NDソフトウェア株式会社
NDSコラム

介護支援ソフト「ほのぼの」シリーズのNDソフトウェアです。介護業界・障がい福祉業界の、トレンドや情報を発信しております。

令和3年度の介護保険改正はどのような変化がある?現在の動向

2020/11/05

介護保険制度が2000年4月に施行されてから、早20年が経過します。介護保険は今までに改正を繰り返しながら時代に則した形に変化し続けています。次の改正は令和3年度の介護報酬改定で、今まさに改正に向けての協議が行われているところです。前回の平成30年度介護報酬改定を踏まえ、どのような方向に改正されるのかを前回の改正の概要も踏まえて解説します。

 

介護保険制度とは?

介護保険制度は我が国の平均寿命が延び続けることにより想定される介護ニーズの増大、核家族化や女性の社会進出など社会情勢の変化による介護ニーズの増大などを踏まえ、今まで家族単位の問題であった介護を国の問題として社会化した結果2000年4月に施行されました。これが介護保険制度です。
世界各国でも類を見ない超高齢社会に国が介護を担っていこうという介護保険は世界的にも例がなく、介護保険は利用の実態や社会の動きに合わせ、施行以来何度も改正を繰り返してきました。
次回の改正は令和3年度介護報酬改定になり、厚生労働省では改正に向けた協議が行われています。

介護保険改正のスケジュール

介護保険改正のための動きはすでに始まっており、令和2年年3月16日の介護保険給付費分科会で示された令和3年度介護報酬改定のスケジュールでは
・令和2年3月
 事業者団体へのヒアリングと主な論点についての議論
・令和2年秋頃
 具体的な方向性の議論
・令和2年12月
 基本的な考え方の整理と取りまとめ
・令和3年年明け諮問・答申(有識者に意見を求める)

このスケジュールで進んでおり、この間に国会で来年度の予算が決定し介護報酬の改定率が決定するといった動きです。現在、具体的な方向性の議論が令和3年度4月の改正に向けて行われているところですね。

★特設ページはコチラ!

平成30年度の介護保険改正の概要

介護保険制度改正,介護報酬改定,介護保険

平成30年度の介護報酬改定では
① 地域包括ケアシステムを推進すること
② 自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスを実現すること
③ 多様な人材の確保と生産性の向上を図ること
④ 介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保

以上の4項目が主な柱として改正が行われました。
全体を通して医療と介護との連携強化と質の高い介護サービスを評価する形で新たな加算が新設され、医療機関と連携する居宅介護支援事業所を評価する特定事業所加算(Ⅳ)、実際に施設で看取りを行った際の評価を手厚くした看取り介護加算(Ⅱ)、通所介護において利用者のADLを維持していることを評価するADL維持加算(Ⅰ~Ⅱ)、訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、小規模多機能型居宅介護において通所リハビリと連携して利用者の自立支援、重度化防止に資するサービスの提供を評価する生活機能向上連携加算など、質の高いサービスや医療との連携を図っている事業所を評価する傾向が強く見られました。

また人材確保や現場の生産性向上、介護サービスの適正化を目指して見守りセンサーや介護ロボットなどのICTを活用している事業所の評価として加算の算定に必要な人員基準の緩和を図る、医師のテレビ電話等を活用したリハビリテーション会議への参加を認めるといったICTの積極的な活用を評価する動きが目立ちました。それをさらに推進する形で記録等文書の簡素化やICTを活用した業務改善が推奨されていますが、明確に加算等で評価する動きはありませんでした。

平成30年度介護報酬改定の全体の報酬改定率は+0.54%とプラス改定となりましたが、加算を算定できない事業所は報酬が下がるケースも見られました。

★オススメ商品

令和3年度の介護保険改正はどうなる?

介護保険制度改正,介護報酬改定,介護保険

令和3年度の介護報酬改定は今現在どのような議論がなされているのでしょうか。
まず前回の介護報酬改定率は0.54%とありましたが、新設された加算の算定の基準が難しく、加算を取れない事業所が多かったこともあり経営的に苦しくなったところが多いようです。その点も含めて新設された加算の基準を見直すべきという意見が多く出ております。

全体の議論の流れとして、平成30年度介護報酬改定の柱であった4項目の見直しとさらなる推進を図るとともに、今年猛威を振るった新型コロナウイルス感染症や大規模災害等の対策を強化し、必要なサービス提供体制を確保するための取り組みが必要だとされています。
そのほかの重点的な4項目で議論されている内容は以下の通りです。

①地域包括ケアシステムの推進

認知症高齢者への対応力を向上させることを目的として平成30年の介護報酬改定で認知症専門ケア加算が多くの事業所を対象としたものとなりましたが、グループホームが約20%の算定率であるのに対し他の事業所では1割にも満たない算定率となりました。また、若年性認知症利用者・入所者・入居者・患者受入加算はすべての事業所で1割にも満たない算定率となるなど、認知症ケアの対応強化としてあまり有効に働いていません。認知症の方が地域で望む暮らしを続けていくため、ケアの質の向上を図っていくことが必要とされ、加算の算定基準などを見直すなど、令和3年の介護報酬改定において「認知症」に対する報酬体系を見直すべきとの声があがっています。
また、地域包括ケアシステムに必要な医療と介護の連携においてもさらなる推進が必要であることが議論されており、施設や在宅での生活における療養生活の限界点を高めることが必要との意見もあり、多職種協働を円滑に行うためにはもっとICTを活用すべきであるとの意見が出ています。

②自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービス

平成30年の介護報酬改定において、通所介護にADL維持等加算、介護予防通所リハビリテーションにリハビリテーションマネジメント加算などが新設され、計画に沿って利用者にリハビリを提供し、要介護度の維持、改善に取り組むことを評価する体制が始まりましたが、加算の点数に対して要介護度が改善した場合の報酬が下がり実際には経営状態が悪化するなどから算定率は今ひとつのようです。
この要介護度の改善率への評価体制と報酬体系を見直し、利用者の自立支援をさらに推進していくべきとの意見が出ています。

さらに、平成30年度の介護報酬改定では、リハビリサービスにおいて利用者のリハビリ計画書や評価などの情報を電子データとして提出した事業所を評価する加算が新設されました。これらの情報は「VISIT」というデータベースでビッグデータ化され、エビデンスに基づいたサービスのために活用されますが、このVISITなどと連動させて科学的な介護を分析するためのデータベース「CHASE」の稼働が進められています。各事業所から「CHASE」へパソコンなどからデータ提供した場合にそれを評価する加算が令和3年度介護報酬改定において必要なのではとの意見が出ています。

③多様な人材の確保と生産性の向上

2040年頃までは高齢者数が増加し、生産人口が減少すると見通されている現状において、平成30年度の介護報酬改定では介護ロボットや見守りセンサーなどのICT機器を活用して質の向上や業務負担の効率化を図っている事業所に対し、加算要件の一部緩和などの措置が講じられました。 算定している事業所は約7%とまだまだ少ない現状ではありますが、導入している施設での状況の検証を行ったところ導入割合が高い施設ほど、業務時間の削減効果が大きい結果となりました。
見守りセンサー以外にもインカムなどを組み合わせて活用していくことで業務改善に成果を上げている事例が多く報告されており、令和3年度の介護報酬改定においてICTの活用を評価するための取り組みが必要であると考えられています。
また、業務負担の軽減のために文書を簡素化することが必要であることが議論されており、簡素化・標準化・ICT化について具体的な方策が可能かを検証していくことが必要であるとされています。

④介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性

介護保険制度の安定した継続のために必要な報酬体系を見直すべきとの意見により平成30年度介護報酬改定においては訪問介護事業所の集合住宅居住者へのサービスの減算などが行われました。令和3年度介護報酬改定においても訪問介護以外に不公平な報酬体系がないかを見直すべきとされる一方で、地域の実情に応じた報酬体系にしていくことが必要との意見が出ており、現在複雑化している加算についても常態化している加算については基本報酬に組み込んでもよいのではとの見方もされています。
これらの方向性は未だ議論の最中であり、今後も情報が具体的になる一方で方向性の転換が行われる可能性があることにご留意ください。 今後の動向はこちらの特設ページにアップしていきますのでぜひご参照ください。

★特設ページはコチラ!

まとめ

平成30年度の介護報酬改定から3年経過しての改正となる令和3年度介護報酬改定において、前回の重点的課題として4項目を踏襲する形での改正となりそうです。 認知症ケアや看取り介護といったケアの質をさらに評価すると予想され、大きな流れとして業務負担の軽減やサービスの適正化、質の向上などにICT機器を活用していくことを評価する仕組みを検討すべきとの見方が強いですね。弊社のほのぼのNEXTは各業務のICT化を支援しており、CHASEをはじめとする最新の法改正にも準じています。令和3年度介護報酬改定に素早く対応していくためには事業所においても事前にICT化などに取り組むことが有効です。

★オススメ商品

★CHASE関連コラム

科学的介護データベース「CHASE」とは?:CHASEコラム(第1回) >>>
科学的介護データベース「CHASE」とは?:CHASEコラム(第2回) >>>

参考URL:
令和3年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)
平成30年度介護報酬改定の主な事項について

当コラムは、掲載当時の情報です。

最後までお読みいただきありがとうございました。
介護事業所様にお役立ちいただけるよう「お役立ち資料」をご用意しました。是非、ダウンロードしてご活用いただければと思います。ダウンロードは無料です。

今すぐお役立ち資料をダウンロード

ほのぼのNEXT

介護事業者さまの現場をサポートする「ほのぼのNEXT」は、事業所様の運用に合わせて機能を選んでご使用いただけます。
まずはお気軽にお問い合わせください。

ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

PAGE TOP