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NDSコラム

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令和3年度の障害者総合支援法の改正内容は?前回の変更点と比較

2020/11/05

障がいがある方が地域で生活していくために必要なサービスを定めている「障害者総合支援法」が令和3年度に改正されます。この改正は「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定」と呼ばれ、障がい福祉サービスの報酬体系の見直しや新たなサービスや加算の新設などが行われ、各サービス事業者にとってはしっかりと把握しておくべき非常に大切な改正になります。

この度の改正において重要な指針となるのは前回の平成30年度障害福祉サービス等報酬改定および2019年度障害福祉サービス等報酬改定です。前回はどのような改正が行われ、その結果はどうであったのか、それを踏まえ令和3年度の障害者総合支援法はどのような変更が予想されるのかを見てみましょう。

障害者総合支援法とは?

障害者総合支援法とは「障害者自立支援法」を前身とし平成25年4月に施行された法律です。障害者自立支援法では障がい者が自立した社会生活を送るために必要な支援を提供するものでしたが、この「自立」という文言が「基本的人権を享有する個人として尊重されるものである」と変更されました。つまり、障がい者の方が自立することが目的ではなく、障がいの有無に関わらず個人として社会生活を営めることを支援するために「障害者総合支援法」として生まれ変わりました。これにより障がい者への様々なサービスが新設され、ニーズに応じた社会生活を送るために必要な支援が拡充しました。
幾度かの改正を繰り返しながら情勢や実情に合った内容を調整し続けており、前回の大きな改正である「平成30年度障害福祉サービス等報酬改定」に続き「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定」がこの度令和3年4月の施行に向け、今議論が行わています。

令和3年度障害者総合支援法改正までのスケジュール

令和3年度障害者総合支援法の改正および令和3年度障害福祉等報酬改定施行までのスケジュールは2月頃からすでに始まっており、現在の各サービスの実施状況や加算の算定状況などのヒアリングを7月頃までに行います。8月頃にはヒアリングで収集した情報を取りまとめ、各サービスの報酬が正当であるかなどを実態と情勢を踏まえ検討され、12月頃には報酬や基準に関する基本的な考えが取りまとめられます。そして、年明けから各サービスの報酬改定案などの取りまとめを行い、3月頃に改正内容の告示通知を行い4月に施行されるというスケジュールです。10月現在において、今まさに報酬体系や基準が正当であるかなどを検討している段階ということですね。

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平成30年度改正の障害者総合支援法の概要とは

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では、前回の大きな改正であった平成30年度障害福祉サービス等報酬改定とはどのようなものであったのかを見てみましょう。

新たなサービスの新設

この際の改正では新たなサービスが新設されました。ひとつが「自立生活援助」です。これは施設やグループホームなどで生活していた障がい者が地域で自立した生活を希望する際に定期的に自宅を訪問し現状の把握や家事援助など必要な支援を行うサービスです。定期的な訪問でなくとも必要に応じて電話やメールなどでも対応することとされています。
もうひとつが「就労定着支援」です。これは、就労移行支援などを経由して一般就労に移行した障がい者が就労に伴う環境の変化で生活面に問題が生じていないかを相談に応じて把握し、必要な支援を行うことで一般就労を継続し職場に定着できるよう支援するものです。
そしてもうひとつが「居宅訪問型児童発達支援」です。
これは重症心身障害等の重度の障害により外出が著しく困難な場合や感染症にかかりやすく重篤化する恐れのある場合などを理由に外出が困難な障がい児を対象にしたサービスです。

重度訪問介護の対象拡充

重度の障がいを持つ方に対し訪問介護を提供する重度訪問介護は、従来居宅のみがサービスの対象であり医療機関に入院した際は対象外でしたが、利用者の混乱を防止する、医療従事者に正しい情報を伝えることなどを目的に医療機関に入院した際でも訪問介護が可能になりました。

共生型サービスの新設

介護保険サービスの指定を受けた事業所であれば、基本的に障がい福祉の指定を受けられるように基準の特例を設けたものです。障がい福祉サービスの利用者は65歳で介護保険に移行するため環境が大きく変わってしまう方が多くおられましたが、共生型サービスを設けることで同一事業所内で両サービスの指定を受けることができ、環境を変えずにサービスを受け続けることが可能になりました。
そのほか、各サービスの基準報酬体系の見直しに合わせ、集合住宅へのサービス提供における減算なども行われましたが、全体としては+0.47%のプラス改定となりました。

令和3年度障害者総合支援法改正に関する意見、検討

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令和3年度障害福祉サービス報酬改定では、以下の項目が重点的な課題として挙げられています。

障がい者の重度化・高齢化を踏まえた障害者の地域移行・地域生活の支援等

平成30年度障害福祉サービス等報酬改定で新設された自立生活援助サービスについて、サービスの実施に必要な人員基準を満たすことが困難なため、なかなか実施が進んでいない現状があるとのことで、人員基準の緩和などの見直しが必要であるとの意見が出ています。
現在は地域生活支援員とサービス提供管理責任者が兼任できないためであるため、兼務を可能とするなどの方策が必要なのではないと議論されています。
また、グループホームは年々事業所数が減少し、利用する障がい者の高齢化が問題となっているとの意見が出ており、令和3年度障害福祉サービス等報酬改定で加算など報酬体系の見直しが必要であるとの見方がされています。

効果的な就労定着支援

平成30年10月に完全施行された就労定着支援には、月を追うごとに事業者数、利用者数ともに増加しました。障がいを持つ方の一般就労へのニーズの高さが伺える結果となりました。令和3年度障害福祉サービス等報酬改定においても引き続き推進していくことが必要との見方がされていますが、一方で月に一度の訪問が必要で人件費が採算に合わないため実施できない、給付決定の手続きが煩雑であるなどの意見が事業者側から出ており、効果的な実施のためにサービスの仕組みや報酬体系を見直す必要があるとの見方です。

災害や感染症の発生時も含めた支援の継続を見据えた対応

今年猛威を振るった新型コロナウイルス感染症が大型災害の発生時においても障がい福祉サービスが安定的かつ継続的に提供できるよう専門家との連携により日頃からサービス提供体制等を整備する必要があるのではないかとの意見が強く、さらに新型コロナウイルスに対応するためにオンライン等のICTテクノロジーを活用した支援体制を整える必要があるのではないかとの検討がされています。実際のサービス提供をオンラインで行った際などの評価について検討する必要があるとの見方です。

障がい福祉サービス等の持続可能性の確保と適切なサービス提供を行うための報酬等の見直し

今現在障がい福祉サービス事業所、利用者の数は増加しているものの、人員は不足している現状であり、人員を確保しながらサービスを持続していくための検討が必要であるとの意見が出ています。
具体的な方策として各サービスの内容や質に応じた報酬体系を再度見直していくことや人員、運営基準の見直しをしていくことが意見として挙げられているほか、現場の業務負担を減らしていくためにICTを活用した記録の簡素化やタブレット型端末などを用いた電子化などで業務の効率化を図っていくことが効果的とされ、ICT活用を推進していくために必要な方策を定めることが適切であるとの見方がされています。これらの方向性は未だ議論の最中であり、今後も情報が具体的になる一方で方向性の転換が行われる可能性があることにご留意ください。
今後の動向はこちらの特設ページにアップしていきますのでぜひご参照ください。

まとめ

前回の平成30年度障害福祉サービス等報酬改定では、障がい者の就労を支援する就労定着支援や施設から地域での自立生活を推進する自立生活援助など、障がい者が地域で暮らすための社会参加に重点を置いた改正が目立ちました。しかし自立生活援助は利用が低調であることが課題とされています。一方で就労定着支援は好調であり、令和3年度障害福祉サービス等報酬改定においては問題点の改善とともにさらなる共生社会の実現のために必要な調整が行われることでしょう。
また、利用者が増加を続ける障がい福祉サービスの業務負担を軽減することが大きな課題としても挙げられており、ICTを活用した記録の電子化などで業務負担の軽減を図っていくための方策が今後も推し進められていくことでしょう。
弊社のほのぼのmoreは記録の電子化など各種障がい福祉サービスの業務効率化に役立つほか、法改正に準じています。障がい福祉サービスの効率化のためにぜひともご検討ください。

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参考URL:
障害福祉分野の最近の動向
令和3年度障害福祉サービス等報酬改定 に向けた主な論点(案)

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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