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NDSコラム

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介護施設でのインフルエンザ感染対策について解説

2020/09/14

2020年は新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るっており、日本においても介護施設でのクラスターが発生するなど収束の兆しはまだ見えておりません。そんな状況の中懸念されているのが毎年多くの感染者が出るインフルエンザと新型コロナウイルスが同時流行することへの対応で、共に高齢者や基礎疾患がある方は重篤化しやすいため、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルス両方の感染予防が介護施設においても重点的な課題となるでしょう。

例年発生するインフルエンザウイルス感染症への対策について、介護施設がどのようにより組むべきかを解説いたします。  

インフルエンザとは?

インフルエンザとは、インフルエンザウイルスに感染することで起こる、日本において11月上旬頃から発生し始め、12月~3月頃にピークを迎える冬季に流行しやすい呼吸器の感染症です。非常に感染力が強く、毎年約1000万人の感染者がいるといわれています。インフルエンザの症状は急激かつ強い発熱、のどの痛み、頭痛、倦怠感、関節痛や筋肉痛、鼻水、咳など全身症状が特徴です。通常は発症後約1週間程度で快方へと向かいますが、高齢者や基礎疾患がある方は気管支炎や肺炎を引き起こす、重症の場合は心不全を起こすなど症状が重篤化することもあり、最悪の場合は死に至ることもあります。  

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行に要注意

毎年強い感染力で多くの方が感染するインフルエンザですが、今年の冬は新型コロナウイルスの感染がさらに拡大し、インフルエンザと新型コロナが同時流行するのではと懸念されています。
インフルエンザと新型コロナは咳、のどの痛み、発熱など症状が似ている部分が多く判断しづらいとされています。同時流行することにより医療機関にインフルエンザの患者と新型コロナの患者が同時に押し寄せることで医療機関の対応が困難になるとの見方もされています。
高齢者や基礎疾患のある方はどちらの感染症もともに重症化リスクがあり、最悪の場合死に至るおそれがあります。インフルエンザと新型コロナは潜伏期間に違いがあるなどから同時感染するリスクは高くないのではとの見方もありますが、世界中の新型コロナウイルスの感染という未曽有の事態において、インフルエンザとの同時感染や立て続けの感染のおそれも考慮すべきでしょう。
介護施設を利用する高齢者においても新型コロナウイルス感染予防はもちろんのこと、感染力の強いインフルエンザの感染予防対策はこの冬のとても重要な課題といえるでしょう。  

介護施設や障がい福祉施設でのインフルエンザ対策とは?

インフルエンザは非常に強い感染力を持ちます。施設におけるインフルエンザ対策の基本指針はウイルスを「持ち込まない」「持ち出さない」「拡げない」ことです。
まずはインフルエンザウイルスが外部から入ってこないように対策し、施設内で発生してしまった場合はウイルスの感染拡大を防ぐことが重要です。また、感染症には感染が成立するための3つの要因があります。
①感染源 ウイルスを持つもの付着したものや人
②感染経路 ウイルスが体内に入る手段
③宿主 体内に侵入したウイルスが増殖できる場所
以上の3つの要因が揃うことで感染が成立します。つまり、感染を予防するためにはそれぞれ3つの要因への対策が重要となるのです。インフルエンザウイルス感染症を予防するために介護施設や障がい福祉施設が取り組むべき内容は以下の通りです。  

①感染源の排除

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感染源、つまりインフルエンザウイルスを持つもの、付着したもの、ウイルスを持つ人それぞれへの対策です。感染源であるインフルエンザウイルスがそこに無ければ感染することもありません。ウイルスがあるかもしれないと考えられるすべての場面を想定して対策しましょう。
・よく手が触れる場所の清掃 インフルエンザウイルスは感染者のくしゃみや咳などによって空気中を飛散します。それが手に付着した場合、ドアノブや手すり、パソコンのキーボード、共用の事務用品など手が触れる箇所に広くウイルスを拡げてしまいます。 施設の中で手が触れやすい場所や物品をしっかりと認識し、1日に数回アルコール消毒液などで拭き取りましょう。拭き取りには極力雑巾や布巾ではなく使い捨てできるペーパータオルを使用し、清掃後は都度袋に捨ててしっかりと口を結ぶようにするとよいでしょう。
・床の清掃 インフルエンザウイルスは一定時間空気中を漂いますが、やがては床に落ちます。床に落ちたといってもウイルス自体は存在しているため、ちょっとした風などでも再び空気中を漂うおそれがあります。この床に落ちたウイルスをしっかりと排除するために、1日に数回、施設内の床をアルコール消毒液などで消毒し、モップ掛けをしましょう。使用後のモップは十分に洗浄し、乾燥させるとよいでしょう。また、床を歩いたあとの靴裏にもウイルスは付着するおそれがあります。適宜靴裏をアルコール消毒するようにするとなお効果的といえます。
・面会者の制限 介護施設には家族の面会や業者の出入りなど、外部から多くに人が訪れます。施設内の感染予防に努めても、外部からインフルエンザウイルスが持ち込まれてしまうことで感染が発生するおそれがあります。施設に来所される方には玄関などで体温を計測し、発熱がある場合や咳がある場合は施設内への入場を断る、問題がない場合でも入る前に手指の消毒とマスク着用の徹底をお願いするなど、外部から持ち込まれることがないよう最大限注意しましょう。  

②感染経路の遮断

インフルエンザウイルスは空気中を漂う、ドアノブなどに付着するといった状態では何もできません。人間の体内に入ることで感染したことになります。介護施設を利用する高齢者はもちろんのこと、職員の体内にインフルエンザウイルスを入れないためにはインフルエンザウイルスの感染経路をそれぞれ遮断する必要があります。ウイルスが付着した手やものに触れることで感染する「接触感染」咳やくしゃみで空気中を漂い、それを吸い込むことで起こる「飛沫感染」がインフルエンザの感染経路とされています。
・マスク着用の徹底 インフルエンザウイルスの飛沫感染の多くは口腔や鼻腔からの侵入が経路になることがほとんどです。空気中を漂うウイルスを体内に入れないように、普段からマスクの着用を徹底するようにしましょう。仮に症状がなくとも感染経路を遮断する目的から、極力利用者もマスクを着用していただくことが望ましいです。
・清掃時やケア提供時の手袋着用、積極的に手洗いとうがい インフルエンザが手に付着してしまうと、ウイルスで汚染された手で触れた箇所すべてにウイルスを付着させて回ってしまうことになります。場合によっては利用者の食事介助や歩行介助など、利用者に触れる行為がそのまま利用者に感染させてしまうおそれもあります。そのような事態を招かないよう、利用者に触れる場面はもちろん清掃などの業務を行う際には必ず使い捨て手袋を着用しましょう。手袋着用後、上からさらにアルコール消毒を行うと効果的です。手袋を外したあとは必ず手洗いとうがいを行い、自身の体にウイルスが付着していない状態を保つようにしましょう。
・湿度を50~60%に保つ インフルエンザが流行する冬季は空気が乾燥し、湿度が低くなるのが特徴です。この乾燥した空気はインフルエンザウイルスにとっては飛沫に乗り遠くまで漂える絶好の時期であり、冬季に流行する大きな要因でもあります。介護施設を利用する高齢者は指先などの末梢が冷えやすく、冬場は寒さを訴えやすいため多くの介護施設で暖房を使用していると思いますが、暖房が空気の乾燥を助長してしまい湿度が20%台になることもしばしばです。湿度は50~60%程度を保つことでウイルスが空気中を漂いにくくし、空気中の水分とともに床へ落ちやすくします。つまり、飛沫感染の主な感染経路である口腔や鼻腔への侵入を防ぐのに大きな効果があります。インフルエンザ予防対策として各部屋や食堂ホールなどに温湿度計と加湿器を設置し常に一定の湿度を保つことが非常に重要となります。
・人が多い場所へ行かない 不特定多数の人が集まる場所では、誰がインフルエンザウイルスを持っているかが判断できません。知らずのうちに接触感染、飛沫感染を起こしているおそれがあるため、利用者はもちろんのこと、職員もインフルエンザの流行期には人の多い場所へ出かけることは極力控えるようにしましょう。  

③宿主抵抗力の向上

インフルエンザウイルスは体内に入った場合、多くは喉の粘膜などに侵入し増殖を始めます。一定の数まで増殖すると症状が現れ発症となります。しかし「宿主」の抵抗力、免疫力が強い場合は思うように増殖できず、症状が現れないことや発症しても症状が軽いこともあります。体内に侵入してしまっても発症させないためには、職員、利用者ともに抵抗力を向上させることが大切です。
・十分な休息 強い抵抗力を保つには、心身が健康であることが何よりも重要です。疲れが溜まっている、寝不足であるなどの状態では体の免疫力は低下しウイルス増殖への抵抗力が弱まってしまいます。常日頃からしっかりと休息が取れるよう仕事量の調節や職員間での分担、業務の簡素化を図り、体に疲れを溜めないようにすることが重要です。利用者においても日中は極力運動などで活動量を増やし、夜間にしっかりと休めるよう生活リズムを整えることが抵抗力の向上へと繋がります。
・しっかりと栄養を摂る 抵抗力、免疫力を向上させるには3食の食事をバランス良く摂取することが重要です。 さらに免疫力を向上させるには腸内環境を整えることが効果的であることが分かっています。腸内環境を整えるにはヨーグルトや発酵食品、きのこ類を摂取することが有効です。そのほかに免疫力そのものを向上させる食材として青魚や肉類のたんぱく質を摂取することが効果的です。
・インフルエンザワクチンの予防接種 インフルエンザワクチンは接種することで
・感染しても症状が出ない、もしくは軽症
・重症化リスクを低減する 効果があるとされています。
したがってインフルエンザワクチン自体には感染を予防する効果は高くはありません。しかし、高齢者や基礎疾患のある方はインフルエンザから気管支炎、肺炎などを起こすなど重症化しやすく、死に至るおそれもあります。
この重症化を防ぐことが最も大きな効果といえ、厚生労働省は65歳以上の高齢者、基礎疾患を有する方、医療従事者に対し、ワクチンの予防接種を受けることを強く推奨しています。介護職員についても、予防接種を受けることで一定の免疫力の向上効果や無症状化させる効果が期待できるため、自身が発症しないため、高齢者に感染させないためにも積極的に接種していくことが望ましいでしょう。  

ワクチンはいつから接種できる?

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令和2年度におけるインフルエンザワクチンの接種時期は令和2年10月1日(木)からとなります。ワクチンは接種してから効果が出るまで約1ヵ月かかるとされ、持続期間は3~5ヵ月です。インフルエンザが流行し始めるのが例年11月上旬とされているので、早めの接種が効果的です。
インフルエンザの流行は3月頃まで続くため、10月に接種した場合は早い場合は1月頃には効果が薄れてしまうおそれがあり、そのような場合は1月にもう一度接種する2回接種が効果的です。
特別養護老人ホームや老人保健施設といった介護施設は施設の形態により嘱託医が配置されており、医師の勤務時に予防接種を受けることが可能です。 配置医のいない事業所については原則としては予防接種を行う指定医療機関への通院が必要です。通院する手段がない場合などの予防接種についてはお住いの自治体に確認してみるとよいでしょう。
インフルエンザワクチンの接種費用は各自治体により差があり一般的に3,000~5,000円ほどです。多くの自治体でワクチン接種の費用を助成する制度があります。1回のみ助成するものや、高齢者の2回接種を助成するものなど異なるので各市町村へ問い合わせてみましょう。  

まとめ

新型コロナウイルス感染症が未だ収束の兆しを見せないまま、冬季のインフルエンザ流行を迎えようとしています。新型コロナとインフルエンザが同時に流行することで医療機関の混乱や高齢者への感染拡大などが懸念されています。新型コロナ、インフルエンザはともに感染力が強く高齢者や基礎疾患を持つ方には肺炎や気管支炎などを引き起こす重症化リスクが高い感染症であり、最悪の場合死に至るケースも見られます。介護施設では新型コロナに加えインフルエンザの感染を予防するための取り組みを徹底することが今冬の重要な課題といえます。施設内の感染予防策に努めながら職員と利用者の抵抗力、免疫力向上のために栄養、休息をしっかりと取り、効果的にインフルエンザワクチンを接種してインフルエンザの発症、重症化リスクを減らす手立てに取り組んでいきましょう。  

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参考URL:
高齢者介護施設における 感染対策マニュアル 改訂版
インフルエンザの感染拡大を防ぐために
インフルエンザ施設内感染予防の手引き
高齢者の インフルエンザは重症化することがあります
一般社団法人日本感染症学会 “今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて”の提言に際して
免疫力を高める食事とは

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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