NDSコラム

家庭 2020/08/03
子育てと介護の負担!
増加する「ダブルケア」とはどのようなもの?

昨今、「ダブルケア」という言葉がよく取沙汰されるようになりました。ダブルケアとは、子育てを行っている家庭が親の介護にも同時期に直面することをいいます。直面する方の数は年々増加傾向にあり、体力的、経済的、精神的などに様々な影響を及ぼすことが問題点として指摘されています。今この「ダブルケア」がなぜ増えているのか現状と指摘されている問題点、その対策について解説します。

ダブルケアとは?

ダブルケアとは、子育て、育児を担っている家庭が親族等の介護も同時に担うことです。子育ては乳幼児から長期間続くものですが、介護もいつまでという明確な基準はありません。場合によっては長期化することもあり、長い年月を子育てと介護に費やすことになります。
 

ダブルケアはなぜ増えている?

子育てと親の介護を同時に担うダブルケアが増えている背景には、女性の晩婚化や出産年齢の高齢化が関係しています。
婚姻の平均年齢は1985年で男性28.2歳、女性で25.5歳でしたが、2017年では男性31.1歳、女性で29.4歳と、比較すると32年間で男性2.9歳、女性で3.9歳晩婚化が進んでいます。そして女性の第1子出産年齢は1985年が26.7歳でしたが、2017年には30.7歳と、32年間で初出産は4歳遅れていることがわかります。晩婚化や出産年齢の高齢化には女性の社会進出が進んだことなどが関係し、それに伴い育児をしながら親の介護も担うというダブルケアの人が増えていると考えられます。
 

ダブルケアを担うのはどのような人が多い?

2016年の公的統計では、ダブルケアを担っている人は約25万人いるとの結果が出ています。
内訳として女性が約17万人、男性が約8万人と女性がダブルケアを担っているケースが圧倒的に多いことがわかります。さらに年代は30~40歳代が約8割と最も多くなっています。つまり、働き盛りの年代の方が育児と介護を同時に抱えてしまうことになります。
 

ダブルケアの問題点とは?

晩婚化や出産年齢の高齢化により増加しているダブルケアですが、どのような点が問題として指摘されているのでしょうかを見てみましょう。
 

少子高齢化、核家族化によるケアの負担増

ダブルケアという状態自体は以前から存在していたとのことですが、昨今の少子高齢化の影響により親の介護を兄弟などの親族等で分散できず、一人にかかる介護の負担が増していることが指摘されています。育児をしながら親の介護を一手に引き受けることの負担は計り知れないほど大きいものだと思われます。
 
また、今現在日本の家族構成の割合は核家族が多数を占めています。核家族とは夫婦とその子のみからなる世帯のことで、自身の親や配偶者の親と同居するというケースは少なくなっています。さらに家を出た子が就業のために都市部へ出てしまうことで親との距離が大きく離れてしまうケースも考えられます。子育てをしながら介護のために長距離を行き来することは非常に大きな負担となるのです。
 

ダブルケアにより離職や転職を余儀なくされる

先述のように少子高齢化や核家族化の影響で一人にかかる負担が大きくなっていることが指摘されているのですが、負担を軽くしようとするために保育園や介護施設を利用しようとしても保育園に入れない、一時預かりなど、子どもを預かってくれる適切なサービスがない、介護施設の順番待ちで入所できないなどなかなか思うようにいかないケースが多いようです。その結果、子育てと介護を自身で担うほかなくなってしまい、仕事を続けることが難しくなってしまい離職に至ってしまうのです。また夫婦で共働きすることで家計を維持している家庭も少なくないため、負担が大きいにも関わらず収入のために仕事を続けざるを得ずパートや派遣などへ転職を余儀なくされることも問題として指摘されています。
ダブルケアを担う人は女性が圧倒的に多いため中には仕事を続けたかった方も大勢おり、女性の社会進出は浸透してきたものの、現状では仕事を続けていける環境や体制が整っているとはいい切れないのが実際のところでしょう。
 

適切な支援を受けられず孤立してしまう

育児と介護の両立には多大な時間を要し、自身のための時間を確保することは困難といえます。行政や自治体に支援を申し出ても支援を要すると認められる子に対しての支援や要介護者に関する支援はありますが、現状ではダブルケアの人自身に対しての適切な支援などの法的整備はまだ整っていないのです。
さらに、昨今は地域との関係性が希薄になっている傾向があることも指摘されており、自身の悩みを人に相談できない場合が増えているようです。ダブルケアを経験した女性の約28%は「家族の支援を受けられなかった」と回答しており、地域や家庭内でも誰からの支援も受けられず孤立してしまうことが大きな精神的負担になっていると考えられます。
 

介護うつに陥る

先述のように少子高齢化の影響でケアの負担が分散しにくい、核家族化などの影響で家族が遠方に住んでいることで介護するために長距離を移動しなくてはならない、自身の時間が持てず仕事をしたくともできない、自身の時間が持てないうえに収入面でパートや派遣で働かざるを得ない、周囲に相談できず家族からの助力も得られず、そのような複雑な悩みを持つ状態であるダブルケアの人に対して適切な支援は整っておらず孤立してしまう。
このような状態は体力的にも精神的にもさらには経済的にも大きなダメージとなります。
周囲からの支援が受けられない孤立した状態で心身の負担がさらに増してしまうことで、時に介護うつに陥ってしまうこともあります。
介護うつになってしまうことで無気力化し、子育ても介護も放棄してしまうネグレクトや、子どもや親に対して暴言や暴力行為に至ってしまうなど、虐待に発展してしまうこともあります。最悪の場合は介護殺人に至ってしまうことも考えられます。
心身の負担が大きい状態で社会的に孤立してしまうことは、介護うつになってしまいたくさんのものを失ってしまうかもしれないという非常に危険な状態なのです。
 

ダブルケア問題の対策は?

 
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ダブルケアの人に対して指摘されている問題への対策は、今現在まだ十分ではありません。が、今後も増加するであろうダブルケアについての支援の必要性は認識されるようになっています。適切な支援や相談を利用し、対応していくことが求められます。

まずは自治体、行政に相談してみる

今現在、ダブルケアに対して適切な相談窓口などは整備されていませんが、大阪府堺市などは早くから窓口を設けダブルケアの人の支援を行っています。要件に該当すれば保育園や認定こども園の利用への配慮や特別養護老人ホーム入所基準の緩和を図るなど、ダブルケアの人にとっては非常に助かる支援です。
2020年度には全国の市区町村に窓口を設けようという動きもありますので、お住いの地域の市区町村窓口に相談して受けられる支援はないのかを聞いてみるとよいでしょう。
育児と介護を同一として相談するだけではなく、それぞれ専門の窓口に相談してみることで有効な手立てが見つかるかもしれません。介護と育児への支援を一体的に行っている機関として「社会福祉協議会(社協)」があります。社協は自治体の社会福祉活動を広く行っており、お住いの地域によっては子育ての悩み相談やサロンなど様々な福祉サービスを展開しています。介護についても配食サービスや見守り事業など地域の実情に応じた活動をしていますので、相談窓口として適しているといえますね。ほかに、役所の子育て相談窓口などに自身のダブルケアとしての悩みを聞いてみると、子育てのことだけでなく子育てをしながら介護を担うケースの対処法や適切な窓口を紹介してくれるかもしれません。
今後ますますダブルケア問題は増加していくと思われるため、それぞれの自治体、行政の窓口としても相談が多く寄せられていくことでしょう。適切な支援を受けて負担を軽減するためには、まずは自治体、行政に相談してみるのがよいでしょう。
 

一人で抱え込まないようにする

ダブルケアは場合によっては孤立しやすく、心身の負担が大きいため介護うつになるおそれもあることは先ほどの通りです。介護うつになってしまっては不幸な事態を招きかねないばかりか、治るまでに長い月日を要することもあります。介護うつにならないようにするには、相談や愚痴や悩みなどを一人で抱え込まずに誰かに話せる環境を作っておくことが非常に大切です。家族と一緒に現状についてしっかりと話し合い、一緒に協力するして負担を分け合うのももちろんいいでしょう。お住いの地域の方たちと気軽に相談できる関係を作っておくのもいいですし、同じくダブルケアに悩む人たちで集まる会があれば参加してみるのもいいでしょう。どうしてもそのような環境にない方は、つらいと感じたら我慢せず厚生労働省の電話相談窓口に相談してみるとよいでしょう。心身の機能が低下している際は精神的にも孤立し、絶望感に暮れやすくなります。どんな時でも窓口はある、一人じゃないと考えるようにするといいでしょう。
 

子どもには十分な愛情を注ぐ

育児と家族による介護は「世話をする」という点では共通している箇所もありますが、似て非なるものです。育児、子育ては特に親の愛情や関心を寄せることが成長過程に非常に重要です。ダブルケアに振り回されて子どもへの目が向かない状態になってしまうと、子どもは十分な愛情を感じることができません。すべてを抱えて不十分になってしまうよりも子どもに十分な愛情を注ぐことをまず考え、その中で介護も行っていくにはどのような環境が適切かを考えて、自身の力や家族の力では困難だとなった場合には外部のサービスが必要になってきます。
 

介護を頑張りすぎず適切な介護サービスを使う

介護うつになりやすい人の特徴にすべて自分で抱えこみ、全力で取り組んでしまう人というものがあります。負担の大きいダブルケアは、はっきりと終わりが見えにくいものでもあるため、自身の時間を確保できるように適度に外部サービスに任せるなどしてダブルケアから離れる時間を持つとよいでしょう。
今すでに介護サービスを利用しているのであればどのような介護サービスが自身の環境にとって適切か、自身の時間の確保のため、子育てを考慮したケアプランという希望をしっかりとケアマネージャーに伝えたうえで相談してみるのもよいでしょう。そのほかにも、介護に関しての相談であればお住いの役所にある介護保険課や、地域包括支援センターに聞いてみるのもよいと思います。特に地域包括支援センターにはケアマネージャー以外にも社会福祉士、精神保健福祉士がいます。介護だけでなく育児の悩みについても適切な助言をもらえる、適切な相談窓口を紹介してくれるなど、大きな助けとなることでしょう。
 

まとめ

女性の晩婚化、出産の高齢化にくわえ少子高齢化などの影響で子育て、育児と親の介護に同時に直面するのを「ダブルケア」といいます。
ダブルケアは女性に多く、負担の大きさから転職や離職、社会からの孤立、介護うつなど様々な影響を及ぼします。
ダブルケアと上手に付き合っていくためには自治体、行政の相談窓口に相談する、家族と協力する、地域との繋がりを保つなど、一人で抱え込まないことが大切です。また自身の時間を確保して負担の軽減が図れるよう、介護だけでなく、子育ても行っていることを考慮したケアプランの作成をケアマネージャーに相談する、社会福祉協議会の福祉サービスや地域包括支援センターの精神保健福祉士に相談するなどして適切な介護サービスや子育て支援を利用しましょう。

 
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参考URL:
新たな社会的リスク「ダブルケア」
「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」
平成28年版 厚生労働白書」
令和元年版 少子化社会対策白書
堺市 ダブルケア相談窓口
悩み別 相談窓口情報等を紹介するサイト

 
※コラムの内容については、掲載当時のものです。

 
 
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