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NDSコラム

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マネジメント層が知っておきたいQOLのポイント

2022/06/24

介護の仕事に従事する方の環境は家庭をお持ちの方や、仕事と子育ての両立に悩みを持っている方など様々な環境で働いています。対人支援職として質の高い仕事を行っていくためには、自分自身が働く環境に意欲を見出せることが重要です。介護事業所は介護職員一人ひとりが意欲を持って働いてもらうことができる環境を提供することが求められており、いわゆる「従業員満足度」(ES)を意識した職場づくりが必須です。ケアの観点に重要なQOL(クオリティオブライフ)の向上を介護職員に対しても図っていくことが介護事業所には欠かせません。
そこで今回は、マネジメント層が知っておきたい「QOL(クオリティオブライフ)」のポイントをご紹介します。誰もが安心して仕事に取り組める環境構築のために、マネジメント層の方は是非ご一読ください。

QOL(クオリティオブライフ)を向上させる必要性とは

介護の仕事は介護を必要とする高齢者の尊厳の保持と自立支援を図ります。その際に重要な視点がQOLです。QOLとは本人の生活に対する満足度を示すもので、つまりQOLが高い状態とは「自分自身の現状の生活に満足感を感じている」状態であるといえます。生活に意欲を持つことやさらなる目標を設定していくためには、心の欲求が満たされていない=QOLが低い状態では前向きな姿勢になれません。だから介護の仕事では高齢者のQOL向上を図ることが、高齢者自身が現状の自分を肯定することに繋がり、さらなる目標に向かって意欲を発揮することに繋がるのです。

そして、このQOLは高齢者だけを対象にしたものではありません。高齢者のケアにあたる介護職員のQOLも高い状態を目指す必要があります。高齢者の尊厳の保持、自立支援のために質の高いケアを提供しようとする場合、介護職員の現状に対する満足度が低い状態だと、他者をより良い状態にしようという意欲は生じにくくなります。自分自身の欲求が満たされていないのに他者の欲求を満たす余裕は持てないのです。だからこそマネジメント層は高齢者のケアにあたる介護職員のQOLを向上させる取り組みを行うことが高齢者への介護の質を向上させることに繋がることを意識する必要があるのです。

QOLとは主観的な概念である

高齢者への質の高いケアのためには介護職員自身のQOLも高いことが必要ですが、QOLとは「主観的な概念」であるという理解が大変重要になります。

私たちは生まれ育った環境や交友関係、様々な関心や趣味などを通じ、「自分はこういう人間である」という自己概念を形成していきます。まったく同じ生き方をする人などいないように、この自己概念もまさに十人十色で、人の数だけ違う自己概念が存在します。その人にとっての「自分自身が満たされている理想の状態とはこういう状態である」という尺度もまた人それぞれに異なってきます。利用者に画一的なケアを提供しても効果が表れる方とそうでない方に分かれてしまうのは、そのケアの受け取り方が人によって変わってしまう部分もあるのです。

つまり、QOL向上を目指すための取り組みを他者がいくら提供したところで、ケアを受ける本人がそれに対して満足感を覚えることができない場合、効果を認めることはできないのです。介護職員も同様にマネジメント層が「こうすれば満足するだろう」という取り組みを行ったところで、介護職員自身が主観的に「満足だ」と感じることができなければ、どれだけの取り組みを行ったとしても満足な成果を上げることは難しいでしょう。

QOL向上を目指す取り組みは大変重要ではありますが、それらは介護職員一人ひとりの主観的な概念により受け取り方が違うことを理解することも重要です。

そのためには介護職員一人ひとりがどのような仕事をしたいと望んでいるのか、仕事を通じどのような人間になりたいと望んでいるのか、何を大切にしているのかなど一人ひとりの価値観や要望をつぶさに把握する必要があるでしょう。

QOL(クオリティオブライフ)を向上させるために

価値観が多様化していく中で、「何を大切にしているか」は人それぞれです。マネジメント層がおさえておきたい、QOL(クオリティオブライフ)を向上させるためのポイントは以下の通りです。

すべての職員にとっての働きやすい職場づくり

どのような働き方が実現すればQOLが向上するかは、先述の通り一人ひとり大きな差があります。独身者で仕事に打ち込みたい人や、責任ある仕事をいっぱいこなし評価されたい人、家庭に影響を与えない程度に働きたい人、子育てのことを第一に考えた働き方をしたい人など、その人のライフスタイルに合わせた希望は枚挙に暇がないでしょう。そのすべてに完璧に応えていくことは介護事業所としては非常に困難であるといえます。

しかし、介護事業所側が一方的に条件を提示して、働く側に適応するよう求めるだけではやはり介護職員個人のQOLを向上させることは難しいでしょう。まず何より重要なことは、介護事業所側が様々な環境の人材が働ける環境であるかを考えることです。たくさん働きたいと思っている介護職に合った役割を設けられているか、子育てと両立させたいと思っている介護職が働きやすいと思える体制をつくっているかなど、想定されるケースに事業所が対応できているかを考え、必要に応じて勤務形態や勤務時間、業務内容を柔軟にした仕組みづくりや環境整備を行っていくことにより、介護職員一人ひとりのやりがいや働きやすさを創出していくことに繋げることができます。

色々な意見を聞き、希望する働き方の全体像をイメージしていくことが重要です。

相談しやすい環境を構築する

相談しやすい環境を構築することで、悩みが深刻化しないうちに適切な対応をすることができます。介護職は様々な年代の方が働いている場合が多く、それに伴って一人ひとり様々な悩みを持っているケースがあります。マネジメントを行っていくにあたり、一人ひとりの相談に乗るつもりではあっても介護職自身が相談しようと思ってもらえなければ満足のいく成果を得ることは難しいでしょう。日頃から介護職員とのコミュニケーションを密に行い、介護職自身が気軽に相談できる関係性を構築しておくことはQOL向上の観点からもとても大切です。

またそのためにはマネジメント層は介護職一人ひとりの立場やどういった働き方を望んでいるのかをしっかりと把握し、それを尊重した対応が求められます。事業所側の判断基準で介護職員を判断するのではなく、介護職の考えや希望を個人として尊重する姿勢を持ち続けることが介護職の働きやすさにも繋がるでしょう。

働きやすい職場づくりのために業務を効率化する

介護の業界は慢性的な人手不足かつ多忙だといわれます。その影響で働く側の希望が反映されず業務に追われてしまう日々から抜け出せないといった話はしばしば聞かれます。自分の希望する働き方が長く続くようであれば、その方の希望する生活はいつまで経っても手に入れることはできず、その結果働けば働くほどその方のQOLは低下していき、最後には退職してしまうでしょう。さらに人材不足に拍車がかかり残された人員は業務に追われ続ける…と、負の連鎖に陥ってしまうこともあります。

この悪循環を改善するためには、人材が潤沢であることと、業務に追われないシステムを作ることが理想的な解決方法です。まず人材確保について重要なのが先述した働きやすい職場づくりを行うことで退職を防ぐことと、幅広い人材が働けるように柔軟な雇用形態を用意することです。早出~夜勤まですべてこなせる職員と決めつけて募集するのではなく、遅出だけ、夜勤だけなど限定されたシフトでなら働けるという人材も広く呼び込むことで「ここでなら希望の働き方ができる」と考える方は飛躍的に増えると考えられます。「ここでなら」と働きやすさを感じていただけるのであれば早期退職のリスクは大幅に減少することが期待できます。

次に業務に追われないシステムづくりです。せっかく働きやすい条件であっても業務に追われて自身のライフワークバランスが崩れてしまうようであれば元も子もなくなります。望まない残業が恒常化してしまうことも子育てとの両立を希望する方には大きなデメリットといえます。しかし介護の大きな業務である利用者へのケアは利用者のADLに合わせて提供する必要があるため場合によっては大きな時間を割く必要があり、そこを効率化することは適当とはいえません。介護の仕事で効率化を図ることが有効なのは記録や報告書、情報共有といった利用者への直接ケアに関わらない、いわゆるバックヤード業務です。これらの業務を効率化することは、今まで大きく時間を取られていた記録類の大幅な時間削減に繋がるだけでなく、空いた時間を利用者への質の高いケアにあてられるというメリットもあります。余裕を持って業務にあたるシステムを構築することは働く側の心身の余裕を生むことにも繋がり、利用者の望むケアを提供できることがまたやりがいにも繋がっていくことが期待できます。その結果介護職員、利用者双方のQOL向上を図ることができるでしょう。

記録類の業務効率化にNDソフトウェアでは「ほのぼのNEXT」をはじめとした様々なラインナップを取り揃えております。事業所様の形態に応じたソフトをご導入いただくことで日々の記録業務から請求業務まで幅広い業務をICT化し大幅な業務の効率化をお手伝いいたします。ぜひ一度ご相談ください。

▼ほのぼのNEXT
▼Care Palette Home/Nurse

まとめ

QOLは自立支援を目指す高齢者だけでなく、自分の希望通りの生活スタイルを望む介護職員にとっても非常に重要な尺度です。介護事業所のマネジメント層は、介護職員一人ひとりのQOLを高めていくための事業所づくりを意識して環境整備に取り組むことで介護職員のやりがい創出に繋げ、高齢者への質の高いケアに繋げていく意識が重要です。

当コラムは、掲載当時の情報です。

投稿日:2019/05/13
更新日:2022/6/24

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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