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介護記録のICT化推進?内閣府の経済財政諮問会議について解説

2020/07/20

2020年6月22日、内閣府は新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止や新しい生活への対応の協議として第9回経済財政諮問会議を行いました。その中で今後、医療・介護業界のICT化を推進する必要があるという内容が取り上げられました。介護業界は介護記録のICT化をはじめ、ロボットの導入、リモートの活用など非常に多岐に渡る部分でのICT化が求められており、今後介護業界におけるICT化推進の影響はさらに大きくなると予想されます。今回は介護記録をはじめ介護分野におけるICT化の必要性について、内閣府の第9回経済財政諮問会議から解説します

 

新型コロナ対応で明らかになった「ICT化の遅れ」

この度の新型コロナウイルス感染症において、日本は医療従事者の懸命な対応もあり第1波の収束に向けてまずまずの成果をあげました。介護事業所においても感染症対策の徹底のほか営業の自粛や外出の自粛など高齢者の感染予防に尽力した結果、感染拡大の防止に成功したといってもいいでしょう。
しかしその一方で新型コロナウイルス感染症への予防対策として実施された過度の接触を避けたり、外出を自粛したりといった対応は対面でのサービス提供を基本としていた医療・介護業界においてサービスの提供体制や情報の把握、共有などが円滑に行えなくなる問題が浮上しました。以前から医療・介護業界のICT化の必要性は推進されてきたものの、まだ環境が整備されているとはいえず、ICT化が遅れている事実が明らかになりました。

医療・介護データのデジタル化を推進

新型コロナウイルス感染症は未だ完全には収束しておらず、第2波がいつやってくるのか警戒が続いているのが現状です。第2波の到来に備え、医療・介護のデータのデジタル化を強く推進し、対面でなくともサービスが提供できる体制、患者や利用者の情報共有を包摂的に行うなどの環境を整えることが求められています。
医療分野においては対面でなくともスマートホンやタブレット越しのビデオ通話などで診療を可能とする「オンライン診療」をより一層活用する必要があると指摘されました。
オンライン診療は予約から診察、決済までをすべてリモートで行えるため待ち時間の短縮やインターネットに繋がる環境であればどこでも実施可能であること、感染リスクが低いことなどがメリットに挙げられています。
薬局での薬の処方でもオンラインでの処方、薬剤配送などが必要とされていますが現状は処方箋の原本を持参する必要があるなどから、オンラインでのメリットは待ち時間の短縮程度にとどまっており、電子処方箋の運用はほぼ進んでいません。早期活用化を目指してシステム導入を図っていくものとされています。
また新型コロナウイルス感染症は高血圧や糖尿病といった生活習慣病、基礎疾患が重症化リスクや死亡率に関連していることが指摘されています。感染の際の重症化や死亡のリスクを減らすためには生活習慣病を徐々に減らしていくことが重要とし、簡易血液検査やオンラインでの健康相談の活用を推進するべきとするほか、実施のためには民間活力を大胆に活用するべきとされました。
高齢者は基礎体力が低下しやすく複数の疾患を併せ持つことも多いため感染の際は重症化リスクが高いとされています。病院などに行かずとも診察が行えたり健康相談を行えたりする点は感染予防対策として大いに役立ちますね。

認知症リスクの上昇が懸念されている

オンライン診療といった自宅などの拠点から動かなくとも医療サービスが受けられる一方で、新型コロナウイルスの影響で外出を自粛したり面会を制限したりすることにより高齢者のADLやQOLが低下し、認知症リスクが高まることが懸念されています。ADLとは「日常生活動作」のことで寝起きや移動、食事や入浴、排せつ等の日常生活で使う動作の能力をいいます。QOLとは「生活の質」のことで、自身の生活について主観的に感じる満足度のことをいいます。2020年6月9日に介護事業所を対象に行われたアンケート調査では、通所系サービスの約70%がADLの低下が見られると回答し、施設系サービスの約60%がQOLの低下が見られると回答しています。認知機能の低下は通所系、訪問系、施設系サービス全体で約46%が影響があると回答し、新型コロナウイルス感染対策の影響の大きさを図り知ることができます。
今後も面会制限や外出の自粛などが続くとますますADL、QOLの低下や認知症の進行や発症など認知症リスクが高まることが懸念されているのです。新型コロナウイルス感染予防対策として対面ではなくオンラインでの面会を行うなどのリモート化が推奨されてはいましたが、実施している事業所はまだ多くなく面会制限などの対応が多いのが現状でした。
この度の諮問会議では、この認知症リスクの上昇への対策としてもリモート化、ICT化を徹底すべきとの方向が示され、介護事業所の抜本的なICT化の必要性は今後ますます加速していくものと思われます。

介護記録,ICT化,ICT

介護記録をはじめ、推進される介護のICT化

この度の諮問会議において推進していく必要があるとされた介護のICT化は、新型コロナウイルス感染予防のための新しい生活様式の中でも利用者のADL、QOLの低下や認知症リスクを上昇させないという介護の生産性向上のほかにも今後ますます人材不足が懸念される介護業界全体の業務をICT化することで負担を抜本的に軽減、それに合わせて介護報酬や人員基準も見直していこうという非常に大胆なものです。
これから新型コロナウイルス感染予防に対応しながら事業所運営をしていくにあたって、ICT化への対応は非常に重要となるでしょう。

オンライン面会を推進

今もなお面会制限、面会謝絶などを行っている介護事業所に対し、スマートホンやタブレットなどでリモートを活用して行うオンライン面会を積極的に推進していくべきとしました。離れた場所でも家族や職員と顔を合わせて通話できるため、高齢者の心の安定に寄与することが期待できます。
自宅で過ごす高齢者にもテレビ電話システムを導入すれば離れた家族や事業所の職員との通話が可能になりますので緊急時の連絡や安否確認が容易になるでしょう。

通いの場の再開を支援

高齢者は私たちに比べ心身の機能が低下しやすく、外出自粛が続き活動量が低下してしまうとフレイルに陥り全体の機能低下から認知症リスクや寝たきりのリスクが高まってしまいます。介護予防には適度な外出が望ましいため、今もなお活動を自粛している高齢者の通いの場の再開支援や介護予防のためのスマホアプリを配信していくとされました。このアプリで新型コロナウイルスの留意事項の閲覧や近隣の散歩コースの紹介がなされることが予定されています。

介護記録の簡素化、標準化、ICT化

新型コロナウイルスの影響による介護職員の負担増で介護事業所の人材不足は深刻な問題になることが懸念されており、増し続ける介護事業所の業務負担を抜本的に軽減するため、今後4年間で取り組むと予定されていた介護記録の簡素化、標準化、ICT化を前倒しで早期に取り組むべきとされました。簡素化されることで記録量自体が減ることが期待できますし、標準化されることで残すべき内容が明確になりますね。さらにICT化しスマホやタブレットなどの端末で入力すれば多数の記録様式をすべて端末上で行えますし管理、閲覧、共有がしやすくなるため業務負担の軽減に大いに有効といえます。

ケアプランのAI活用、介護ロボット導入推進

ICT化の促進として、ケアマネージャーが作成するケアプランにAIを活用することを今後、強力に推進していくべきとされました。ケアプランにAIが活用すれば複雑なケアプランやケアプランの作成に必要な書類などの作成、管理が楽に行えるようなりケアマネージャーの業務負担の大きな軽減に繋がるでしょう。
そのほか、移乗や移動、排せつを支援する介護ロボットや見守り、コミュニケーションツールとして便利なロボットなどの導入を促進するため、次回の報酬改定で人員配置を見直すなどして大胆な後押しを行うとされています。つまり、介護ロボットを導入している事業所においては一定の要件を満たせば人員配置が緩和されるのではないかと予想されます。
人員不足で減算の対象になっている事業所などはぜひとも導入に積極的に取り組んでいただきたいですね。

経済財政運営と改革の基本方針2020~危機の克服、そして新しい未来へ~(令和2年7月17日閣議決定)
:P31、32/介護分野について。AIを活用したケアプランが明記。

介護事業所間、事業所内の介護記録共有、ICT化支援の拡充

クラウドを用いて、介護事業所間でケアプランや実績といった介護記録の共有を図るほか、介護事業所内でのICTについての支援を拡充すべきだとされました。
介護事業所間での介護記録の共有を図ることができれば会議などで対面せずとも最新の情報のやり取り、共有がスムーズに行えますし毎月のケアマネージャーへの実績送信といったレセプト業務も非常に簡素化されますね。そのほか介護事業所内においても、ICT化への支援が拡充され導入しやすくなれば、介護記録の入力や管理が楽になるだけでなくスマホをインカム代わりにして報告・連絡・相談を行いやすくする、申し送りや重要な伝達事項をオンラインかつデジタルデータで共有できるなど、介護職員が働きやすくなるだけでなくそれによって利用者に対するサービスの質の向上に大きく寄与することが期待できます。

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まとめ

この度の新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止はひとまず功を奏しましたが、対面でサービスを提供する医療・介護業界はICT化がまだまだ不十分であることが内閣府の経済財政諮問会議により明らかにされました。今後の第2波への警戒や新型コロナウイルス感染拡大防止に関連した新たな取り組みとして、オンライン診療や医療・介護データのデジタル化を推進していくことが求められました。
介護業界においては外出の自粛や面会の制限により高齢者の心身機能が低下し認知症リスクが高まることが懸念されているほか感染拡大防止対策などでますます介護職の人材不足が深刻化することも懸念され、積極的にリモート活用、介護ロボットの導入、介護記録や業務のICT化を行っていくことが必要とされています。新たな時代に対応するため、ICTの導入を積極的に検討する機会であるといえます。

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参考URL:
強靭かつ柔軟、安心できる社会保障の構築と包摂的な社会の実現に向けて
強靭かつ柔軟、安心できる社会保障の構築と包摂的な社会の実現に向けて(参考資料)
国民の健康と暮らしを守るために ~新型コロナウイルス下での医療・福祉の課題と対応~
【介護ロボットの開発・実用化支援策】のご紹介

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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