業務の中で正確に収集・管理することが、データ活用の第一歩となります。
step-2 データに基づき「業務改善の成果」を証明する
Step-1で収集した客観的なデータを共有し「これまでの取り組みでどんな成果が得られたか」を評価します。その評価に基づき「次はどこを改善するか」という具体的なアクションプランを検討・決定します。
【実践例】
夜間に落ち着かず、ベッドセンサーが頻繁に作動する利用者Aさん。しかし、訪室しても特に対応することがない状況がほとんどでした。
カンファレンスで検討し、ご家族の了解を得た上で、プライバシーに配慮したカメラ付きの見守りセンサーを試行。センサー作動時に、ステーションのモニターで利用者の様子を映像で確認すると、ベッド上でもぞもぞと動いているだけで転落リスクは低いことがわかりました。安全対策としてベッドを低床にし、緩衝マットを設置した上で、従来のベッドセンサーの使用は中止しました。
その結果、不要な訪室が減少し、夜勤者1人あたりの残業時間が月平均で2時間削減されるという成果がデータで確認できました。この成功事例を委員会で共有し、さらなる効率化のため、次の改善目標として「記録業務の効率化」を掲げ、音声入力付き介護ソフトの導入検討を開始しました。
この「実践→評価→次計画」というPDCAを継続的に回し、その議論の過程を議事録に詳細に記録することが、成果を証明する客観的な証拠となります。
step-3 介護ソフトを「分析・改善ツール」として活用する
介護ソフトは、ただ記録を積み重ねるだけのものではなく、業務改善のヒントを発見するための分析ツールのひとつです。蓄積された記録データを分析することで、これまで漠然としていた課題を、客観的に捉えられます。
具体的には、以下のような活用が考えられます。
ケアが集中する時間帯の把握と可視化
ケアの記録時間や回数を集計し、業務が特定の時間や職員に偏っていないかを確認。人員配置や業務分担の見直しにつなげる
利用者ごとの状態変化の把握
水分摂取量や排泄記録などを時系列のグラフで表示。個別の状態変化を早期に発見し、ケアプランの見直しや事故防止に役立てる
このように、データを多角的に分析・活用することが、委員会でのPDCAサイクルを加速させます。NDソフトウェアの「ほのぼの」シリーズは、こうしたデータ収集から分析を通して、職員の負担を軽減しながら、加算(Ⅰ)の取得をサポートします。
まとめ
本記事では、生産性向上推進体制加算を算定に向けた実践的な手順を解説しました。加算(Ⅱ)からはじめ、委員会でデータを活用してPDCAサイクルを回すことが、働きやすい職場づくりと上位の加算(Ⅰ)取得への鍵になります。
しかし、その要となるデータ活用には多大な手間がかかります。NDソフトウェアの「ほのぼの」シリーズは、記録からデータ分析、報告までを一貫してサポートし、加算取得に向けた取り組みを後押しします。ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
当コラムは、掲載当時の情報です。
参考URL
厚生労働省 令和6年度介護報酬改定の主な事項について(スライド37枚目)
ケアマネジャー/社会福祉士/介護福祉士/公認心理師など
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