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NDSコラム

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「認知症ケア専門士」「認知症ケア指導管理士」とは

2022/07/12

介護業界では介護の質の向上を目指すことが大きな目標になっています。介護の質に大きく関わるのが認知症ケアであり、ケアの質の向上を図るための資格で近年注目を集めているのが「認知症ケア専門士」や「認知症ケア指導管理士」です。これらの資格の違いとはどのようなもので、どのような活躍が期待されるのでしょうか。今回は「認知症ケア専門士」と「認知症ケア指導管理士」について解説します。

認知症患者は今後も増加の見込み

日本は世界でも類を見ない高齢化の進行に伴い、認知症を患う高齢者の数は今後も増加していくと見られています。認知症の有病率は年齢や糖尿病などの生活習慣病が関係していることが分かっており、高齢化と比例して生活習慣病患者も増加すると仮定した場合2025年には認知症の有病率はおよそ20%と推計されています。人数で見ると実に700万人に上り、65歳の人口比率では20%、つまり5人に1人が認知症を有していることになります。

認知症ケアの質の向上が必要

認知症を有する高齢者が今後も増加していくと見られる中で求められるのが認知症ケアの質の向上です。

元来から介護業界は慢性的な人手不足が課題であり、利用者への充実した介護サービスが満足に提供しきれていないことが多くの介護事業所の現状となっています。その中において認知症を有する利用者への対応は、認知症についての理解が不可欠であり利用者の心情に寄り添ったケアが求められますが、人手不足や認知症についての正しい理解不足などから認知症を有する高齢者は在宅や施設での生活場面でも孤立しやすくなります。その場合認知症はさらに進行してしまい、尊厳の保持や自立支援を図ることはなおさらに困難な事態に陥ります。

そのため今後の介護業界において、認知症を有する方であっても最後まで自分らしく生きていけるよう充実したケアを受けられるようにするためには、人手不足への対策と並行して認知症ケアの質の向上が必要なのです。

「認知症ケア専門士」「認知症ケア指導管理士」とは

認知症ケアの質の向上が必要視される中、近年注目を集めているのが「認知症ケア専門士」や「認知症ケア指導管理士」といった認知症ケアに関する資格です。
これらの資格はそれぞれどのような内容であるかを以下に見てみましょう。

認知症ケア専門士

認知症ケア専門士は主催する一般社団日本認知症ケア学会が2005年に制定した資格です。
認知症介護従事者の自己研鑚および生涯学習の機会提供を目的に設けられた資格であり、養成された「認知症ケア専門士」は認知症の人ならびに家族に対して、高い知識と技能に基づくサービスを提供できることが期待されます。

さらにケアチームにおけるリーダーや、地域のアドバイザーとして活躍することが期待される「上級認知症ケア専門士」や学生、家族、市民に対して認知症をより深く理解する機会を広め、誰もが認知症を自身の問題として向き合える環境を整えることで、質の高い介護人材の輩出に繋げることを目的とした「認知症ケア准専門士」といった区分も設けられています。
認知症ケア専門士の大きな特徴は「生涯学習の機会提供」で、同資格は資格認定後も生涯学習を絶対的な義務としています。そのため、認知症ケア専門士は認知症に対する専門的な知識、技術を有しているだけでなく認知症について常に学んでいることを証明する資格であるともいえます。

認知症ケア指導管理士

認知症ケア指導管理士は主催する一般社団法人総合ケア推進協議会ならびに一般財団法人職業技能振興会が2010年より実施している認定資格です。

「認知症ケア指導管理士」は、認知症を有する方への適切なケアやケアを行う職員、家族などへの指導、管理を行える人材の育成など介護、医療現場で認知症ケアに携わる者の専門性向上を目的に創設された資格です。

認知症ケア指導管理士は初級と上級の区分が設けられており、初級では認知症ケアに対する専門性と質の向上を、上級ではさらなる専門知識の向上と認知症ケアの指導者としての人材育成を目指すものとしています。

認知症ケアに関する理解や指導する立場として役立つ資格とのことで介護職以外にも医師や看護師といった医療職も多く取得している資格です。

 

両資格は双方ともに認知症ケアに対する高い専門性を有する資格といえますが、「認知症ケア専門士」が認知症ケアの最前線に立ち主導していくのに対し「認知症ケア指導管理士」は認知症ケアを後進に指導することに特化した資格といえそうです。

様々な介護事業所での活躍が期待される

認知症ケア専門士や認知症ケア指導管理士は介護現場で様々な活躍が期待されているといえます。

施設介護

特別養護老人ホームや老人保健施設といった施設介護サービスでは入居しておられる利用者の中に認知症を有している方が多く、その方々のケアにチームであたる必要があります。認知症ケアでは、特にその方々の感情面に配慮し個性を深く理解したケアが求められます。また環境の変化にも対応しにくくなってしまうため、チームケアにおいては職員一人ひとりがバラバラな介護を提供するのではなく統一、一貫した対応が欠かせません。認知症ケア専門士や認知症ケア指導管理士の資格は、チームケアにおいて認知症を有する方々への適切な対応をチームで統一し利用者への適切な認知症ケアを主導するリーダーの立ち位置や、職員への指導を行う職責者や管理者といった役職者に非常に役立つ資格といえます。

在宅介護

デイサービスや訪問介護といった在宅介護の現場でもこれらの資格は大いに役立てることができるといえます。

デイサービスでは日によって利用される方々が違うことがあり、環境が一貫しないことが多いです。また自宅と事業所とを行き来することで認知症を有する方にとってはその都度環境変化に混乱してしまうリスクがあります。認知症への深い理解がないと利用者の心情に寄り添うことは困難といえ、認知症ケア専門士や認知症ケア指導管理士の資格保持者が対応できる、または対応の指針を示してくれることは介護職員ならびに利用者の強い安心感の助けとなるでしょう。

また訪問介護の現場では利用者宅にヘルパーが訪問する形のため介護職員は自分ひとりでの対応、判断をする機会が多くなります。認知症ケアに関する資格を保有していることは訪問介護員として高いスキルの証明ともいえますし、サ責や管理者が適切に認知症ケアへの指導を行えることは事業所全体の認知症ケアの質を向上させることに大きく寄与できるでしょう。

資格は加算算定にはならない

高い専門性、知識や技術を有する、認知症ケアのプロといえる認知症ケア専門士や認知症ケア指導管理士ですが、これらの資格はあくまでも民間資格であり、現在では資格を保有していることが加算の算定要件になっているものはありません。

しかし、認知症ケアを主導、推進できる人材は大変貴重です。法人によっては資格取得を奨励しており資格手当を設けている場合もあります。また認知症を有する方々にとっては「自分のことを理解してくれる」「孤独感を感じない」と思える人は非常に大きな安心感です。そのように感じていただくためには認知症ケアの正しい視点と認知症への深い理解が不可欠なため、これらの資格を保有していることは認知症を有する方々の生活を支える介護職員のさらなるスキルアップならびにキャリアアップに役立つでしょう。

資質の向上は介護職の責務

社会福祉士や介護福祉士について規定した法律である「社会福祉士及び介護福祉士法」には、その責務として「社会福祉士又は介護福祉士は、社会福祉及び介護を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、相談援助又は介護等に関する知識及び技能の向上に努めなければならない」と定められています。

今後認知症を有する方々はさらに増加し、認知症ケアのニーズも増大していくことを鑑みれば、介護福祉士だけでなく介護福祉士を目指そうとする職員やケアに関わる職員も認知症ケアの向上に努めていくことは責務であるともいえます。時代のニーズに応じた資質の向上の手段のひとつとして認知症ケア専門士や認知症ケア指導管理士の取得することは、非常に有効であるといえます。

まとめ

認知症ケア専門士は生涯学習を通じ認知症ケアへの専門的な知識、技術を有するのに対し、認知症ケア指導管理士は専門的な知識、技術を有しながらそれを後進に指導していくことを目的とした資格です。両者とも高いスキルを持つ認知症ケアの専門家であることを証明できる資格です。認知症を有する方々が認知症であってもその人らしく生きることを支えるため、また介護職員がより良い認知症ケアを提供できることで質の高い介護事業所となるために積極的に取得を目指してみるのもよいでしょう。

当コラムは、掲載当時の情報です。

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参考URL

認知症の人の将来推計について

認知症ケア指導管理士(初級)認定試験

上級認知症ケア指導管理士認定試験

認知症ケア専門士公式サイト

社会福祉士及び介護福祉士法

ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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