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NDSコラム

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「ADL」「IADL」の違いと自立支援のケアのポイント(1)

2021/02/04

介護が必要な高齢者が、生活を送るうえでどのような能力があるのかを示す指標に「ADL」があります。介護現場においても日常的に用いられる機会の多い言葉ですが、よく似た言葉に「IADL」というものもあります。この両者の言葉がそれぞれどのような意味を指すのかを理解することは、高齢者へケアを提供するうえで非常に大切なものとなります。また、令和3年度介護報酬改定においても「ADL等維持加算」が拡充される方向性で議論が進んでおり、介護保険制度全体がADLの維持、改善を重視する動きとなっています。今回は、高齢者の自立支援のために知っておきたい「ADL」と「IADL」について解説します。

自立した生活にはADLの低下予防が大切

介護が必要な高齢者が自立した生活を送るためには身体機能を低下させることを最大限に予防しなくてはなりません。介護保険を利用する高齢者は介護保険法において「その有する能力に応じて自立した生活を営むことができるよう」に必要な介護サービスを受けることが明記されております。また同様に介護保険には「悪化の防止に努めること」「自ら要介護状態になることを防ぎ、健康増進に努めること」も明記されています。つまり介護が必要な高齢者は自らの力でできうる限り健康になるように努める必要があるとされ、介護職はそのために必要な支援を行い「利用者の状態が悪化することを防ぐ」「能力に応じた自立生活を支援する」ことが定められているともいえます。
高齢者の「有する能力」を表す言葉のひとつを「ADL」といい、直訳すると「日常生活動作」です。高齢者が日常生活を送る際の動作能力全体を指しており、このADLを把握しなくてはその方がどこまでの能力を持っているのかを測ることはできません。適切にADLを分析しできること、とできないことを理解してはじめてその方の能力に応じた自立支援を図ることができます。そしてその自立した生活を維持していくためにはADLの低下を予防することが非常に重要な意味を持つのです。

「ADL」と「IADL」の違いとは

ADL,IADL,介護報酬改定,QOL,ADL改善,ADL維持等加算,アセスメントシート ADLと似た言葉に「IADL」があります。両者は似たような意味でもありますが少し違います。両方の意味を正しく理解することが高齢者の自立支援のためのケアには大切です。ADLは先述の通り「日常生活動作」を意味する“Activities of Daily Living”の頭文字を取ったもので、日常生活に必要な行為の遂行能力を表します。日常生活に必要な行為とは
・着替え
・食事
・歩行、移動
・トイレ、排せつ
・入浴、整容

などを指します。つまりその高齢者が日常生活の中でほぼ毎日行っているであろう行為の動作能力です。食事なら食べる動作、入浴なら身体や頭を洗う、浴槽に入る動作などがADLです。
それに対しIADLは“Instrumental Activities of Daily Living”の頭文字で「手段的日常生活動作」と訳されます。IADLはADLを基にさらに複雑な動きの動作能力のことを指します。
食事を例に挙げると、ADLでは「食事を食べる動作」がそれにあたります。しかし食事を食べるためには食材の準備や買い出し、調理などの食事を作る作業が必要です。さらにいえば食事の献立を決める、作るかお店のものを買って済ますかを考えることなども必要になる場合があるでしょう。このように、食事という行為そのものを完結させるために必要な手段の遂行能力を指すものがIADLです。いうならばADLは動作そのものであるのに対し、IADLはさらに計算力や判断力、記憶力といった複雑な認知能力を合わせたものといってもよいでしょう。ADLとIADLはどちらも高齢者の自立した生活には維持、向上を目指す必要のあるものといえます。

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令和3年度介護報酬改定で「ADL等維持加算」の算定対象、単位数等が拡充される案が出ている

高齢者の自立した生活を支援するためにはADL、IADLの維持、向上が大切ですが、それを推進するために令和3年度介護報酬改定において「ADL維持等加算」が拡充される方向で議論が進められています。
「ADL維持等加算」は通所介護系サービスを対象に平成30年度介護報酬改定の際に新設された加算であり、ある程度の利用者数、平均介護度の高さがある事業所において定期的に利用者のADLを測定し、ADLの維持または改善の度合いが一定の水準を超えている場合にインセンティブとして次年度に加算を上乗せするというシステムでした。しかし加算を算定した事業所の数が振るわず、上乗せされる単位数も少ないことが調査で明らかになりました。それを受け、高齢者の自立支援をさらに推進する形でADL維持等加算が見直されました。
現在の案は下記となっています。

・対象事業所を通所介護系だけでなく特別養護老人ホーム、有料老人ホームやサ高住といった特定施設入居者生活介護サービスの指定を受けている介護施設も対象に含む
・介護度は不問
・5時間以上のサービスを受ける利用者が20名以上だった算定要件を「利用者総数10名以上」に緩和する
・介護系データベースである「CHASE」(※2021年4月より『LIFE』へ変更予定)への情報提供フィードバックを受ける事
・単位数を(Ⅰ)3単位/月(Ⅱ)6単位/月→(Ⅰ)30単位/月(Ⅱ)60単位/月に拡充

この通りの報酬改定となれば加算を算定できる事業所の数は相当数増えることが見込まれます。加算を算定するにはADLの維持、向上を図る必要がありますので利用者の自立支援の必要性がますます高まることになりそうです。またこの通りの報酬改定となった際には『CHASE』への情報提供が必要になってきますので、CHASEへの情報提供に対応した介護ソフトの導入も必要になってくることでしょう。

ADLの維持、向上にはIADLの低下予防が重要

ADL,IADL,介護報酬改定,QOL,ADL改善,ADL維持等加算,アセスメントシート 高齢者のADLやIADLは老化の影響などもあり、生活不活発病などから非常に低下しやすいものといえます。維持、向上を図っていくためには、ADLそのものへのアプローチ以上にIADLへのアプローチが非常に大切です。
理由としてIADLの低下は、高齢者本人の「できること」が失われていくことに繋がり、それらが増えてしまうことでADLそのものが低下するという悪影響が出やすくなるためです。食事を例に挙げると、今まで自分で調理をしていた方が調理というIADLを失った場合、それに関連するその他のIADLも大きな影響を受けます。例えば認知症の進行による失認・失行や実行機能障害や身体の機能低下、精神機能の低下などが原因として考えられるでしょう。それにより今までやっていた行為を失ったことによる意欲の低下やさらなる心身の機能低下を引き起こすことが考えられます。すると「食べる」というADLはすぐに低下してしまい、結果的に食べることに関連したADLやIADLを失うことに繋がります。食事のADLが失われることは関連する他の動作にも影響が出ることは想像に難くありません。
このように高齢者のADL、IADLを維持、向上させていくにはADLそのものよりIADLへのアプローチを図り、高齢者の「できる」を続けていけるように支援することが大切なのです。
次回はこちらの続き「利用者の自立度を図る指標「ADL」と「IADL」の違いと自立支援のためのケアのポイントについて解説(その2)」をおおくりします。ADL、IADLを低下させないケアポイントの内容になりますのでお楽しみに!

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参考URL:
第191回社会保障審議会介護給付費分科会/自立支援・重度化防止の推進 (検討の方向性)
令和3年度介護報酬改定の主な事項について
令和3年度介護報酬改定に関する審議報告の概要

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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